永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件 作:名無し野ハゲ豚
一通り会話し終わった俺たちは、石山さん、永原さん、そしておふくろと併せて4人で、女としての服を買うことになった。
石山さんが何やらヒソヒソ話している間に考える。ひとまず、男に戻ることは諦めると手原たちには言っておくことにしよう。ただ、それでも女として生きていくのにも抵抗がある。
何とか方法がないか、家族会議で相談したいが、ここの協会の人は、「女以外選択肢はない」ということに代わりはない。
ここまでの見立てでは、石山さんはとても温厚で、名前の通り「優しい人」だけど、優しいからこそ厳しい時にはとても厳しく、総合的には余呉さんよりも遥かにスパルタ教育になりそうと言う印象を持った。
「ああ、徹さん、浩介くんとお父さんとで留守番してくれる?」
「男は留守番か」
徹が残念そうに言う。
ついていきたいのかよ! ……まあ気持ちはわかるけど。
「当たり前よ、下着売り場にも行くんだから!」
「え!? し、下着売り場!?」
石山さんの衝撃的な発言がまた出た。
下着売り場に、いきなり行かせるという。
「そうよ、女の子には女の子の下着を買ってあげないとダメでしょ」
石山さんがまた俺にややため息を付きながら言う。
「そ、そうだけど……」
「あたしと、永原会長と、お母さんと、幸子さんで行くわよ。じゃあ、みんな留守番してくれますか?」
石山さんはとても乗り気だ。
「分かりました」
何も反論できないまま、また流されてしまった。
しかしそれにしても、下着売り場まで行くとは……石山さんは、「女の子には女の子の下着を買ってあげないとダメでしょ」と言っていたけど……うー刺激が強そうだ。とにかく、俺はまだまだ中身は男何だよ勘弁してくれよと言いたい。
だから、下着売り場は後日でも良さそうな気もするけど、永原さん曰く「むしろ、あまり遅いと期限切れちゃってかえって損しますよ。すぐに死にたいなら話は別ですけど」とのことだった。
今の俺はブカブカの男の時から使ってたジャージで、女の子らしさとは対局にある姿だ。
そして場所も、例の名取のショッピングモールに決まった。仙台市民なら誰でも知っている、便利なショッピングモールだ。
「あ! ちょっと待って!」
ともあれ、前に進むしか無いのかなあなんて考えていると、石山さんがいきなり俺を抱き締めてきた。
「ちょ、ちょっと近い近い! 何するんだ?」
あまりにも突然で、腕から背中にかけて、おっぱいの柔らかみを感じてドキッとしてしまう。
女の子の魅力であるおっぱいをむにんと押し付けられるのは興奮するけど、やっぱり反射的に逃れようともがく。
「暴れないで! 大丈夫。サイズ測るだけだから」
石山さんの手から、巻き尺のようなものが見える。
「なっ……ちょっと……」
俺のおっぱいに巻き尺が絡みついている。
自分のバストを、知られてしまう。いや俺もよく知らないけど絶対90超えてるって!
「女の子同士でしょ!? 別に変じゃないわよ」
石山さんのその大きな胸が、思いっきり背中に当たりながら、胸だけではなくスリーサイズを余すとこなく計測されてしまう。
女の子同士と言っても、胸の感触にどぎまぎしてしまう。
ちなみに、胸はまるでマシュマロのようにふわふわと柔らかかった。俺も石山さんも……
「やっぱりノーブラじゃないの。ダメよ」
一通り図り終わった後、俺の胸を見ながら下着をつけてないことに対して怒られた。
「いやその、こすれるのは嫌だったけどさ……」
「もう! 形も崩れるし、ちゃんと付けなさい」
また石山さんに怒られてしまう。
体が女である以上、ブラジャーをつけなきゃいけないというのはいや全くその通りであって反論できないし、反論したらまた怒られそうだ。
「はーい……」
ともあれ、無関係を装っていたおふくろが車庫から車を出していて、永原さんも車庫の入り口の柵を開けるのを手伝っている。
そしておふくろが車をそこから出して、俺たちも乗り込む。俺が助手席で、石山さんと永原さんが後方の座席だ。
車に乗る時、石山さんが少し勝ち誇った顔をしていた。
重ねて言うが石山さんが規格外なだけで、俺だって十分芸能界やAV界隈を巨乳で売り出せる位の実力はある。
うー、半年でここまで変わる人は珍しいというけど、俺が将来ああいった女性になると言うイメージさえも湧かない。
いや、これ以上胸大きくならなさそうだし。そこで負けるのが悔しいわけじゃない。うん、断じて。ってか、そんなこと言ったら女性の大半に殺される。
「ほぼ15分くらいで付きます」
名取のショッピングセンターまではほぼ単純な経路を進むから、車でもそこまで時間はかからない。
カーナビゲーションも、もちろん不要だ。
住宅街を進みつつ、その後も道路は特に渋滞もなく、また駐車場も休日のこの時間なので、ある程度混んではいたが、そこまでの待ち時間はなかった。
名取のショッピングモールが見えてきた。ここでは色々なお店が集合しているので、大抵のことはここで事足りてしまう。
最も、専門店の全てを網羅しているわけではないから、そうした場合はこのショッピングモールもお手上げだけど、洋服類なら問題ない。
「すごい大きいわね」
駐車場に並ぶ時、その大きさに石山さんが驚いていた。
何でも、首都圏の都心部は無論のこと、住宅の多い郊外でもこんな大きな総合ショッピングモールは殆ど無いらしい。
まあ、東京は土地代が「何かの冗談かよ」ってレベルで高いし、人も多いから色々な場所に店を作った方が集約型よりも高効率なのだろう。
……東京には行ったことないけど。どれだけ大きいんだろうか?
「じゃあ行こうか」
駐車場に空きスペースを見つけ、車を止めたら、俺たちは車を降りて、おふくろと石山さんと永原さんについていく。
やっぱり、新しいのを買うのに、まだ抵抗感があって、歩くのは最後尾だ。
「服のコーナーはこっちです」
2人が店内の地図を見てエレベーターに行き、エレベーターから出ると、おふくろの案内によって、一直線に婦人服売り場のコーナーに向かっていった。
「それじゃあまずここからね」
石山さんが指差した先を見て、俺は呆然とした。
男にとって一番ハードルが高い場所だ。
「え!? いきなりここ?」
そこは、女性の下着が売ってあるランジェリーショップだった。
もちろん、俺だって女物の下着に興味はあるけど、それにしたって、うー。
「あら? あたしもそうだったわよ。それに、今ノーブラで下も男物なんか着てるんでしょ? そこは大至急変えないとダメよ」
うっ、石山さんが鋭い……って当たり前か。
「そうだね。私も石山さんと同意見ね」
そして、永原さんも、下着コーナーに行かせたくてウズウズしているみたいだ。
うー、逃げ場がない……
「そうよ、こういうところから幸子の意識を変えないといけないんだから」
「は、はい……」
おふくろも急に乗り気だし、俺はもう破れかぶれと言う感じで下着コーナーに向かった。
「はい、幸子さんのサイズはここ」
石山さんが指差したのは、ブラジャーが所狭しと並んでいた空間だった。
でかいサイズになることは予想していたとは言え、どうしても足が出ない。
「ほら行くわよ!」
そして、永原さんに強引に引っ張られた。
「このブラジャーが似合ってるんじゃない?」
「うーん、じゃあこっちはどう?」
おふくろが持ってきた下着、おいおい、完全に悪ふざけだろ。
「うーん、大胆過ぎない?」
「そうかなあ?」
おふくろが持ってくたのは、濃い紫色の布面積が少ない、いかにもな感じのエロ下着だった。
やんわり言うけど、俺は正直反対だ。ってか、そんなのやだよ!
「うーん、それはよくないわね」
「うんうん」
「え!?」
何と意外な所から助け船が入った。
協会の2人が俺に味方したのだ。
「ふふっ、男の子が喜びそうなのはこれだよね?」
「う、うん……」
てっきり四面楚歌かと思われたので驚くと同時に、2人は純白の下着を勧めてきた。
さすが元男という感じの選び方で、白は男ウケ万年1位だ。
「さ、まずはこの下着から買うわよ」
正直、女物は嫌だけど、おふくろが持ってきたのよりは遥かにマシだ。
女物を拒否することはどうせ不可能だろうし。あーもう知らん。
「後で保険が下りるから、心配しないでいいのよ」
その後も、悪のりをするおふくろとそれを制止する石山さんと永原さんという構図が定まった。
そして2人はさすがに元男と言うべきか、男の好みを熟知し、おふくろを巧みに追い込んでいった。
サイズは既に図られていて、ブラジャーはこのショッピングモールでも一番大きなサイズだった。
……石山さんとか、特注何だろうな。
そうこうしているうちに、下着だけでもとんでもない数になった。
更にこれからずっと女だということで、季節外れの夏用の下着も買わなければならず、保険は偉大だった。
「さ、普段着を買うわよ」
そして、永原さんにつれられて、さっきよりはまだマシな婦人服コーナーへと進んだ。
「それじゃあまずこれ」
永原さんは、落ち着いたロングスカートを勧めてくれた。
どうやら、永原さんの場合は、服装選びについては石山さんほど厳しくはないみたい。
「うん、それならまあ……」
「あら、今の幸子にはこれも似合うんじゃない?」
そして、おふくろはやっぱり露出度の高いミニスカートを勧めてきた。
あまりにも短くて、真夏でも滅多に見ない感じ。
「ちょ、ちょっとこれは嫌だよ!」
自分がこんなの穿く何て想像もしたくない。
悟だったからこそ分かる。これを穿いてしまえば男からどれだけ気持ち悪い視線が来るか……痴漢だってされるだろうし。
「あらあらつれないわねえ……」
すかさず拒絶する。
しかし石山さんも「いきなりは無理でも将来的に」ということで、ここでは殆どの服が買い物かごに入れられていく。どうやらさっきの下着とは一転し、劣勢の模様だった。
……まあ、そもそも保険降りるし、嫌なら着なきゃいいし。
「じゃあこれなんてどう? こっちと合わせてさ?」
石山さんが手に取ったのは、茶色の膝丈のスカートだった。
「え? ちょっと短いような……」
石山さんが提示してきたのは確かにさっきよりは落ち着いているけど、それでも短いと思う。
確かに石山さんや永原さんはこれくらいなら何てこと無いんだろうけど。
「カリキュラムではもっと短いスカートになるわよ。今のうちに女の子の服に慣れとかなきゃ」
どうやら断れる雰囲気じゃなさそうだ。
ミニスカートは、女の子として生きていくのに必須だというのが、石山さんの考えだろう。
「わ、分かったよ……」
うー、予想していたとは言え、こんな形で人生初のスカートとは……
「というわけで、私のこれと一緒に試着してみて?」
永原さんにも、青いブラウスと一緒に試着を勧められた。
「あ、永原会長、ちょっと待って? まずこっちを渡さなきゃ」
石山さんが、さっき買った下着類をあさり始め、そこから白いパンツとブラのセットを出してきた。
「え!? そ、それも?」
どうやら、全部取り替えないといけないらしい。
「当たり前でしょ? ほら、試着して」
石山さんが凄むと、後ろに回ってくる。
今にも「押すわよ」と言わんばかりだ。
やはり女の子らしさについては厳しい人たちだ。
「う、うん……」
そして俺は、石山さんたちに押されて試着室の中に押し込められてしまった。
ご丁寧に、下着まで押し付けられていたから、どうやら覚悟を決めるしかないみたいだ。
俺はまず服を脱いでパンツだけになる。
トランクスを穿いただけの鏡の少女は不格好だけど仕方ない。
「うー」
白いブラジャーを、恨めしく思う。
石山さんはノーブラはダメって言ってたし、これをつけないと後でまた怒られちゃいそうだ。素直に従うしか無い。
実際、これまでの生活では、ブラジャー無しで来たため、おっぱいが擦れたり色々と不便もあった。女の子にとって必要だということはよく分かっていた。
それを思って、俺はブラジャーについていた説明書を見る。
このブラジャーは、「フロントホック」といって、どうやら前の方で留める仕様らしい。後ろよりはまだ良さそうだ。
この狭い試着室では、3人の助けは望めまい。
自力で着替えるしか無い。
「んー」
ブラジャーをつけた俺は次に上の花がプリントされた青い服を着てみる。
「はー」
そして、残ったのは女物のパンツとスカートだった。
ブラジャーだけでもあれなのに、とうとう残っているのは女の象徴という服だけ。
でも、これを穿かないと怒られるし……よしっパンツだけは男物でスカートだけにしよう。
覚悟を決めて、俺はスカートに手を伸ばし、足を突っ込んでそのまま引き上げる。
そして、引っ張った手を離すと、スカートが上手く腰にフィットした。
「うー」
膝が半分程度隠れるくらいの落ち着いた丈のスカートなのにこんなにスースーして心もとない。
店内の空気が、そのままトランクスに流れ込んでいく。
確かに、鏡の前のスカート姿の少女、つまり俺は、これまでに見たことないくらいかわいらしい格好になっている。
でも、いざ自分が穿くともなると話は別だった。
「よく短くできるよな……」
俺はため息をつく。
ともあれ、見た目着こなしていれば合格にはなるはずだ。
とにかく、石山さんたちに気に入ってもらうためにも、すぐにでもここから出ることにしよう。