永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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第十一章 解答への道
どんより結婚記念日


「優子ちゃん、今日は結婚記念日だけど、どうする?」

 

 朝のひととき、浩介くんがキャンドルに火を灯して、「4」の数字へと燃えかかっている。

 あたしはというと、少し気分が悪いのでベッドで休んでいる。

 

 幸いにも今月は軽い方だけど、それでも普段と比べると体調はよくない。

 最初の2年に比べれば、大分生理と向き合えたけど、それでも鎮痛剤の副作用はある。

 我ながら、こんなんでよく大学を卒業できたものだとあたしは感心してしまう。

 

 生理の時は、浩介くんは「待ってました」と言わんばかりにあたしに献身的になる。

 下心があったとしても、あたしにとってはとてもありがたい。

 何分、結婚前のあたしは、生理中でも家事を免除されなかった。

 これは母さんの教育方針だったわけだけど、将来のことを考えて、比較的軽い今日は家事をしようと思う。

 

「優子ちゃん、起きちゃって平気なの?」

 

「あーうん、いつまでもこんなんじゃいけないもの。今月は幸い少し軽いから家事頑張らないと」

 

 あたしは、老化がないので閉経もない。

 そのためにも、生理中の家事もまた、大事なことになってくる。

 ともかく、生理前と生理中は、野菜中心の食事を心がけている。

 お義母さんには、あたしの周期もバレバレで、食卓のメニューを工夫してもらっている。

 

「うー、やっぱ優子ちゃんって健気だよなあ」

 

「ふふ、ありがとう」

 

 浩介くんに誉められるの、あたしとっても大好きだわ。

 そんなことを思いながら、あたしは起きてお義母さんのお料理を手伝うことにした。

 

「あれ? 優子ちゃん、大丈夫なの?」

 

 これまでも生理中に自主的に家事を手伝ったことはあったけど、その度にお義母さんはあたしを心配してくれる。

 

「うん、今月はね」

 

 お義父さんは幸いこの場にはいないので、生理の話題も大丈夫だ。

 浩介くんにも、とっくの昔に周期は把握されているし、前日になると「明日は生理だな、大丈夫か?」何て聞いてくる。

 気遣ってくれるのはありがたいけど、浩介くんは何でいつもちょっとだけにやけついているのかしら?

 男としては恋愛経験がないからよく分からないけど、そんなに彼女や妻の生理って気になるのかな?

 

「それにしても、今日は2人の結婚記念日なのにねえ」

 

 お義母さんは、「今日くらい休みなさい」といいたいのね。

 

「ううん、結婚記念日だからこそよ」

 

 こういう生理中の結婚記念日こそ、浩介くんの前で女子力を構成する重要要素になっている「家事力」の腕の見せ所だもの。

 あ、もちろん無理して心配されちゃったら元も子もないから気を付けないといけないけどね。

 

「やっぱ優子ちゃんって健気だよなあ」

 

 浩介くんが、さっきと全く同じ言葉を反復するように言う。

 

「うん、お義母さんもそう思うわ」

 

 あたしは、今までも「健気」って言われたことがある。

 特に女の子になったばかりの頃は、女の子として学ぶべきことが多くて、そんな時に桂子ちゃんや永原先生から「優子ちゃんは健気」って言われることが多かった。

 あの時は夢中だったけど、今になって思えば、突然女の子になってしまって、自分を変えたいという動機があったにしても、男女の違いの大きさを考えれば、あれだけの短時間で女の子を身に付けていったのは、とてつもないことだと思う。

 

 あたしは、鎮痛剤の恩恵を受けつつ、お義母さんと協力して、朝食を作り上げた。

 大学院、特に2年で行う修士課程は、多忙になることも多い。

 元々身体能力に問題のあるあたしとしては、当初提出した卒業論文の殆どを、修士論文に流用出来るのは幸いだった。

 

「「「いただきます」」」

 

 お義父さんも加わって、一家で朝食をとる。

 

「優子は今日も家事か」

 

「うん」

 

 お義父さんは、あたしの生理には鈍いらしく、あたしが家事を手伝ってるのを見ると、「健康」と判断するらしい。

 まあ、男の子には理解しにくいことだものね。

 

「やっぱり、優子が来てから、うちの雰囲気も大きく変わったよな」

 

「うん」

 

 特にお義母さんが、いい人だったのがよかった。

 今のあたしなら断言できるけど、もし浩介くんに姉か妹……つまりあたしに小姑がいても、うまくやっていける自信がある。

 それはやっぱり、結婚前に花嫁修行をしたことや、その時にお義母さんが「優子ちゃんは物凄くかわいくて美人で、しかも男心も分かって家事まで上手。完璧すぎて嫉妬する気にもなれない」と言ったのは大きかったわね。

 

「ごちそうさまでした」

 

 それぞれが食べ終わり、カウンターの上に食器を置く。

 浩介くんが皿洗いを手伝うように申し出てくれたけど、あたしはそれを断った。

 今日だけは、浩介くんの手伝いは借りたくない。

 ……2つの意味で。

 

 今日のお洗濯は元々お義母さんが担当するのであたしはお休み。

 ありがたくベッドに横になって、テレビを見ることにする。

 

「えーではですね、続いてのニュースです」

 

 この時間帯は世間一般的には「平日昼間」に当たる。

 なのでターゲット層は露骨に主婦、それも40代以上をターゲットにした番組が多い。

 なのでニュースも、芸能関係に関するスキャンダルな報道がやけに目につく。

 あたしはあまりこういうのには興味はない。

 

 うーん、あたしだって学生だけど主婦でもあるのよね。

 特にこういう長期休暇の時は、あたしの主婦としての顔が大きくなるのよね。

 蓬莱教授が、数年前にこうしたスキャンダルを追うマスコミを罠にはめて、実質的な支配下に置いた時、こうした罠の嵌め方が他の芸能人や政治家に応用され、「報道の自粛」が起きたこともあった。

 しかし、蓬莱教授と関係ないであろう芸能人関係については、やはり「喉元過ぎれば熱さを忘れる」なのか、今ではすっかり不倫関係のスキャンダル報道が報道を賑わせるようになっている。

 

 ……最も、5、6年前の頃に比べると、芸能人や政治家側の自衛手段が充実してきて、マスコミ側が苦境なのは事実だけどね。

 特に政治家に関しては、国会議員の全員が「蓬莱教授の不老研究を応援する議員連盟」に加盟したことで、マスコミを黙らせることに成功した。

 もちろん、政治資金規正法違反のような大きな疑惑は報道されるけれども、不倫みたいな比較的小さな疑惑については、完全に沈黙してしまっていた。

 

 小さな疑惑に限定してとはいえ、政治家の疑惑が報道されなくなったのは、あまりいいことではなく、蓬莱教授本人が苦言する始末だったけど、もはや蓬莱教授の権力はそこまで増大してしまったんだと諦める他なかった。

 

 一方で、マスコミ陣は慎重な報道をすることも多く、情報の精度が上がったとのことで、マスコミ内部にもこの空気を消極的に支持する声があるのもまた事実だったりする。

 

 そんな中で、ターゲットになりやすいのは若い女性アイドルの恋愛疑惑だ。

 例の蓬莱教授に目をつけられた週刊誌も、アイドルの彼氏疑惑で名を馳せた経緯がある。

 

「さて、このアイドル交際問題なんですけれども、実は去年にも同じグループのメンバーがですね──」

 

「はい、まあファンからすれば、2回裏切られたということになりますよね」

 

 テレビでも、コメンテーターたちが議論を交わしている。

 

「嫌ならアイドルやらなきゃいいんですよ。アイドルというのは夢を売るわけです。夢というのは現実逃避なんです。これはお金のやり取りであって契約な訳です」

 

 アイドルの恋愛禁止問題に異議を唱える人に対して、若い男性のコメンテーターが異論を述べている。

 

「お金をみんなで出しあって夢を買ってるわけですから、そういう存在になっておきながら特定の人と交際していたら、ファンたちの逃げ場がなくなっちゃいますよ。ただでさえこういうファンというのは現実に疲れた人が多いわけです。だから現実を見せつけられながら働いて得たお金をつぎ込むんですよ」

 

 コメンテーターさんの言い分は、あたしにはよく分からない。

 だけど、恋愛競争というのが不平等なのは分かる。

 モテない人たちがアイドルという存在にお金を出すとすれば、アイドルが恋愛をするというのは、お金を払って現実から逃げようとしたのに、現実を見せつけられるわけだから、怒るのは無理もないのよね。

 

「さて、続きましては、最新の家電の情報です!」

 

 昼間の番組には、こうした家電などの家事の時に役立つアイテムや方法などもよく報道されている。

 まさに女性向けという感じだ。

 

「ふう」

 

 とは言え、こういう「知恵」も、既に結婚前に母さんから教わっていることが多い。

 もちろんたまに掘り出し物があるけどね。

 

 

「優子ちゃーん! お昼手伝ってー!」

 

「はーい!」

 

 お昼前になると、お義母さんから昼食を手伝うように言われた。

 結婚してしばらくは、あたしとお義母さんとで家事のスキルに格差があったけど、今のお義母さんは、すっかりあたしの技術を吸収してしまった。

 もちろん、それは嬉しいし、家にとってもいいことだけど、一方でちょっとだけ、寂しくもあるのよね。

 

「お義母さん、今日は何を作るのかしら?」

 

 日々の料理のメニュー決めは、お義母さんが担当してくれる。

 もちろん、あたしも意見を出すことは出来るけどね。

 

「今日は少し寒いから、温かいお蕎麦にするわよ」

 

「はーい」

 

 母さんはそばを茹で、あたしが野菜を切る。

 

「ふう」

 

 今は、指を切らないように特に注意しないといけないわね。

 生理中の料理は、どうしても神経を使ってしまう。

 さっきとは違い、怪我の可能性もある料理なのでなおのことあたしに緊張感が強まる。

 

「よし、これで大丈夫ね」

 

 あたしはスープと野菜を煮込み、お義母さんがそばを茹で、最後にうまく4人の食欲に合わせて分配していく。

 

「浩介、お父さん呼んできて」

 

「あーい」

 

 タイミングがよくなったら、浩介くんがお義父さんを呼び食卓に並ぶ。

 朝食と同じように一家団らんの場がやってくる。

 今日は生理中のあたしに合わせて、野菜多めのそばになっている。

 特にニンジンとほうれん草が、この時期大好物になる。

 やっぱりビタミン取りたいのかしら?

 

「ごちそうさまでした」

 

 浩介くんが最初に食べ終わり、昼間のテレビを探す。

 その後に食べ終わったあたしたちは、朝食ともども食器洗い機に食器を入れる。

 

 この後に待っているのが、お掃除の時間なんだけど。

 

「優子ちゃん、本当に手伝わなくて大丈夫?」

 

 浩介くんが甲斐甲斐しくあたしに「手伝う」と言ってくる。

 要するに、家事手伝いついでに生理中のあたしの羽根つきパンツを見たいのよね。

 

「大丈夫よ、『こういう日こそ、きちんとやりとげなさい』って、あたしの母さん言ってたから」

 

「うー、分かった」

 

 浩介くんも、さすがにあたしの気持ちを汲んでくれるので、しつこくはしない。

 ただまあ、残念そうな顔をするのよね。

 もーそんな残念そうな顔されちゃったら困っちゃうわ。

 ……ってダメダメ、毎回毎回浩介くんのそんな顔を見て、最後は結局手伝わせちゃって恥ずかしい思いしちゃってるんだから!

 

 あたしは、今日の掃除エリアとして、寝室とお義父さんの書斎となっている。

 軽くほこりを払うだけの簡単なお仕事になるわね。

 

「よしっ」

 

 浩介くんに手伝ってもらわなくても、これくらいなら大丈夫。

 お義母さんも、別のところを手伝ってくれるものね。

 

「うー」

 

 とは言え、ちょっとだけきつい。

 あたしは、一旦自室に戻り、服の中にナプキンを忍ばせて、トイレに入る。

 

 スカートをペロリとめくり上げてパンツを下ろし、ナプキンを取り替える。

 古いナプキンはゴミ箱へっと。

 うん、今日は出血量は少ないわね。

 

「うー」

 

 便座に座ると、ちょっとだけ股から血が出てくる。

 結婚記念日でも、当然生理は待ってくれない。

 予測はついていたとは言え、やはり気分は重たい。

 

 これまでも、あたしの中で生理は大きなイベントになってきた。

 初めての時はもちろん、浩介くんを好きになってから最初の生理の日も、浩介くんに保健室までお姫様抱っこで運んでもらった思い出が色濃く残っている。

 

 今思えば、あの時にあたしから反射的な嫌悪感が消えるきっかけになったんだと思う。

 女の子にとって、生理中の問題は切っても切り離せない。

 

 ナプキンを取り替え終わり、出血も収まったので、あたしはビデのボタンを押してトイレットペーパーを使い、パンツをもう一度穿く。

 

 便器から立ち上がると、便器の水がほんのりとピンク色に染まっていた。

 いつものことだけど、女の子になって1年目の時には、どうしても慣れないものだった。

 今はうん、もう何十回と生理来てるから見慣れちゃったけど。

 

「ふー」

 

 あたしはもう一度、お掃除に戻った。

 浩介くんは相変わらず、あたしを心配してくれている。

 下心があると分かっていても、あたしは罪悪感を感じてしまう。

 

「うー」

 

  バタン

 

 あたしはさっき、出血を処理したため、貧血気味になってしまい、ベッドに倒れ混む。

 確かに生理が軽いと言っても、それなりには気分も重くなる。

 鎮痛剤も限度があるし、休めるときに休むのも主婦として大事なことだわ。

 

「優子ちゃん、大丈夫?」

 

 あたしが寝ていると、すぐに浩介くんが駆けつけてくれる。

 

「あーうん、夕食の準備までは時間があるから、今のうちに休んでるのよ」

 

「そうか、大変だよなあ」

 

「うん」

 

 テレビで暇を潰そうとも思ったけど、あたしは蓬莱教授からもらった修士課程の教材を眺めて予習する。

 教材を眺めて思ったが、やはり修士課程はそれまでの学部生の過程と比べても、更に抽象的で難解になっている。

 いやまあ、高校の内容だって十分に難しいとは思うけど、今思えば中学までが義務教育って言うのもそれなりに合理的なんだなあとは思う。

 

「優子ちゃん、予習?」

 

「そうよ、あなたとずっとずっといるためのね」

 

「ありがとう、俺のために」

 

 浩介くんが、嬉しそうににっこりと笑う。

 

「ふふ、どういたしまして」

 

 やはり、「浩介くんのため」という名分があるだけでも、飲み込みは全然違う。

 理系の大学は留年や退学が比較的多いと聞くけど、それはやっぱり、みんながみんな、あたしのように大きな勉強へのモチベーションがある訳じゃないからだと思う。

 

「大学院、頑張らねえとなあ」

 

「うん」

 

 とは言え、努力だけでどうこうできるのは、せいぜい高校の内容くらいまでだと思う。

 大学の課程になってくると、どうしたって才能がものをいい始めると思う。

 

 ましてやこんな大学院のないようになってきたら、向いてない人にはどれだけ努力しても無理だという気がしてくるわね。

 ということは、あたしはこれに向いているのかもしれないわね。

 

 

「さて、夕食を手伝わなくちゃ」

 

 時間が近いので、あたしは大学院の予習もそこそこに、家事へと向かう。

 今日の夕食のメニューは野菜炒めと鶏のから揚げになっていて、消耗したあたしへの配慮がなされている。

 

「お義母さん、夕食作るわよ」

 

「はーい」

 

 ノートパソコンを開いていたお義母さんが、あたしの声に応じてPCを閉じて立ち上がる。

 あたしは食材を用意し、お義母さんがフライパンやお皿などを出す。

 今日はあたしが生理中なので、お昼に引き続いて野菜を切るのと、ご飯やお味噌汁を作る方へと周り、お義母さんが唐揚げを揚げて、野菜を炒める作業を担当する。

 このあたり、結婚したばかりのお義母さんは本当に頼りなかったけど、今はもちろんちゃちゃっとあたしの教えた通りにこなすことが出来る。

 

 キッチンは女性2人入ると、少しだけ狭い。

 まあそれでも、1人でするよりはずっといいんだけどね。

 

 生理中はどうしても本調子が出ないけど、それでも生理中なりにうまく出来る方法を工夫しているので、特段の問題はない。

 

「お義父さんー! あなたー! ご飯よー!」

 

「「はーい!」」

 

 あたしが大きな声でご飯だと伝えると、お義父さんと浩介くんが食卓へと上がってきた。

 

 

 さて、夕食が終わったらお風呂なんだけど──

 

「しまったわ……お風呂掃除忘れてた」

 

 久々にあたしは家事でミスをしてしまった。

 お風呂のお掃除をして、お湯を沸かさなきゃいけないのに、掃除をしていなかった。

 うー、お風呂の時間が遅れちゃうわ。

 

 ともかく、お風呂掃除しなきゃ。

 

「優子ちゃん、ピンチなんだろ? お風呂掃除手伝ってあげるよ」

 

「うっ……浩介くん」

 

 浩介くんが、鬼の首を取ったような嬉しそうな表情で、あたしの弱味に漬け込んでくる。

 

「その、急げば大丈夫だから」

 

「うー」

 

 浩介くんが不満そうな顔をする。

 でも、生理中にスカートめくられるのは──

 

 ──やっぱり我慢できないわ!

 

「うん、あなた、悪いけど代わってくれるかしら?」

 

「いよっしゃあ!」

 

 浩介くんが気合いを入れた表情をすると、お風呂がごしごし洗われていく。

 

「ここはそう、これでカビを取ってくれる?」

 

「よっしゃ! 任せとけ!」

 

 浩介くんの火事場の馬鹿力もあって、お風呂の遅延は最小限に食い止められた。

 

 

「ふふふ、優子ちゃん、生理中だからって容赦しねえぜ」

 

 浩介くんが、家事を手伝ったご褒美をあたしに所望する。

 

「……はい。あなた、どうぞ」

 

 あたしは手を後ろに組んで従順の意を示す。

 ご褒美はお尻、胸触り、またはスカートめくりってことになっていて──

 

  ベロン

 

「……っ!」

 

 あたしはまた、浩介くんにスカートをめくられ、パンツを見られてしまう。

 しかも今日は生理用の羽根つきパンツで──

 

「うひょー! 優子ちゃんの生理用パンツキター!」

 

「やっ……恥ずかしい……」

 

 浩介くんがにやけついて喜ぶ声を出す。

 小さく細い声で、あたしは恥ずかしさに耐えるしかない。

 こうなると分かっていても、浩介くんがしたがってる顔を見ると、断りきれない。

 もう、浩介くんったらどうしてあたしの生理に執着するのかしら?

 って、女にあって男にないものだものね。あたしたち女の子が自分達になくて男にあるものに興味が出るのと同じよね。

 

「あ、あなた……あんまり見ないで……!」

 

 あたしは、切実な表情で浩介くんに訴える。

 浩介くんが残念そうな表情でスカートを下ろしてくれた。

 

 ともあれ、これでもう、お風呂が湧くのを待つだけになったわね。

 

 

 思わぬハプニングでお風呂が遅れたけど、あたしが最後に入って、あたしがお風呂から出る頃にはもう寝る時間になる。

 

「ふう」

 

 パジャマに着替えたあたしは今日の結婚記念日のことを振り替える。

 結婚記念日も4回目、特別なことはなく、生理中だったということを除けば平凡な1日だったけど、多分この穏やかな平凡な日々が一番大切だと思うから。

 4月からはまた、新しい日々が始まるから。

 今のうちに、束の間の日常を楽しんでおきたいわね。


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