永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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2027年12月9日 明日のこと

 スタッフさんによれば、これから晩餐会、そしてその後に行われる舞踏会、更に晩餐会で話したスピーチと同じ内容の講演を、ストックホルムの大学で行うことになっている。

 授賞式には午後2時に会場入りし、最後の講演が終わるのが午前0時近くになるという。

 

「優子ちゃん、体力持ちそう?」

 

「うーん、善処するわ」

 

 とにかく目眩がしそうなイベントの内容に、浩介くんもあたしを気遣ってくれる。

 今はなるべく体力の温存に向けて、頑張るしかなさそうね。

 何分、あたしたちにとっては、ある意味で「この後」が本番だもの。

 

 あたしたちは、一目散に、晩餐会が行われる「青の間」に移動する。

 ちなみにメニューは当日発表だとか。

 あたしは、トイレの場所を確認する。

 少しだけ外して、新しい服にしないといけないわね。

 

 

「え? 意外に狭いわね」

 

 あたしたちが青の間についたとき、あたしが思った第一印象は「意外と窮屈」という印象だった。

 青い床の上に、椅子と机がぎっしりと数えきれないほどある。

 

「Tomorrow, about 1300 people join.(明日は約1300人の人々が参加します)」

 

 うげえー、1300人も来るのね。

 確かに、あたしたち受賞者の関係者だけではなく、来賓さんの他にもスウェーデンや他の国の学生さんとかも招待されて来るって聞いてたし。

 

 それよりも気になったのは……

 

「永原先生、それにお義母さんたちまでどうしてこんな所に」

 

 青の間の中央には、集団がいて、その中には永原先生や、義両親、実両親の姿もあった。

 

「あはは、ほら、私たちも一応篠原さんたちの招待できているから。当日のリハーサルをしていたのよ」

 

「リハーサル!? 永原先生も?」

 

「ええ」

 

 永原先生によれば、そのリハーサルというのは、当日の動きの流れの確認や、招待客としての振る舞いの学習だという。

 そして永原先生によれば、晩餐会と舞踏会に出席する人たちは、授賞式にも出席するのということだそうだ。

 まあ、それはもちろん最初から分かっていたわ。

 晩餐会でのラストスピーチと、そして最後に行われる恒例の「蛙飛び」があるそうね。

 

「さ、永原先生、とにかく次へ進もうか」

 

「ええ」

 

 あたしたちは1つの集団に合流する。

 

「She's Makino Nagahara. She is over 500 years old. Oldest person.(彼女、永原マキノだよ。500歳越えている、人類最高齢の)」

 

「It's mystery.」

 

 永原先生は、他のノーベル賞学者にも知られている有名人らしく、物理学賞を受賞した学者たちに年齢のネタで噂話をされていた。

 もー、デリカシーないわね。

 

「Hey, I think that it is rude to speak LITTLE GIRL's age.(ねえ、「小さな女の子」の年齢のことを話すのって失礼だと思うんだけど)」

 

 永原先生が凄んだ表情でノーベル賞学者を睨み付ける。

 わざわざ「little girl」を強調するあたりが余計に威圧感を醸し出しているわね。

 それよりも、永原先生、ノーベル賞受賞者に一歩も引かないのも凄いわよね。

 

「Oh sorry sorry excuse me!」

 

 ノーベル賞の人たちが慌てて謝り始めた。

 確かに見た目だけなら永原先生たちはあたし以上に若く見える。

 それがより一層神秘的に感じるとはいえ、やはり本人がいる前で大っぴらに女性の年齢を話題にするのは感心しないわね。

 まあ幼く見えて実際にはあたしたちよりもずっとずっと年上なので、そういった部分で威圧感はあるわね。

 

「ふう、こんな複雑な英語なんて、使うの初めてだわ」

 

 永原先生も、疲れた顔をしている。

 今のは高校レベルの英語だけど、結構複雑な文法が使われている英語よね。

 

「永原先生、英語って?」

 

「ほとんど使ったことないわよ。たぶん今のも25年ぶりくらいかしら?」

 

 あー、そう言えば永原先生も海外に出たことなかったんだっけ?

 それを考えると、ほとんど使ったことないというのも納得だわ。

 

 あたしたちは、ノーベル財団の人についていく。

 上の階にあるこの部屋が、舞踏会が開かれる場所になっている。

 

 舞踏会も王族たちが参加するが、踊るのは自由意思だという。

 

「ふぁあー、何も変わってねえなー」

 

 蓬莱教授が心底だるそうにあくびをした。

 それを見て周囲はある意味で感心した目付きをしていた。

 あたしたちにとっては初めてでも、蓬莱教授にとっては2回目のこと、というのもあるだろう。

 

「よし、記念撮影だ」

 

 マスコミの人たちも集まっていて、あたしたちはそれぞれの来賓と共に、ここで撮影会をした。

 うーん、最後の方で撮影が行われるはずなんだけど。まあいいわ。

 

「ふう、ここで解散ですね」

 

 比良さんが「疲れた」という感じで話す。

 あたしもだけど、今日疲れていたら明日はもっと大変なのに、と思っちゃう。

 でもとにもかくにも、あたしたちは明日が全ての本番で、「ノーベルウィーク」の締め括りとして、ストックホルムやスウェーデンだけではなく、世界中がこの授賞式に着目しているのよね。

 

 あたしたちは、ノーベル財団のタクシーを使わせてもらい、ホテルに戻った。

 それにしても、ノーベル財団ってすごい財力だわ。あたしが言うのも難だけど。

 

 ホテルに戻ると、あたしたちにパンフレットが届いていた。

 中を見ると、授賞式当日の日程や、あたしたちの紹介のスウェーデン語の英訳もある。

 受賞者は、物理学賞、化学賞、そしてあたしたち生理学・医学賞、文学賞、経済学賞の順番で進む。

 平和賞はノルウェーのオスロで別個に授賞式がなされるため、これで終わり。

 ちなみに、平和賞だけノルウェーなのは、ノーベルの遺言のためだという。

 まあこのあたりは、当時の政治的な事情もあったものね。

 

「優子ちゃん、明日に向けて、よく休んでおけよ」

 

「うん、分かってるって」

 

 浩介くんに言われなくても、あたしは今夜はゆっくり休むことにしている。

 明日、あたしはノーベル賞のメダルと、そして賞金などの記念品を受けとることになっている。

 名実共に、明日からあたしは「ノーベル賞学者」という肩書きを得ることになる。

 あたしは、今回のノーベル賞が初めての学術的な賞になるわけで、他にも様々な賞を獲得している蓬莱教授や、他のノーベル賞学者たちと比べて、圧倒的に経験が不足しているのも事実だった。

 

 ホテルの人の夕食は、一層豪華なものだった。

 

「ジツハデスネ、イママデノメニューハスベテカコノバンサンカイノモノデス」

 

 そしてあたしたちが一番驚いたのは、今まで食べていたのが過去のノーベル賞晩餐会で振る舞われたメニューだったことだった。

 あたしたちの義両親と実両親は、最初の日に市庁舎の地下食堂でそれを食べて知っていたらしいけど。

 

「「「いただきます」」」

 

 あたしたちは、ある意味で「最後の晩餐」となった夕食を楽しむことになった。

 

「これも、過去の晩餐会で出たのよね?」

 

 お義母さんが食べながら疑問符を投げ掛けている。

 

「ええ、そうみたい」

 

 これからは、「過去の受賞者」として、授賞式や晩餐会に招待されるという。

 もちろん、あたしたちは来年以降参加するつもりはない。

 それはやっぱり仕事が忙しいからだ。

 

「しっかし、明日はどんな食事が出るのかね?」

 

「さあ? でも、この味なら期待できそうだわ」

 

 明日は国を代表する料理人たちが、腕によりをかけて作る。

 しかも、ホテルなどとは違い、無料で食べることができる。

 

「ふふ、明日はみんなどんな顔するかしら?」

 

 昨日は比較的厚着だったけど、それでも胸は目立っていた。

 だけど明日着る予定の服では、これまでよりももっと大きな胸が目立つことになる。

 

「あの会場狭いよなあ。うー、優子ちゃんすごい注目を浴びそうだぜ」

 

 浩介くんが、複雑な表情をする。

 他の男にエロい目で見られることに関して、浩介くんは独占欲から来る嫉妬と同時に、自慢の嫁が注目されることへの自尊心の強化という気持ちもある。

 特に明日は、あたしが子供っぽい格好になる。

 永原先生も、比良さんと余呉さんも、それぞれ子供向けのドレスでアピールをすることになっている。

 蓬莱カンパニーと、それに伴う「不老」について、永原先生たちには宣伝役になってもらうから。

 

「ふふ、若く幼いあたしたちを見て、当地の女性はどう思うかしら?」

 

「そりゃあ妬ましいだろうさあ。弱いくせに男にモテてるって」

 

 スウェーデンでは、女性まで徴兵の対象になっている。

 それによって、軍事訓練を受けさせられているということを鑑みれば、あたしのような極端に弱い女性は早々いないと考えられる。

 ふふ、そう考えると、あたしはこの国では物凄いモテる自信があるわ。少なくとも、「弱い女の子を守りたい」と思っている男性は、絶対にあたしに殺到するもの。

 風土的にモテないといっても、必ず一定数はそういう男性がいるはずで、そうした男性からの人気を、ほぼ独占できるもの。

 まあもちろん、浩介くんが一番だけどね。

 

「恵美ちゃんとのテニスを思い出すわね」

 

 小谷学園でのテニスの試合のことを、あたしは思い出した。

 あの時も、今や世界一の女性テニスプレイヤーとなった恵美ちゃんを、1ヶ月練習しただけの浩介くんが勝ってしまった。

 もちろん、女子にはない5セットだったというのや、浩介くんがかなり鍛えていたというのもあるけど、それでも男女の力の差を思い知るには十分すぎるエピソードだった。

 

「ああ、ましてや軍隊だろ?」

 

 ましてや極限状態の軍隊でのこと。

 軍隊の訓練だなんて否が応でも男女の差を見せつけられることになると思うけど、それでもやめない辺り、何か宗教的なイデオロギーでもあるのか、それともよっぽど軍隊の人手不足が切羽詰まっているのかのどっちかよね。

 

「そうよねえー」

 

「しかも調べたところ、男女で部屋まで同じだとか」

 

「「「ぶっ」」」

 

 黙ってあたしたちの話を聞いていた義両親まで、食べ物を噴き出してしまった。

 ちょっとちょっと、いくらなんでもそれおかしいわよね?

 

「どう考えてもいかがわしいこと起こるわよね?」

 

 男女で日々の生活同じ部屋って、着替えとかも含めてって……あたしたちみたいなラブラブ夫婦でもそんなことしないのに。

 

「軍隊の広報によれば、そういう事例はほとんどないらしい」

 

 どこから調べあげたのか、浩介くんが淡々とそう話す。

 

「絶対信用できないわよ」

 

 男の性欲というものの凄まじさを考えたら、そんなこと絶対にあり得ないと断言できる。

 それこそ組織ぐるみで揉み消しているか、そうでないならよっぽど女に魅力がないかのどっちかになるわね。

 レイプまでいかなくても、セクハラ程度いくらでもすると思うし、いくら「海外の女性は強くて反撃もする」といったところで、相手も訓練している兵士なら、本気の本気になった男に勝てるわけがない。

 

「ああ、俺もそう思う」

 

 浩介くんがしたり顔でそう話す。

 浩介くん自体、そう言った性欲が強いのは自覚があるらしいわね。

 

「浩介、あんまり優子ちゃんに負担かけないのよ」

 

 お義母さんが注意する。

 

「え? うん、まあ俺が喰われちゃうこともあるけどね」

 

「も、もうっ!!!」

 

 浩介くんのさりげない一言に、あたしも抗議する。

 確かに、そういう日もあるけどあってもそんなに多くない。

 大体多いのは夏場に水着になったり、一緒にお風呂に入ったりした時だったりする。

 

「あはは、ごめんなさいねー」

 

 お義母さんが申し訳程度に謝ってくる。

 ふと、ホテルの窓の外を見て見た。

 明日に向けて、ストックホルムの夜景が更に輝いていた。

 

 永原先生たちや母さんたち、蓬莱教授も、今頃それぞれ夕食を食べているわよね。

 皆どういう思いで明日を迎えるのかしら?

 食事が進むのに比例して、あたしの心臓も高鳴ってくる。

 今日はいなかったけど、明日はノーベル財団や過去の受賞者、そして王族の方々も見えられることになっている。

 あたしたちは、ノーベル賞といっても、学者が本業ではない、大学院を卒業したばかりの20代の男女でしかない。

 もちろん、世界一の資産家ファミリーという肩書きもあるけど、「お金より名誉」を地でいくような場所で、それは何の役にもたたない。

 もしかしたら、あたしたちが「世界一の資産家ファミリー」という称号を得てから、その称号がほとんど何の意味も持たない場所は、ここストックホルムが初めてかもしれないわね。

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

 全員でごちそうさまをする。

 あたしたちは食器を軽く片付けて、お風呂の準備に取りかかった。

 豪邸のお風呂に慣れすぎたというのもあるけど、海外のお風呂も初めてで、結局最後まで慣れそうにはなかった。

 

「ふう……」

 

 浴槽に備え付けられたカーテンを閉める。

 義両親と同じ部屋なためか、浩介くんがお風呂を覗いてくる、何てことはなかった。

 今の豪邸に引っ越す前は、ちょこちょこ浩介くんが「覗き」をして来たけど、今はすっかり止まってしまって、何だかちょっと寂しい感じもするのよね。

 何て言うか、複雑な乙女心そのものよね。

 

「まあ、あの部屋でのスケベ心が増えてたし、それでバランス取れていたかしら?」

 

 あたしたちの「秘密の部屋」の存在は、義両親も実両親も話題にしないけど、薄々感付いているとは思っている。

 あの部屋であたしは浩介くんにやられたい放題、セクハラされ放題になっている。

 あたし自身も最後は気絶してそのまま寝てしまい、目が覚めたら朝あの部屋にいたということも何度かある。

 

 授賞式を明日に控え、あたしはお風呂の中で最近の豪邸生活のことをよく思い出す。

 やっぱりあの家は居心地がいいのか、ここもスイートルームのはずなのに、あたしもちょっぴりホームシックな感じになっていた。

 

 まあ、明日が終わって、明後日の朝には、もう帰るから、逆に言えば後2日しかいないのよね。

 

 

「おやすみなさい」

 

「おやすみなさい」

 

 義両親の配慮もあって、あたしたちはこれまでとは違う部屋で2人っきりで寝ることになった。

 もちろん、かなり大きな声を出してしまえば聞こえてしまうとは思うけど、それでもそれなりに離れた部屋で、恐らく義両親なりの「配慮」があったんだと思う。

 

 でも、あたしは明日に絞ることを、浩介くんに伝えている。

 今日だって危険日だけど、明日が一番危ないし、帰国してからは、もっと頻度を増やすことにしている。

 

 

「ねえ優子ちゃん」

 

 眠れないのか、浩介くんが話しかけてきた。

 

「うん、何かしら?」

 

「明日、うまくいくかな?」

 

 浩介くんの口ぶりからは、やはり不安がにじみ出ている。

 

「あたしだって不安よ。何だかちょっと、場違いって感じだもの」

 

 あたしたちは他の受賞者たちよりもかなり若い。

 実際、生理学・医学賞では一番若い記録だった。

 もちろん、不老の業績を考えれば、それくらい当然だというのが恐らく客観的にも正しい意見だとは思う。

 ただそれでも、あたしたちは長く研究を続けたわけではなく、蓬莱教授という土台があってこその研究だった。

 

「よく考えてみればさ。蓬莱さんがあの時、俺と優子ちゃんが見つけた発見を『自分が発見した』って言うこともできたわけじゃん。そしたら多分、蓬莱教授が貢献度1分の1で独占できたよな」

 

「うん、あたしもそう思う」

 

 蓬莱教授は、間違いなく「助手や院生の手柄を横取りした」と書かれることを恐れていたために、あるいは、「弟子に一部の功績を譲っても自分のノーベル賞は揺るがない」という確固たる自信もあったから、ああいう行動に出たんだと思う。

 蓬莱教授の異常とも言える警戒心と、それに一見相反する余裕の現れが、あたしたちをノーベル賞に導いたんだと、今になって思えてくる。

 

「ねえ、優子ちゃん。俺たち、林間学校の後に水族館でデートした時にさ、蓬莱教授と会ったよな」

 

 忘れもしない、蓬莱教授が不老研究について語った思い出の水族館だ。

 あたしたちがノーベル賞を取ったことで、今では「ベニクラゲ」のコーナーに、その時を想像した絵画が掲げられ、あたしと浩介くん、蓬莱教授の始まりの地として売り出している。

 

「ええ。あの時の予言、今になって思うわ。偉大さのスケールがあまりにも違いすぎるって」

 

 本当の始まりは、小谷学園であたしと永原先生を助けた時だけど、実際の始まりは、あの時だとあたしは思う。

 

「俺も」

 

 あの水族館で、蓬莱教授はあたしに向けて、「君は将来、佐和山大学で偉大なことを成し遂げるだろう」という言葉を投げ掛けてきた。

 最初はせいぜい、「蓬莱の薬の完成をアシストした」ことくらいだと思っていたし、その時点で「予言は成就した」と思っていた。

 でもそうじゃなかった。あれは単なる入り口にすぎなかった。

 蓬莱カンパニーの経営者、大株主として世界最大級の資産家になり、その上あたしの業績は、この短時間で「ノーベル賞」になるほどのものだった。

 

「蓬莱教授って、凄い人よね」

 

「当たり前だ」

 

 蓬莱教授は、ノーベル賞学者たちの中にあっても、一際天才性が強かった。

 この手の人は大抵は「自分が天才とは思わない」と言う。でも蓬莱教授は違う。

 蓬莱教授はあまりにも客観的に物事を見すぎていた。

 確かに、普通に考えれば、こんなすさまじい研究を発表して、世界中を変えてしまうのは才能以外の何者でもないとあたしも思う。

 

「あたしたち、そんな蓬莱教授と共に、受賞するのよね」

 

「そうだよなあ」

 

 あたしと浩介くんの功績は4分の1なので、2人合わせて蓬莱教授と同じ功績ということになる。

 まあ実際、ノーベル賞のシステム上こうなっているだけで、蓬莱教授半分にあたしたちが4分の1ずつなっておこがましいとは思うけど。

 

「蓬莱教授がいてよかったわ。これがもし、蓬莱教授が急死してあたしたちで2分の1とかなってたら目も当てられなかったわよ」

 

「蓬莱教授に限って死にはせんよ」

 

 浩介くんが、ふふっと笑いながら言う。

 

「そうね。授賞式が終わったら、今度は子作りして、幸せな家庭を築きたいわね」

 

「だな」

 

 普通、ファンタジーなどの世界なら、こういうような会話を「死亡フラグ」と呼んで、悲劇を演出するお約束になっている。

 いわゆる、「この戦いが終わったら結婚する」とか、「引退する」とか、「家庭を築く」、あるいは「ここは俺に任せてお前たちは先に行け」何て言うのが典型例だ。

 でも、あたしたちの世界はそんな荒れ果てた世界ではない。

 むしろ将来の日本の見通しはとても明るくなっている。

 言うまでもなく、それはあたしたちのお陰で、そういう意味では、あたしたちがノーベル賞になったのは、正しいことだったのかもしれないわね。

 

 それ以降、あたしたちは何もしゃべることなく、緊張して眠れない状況に耐え、遂に眠りについた。

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