永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件 作:名無し野ハゲ豚
多忙に付き、番外編の方は、以前よりも更新頻度は落ちますのでご了承ください。
俺こと塩津悟が女の子になった日
それは、突然の出来事だった。
俺こと塩津悟は、この日死んだ。
俺は何でもない、1人の大学生だった。
高校時代から仲のいい
「おう、なんか今日キレなかったな、大丈夫だったか塩津?」
帰り道のバスでのこと。いつもというわけではないが、時たま途中まで3人で帰る所、手原の方が、俺を心配して声をかけてくれる。
「ああうん、少しお腹痛くて……明日には良くなるといいけど」
「そうか、無理すんなよ」
大谷も、俺を心配してくれていた。
本当にいい友人に恵まれたものだ。
「分かってるって。サッカーは逃げねえよ」
「だな、ま、体調良ければ明日も練習しようぜ」
今思えば、これが悟として交わした最後の言葉になるとは、この時はまだ微塵も思っていなかった。
俺が住んでいる町は東北地方の仙台市で、生活には不便していない。
手原たちと別れて俺は自分の家に戻る。
「ただいまー」
「悟、お帰り」
「ああ、お母さんただいま」
家に帰ると、こうしてお母さんが出迎えてくれる。
俺の家は、父母に加え弟の徹と4人暮らし。
運動部だけど恋愛には疎く、彼女はいない。サッカーにばかり打ち込んでいたというのもある。
手原の奴も同じで、「来年までには彼女ほしい」と言っていた。
大学生活にもすっかり慣れ、大学初の文化祭も終わり、世間も秋の兆しが見え隠れした10月末、俺はいつもの通り階段を上がり、部屋に横になってその日の疲れを取る。
今日は練習中、少しお腹が痛くなることもあった。それ故に、少し気をつけないといけない。
「ふう」
さっき少しだけお腹が痛いのを感じたが、どうやら杞憂だったらしいな。今は少し引いている。
そう思い、俺は、いつものように暇つぶしと情報収集を兼ねてサッカー誌を見ることにした。
しかし、その5分後くらいだった。
「んんっ……」
痛い、お腹が……くそっ!
な、何だこれは……! さっきの比じゃねえぞ!!!
「うあああああああ!!!」
かつてない痛みが、俺を襲う。
思わず大きな声が出た。確実に徹たちにも聞こえたはず。
俺は、お腹を抑え、大きな声を我慢する。
視界が、どんどんとぼやけていく。
突如、喉の奥で何かが逆流した。
タッタッタ……
「悟!?」
「うっ……おえっ!!?」
「キャー!!!」
俺が何かを吐くと同時に、お母さんの甲高い悲鳴が聞こえた。
俺の目の前には、赤い液体が見えた。
知っている。これはそう、血の色で──
「おい、どうしたんだ!? って、悟!」
視界が、ポツリと途切れた。
真っ暗で何も見えず、何も動かせない。
「兄貴! おい、大丈夫か兄貴!」
お父さんと徹が駆けつけてきた。
布団に横になっている感覚も、目の感覚もない。
ただ音だけが聞こえる真っ暗な常闇だった。
ピッピッピッ……!
「もしもし、長男が突然倒れて……はい、血を吐いて意識がありません! 今すぐ来てください!」
逼迫したお母さんの声が聞こえる。
間違いなく、119番された証拠だった。
「息はしているな。うん、脈もあるぜ」
「おい兄貴! しっかりしろ! どうしたんだ!?」
「おい、返事してくれ! 悟! 悟ううう!!!」
俺の体の行方が、よく分からない。
ただひたすら、両親と弟が俺を呼びかけ続けている。
それに答えたいのに、答えられない。
もしかしたら、俺は死んだのかもしれない。
死後の世界は、こうなっていたのかな!? ちょろい人生だったなあ。本当に。
ドンドンドン
「塩津さーん!」
しばらく時間がたった。それが5分なのか1時間なのかは分からない。
突如、別の男性の声が、聞こえた。
誰かが階段を降り、玄関を開ける音がした。
救急車が、到着したらしい。
「あの、意識がないんです」
「……とにかく、すぐに病院へ」
全く、今ごろ来ても遅いのに。
「呼吸、脈拍正常……吐血があるだけだな。でも意識がない」
あれ? 俺、まだ息してるのか。
じゃあ生きてるってことか。
「せーの!」
階段を降りる音と、家族の話す音が聞こえ、そして担架に乗せられる音がした。
「はい、はい……塩津悟19歳男性、呼吸脈拍は正常も意識なく、吐血あり」
俺の感覚が、少しだけ戻ってきた。音からも、救急車に乗せられていることは分かった。
でも、体は一切動かせない。とても、もどかしい。
ピーポーピーポー!
救急車のサイレンが鳴った。
な、何だ!?
救急車のサイレンが聞こえる中、俺の下半身が、急に膨張し始めた。今までなかった触覚も、下半身だけ驚くほど敏感になっている。
今までにない膨張ぶりと快感に、強い恐怖を覚える。
もう無理! 破裂する!
そう思った次の瞬間、信じられないような快感と共に、精力が出ていく。
あーーーーー!!!
どこまでも、永遠に続くとさえ思えるくらいに長い「それ」の後、規則的に響く救急車のサイレンと、道を開けるように促す救急隊員さんの声が、どんどんと遠くなっていく。
今度こそ、俺は自分の死を覚悟した。
それにしても、死ぬのって案外、気持ちいいんだな。