永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件 作:名無し野ハゲ豚
「さ、プール行こうぜ!」
昼食を食べ終わると、待ちきれない様子で浩介くんがあたしを急かしてくる。
本当、性欲の力って凄いわね。まああたしも早く浩介くんの前で水着に成りたいと思ってるからおあいこだけど。
「あ、うん。ちょっと待って水着持っていかないと」
もちろん、水着を自室に取りに行かなければいけないので、その時間が必要になるので。
「おっと、そうだよな」
浩介くんも冷静になったらしく、一先ずは部屋に戻って水着を取りに行くことになった。
「さて、どっちにしようかしら?」
水色の超ミニスカートなパレオ付きの白いビキニと、黒を基調にした更に露出度の上がったビキニがある。
前者はかわいさとエロさ、露出度とあどけなさを併せたバランスのいい水着であたしのお気に入り。
後者はエロさにやや傾いていて、さっきみたいに「肉食系女子」になりたい気分の時に使う。
実際、この水着を穿いた日は、必ず浩介くんを獲物として「食べて」いる。
「やっぱりうーん……」
さっきの木でのこともあって、今のあたしはかなり肉食系女子な気分だった。
でも、今日の水着という意味では、よく使っている前者の水着の気分だった。
「そうだわ。この水着で肉食系になるのもいいかも」
あたしは、そんな結論に達して、水着を取り、プールセットと共に部屋を出て浩介くんと合流した。
「水着迷った?」
「うん」
浩介くんも、あたしが複数水着を所有していることは知っているので、特に待ったことは気にしていないらしい。
あたしたちはエレベーターを呼び寄せて乗り込み、「R」ボタンを押して一気に屋上へとたどり着いた。
「よし、じゃあまた」
「うん」
脱衣場は男女別なので、浩介くんと一旦別れる。
あたしは鍵を閉めて脱衣場のかごを取る。
「そうだわ、誰もいないし」
バッ……
はしたないと思いつつも、あたしは誘惑に負けてワンピースを一気に上までめくりあげ、パンツとブラを一気に脱いで全裸になった。
誰も見ていないけど、やっぱりこの明るくて開放的な中では素っ裸は恥ずかしく、あたしはすぐに水着を着た。
ふう、やっぱり恵美ちゃんのようにはいかないわね。
これを他の人が見ている中でするのは絶対に無理だわ。
ともあれあたしは、軽く準備運動してから脱衣場の扉を開けて、既に立っていた浩介くんの元へと駆け寄った。
「あなた」
足元が暑い。屋上はビルの屋上と同じような感じなので、太陽光の熱を溜め込みやすい。
本当はホースを使って水撒きしてからの方がよかったわよね。
「うっ、やっぱり優子ちゃんのその水着エロい……」
「ふふ、ありがとう」
むにっ
「ひゃうっ」
あたしが背中から胸を当てると浩介くんが溜まらずにすっとんきょうな声をあげた。
ふふ、やっぱり水着になっちゃうと、あたしでも主導権握れるわね。
まあ、そうは言っても──
すりすりすり
「きゃあっ!」
浩介くんの右手に、あたしは水着越しにお尻をすりすりと素早く撫でられる。
深く撫でられるのとは違う感触で、やっぱり黒い水着よりは簡単に主導権握れないわね。
「こーら、入るわよ」
「うん」
あたしは浩介くんを誘導しながら一緒にプールの中に入る。
本当はもっと準備運動をした方がいいんだけど、激しく泳ぐ訳でもなく、また浩介くんに襲われちゃいそうなので水の中ですることにする。
冷たい水の感触が気持ちよくあたしの胸が水に浮き、パレオもヒラヒラと水中ではためいていた。
「気持ちいいわー」
水風呂と同じで、暑い夏にはうってつけの環境だった。
体から熱が逃げていく様子を全身で感じることができる。
手を水から出すと、夏の気温と太陽光が、水の熱伝導もあってかなり強烈な勢いで感じていく。
「うん、本当にな」
プールから目をやると、渋谷の街が見えた。
あたしたちは思い思いに水の中を泳ぐ……というわけにはいかない。
相変わらず運動神経が壊滅的なあたしは全然泳げないので、浩介くんが泳ぎを披露してくれることになった。
「あーんかっこいいー!」
プールサイドに腰掛けながら浩介くんのかっこいい泳ぎでメロメロにされてしまう。
背泳ぎのスタートの時に分かったけど、浩介くん、まだ大きくしてるのね。
「ふう、どうだった俺の泳ぎは?」
一通り泳ぎ終わるとあたしの隣に浩介くんが腰かけてくる当然あたしの視線は、吸い込まれるように浩介くんの下半身へと向かっていく。
あーん、あたし、乙女の大好物から目が離せないわー!
「うん、かっこよかったわ」
「そ、そうか……ゆ、優子ちゃん、あんまりそうじっと見ないでくれる?」
浩介くんもさすがに気付いたのか、両手で恥ずかしそうに隠してくる。
もー、余計に見たくなっちゃうじゃないの。
「あははごめんね。あたしも女の子だから、本能なのよ」
浩介くんも、あたしの胸に釘付けになっちゃってるし。本当、本能って怖いわね。
「うー、恥ずかしい」
浩介くんが顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしてくる。
ふふ、昨日はやられっぱなしだったし、最近もそんな感じのが続いてたから、ちょっとくらい、いいわよね?
「ふふ、特に背泳ぎが素敵だったわ」
あたしは、何とかメスの本能に抗って、浩介くんの顔を見つめながら言う。
「え!? どうして!?」
でも、出てきた言葉はやっぱりメスそのものだった。
だって──
「上からだからあたしが大好きなのが見えちゃってたし」
あたしがうっとりした顔で言うと、浩介くんの顔がみるみるうちに赤くなっていく。
「うー! 優子ちゃんのえっち!」
あたしはこの言葉を週に何度も言ってるけど、浩介くんがこの言葉を発した記憶はほとんど無い。
それだけ、あたしが攻勢になることは珍しい。
ふふ、このまま一気にいきたいわね。ここは屋上だけど、もうそんなこと関係ないわ。
「んんっ……!」
あたしは強引に浩介くんの唇を掴み軽くキスをする。
浩介くんは力を出してしまえば簡単に振りきれるがそうはしない。
浩介くんも半ば、こうなることを予測してたからだと思う。
「ふふ、いっぱい楽しもうね、あ・な・た」
プールサイドに浩介くんを倒し、あたしが上から胸を押し当てて囁く。
「うっ……ああ、優子ちゃんに食べられちゃうよぉ……!」
状況を察した浩介くんが、いつものセリフで従順になった。
「はぁ……はぁ……はぁ……はにゃー! ご馳走さまでしたー!」
「ひゃうう……もう……だめぇ……」
ザブーン
浩介くんが疲れきった様子でプールに飛び込んで横になる。
そしてすぐに溺れそうになってから、慌ててプールサイドに掴まり、ぐったりした様子で粗い息づかいをしている。
あたしはというと、浩介くんのお肉をがぶりと美味しく食べた後はやっぱり疲れきっていて、水着を直して水を張ったプールサイドの上で仰向けに寝頃がる。
水中で抱き締めた感触はいつもと全く違った。
屋外ということで浩介くんが口に手を当ててくれたので、声は多分聞こえなかったと思うけど、次からは我慢できなくても屋内でしなきゃいけないわね。
「うひー」
浩介くんはかなりぐったりしている。
あれほど鍛えた浩介くんでもこうなっちゃうなら、他の男性だったら命に関わっちゃうかも。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ふう、あたしも疲れたわ。
それにしても、普段は運動能力全く無いはずなのに、こうやって肉食系女子になると途端に力が出ちゃうわよね。
そう考えると、性欲の力って偉大だわ。
「ふう、今日は大丈夫よね?」
確実に安全ということはないけど、今日は大丈夫な日のはず。
ちゃんとした道具がなくても、ある程度なら回避はできるはず。
まあ、大学院の卒業も確定していて、正直もう身ごもっちゃってもいいとは思うけど。
浩介くんは、まだぐったりしている。
どうやら相当効いたらしいわね。
「優子ちゃん、先に行ってていいよ。俺もちょっと、部屋で休むから」
浩介くんが、相変わらずプールサイドに掴まりながら息を切らせて言う。
何だか今日は、いつにも増してすごいわね。
「うん、分かったわ。それじゃあ」
あたしは浩介くんを置いて一人で戻り、脱衣場で着替え直す。
エレベーターを使って1階に戻り、あたしも自分の部屋へと舞い戻る。
「ふー」
あたしは冷房をつけてベッドに横になる。
している最中はいいけど、終わってから時間が経つと疲れてくる。
それを感じながら、あたしは冷房の効いた広い部屋でうとうとする。
「あうー」
寝ていたのは1時間ほどだった。
あたしは急いで起きると、昼食の準備に取りかかることになった。
浩介くんは、さすがに部屋に戻ったわよね?
リビングは無人で、60畳のスペースが広く、とても静かに感じる。
あたしは今日の食材を見極めてご飯の調理を開始する。
ちなみに、作るのは冷たいうどんになった。
「優子ちゃん、おはよう」
「おはようあなた、どうしたの? さっきはあんなに元気なかったのに」
うどんを作っていると、浩介くんがすっかり元気を取り戻した表情でリビングに入ってきた。
どうやら、よく眠れたみたいね。
「あの部屋にあったまむしのエナジードリンクを飲んだんだ。それで少しマシになった」
あーそういえば、そんなのもあったわね。
「すごいわね。そのドリンク」
「まあ短時間でも寝れば違うんだ。あーでも悪い、まだ気力がねえから家事は手伝えねえや」
浩介くんは、まだ本調子と言う感じじゃなさそうね。
いつもなら、あたしと2人きりになったら、浩介くんはこれ幸いと性欲のために甲斐甲斐しく家事を手伝ってくれるのにね。
「うん、それでいいわよ」
あたしは、一先ずうどんの具材に肉を加えることにした。
浩介くんには、沢山鍛えて貰わないと困るものね。
って、あたしもちゃんと、これからは妊活もあるんだし頑張らないといけないわね。
「優子ちゃんは、全部の部屋に行った?」
「うん、2階のオーディオの鑑賞部屋とかマイシネマはちらっと見ただけだけど」
正直あの辺り持て余してるし、今度映画のブルーレイでも買おうかしら?
考えてみれば、庭も含めてこれで全部回ったのよね。
「ああ俺もそんな感じ。にしたって広いよなこの家」
浩介くんも、やっぱりまだこの家の広さには圧倒されているらしい。
それもそうよね。ついこの間……というか一昨日まで、土地面積10分の1位の家に住んでいたわけだし。
「あはは、でも世界の豪邸からすればまだ狭い方じゃないの?」
実際、世界の豪邸には数千坪レベルの広い豪邸もあって専用のテニスコートとかゴルフ場まであるって言うし。
「そりゃあさ、都市部から離れているからだろ? 俺たちがすげえのは、利便性最高の渋谷という東京のど真ん中にこんなどでかい居を構えていることだろ? 坪単価考えれば、俺たちのこの家だって決して負けてねえぜ」
確かに、浩介くんの言う通りだと思う。
その証拠に、この家の近所だってみんな名だたる富裕層たちの家ばかりなのに、あたしたちの家ほどの豪邸はほぼ無い。
ピンポーン、ピンポーン……
突如、家の呼び鈴が鳴った。
誰からかしら? お義母さんたちはまだ老人ホームだろうし。
とにかく出てみよう。
「はい……!」
ボタンを押して家の入り口と繋ぐと、知らないおばさんが出てきた。
い、一体何かしら? まさか富裕層狙いの詐欺師かしら?
「すみません、篠原さんですか?」
「ええそうですけど」
一体、何の用事かしら?
「ああよかった!実はですね、私蓬莱の薬飲みまして、この松濤では多くの人が薬を飲んでいるんですよ」
どうやら、お客様らしいわね。
確かに、この富裕層の街なら多くの人が顧客になっているわよね。
「ええ」
「近所の人と『この大きな家の持ち主誰になるのかしら』と話していたら、まさか蓬莱カンパニーの篠原さんだったとは思いもよらずですね。で、篠原さんに感謝の印として、私達松濤住人一同で、是非贈りたいものがあるんですよ」
おばさんによると、「お金は死んだら消えてしまう」ため、みんな寿命が怖かったのだという。
言われてみれば、お金持ちからするとそういう不安もあったわよね。
蓬莱の薬のお陰で、そうした心配はなくなりつつあるのだとか。
まあ、蓬莱の薬は人類全体での共有財産になると思うけどね。
「……分かりました。えっと、今昼食を作ってますので……申し訳ないんですが呼び鈴の下にあります『篠原』という所のテプラに入れて貰えます?」
「はい」
おばさんが、テーブルに贈り物を入れるのが見てとれる。
どうやら、こういうのは慣れているらしい。
「入れたら『送る』のボタンを押して下さい。私達のところに届きます」
「はい、ありがとうございます。すみませんお忙しい時に、失礼いたします」
そういうと、おばさんが去っていった。
この家に来てから知ったことなんだけど、郵便物や宅配物などは、わざわざ取りに行かなくても専用の地下コンベアーを通って、あたしたちのリビングに直接届くようになっている。
今みたいに送った人が即時ボタンを押すこともできるし、定期的に機械が重さなどを検知して送りつけてくれる。
もちろん、大きな物などは手渡しにする必要があるので、その場合は入り口まで歩く必要がある。
ピンポーン
「荷物が届きました」
「お、届いたぜ」
浩介くんが立ち上がりリビングに置かれた段ボール箱を手に取る。
そして机に運び、箱を解体する作業に入った。
あたしはその音を聞きつつ、うどん作りに集中する。
「おー、優子ちゃん! すごいぞ! 真珠のネックレスだってさ!」
浩介くんがネックレスを取り出してくれた。
そこにあったのは「真珠」で、よく分からない銀座のお店の名前が書かれていた。
「本当だわ。でこっちが──」
「これ、ダイヤモンドじゃねえか、俺たちの指輪より大きいぞ」
ダイヤモンドの塊だった。
松濤の人たちがお金を出しあってくれたって言うけど、すごすぎるわよ。
「何だか勿体ないわね。母さんたちに渡しておいた方がいいかしら?」
正直、あたしたちが持ってても何だかなあって感じだわ。
って、それもそれでまずいかしら?
「まあともあれ、俺たちへの感謝の印だし、とりあえず俺が管理しておくよ」
「うん、そうしてくれるかしら?」
おっと、うどんは……ふう、ギリギリセーフね。
トントントン
「優子? お客さんでしょ? ってそれ!」
あたしがうどんをお皿に盛り付けていると、母さんがあたしたちの部屋に来た。
真珠とダイヤモンドを見るなり、母さんがかなり驚いている。
おそらく、かなりの値打ちがするものなんだと思う。
「あー、さっき近所の人がくれたんだ」
浩介くんがさらりとした口調で話す。
「くれたんだってまあまあ! 真珠にダイヤモンド。数百万数千万はするわよこれ」
母さんが目を輝かせながら話す。
宝石に疎いあたしでも、これが高いものだということくらいは分かるわ。
「あたしたち蓬莱カンパニーに感謝の気持ちを込めて、町内の人たちでお金を出しあったんだって」
「あらあらまあまあ、こうしちゃいられないわ。直ぐに感謝回りにいってくるわね」
母さんが慌てた様子で部屋を出た。
あたしは冷静にうどんをお皿に盛り付けると、食卓へと運ぶ。
「さ、あなた、お昼ご飯よ」
「お、おう……」
浩介くんはまだ動揺を隠せない様子だけど、ともあれあたしはまずお昼御飯を食べてから考えることにした。
浩介くんも落ち着かない様子ではあったけど、一先ずお肉も入った冷たいうどんを一緒に食べてから考えることにした。
「「ご馳走さまでした」」
まだ回復していないらしく、いつもなら甲斐甲斐しくお皿を運んでくれる浩介くんがすぐに部屋に戻り、あたしは食器洗い機にお皿などを入れて自室に戻る。
本来ならここでお掃除の時間なんだけど、まだ住み始めたばかりなのであたしには空白の時間となった。
そして、あたしはパソコンを開いてインターネットをすることにした。
ともあれこれで、夜ご飯の準備までは時間を潰せるわね。