永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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2027年12月10日 ノーベル・レクチャー 優子の場合 後編

「Why don't girl play the coquette men? I am very very weak physical. When I was high school student I was often cried by other student in physical education. I must play many handicaps. But students naver hated me. Rather I was pitied, everyone kind to me. (どうして女の子は男に媚びてはいけないんでしょうか? あたしは、とてもとても体が弱いです。高校生の時は、体育の授業でよく泣かされていました。競技するには、数多くのハンデが必要になるほどです。でも、誰もあたしのことをそれで嫌いにはなりませんでした。むしろ、あたしは同情されました。みんなあたしに、優しくしてくれました)」

 

 小谷学園のテーブルが、少しだけ動く。

 そう、あたしは体育の授業で何度も弱い所を見せた。

 浩介くんのスピーチにもあったように、球技大会で泣かされたのが、そもそものきっかけにもなった。

 もちろん、あたしに優しくしてくれたのも、最初のいじめがあったからかもしれないけれど。

 

「My husband reverse me. He is very strong physical. I was always defended by him. I don't consider it is shameful. Because I am a very weak girl. It is natural that husband defend me. So I must effort to be loved him. It is natural that I set his taste by myself.(あたしの旦那はあたしと正反対に、とても力の強い人です。あたしは、いつも彼に守ってもらっています。あたしはそれを恥ずかしいと思ったことは一度もありません。何故なら、あたしはか弱い女の子で、旦那があたしを守るのが自然だからです。だから、あたしは彼に好かれるように努力しなければいけないんです。彼の好みに合わせるのは自然のなり行きです)」

 

 あたしのこの態度は、桂子ちゃんや小谷学園の女子たちには理解されるし、恵美ちゃんでさえも「弱い女の子なら仕方ない」という態度だけど、現地の学生たちはまだ納得しきれていないらしい。

 あくまでも、女子も強くなくてはいけないという強固な価値観がある。もしそうなら、ノーベル賞を取ったあたしは、この国ではは野垂れ死んでしまう。

 それは恐らく、この国の徴兵制と無関係ではないように思えた。

 この次の節は、本当に言っていいのか迷ったけど、結果的に削らないでおいた。

 

「If a military conscriptions me, I must be a good-for-nothings. But I can birth. I can glad men. I know men's taste. I cannot understand that why women conscription. I think that Sweden is not corner so crisis.(もし軍隊があたしを兵士に徴兵したら、あたしは間違いなく『何の役にも立たない』と言われるでしょう。しかし、あたしは子供を作れます。男を喜ばせることができます。男の好みも知っています。どうして女性は徴兵されなければいけないんでしょうか? あたしには理解できません。あたしには、スウェーデンはそこまで追い込まれているようには見えないのですが)」

 

 現地の学生のテーブルから、少し大きめのどよめき声が聞こえた。

 それもそうだ。よそ者のあたしがこんなことを言うのは、国際的な常識から言えばあまりにも失礼な行動だもの。

 それでも、海外でいまだに蔓延している男女平等という幻想を打ち砕くには、もうこれしかない。

 あたしたちの経験や教訓が何一つ生かされず、一時的なものにとどまっている現状は、そろそろ終わりにしないといけないと思っている。

 だからこそ、あたしがノーベル賞になった今は、千載一遇のチャンスだわ。

 

「It is absolutely impossible to realization equality man and woman. Yes, if the sun were to rise from the west, if the Ptolemaic system is true, if crows become white, if perfect trans sexual syndrome patient is dead of senility,if sarin is harmless, if the world's heaven and earth is reversed, that is absolutely impossible. (男女平等は、絶対に不可能です。ええ、例え太陽が西から昇っても、天動説が正しかったとしても、カラスが白くなっても、TS病患者が老衰で死んでも、サリンが無害だったとしても、天と地が逆さまになっても、絶対に不可能なのです)」

 

 あたしの演説に、熱がこもる。

 あり得ない事象を次々に挙げ、不可能だということを強調に強調を重ねる。男女両方の性別を経験したからこそ、あたしにはこのことが言える。

 ノーベル賞研究の過程で得られたものではなく、多くのTS病患者が得られた経験が、あたしのスピーチの中心になっていた。

 

「I have a motto. "I may cry. I may grow weak. I may that I am not cool. Because I am already girl."(あたしにはモットーがあります、『泣いてもいい、弱くてもいい、カッコ悪くたっていい。だってあたしはもう、女の子なんだから』)」

 

 あたしが、女の子として生きている中で、一番の心の支えになった言葉を話す。

 ありのままの女の子らしさを、あたしはこれからも追求していく。

 どよめいていた学生たちのテーブルは、まだ動揺の表情を色濃く残しながらも、あたしの話に耳を傾けてもらった。

 

「I often rely on men for help. For example, I rely on my husband to carry heavy thing. I see fall for strong him so easy.(あたしはよく、男性に助けを求めます。例えば、重たいものを、旦那に運んでもらいます。あたしは、力持ちな浩介くんに簡単に惚れてしまいます)」

 

 自分にない力で、浩介くんが助けてくれた時、あたしは浩介くんに惚れ込んでしまう。

 それはあたしにはない力が、浩介くんにあるから。

 代わりに浩介くんにないことを、あたしがする。こうやって、夫婦の信頼関係が成り立っていく。

 

「I am learned my lesson about difference of power between man and woman, especially I remember 9 years ago. (あたしは、男女の間にある力の差というものを、よく思い知らされています。特に9年前のことを、あたしはよく覚えています)」

 

 もう1つ、あたしはこのエピソードを紹介するか迷った。

 日本では有名なエピソードだけど、海外では殆ど知られていない、学生時代の恵美ちゃんのことについて話すことにした。

 

「9 years ago, Emi Tamura and my husband Kousuke Shinohara played tennis in my alma mater Odani high school. Yes, Emi Tamura is now top tennis player she was our class mate.(9年前、あたしたちの母校の小谷学園で、田村恵美とあたしの夫、篠原浩介がテニスで対戦をしたことがあります。ええ、田村恵美というのは、トップテニスプレイヤーの恵美ちゃんです。恵美ちゃんはあたしたちのクラスメイトでした)」

 

 突然、あたしが恵美ちゃんの名前を言い出すと、スウェーデンの学生たちがまたどよめき始めた。

 そう、日本語のインターネットで調べれば、実はあたしたちと恵美ちゃんがクラスメイトだったことは簡単に突き止められるし、さらに複数の情報をたどれば、桂子ちゃんともクラスメイトだったことも分かる。

 ただ、日本でさえ、そんなことはあまり意識されず、話題にはならないので「知る人ぞ知る」という感じなのだから、現地で知られてないのは言うまでもないだろう。

 スピーチの中で恵美ちゃんの登場に対し、当の本人はのほほんとしていた。

 

 まあ、さすがに話題になるのに慣れているだけあるわね。

 

「My school's ball game tournament in 2018. My husband practiced only 1 month. In spite of he won her. Of course, Emi Tamura was already strong.(2018年に行われた球技大会でのことです。あたしの旦那はたった1ヶ月練習しただけにもかかわらず、恵美ちゃんに勝利しました。もちろん、その時の恵美ちゃんはすでにテニスのトップ選手でした)」

 

 あたしが当時のエピソードを話すと、更に学生たちの喧騒が激しくなった。

 そりゃあ驚くだろう。世界のトップ選手、もう何年もほぼ世界ランキング1位に君臨し続けている恵美ちゃんが、高校生時代にほんの少しだけ練習した浩介くんにテニスで負けたことがあるなんて、衝撃の事実だものね。

 でも、実際インターネットで検索するとこれも出てくるエピソードで、でもマスコミが都合が悪くて報道しないせいか、まことしやかに「都市伝説化」してしまってもいる。

 

「This tennis was 5 set match. The game's set count is 2-6,7-6,6-1,6-0. The early stage, she overwhelmed him. However her physical was more weak than him.The last stage, she is difficult to return his serve.(そのテニスは5セットマッチで行われました。ゲームカウントは2-6,7-6,6-1,6-0です。序盤は、恵美ちゃんが浩介くんを圧倒していました。でも、恵美ちゃんの身体能力は浩介くんよりも低かったんです。終盤には、恵美ちゃんは浩介くんのサーブを返すことさえ困難になってしまいました)」

 

 このエピソードは、とても大きな意味を持つ。

 いかに浩介くんが日頃から鍛えていたとしても、世界的なプレイヤーでさえ、その辺の男子が鍛え上げれば勝ってしまうこともあるということを意味しているから。

 恵美ちゃんはあの試合を大きな糧にしていて、小谷学園での恵美ちゃんの銅像も、あの試合がモデルになっている。

 しかし、恵美ちゃんのドキュメンタリーなどでも、尽くこのエピソードは黙殺されている。

 だけど今回、浩介くんがノーベル賞になったのをきっかけに、恵美ちゃんとの対戦エピソードについて世間にも知ってほしいとあたしは思っている。

 

「I think women don't have to oppose men. Impossible is impossible. (あたしは、女性たちが男に対抗する必要はないと思っています。不可能なことは不可能なのです)」

 

 あたしは、無理なものは無理だと思っている。

 恵美ちゃんのエピソードは、あたし自身の体験以外のエピソードを交えていて、より説得力が高まってくれると信じている。

 もしこれでも男女平等を信じ続けるなら、もはやそれは宗教だと考える他無いわね。

 

 あたしは、研究についての内容に移る。

 

「I joined Dr.Horai's research to solution of life span problem. No aging society is much richer than conventional society. But, if society seeks for impossible it decline. (あたしは寿命問題の解決のために蓬莱教授の研究に参加しました。不老社会は、これまでの社会よりも遥かに豊かになるでしょう。しかし、不可能を求める社会は、衰退します)」

 

 あたしの動機は、結局浩介くんとの寿命問題を解決することだった。それ以外は、全て「おまけ」のようなもの。

 あたしのスピーチも、ようやく終わりに差し掛かる。

 

「You must acknowledge about difference between man and woman. I seek feminine I married 18 years old. He is the most great man in the world. (あなたたちは男女の違いを認めるべきなのです。女の子らしさを追求し、あたしは18歳で世界一素敵な男性と結婚できました)」

 

 あたしは、最後の仕上げに取りかかる。

 

「I was a boy. But I am a girl now. It is painful to hate me by men. Because I am a girl. Do you think wrong about girl behave feminine?(あたしは男の子だったわ。でも、今は確かに女の子なの。あたしにとって、男に嫌われるのが一番辛いわ。だってあたしは、女の子だから。あなたたちは、女の子が女の子らしく振る舞うことは間違ってるって、思いますか?)」

 

 もちろん、これはあたしのスピーチなので、観客側から答えは帰ってこない。

 女子学生たちは、いまだにあたしのスピーチに困惑しているけど、男子学生はおおむねあたしに共感してくれていた。

 あたしは、シンプルなことしか言っていない。

 あたしは女の子として弱くなった。でも、強い旦那がいるから彼に守ってもらう。

 これで、あたしのスピーチは全て終わった。

 最後の一言を口にするために息を吸う。

 

「My speech is over. Thank you for your kind attention.(あたしのスピーチはここまで。ご清聴ありがとうございました)」

 

  パチパチパチパチパチ!!!

  ワー!!!

 

 あたしがスピーチを終えると、これまでにないほどの大きな拍手が沸き起こった。

 誰かが椅子から立ち上がり、やがて全員があたしに向けて拍手していた。

 もしかしたら、サイレントマジョリティに訴えかけたのかもしれない。

 あたしは万雷の拍手を浴びながら、原稿用紙とくまさんのぬいぐるみを取る。

 ぬいぐるみさんをぎゅっと抱き締めると、あたしに対する拍手が更に増した。

 

「ふう」

 

 あたしは、少しずつ、歩みを進めていく。

 どうやら、あたしのコンプレックスについても、少し理解してくれたのかもしれないわね。

 

 あたしは、元の椅子に座り直すと、浩介くんと同じように押さえ込んでいた疲れが一気に出てきた。

 

「優子ちゃんお疲れ」

 

 椅子に戻ると、浩介くんがあたしを労ってくれた。

 

「うん、疲れたわ」

 

 とにかく今は、文学賞の人のスピーチを聞きながら、静かに過ごしたい。

 蓬莱教授もあたしも浩介くんも、それぞれ違う視点からスピーチができてよかったわ。




この辺書くのにメッチャクチャ苦労してしまった……

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