永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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2027年12月10日 ノーベル・レクチャー 浩介くんの場合

「Dr. Kousuke Shinohara. 」

 

 パチパチパチパチパチ

 

 国王陛下から名前を呼ばれた浩介くんが、紙を持ちながら緊張した面持ちで壇上へと進む。

 浩介くんは、あたしや蓬莱教授と比べるとノーベル賞の注目度は薄い。

 それでも、長期的な観点で見れば、蓬莱カンパニー社長として、常務のあたしに比べて更に多くの人から注目を浴びることは間違いないのよね。

 

 浩介くんが、蓬莱教授や他の受賞者さんと同じように紙を広げ、観衆に向かって一礼する。

 

「Good afternoon everyone. I am Kousuke Shinohara. First, thanks to Nobel foundation. Thanks to my instructor Dr. Horai. And always cure me, my wife Yuko Shinohara. I love her.(こんばんわ皆さん。私が篠原浩介です。まずノーベル財団の方々、指導教官の蓬莱さん、そしていつも俺を癒してくれる妻の優子ちゃんに感謝します。優子ちゃんを愛してます)」

 

「キャー!!!」

 

  わははははは

 

「あ……」

 

 あたしは、浩介くんからいきなりの愛の告白に、いきなり大声をあげてしまった。

 浩介くんも含めて、全員の痛い視線があたしに注がれる。

 会場からは、やらかしてしまったあたしに対する笑いの声で包まれてしまう。

 

「I am very sorry.」

 

 あうー、浩介くんからエッチなセクハラされた時より恥ずかしいわ。

 多分、浩介くんはそこまで重い感じで入れたんじゃないとは思うけど。

 

「Ah I'll continue.(あー続けるぞ)」

 

 浩介くんが群衆にそう呼び掛けると、ざわつきはピタッと収まった。

 

「Today's speech is the course with my wife.(今日のスピーチは、妻との歩みについて話したいと思います)」

 

 うー、やっぱりあたしとの歩みについてなのね。

 

「10 years ago my wife was still a boy. My wife's the first first name is Yuichi. He was a rowdy short-tempered. He often resorted to violent measures. I was one of the most frequent victim (10年前、妻はまだ男性でした。妻の最初の名前は「優一」といいました。優一は乱暴で短気でした。優一はよく乱暴な手段に訴えていました。私は最も大きな被害者の一人でした)」

 

 浩介くんが、遠い遠い昔のことを話す。

 忘れもしない、あたしの原罪の話だった。

 あの頃のことがあったから、今があるんだと思う。

 

「One day...ah...May 2017 Yuichi Ishiyama became girl. She changed name to Yuko. She exert to become feminine girl. She hates his personality. A week later she returned our school as a girl.(ある日、あー2017年5月、石山優一は女の子になった。彼女は名前を優子に変えて、一生懸命に女の子らしい女の子になるために頑張った。優子ちゃんは、優一の性格が嫌いだった。1週間後に、優子ちゃんは女子として学校に戻ってきた)」

 

 うん、あのカリキュラムは、今は更に改良されていて、女の子らしさを身に付けやすいようになっている。

 あたしのとっては、あのときのカリキュラムの日々は、人生の中で最も濃い日々だったと思う。

 

「But we did not understood her. Boys bullied her. I was the principal offender. One day she could not stand our bully. She cried and I invited criticism from girls. I did not notice her who became a crybaby and weak.(しかし、俺たちは優子ちゃんを理解できなかった。男子たちは優子ちゃんをいじめ始め、俺はその主導者だった。ある日、優子ちゃんはとうとういじめに耐えられなくなって泣き出してしまった。俺はさんざんに女子から非難された。俺は、優子ちゃんが泣き虫で弱くなったことに気付かなかった)」

 

 女の子になってからは、楽しく幸せな日々が殆どだけど、唯一辛い日々が続いたとすれば、復学当初の日々だったと思う。

 でも、今はあの日々も必要だったと思う。何分、既に10年前のことで、今となっては浩介くんがあたしをいじめていたという事実さえ、知識の中に押し込まれつつある。

 

「I was noticed episode is school event a ball game tournament. In June, Yuko played dodge ball. She was thrown a ball. She cried by pain. I saw it. I could not stand a sense of guilt. But she forgave me.(俺がその事に気づかされたのは、学校行事、6月の球技大会でのことだった。優子ちゃんはドッジボールをしていて、ボールを当てられた。その時に優子ちゃんは痛みに耐えきれずに泣いてしまった。俺はそれを見て、いじめていた罪悪感に堪えられなくなった。でも、優子ちゃんは許してくれた)」

 

 球技大会は、あたしと浩介くんの関係を変えた一番の出来事だった。

 それは、浩介くんがあたしを好きになった瞬間でもあったから。

 

 ボールをぶつけてくれたその子も、今となっては感謝の対象ですらあるわよね。

 あ、でも、幸子さんはもっと感謝しなきゃいけないかしら?

 

「I loved since then. Situation vicissitude was July school event. It was a camping school. I and she were choosen an executive committee member. Last day she was attempted violence. I helped to defend her. She was frightened and crying me. Then she loved me. (俺はその時、優子ちゃんが好きになった。事態が変わったのは7月の林間学校でのことだった。俺と優子ちゃんは林間学校実行委員に選ばれた。最後の日、優子ちゃんが乱暴されかけた。俺は優子ちゃんを助けて守った。優子ちゃんは恐怖のあまり、俺に泣きついてきた。その時に、優子ちゃんは俺に恋をしてくれた)」

 

 今思い出しても、はっきりと覚えている林間学校のイベント。

 あたしは、浩介くんに恋をして、それ以来、今もずっと覚めない恋を続けている。

 浩介くんのスピーチに、観衆もとても強く聞き入っている。

 

「She had still problem. It is 2 short months she became a girl until she loved me. She lingerd on man's instinct. But we overcame it little by little. We overcame the past.(優子ちゃんには問題がまだ残っていた。優子ちゃんが女の子になってから、恋をするまでたった2ヶ月だった。優子ちゃんにはまだ男の本能が残っていたんだ。でも、俺たちは少しずつそれを克服していった。俺たちは過去を乗り越えた)」

 

 もしかしたら、あの時の辛さはいじめられていた時以上だったかもしれない。

 女の子として好きになっても、あたしたちはすぐには触れ合えなかった。

 それでも、浩介くんが我慢をしてくれたのはとても嬉しかった。

 もしかしたら、このときのエピソードがあったからこそ、あたしは浩介くんにセクハラされても、ますます恋が深まるようになったんだと思う。

 

 あのときは辛くても、今思い返せば貴重な経験だったというのは往々にしてあるけど、これは典型的よね。

 

「School cultural festival in October I said "I love you" to her. Next year's festival I proposed marriage to her in all school students and teachers presence. Everyone blessed us. (10月の文化祭で、俺は告白した。そして翌年の文化祭で俺は学校の全校生徒と先生の前でプロポーズをした。みんな祝福してくれた)」

 

 浩介くんのエピソードで、またあたしに注目の視線が移る。

 全校の前でプロポーズされたあのエピソードは、もちろんあたしにとって最高の思い出として残っている。

 でも最近は、あまり思い出すことも少なくなったイベントでもあった。

 

「But we had still a problem. She is no aging and I was aging then. Life span problem was very serious. Dr. Horai invited to join his research before we entered Sawayama university. It produced very good results. I really thanks to him. (しかし、俺たちにはまだ問題が残っていた。彼女は不老で、俺はそうじゃなかった。寿命の問題はとても重大だった。蓬莱さんが俺たちを佐和山大学に入る前から研究に勧誘してくれた。それはとてもいい結果をもたらした。蓬莱さんには本当に感謝している)」

 

 浩介くんが、蓬莱教授が行った研究の勧誘について感謝の言葉をのべている。

 そしてもちろん、それはあたしも同感なことだった。

 

「Horai medicine is very suddenly change to social. I had a hard time to negotiation government.(蓬莱の薬は社会にとても急激な変化をもたらす。政府との交渉も大変だった)」

 

 政府との交渉では、あたしたちは実際に総理大臣を含む閣僚をも召集した会合を何度も行った。

 今思えば、あたしたちが日本の中枢に一番近かったのはあの時かもしれないわね。

 

「I was spending no rest life until now. But, today I consider myself the luckiest man on the face of the earth. (私は、休まることのない人生を、今まで歩んできました。しかし、今日、私は地球上で最も幸せな男だと思っています)」

 

 あたしは、思わず泣き出しそうになるのをぐっとこらえた。

 浩介くんが、自分のことを「地球上で一番幸せな男」だと言った。

 

「I have many happy. My family is the richest family. I have a lot of money. And my wife is very cute sexy girl and very good housekeeping. What is still good I won the world's most honorable prize. (俺には多くの幸せがある。俺たち篠原家は世界一裕福な一家になった。俺は多くのお金を持っている。そして、かわいくてエロくて、おまけに家事が上手な妻もいる。更にいいことに、俺は世界一名誉ある賞にも輝いた)」

 

 浩介くんが、今自分が世界一の幸せ者だと言っている。

 浩介くんには、お金も力も名誉も家族もある。

 あたしだって、浩介くんが言うように「最高の良物件」だと思う。

 でもあたしは、満ち足りつつある浩介くんと比べて、まだ何かを追っていた。

 

「Maybe, a man or woman says "I am luckier than you" to me. If the person exist, I want to say "How your money ? How your family ? How your honour ? How your mind ?" to he or she.(もしかしたら、ある男性もしくは女性は、『自分の方があなたより幸せだ』と言う人もいるかもしれない。もし、そんな人がいるなら私はその人に言いたい、『あなたのお金は? 家族は? 名誉は? 心は?』とね)」

 

 浩介くんは自信満々に答える。

 周囲の空気は、「そりゃあそうだろうなあ」という感じがひしひしと伝わってくる。

 元々、「私はこの世で最も幸せな男です」というのは、難病に犯されて引退を余儀なくされ、間もなく世を去った野球選手が、自分に対して「かわいそうだ」「突然病気になって野球ができなくなりとても不幸だ」と哀れんだファンに向けて引退試合で言ったセリフだったという。

 もう100年は昔のそのスピーチを、今の浩介くんが使うのはあまりにも歴史的な皮肉だった。

 同じセリフでも、立場や置かれている状況が違うだけで、こうも印象が変わるのよね。

 

「Most rich most warm-hearted family and most honorable...There are not always connected happy. But what do you think if you come there all event together? You must think I am the luckiest man.(最も裕福であること、最も暖かい家族がいることそして最大の名誉を持つこと……これらは確かにいつも幸福と結び付くとは限りません。しかし、もしあなたにこれらの全てが与えられたらどうでしょう? あなたは必ずや、自分こそが世界一の幸福を味わっていると思うことでしょう)」

 

 浩介くんの言っていることは、完全に正論だった。

 あたしが受け入れにくいのは、どう考えてもあたしがおかしいからに他ならない。

 

「My regular occasion is a businessman. So I cannot research like Dr. Horai. But I am cartain that our business...Horai company's business is the most important in the world. My business is the most people to bring happy in the world. I think it is a natural result to become the luckiest man in the world.(私の本業は実業家です。ですから、私は蓬莱さんのような研究はできません。ですが、我々のビジネス……蓬莱カンパニーののビジネスは世界で最も重要で、世界で最も多くの人に幸福をもたらします。私は思うんです。私が世界で最も幸福な男になったのは、当然の成り行きなのではないかとね)」

 

 浩介くんのその言葉に、今まで「自慢話」だと思って冷めた視線を送っていた人々の顔が変わる。

 世界一人々に幸福をもたらすであろう蓬莱カンパニーの社長である浩介くんが世界一幸福な人になれたのは、ある意味では当然かもしれないという話が出てきた。

 あたしも、「言われてみれば確かにその通りかもしれない」と思う。

 

「I will continue my business. Destroyed counterinfluence. Our future outlook is favorable. Human is going to make a fresh start.(私はビジネスを続けます。反対勢力はいなくなりました。我々の未来は明るいのです。人類は、新しいスタートを切るでしょう)」

 

 浩介くんが、未来に言及する。

 そう、この研究は、これからの未来が大きく関わってくると思うから。

 

「My speech is over. Thank you for your kind attention.」

 

  パチパチパチパチパチ!!!

 

 そして、締めの言葉を言って、浩介くんの演説が終わった。

 浩介くんはこっちに向き直ると、とても疲れた顔をしてぐったりと椅子に座ってしまった。

 あれだけ大勢の前で、日本人の拙い英語で話さなきゃいけないのは、心理的な負担はとても大きいわよね。

 うーん、あたしも「I cannot speak English.」で逃げちゃった方がよかったかしら? 最初恥ずかしいだけだっただろうし。




このあたりの話は一番書くのに苦労していた部分です。
そして英語の出来もよくないという(笑)

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