永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

47 / 555
林間学校前夜

 夏休み前、最後の登校日。

 この日は明日に控えた林間学校への最終確認と、全校集会が行われる。

 体育館で全校集会が行われる予定だが、まずは教室へと入る事になっている。

 

  ガラガラ

 

「おはよー」

 

「おはよー優子ちゃん」

 

「おはようございます優子さん!」

 

「おはようだぜ優子!」

 

 教室へ入り、皆と挨拶する。

 

「あ、優子さん優子さん!」

 

 龍香ちゃんが私の所に駆け寄ってきた。

 

「うん? どうしたの龍香ちゃん?」

 

「デート、すっごいうまく行ったんですよ。もう私の彼ったら興奮しまくってて激しくて激しくて……もう何回も気絶させられて……あーたまらなかったわあー」

 

 龍香ちゃんが顔を真っ赤にしながらのろけ話をしてくる。

 

「ちょ、ちょっと龍香!」

 

「あははっ、でも成功してよかったよ」

 

「でも、優子さんのおかげですよ。初めて出来た彼氏ですけど、このまま結婚しちゃってもいいかなって思えてきました」

 

「け、結婚って……」

 

「でも、龍香がそこまで言うって……相当上手く行ったんだと思うよ」

 

 うん、私のアドバイスがうまく行ったのは事実。龍香ちゃんに貢献できたのは嬉しい。

 

「今後、恋愛相談は優子さんで決まりですね!」

 

「え……やっぱりそうなるの?」

 

「うん、優子ちゃんは私たちに無い貴重な感性も持ってるからね」

 

「そういうものかなあ……」

 

「私達で優子さんに足りない女子力を補い、逆に優子さんは私達に足りない男心を補うんですよ!」

 

「ふむ……」

 

 確かに共存共栄の関係にはなれるが……

 

「ええ、優子ちゃんと今後ももっといい関係になれそうね!」

 

 ともあれ、好感触だったのは良かった。今はそう思っておこう。

 

 

「はーい、全校集会に行きますよー」

 

 教室に永原先生が登場し、夏休み前の全校集会へと向かう。

 まずは永原先生に誘導され、体育館へと向かい、そこに全校生徒が集合するという予定になっている。

 

 体育館へ入る。大量の椅子があって決められた所に行く。

 男女混合であいうえお順なので優一のままだとしても同じ席になるはずだ。

 

 体育館への入り口に振り返ると、他の学年、他のクラスの生徒も多く集まってきている。

 

「これより、夏休み前の全校集会を執り行います!」

 

 全員が集合して数分後、雑談で包まれていた体育館が一つの校長先生の放送によって静寂に包まれる。

 

「初めに、私(わたくし)校長の方から挨拶と話があります」

 

 そう言うと校長先生が小走りで体育館の舞台の中央にあるマイクへ向かう。

 

「えー皆さん、これから林間学校の後、夏休みに入るわけですが、えー自由を基幹とする我が校ですが、節度を持った夏休みを過ごして下さい」

 

「今年も、えー昨今のニュースに出るような大きな事件事故なく、無事に夏休みを迎えることが出来たのは、大変喜ばしいことと思います」

 

 私にとっては大きな事件ってレベルじゃない事件が起きてるけどね……

 

「えーあまり私の話を延々聞きたいという人はいないと思いますので、私の話はこれで終わります。ご清聴ありがとうございました」

 

 所々で笑い声が聞こえつつも、校長先生の話が終わる。

 校長先生が延々に長話しても、誰も喜ばないことを校長先生自身が知っている。

 この前の教頭先生にとどめを刺した時と言い、校長先生は実にいい人だ。

 校長先生は小谷学園創始者の孫にあたる3代目で、よく「3代目は潰す」なんていうが、この人は初代の遺言をきちんと守ることが使命。とのことだ。

 

「続いて、生徒会からのお知らせです。守山(もりやま)さんよろしくお願いします」

 

 校長先生がそのまま進行役を兼ね、生徒会からのお知らせを告げる。

 

 うちの学校にも一応生徒会と風紀委員があるが、あってないようなものだ。

 一応生徒会は曲がりなりにも活動しているが、風紀委員は完全に休眠組織同然で実体がない。

 うちのクラスにも風紀委員はいるにはいるんだが、「委員長の顔も名前も知らない」と公言する始末だ。

 それどころか去年なんて当の委員長本人が、自分が風紀委員長であることを忘れてしまっていたという事件があったくらいだ。

 

 その生徒会長が舞台へ上がる。もちろん名前は知らない。

 

「えー生徒会長の守山と言います。小谷学園の夏休みに当たってですが、『小谷学園は世間知らず』などという噂が一部の掲示板で流れております」

 

「今年5月には通学中の小谷学園の女子生徒が痴漢被害に遭いました。くれぐれも変質者には気をつけて下さい……僕の話は以上です」

 

 この痴漢って私のことだよね。今でもちょっと思い出してしまうことがあって気持ち悪いという気分になる。

 でも生徒会長の口から女子生徒って言う言葉が出て安心感を覚えるのも事実だ。

 

 生徒会長が舞台を降りて、自分の席に戻る。

 続いて校長先生が再びマイクの前に来る。

 

「続いて女子テニス部からのお知らせです」

 

 ガタッと近くで誰かが椅子を立ち、壇上へ駆け上がる。

 

「えー、皆さん。女子テニス部の田村恵美です」

 

 恵美ちゃんが普段とは違う敬語調で話している。

 

「この度、あたい田村恵美がテニスのインターハイに出場することになりましたので報告します。8月初旬より開始予定です。よろしければ観に来て下さい!」

 

 一人称だけあたいになってるのがちょっと可愛いと思った。

 恵美ちゃんがインターハイ。去年も全国大会に出てたけど、1年生ながら圧倒的な強さだった。

 去年はサーブを一回も落とさず優勝、セットの殆どが6-0で決勝もダブルベーグルという徹底ぶりだ。

 恵美ちゃんは雑誌等の取材は一切拒否しているみたいだけど、気が早い人は「将来の世界ランキング1位候補」何ていう人さえいる。

 「すぐにIMGに来い」という勧誘は何度も受けているようだが、「高卒の資格を取らねえといけねえんだよ」と言ってて、堅実な一面も見受けられた。

 

 恵美ちゃんがこっちへ戻ってくる。更に夏休み前に行われた大会の結果を各部活が紹介する。

 だいたいは一回戦敗退だ。まあうちの学校はあまり運動には力入れてないからなあ。そう言う意味で恵美ちゃんは異例中の異例だ。

 

「えー、各部活、委員会よりお知らせは全て終わりましたので、これにて解散と致します。長い時間ありがとうございました。後ろの席の方から退室して下さい」

 

 校長先生の号令のもと、後ろから生徒が退場していく。結局部活からのお知らせが大半の時間だった。

 

「さあ、2年2組の皆さん、私の前に集合して下さい!」

 

 永原先生の声掛けとともにクラスメイトが集合する。

 

「それじゃあ教室に戻りますよ。私について行って下さーい」

 

 永原先生の先導で、再び教室に戻る。

 

「はーい、皆さん着席して下さーい」

 

 教室に戻ると、永原先生がこう声をかけたが、皆疲れたのかすぐに着席した。

 

「えー、これから5分間の休憩に入ります。休憩が終わりましたら、明日の林間学校の最終確認を行います。それでは、休み時間にして下さい」

 

 こうして私達は休み時間に入った。

 

 

「いやー、うちの校長先生は本当にいい人ですよね!」

 

 龍香ちゃんが声をかける。

 

「校長先生も長話が好かれてないって分かってるのよ」

 

「優子さん、その自覚があるだけでも大したものなんですよ」

 

「確かに、中学の校長先生は倒れてる人がいるのに話を止めなくて、最後には私が『さっさとやめろー! 引っ込めー!』って野次って止めたこともあったわねえ……」

 

「ああ、あったわね! 優子ちゃんがまだ優一だった頃の話ですけど」

 

「よく考えれば……私も中学の頃は乱暴ながらも高校の優一時代より嫌われてなかった気がするわね……」

 

「あの頃の優一って……校長が長話すると決まって野次を飛ばしてたからねえ。内心感謝してた子も……ていうか中学は優一に続いて野次を飛ばす子も居たわねえ……」

 

「なるほど、それで校長先生は話を止める。と」

 

「うんうん」

 

 でも今となってはあまりいい思い出じゃない。中学の頃にこうした強引なことを繰り返して「ゴリ押せば通る」という習慣が一層身についてしまった側面があるからだ。

 

「私の他校の友達も、『うちの学校は校長先生話し長過ぎる』って言ってましたよ」

 

「本当、小谷学園って恵まれてるよねえ……」

 

「優子ちゃん、私もそう思うわよ。他の学校だと帰り道立ち寄れないし制服にも煩いし、ひどい所だと部活強制参加とか下着の色まで指定とかあるらしいですよ」

 

 桂子ちゃんが他校の校則の噂について話す。

 

「何ですかそれ!?」

 

「女子でも髪を切らないといけないとか。ね」

 

「ははは、あたしそんな学校行きたくないよ……」

 

 あたしは背中まで伸びる黒髪のロングヘアーをつかむ。

 

「でもそう言う進学校っぽいことをしてる学校よりもうち程……とは言わなくても、色々と緩い学校の方が実績いいんですよねー」

 

「龍香、そもそもそう言う抑圧をしなきゃいけないってのは生徒が自制効かないからよ」

 

「そう言う意味では、優一時代のあたしは結構よくなかったよねえ……」

 

「そうねえ……」

 

「そう言う意味でも、私、女の子になれてよかったと思うよ」

 

 桂子ちゃんと龍香ちゃんで雑談をしていると永原先生が教室に入り、「林間学校への最終確認を行います」と宣言した。

 

 最も、確認事項は以前のホームルームでやったことだけなので、そこまで時間はかからず、今日は部活もなく半日で下校となった。

 

 

「なあ優子、あたいらでハンバーガー屋に行かねえか?」

 

 下校となった時、恵美ちゃんが声をかけてきた。

 

「え、あたしはいいけど?」

 

「よっしゃ決まりだ! 女子一同で行くぞ!」

 

 「おー!!!」という掛け声とともに、17人の女子が一斉に下校する。

 下駄箱に移動し、ローファーを出して履き替える。

 

 

「優子さん優子さん、私の彼はどうしてあんなに惚れたんです?」

 

 道中龍香ちゃんが話しかけてくる。

 

「ギャップよギャップ。外では清楚でスカート丈の長い白いワンピースで現れた彼女が、家の中で自分にだけ超エロい自分を見せてるって思わせたわけよ」

 

「ふむふむ、ギャップが大事なんですね!」

 

 女子17人での集団下校は初めてだ。

 学校から駅への道は大きな道ではあるものの、歩道はそこまで広くなく、結構威圧感のある集団になっている。

 

「なあ優子、お前が運ばれたのってここの病院か?」

 

 恵美ちゃんが、私があの日運ばれた病院を指差す。ということは、ハンバーガー屋はすぐそこだ。

 

「う、うん」

 

「やっぱりそうか。で、今回のハンバーガー屋って、優子は女になって立ち寄ったことは?」

 

「うーん、確か一回だけ。倒れて目が覚めたのが翌日で、最初に食べたのが病院食、次に食べたのが確かここのハンバーガーよ」

 

「へえ、そうなんだ!」

 

「でも病院食を最初に食べておいてよかった。食が細いのに気付いて、いつも頼んでるメニューより小さいサイズにしたから」

 

「ふむふむ、よし、17人じゃ店の人も困るだろうし、4と5で別れるぞ!」

 

 女子が4人ないし5人で小グループを作る。もう旧グループはごちゃまぜだ。

 私は桂子ちゃん、恵美ちゃん、龍香ちゃんと同じグループに入る。

 

「いらっしゃいませー」

 

 30秒から1分くらいのタイムラグで、それぞれバラバラに座る。

 私たちは一番最初のグループで、中は既に小谷学園の制服がちらほら見える。というか、先生もいる。

 

「優子ちゃんはどれにするの?」

 

「えっと、中チーズバーガーとポテトの中セット」

 

「ふむふむ、じゃあ優子ちゃんはこれだけね」

 

 各自が財布からお金を出し合い、一人が代表して会計する。

 札を持ってテーブルに付く。他のグループもそれぞれ全くランダムの位置についた。

 

 しばらく待っていると、チーズバーガーの登場だ。

 幸い会計トラブルもなく、女子全員が食べ始めている。

 

「それでさ、優子ちゃん、明日の林間学校なんだけど」

 

「う、うん」

 

「登山の時、優子の体力が持つかわかんねえ。あたいたちも一応サブリーダーということになってるから少しだけ教えてくれねえか」

 

「……はいっ」

 

 通常、サブリーダーが必要になる機会は滅多にない。万一必要な場合でも、先生がその場で引き継ぎつつ、二人共同でリーダーの役割をすることになっている。

 登山の時、実行委員がすることは「誰かが道を外れていないかを見張ること」「気分が悪い人が居ないか見張ること」と言ったことが主になる。

 

 真ん中と最後尾に付くことが多く、先頭の先生と共同で見張ることになる。

 私は食べるのが遅いので、まずは二人に説明書を見ながら食べてもらう。

 

 チーズバーガーを食べたのは、女の子になって最初の日以来だった。

 やはり一口が遠い。ポテトもゆっくり食べる。

 私が食べ始めて数分後、食べながらマニュアルを読んでいた桂子ちゃんと恵美ちゃんが食べることに専念し始め、ほぼ同時に食べ終わった。

 

「……あー、食った食った」

 

 恵美ちゃん、男だった時の私より食ってた。さすがスポーツ選手。

 そして、他のグループの女子たちも食べ終わり、迷惑にならないように素早くハンバーガー屋を出る。

 

「よし、じゃあ駅に行こうか!」

 

「あ、私ここからだから!」

 

「あ、そうだよね。じゃあねーばいばーい」

 

 最寄り駅に向かうまでに一人が家に帰る。

 学校の最寄り駅からバス通学してる子、反対方向に通学する子などもあって、私の最寄り駅に到着し、降車した頃には桂子ちゃんと私の二人になった。

 

「なんか静かだね」

 

「あれだけ賑やかだったのにねー」

 

「明日、楽しみだよね」

 

「う、うん!」

 

「優子ちゃん、実行委員頑張ってね」

 

「……うん、頑張る」

 

 話が続かない。

 お互い沈黙しながら歩く。

 

「あ、私ここからだから」

 

「うん。さようなら」

 

「また明日」

 

 私は桂子ちゃんに、軽く会釈してそれぞれ分かれる。

 ここまで来ると家までは近い。鞄から財布を取り出し、財布にあるドアの鍵を取り出してドアを開け、家の中に入る。

 

「ただいまー」

 

「優子ーおかえりなさーい!」

 

 母さんが出迎えてくれる。

 

「明日の林間学校に向けて、服装の準備をしなさーい」

 

「はーい母さん!」

 

 私は制服からパジャマに着替えると林間学校へ向けての服装を考える。

 基本的に登山は登山の格好を考え、帽子などを入れる。

 ここはもう夏になってきたけど、林間学校は山ということで半ズボンではなく長ズボンを勧められた。

 女の子になって最初にもらったジーンズや白ズボン、更に体操着などを入れていく。

 行き帰りの2日は殆ど移動と宿なので、その時はスカートにしよう。あーそうか、初日の服は入れなくていいんだ。トップスはほぼ半袖でいいだろう。

 寒くなった時のために念のため長袖を一つ予備で用意する。

 更に下着、去年は使いまわしてたけど今年はそうも行かない。

 更に生理用品を入れていく、前回の2度目の生理の経験則から、林間学校中に生理になる可能性が五分五分だ。こちらはサブバッグの方に入れよう。

 

 なんか男の頃より荷物が多い気がするが気にしない。

 

 他には暇つぶし用のゲーム機と少女漫画、筆記用具とノート、本、歯ブラシと歯磨き粉、酔い止め痛み止めと言った各種薬類。そしてお菓子、これらをサブバッグに入れて、メインバッグの方にドライヤーを入れる。

 最後に一般のパンフレットと実行委員用のパンフレットだこちらもサブバッグに入れておこう。

 

 ちょっと持ってみる。

 ……うん、何とか持てる重さだ。土産を買ってしまうとまずいかもしれないがこれなら体力的にも大丈夫だろう。

 とにかく今日はゆっくり休むことにして、明日からは忙しくも楽しい4日間になることを祈ろう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。