永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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2027年12月10日 少女に歯向かう者

「Hey! Hey! Are you Dr. Yuko Shinohara?(ねえねえ、あなたが篠原優子博士?)」

 

 あたしが、弘子さんを見つけたのでそっちに行こうと思った矢先、今度は別のおばさんがあたしに話しかけてきた。

 ともあれ、記者さんの取材ならまあ受けて置くかしら?

 

「Yes, I am Yuko Shinohara.」

 

「I am feminist.(私はフェミニストよ)」

 

 あちゃー、絡まれちゃったわ。

 また、あの時みたいになるかしら?

 

「Our campaign was deadly blow! You are to blame! We hate and curse you!(私たちの運動は壊滅的な打撃を受けた! あんたのせいだ! 私たちはあんたを憎む! そして呪ってやる!)」

 

  ガヤガヤ……What's happened?

 

 とんでもない捨てぜりふと、この場にふさわしくない暴言に、周囲も騒然となる。

 見ると、やはり記者の腕章をつけているので、そういう関係の人らしいわね。うーん、どうしてこう攻撃的なのかしらね?

 あたしは、くまさんのぬいぐるみを見せつけるように胸元で抱き締めると、息を吸って、思いっきり高く、男性が喜びそうな最大限の演技を込める。

 

「Help meee! She is bullying me!(助けてー! この人、あたしをいじめるのー!)」

 

 すると、近くにいた男性が、すぐに立ち上がってあたしとの間に立つ。

 もちろん、この晩餐会に来るくらいの人だし、みんな教養のある男性だけど、そうは言ってももちろん男なので、あたしの演技には気付けない。

 男たちの本能が、助けを求めている女を守らなくてはいけないという意思表示に変わる。

 

「Why do you rely on men for help!?(どうしてそうやって男に頼るのよ!?)」

 

 おばさんが、殺意に満ちた眼差しをあたしに向けてくる。

 

「Because I am a girl.(だってあたし、女の子だもん)」

 

 あたしの高くてかわいらしさを強調した声は、本能的に男の脳を刺激するらしい。

 いつの間にか、あたしを守る集団は大きくなっていて、その中には浩介くんも当然含まれていた。

 

「You are shame of female!(あんたは女の恥だ!)」

 

 どうやら、女の子が男の子に守ってもらうのは恥ずかしいことらしいわね。

 あたしには理解できない感情だわ。

 

「I think so, you lose me in every way.(あたしに言わせれば、あなたはあたしに何一つ勝ててないわよ)」

 

 あたしが口元をやや上げて、不適な笑みを浮かべて挑発すると、その女の顔がみるみるうちに赤くなっていく。

 ふふ、今必死にあたしに勝ってるところを探しているのね。

 よしここは──

 

「I am Nobel prize laureate, I am world's richest woman, I married 18 years old, and...I am sexier than you.(あたしはノーベル賞を取ったし、あたしは世界一の資産を持つ女性だし、あたしは18歳で結婚したし……あなたよりも魅力的だわ)」

 

 最後の「I am sexier than you.」の部分は、ぬいぐるみさんをどかして、ぴんと胸を強調させながら言う。

 

 すると、周囲の男性たちからも笑いの声が漏れ、おばさんの顔は真っ赤になっている。

 

「Why do you play the coquette!? You have many strong!(何であんたは媚びるのよ! あなたは多くの強さを持っているのに!)」

 

「Because I am a girl.(そりゃあ、あたしが女の子だからよ)」

 

  パチパチパチパチパチ

 

 あたしが即答で断言すると、周囲の男性たちが拍手喝采をあたしに浴びせてくれた。

 ほら見なさい、ノーベル生理学・医学賞のあたしが言うまでもなく、どれだけ文化で覆ったって生物学的な本能には勝てないのよ。

 結局男って言うのはこういう女の子が好きなのよ。

 

「You are very miserable. Why do you hate woman who is loved man?(あなたはとても惨めだわ。どうして男から好かれる女が嫌いなのかしら?)」

 

「You are...you're...」

 

 あたしが挑発的な笑みを浮かべながら質問をすると、おばさんがはあはあし始めて、言葉に詰まる。

 よし、ここは止めを刺そうかしら?

 

「Are you a lesbian?(あなたってレズかしら?)」

 

 いつの日か、桂子ちゃんが男好きな女の子を嫌う女性、まだ仲が悪かった時の恵美ちゃんと喧嘩した時に使った言葉が、あたしに受け継がれ、そしてこうしてまた使われた。

 その言葉を聞いたとたん、おばさんの赤かった顔がますます赤くなっていく。

 

「Why!? Why do you think I am lesbian!?(どうして!? どうして私がレズビアンだなんて言えるのよ!)」

 

 そして案の定、必死に否定された。

 うーん、「Yes」って答えてくれたほうがまだ分かり合えると思うんだけどね。

 

「Because, I think that you hate men.(だって、あなた男嫌いじゃないの)」

 

 少なくとも、あたしにはそうにしか見えないわ。

 

「No! I don't hate men! I like men who acknowledge strong me! He acknowledges no coquette woman!(違う! 私は男が嫌いじゃない! 強い私を認めてくれる、媚びない女を認めてくれる彼が!)」

 

 またこれだわ。随分と虫のいい話ね。

 要するに努力もしないで自分に都合のいい男を探しているだけじゃないの。

 

「I understand you want great man in spite of effort. You think only of your own convenient. This is foolery.(あなたが努力もせずにいい男が欲しいと思っていることは分かったわ。でもそれって、自分の都合しか考えてないわね。とても愚かなことだわ)」

 

「No! No! It's misunderstand!(違う! 違う! 誤解だ!)」

 

 おばさんは、必死にあたしの言っていることを否定しようとする。

 ふふ、もっと追撃してあげなきゃいけないわね。

 

「I am Nobel prize laureate. I am world's richest woman. I am no aging girl. I am sexy and cute girl. Still I must make many effort. I think how behave my husband glad (あたしはノーベル賞が取れて世界一金持ちの女で、とってもかわいくてセクシーな女の子よ。それでも、多くの努力が必要よ。どうすれば旦那が喜んでくれるか? あたしは考えているわ) 」

 

「...」

 

「If I behaved like you, I cannot marry forever. So, you can't marry forever too. You are more stupid than me. And you are not richer than me. You cannot turn on the charm. You are loser! HAHAHA!(もし、あたしがあなたみたいな行動を取ったら、一生結婚できないわ。つまり、あなたも一生結婚できないと言うことよ。あなたはあたしよりもバカだし、お金も持ってないし、魅力的に振る舞うこともできないものね。あなたって、負け組だわ。あはははは)」

 

  ワハハハハ

 

 あたしが笑うと、あたしを守ってた男たちも笑ってくれる。おばさんに味方する人は、誰もいない。

 

「...」

 

 あたしはぬいぐるみさんを持ったままにっこりと笑う。

 これは、「優子」にはふさわしくないのかもしれない。

 でも、あたしにも、やっぱり女の子としてのプライドがある。

 女の子として、男から好かれたいという本能を曲げることはできない。

 だから、それを非難する人は、叩きのめしたくてたまらなくなってしまう。

 これはもう、しょうがないことなのかもしれないわね。

 

「Nobody help you! If you will not change, Horai medicine is meaningless for you.(誰もあなたを助けてくれないわ。あなたが変わらないなら、蓬莱の薬も意味をなさないわね)」

 

 あたしがぷくくと笑いながら更に挑発を強める。

 それに比例するように、おばさんの顔が赤くなっていく。

 

「You looks childish! You'll lose last! I will win! I behaving adult!(あなたは幼稚だわ! そんなあんたは最後には負けるのよ! そして大人の振る舞いをする私が勝つんだ!)」

 

 もはや、晩餐会の会場のほとんどが、あたしたちの口論に注目している。

 

「What a base? You looks old for your age. I think about 40 years old.(根拠は何かしら? あなた、実年齢より更けて見えるわ。そう、40歳くらいかしら?)」

 

「No! I was borned 2002! You are very rude!(違うわよ! 私、2002年生まれよ! 失礼ね!)」

 

 ふふ、引っ掛かったわね。

 この勝負、あたしの勝ちだわ。

 

「Why rude? You hate childish and you behaving adult. So you are praised. You should be glad.(どうして失礼なのかしら? 子供っぽいのが嫌いで大人っぽく振る舞うんでしょ? あなた誉められてるのよ。喜ぶべきだわ)」

 

 それにしても、このおばさんもあたしより年下とは驚いたわ。

 どんな人生送ってきたらこんな年齢でここまでこじれるのかしら?

 

「No! No...Nooooo! No no no no no no no!!!(違う! 違う! 違うのよお! いやああああああ!!!)」

 

 あたしより年下のおばさんが、激しく狼狽している。

 それでも、浩介くんを含めたあたしの親衛隊は、守りを解かない。

 彼女も分かっているんだろう。直接殴りあえば勝てても、男に守られてて手が出せないことに。

 

「Help me! She is bullying me!(助けて! この人、私をいじめてくる!)」

 

 さっきあたしが言った言葉を、恥も外聞もなく繰り返す。

 しかし、会場は沈黙するだけで、誰も助けには来なかった。

 それを見て、会場からは男性を中心として、笑い声が漏れていた。

 

 誰も、助けに入る人はいなかった。

 あたしは更に、追い打ちをかける。

 

「This is the difference between you and me. You are lonely and can not depend on anyone.(これがあなたとあたしの差よ。あなたは孤独で誰に頼ることも出来ないの)」

 

 あたしは、にっこりと「優子」の笑顔で、えげつない言葉を浴びせる。

 

「No! No! Nooo! No no no no no no no!!!(違う! 違う! 違うの! そんなわけ、無い! 無い! 無い! いやああ!!!)」

 

 明らかに、動揺が高まっている。

 

「I am honest. I can help men. However you’re feminist who self-assert themselves are abandoned by men.(あたしは素直だから、こうして男性に頼れるの。でも、あなたはフェミニストで自己主張ばかりするから、男性から見捨てられるのよ)」

 

「No! Finally I will win!(違う! 最後に、私が勝つのよ!)」

 

 本当に、往生際が悪いわね。

 よしここは――

 

「When is finally? Probably I am still alive 100 years later. Probably you are not still alive 100 years later.(最後っていつかしら? あたしはおそらく100年後も生きていると思うけど、あなたは多分100年後は生きていないわよね?)」

 

「If I’ll be dead, feminism is immortal.(私が死んだとしても、フェミニズムは絶対に無くならないわ)」

 

 ふふ、そろそろ潮時かしら?

 いい加減あたしたちの言い争いにも飽きてきただろうし。

 

「I am perfect trans sexual syndrome. I’m experiencing both sexes.I was understood. Feminism is the most stupid most harmful and most wrong thought IN THE WORLD!(私はTS病なのよ。両方の性別を経験しているわ。それで分かったことがあるの。フェミニズムは「世界で最も」愚かで、有害で、間違った思想だってことをね!)」

 

「I hate you!(あんたが憎いー!)」

 

 随分と直球的ね。

 

「You are pathetic. You can not reply anything, you can only abuse.(哀れだわ。何も反論できずに、罵倒することしか出来ないものね)」

 

 あたしの指摘に、おばさんは何も具体的に言い返せない。ただ狼狽し、たまに中身のない暴言しか浴びせてこない。

 いい加減に周囲の注目も大きくなってきたし、あたしとしてもこれ以上楽しい晩餐会を滅茶苦茶にされたくないので、退場を促すことにした。

 

「By the way, everyone is paying attention us. Go out before it gets more trouble.(ところで、皆さんあたしたちに釘付けになってますよ。これ以上迷惑になる前に出て行ってくれるかしら)」

 

「っ……」

 

 あたしのその言葉で、フェミニストのマスコミおばさんは涙目になりながら晩餐会から退場していく。

 

「Booo!!! Booo!!!」

 

 他の参加者たちは、ノーベル賞のあたしに喧嘩を売ったということで、容赦なくブーイングを浴びせていた。

 

「やーいやーい! 『40歳の』行き遅れおばさーん!」

 

「半端者ー! 二度と来るな女の敵! あんたみたいなのが女の敵は女なのよ!」

 

 とりわけ、桂子ちゃんと永原先生は、日本語で野次を浴びせていた。

 通訳さんがこれらの罵詈雑言を通訳していないため、日本人以外の参加者には、何を言っているのかは理解できないのが不幸中の幸いだった。

 桂子ちゃんも永原先生も、普段お淑やかな女の子らしい女の子って感じだけど、さすがにこの時はかなり怒っていたみたいね。

 まあ、あたしに言いがかりつけてきたんだから当たり前かしら?

 

「先生、桂子、いくら何でも言いすぎだぞ!」

 

 いたたまれなくなったのか、恵美ちゃんが永原先生と桂子ちゃんを止めていた。

 それにしても、「女の敵は女」って、言われてみればその通りかもしれないわね。

 ブーイングをしていないのは、国王陛下と王族の方々くらいだった。

 

「ふう、ひどい目に遭ったわ……Thank you everyone.」

 

 あたしも、疲れちゃったわ。そもそも、こんなに英語で口論したことも、初めてのことで、我ながらよくうまく行ったものだと感心する。

 ふう、火事場の馬鹿力って怖いわね。

 あたしは、守ってくれた男の人たちにお礼を言って、何事もなかったかのように晩餐会を再開することにした。

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