永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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林間学校四日目 永原先生の罪

 バス停にはバスが何台か停まっていた。永原先生の進む方向に従い、やがて一台のバスにたどり着く。

 

「……これに乗るわ。ブザーは私が押すから安心して」

 

 永原先生がバスの一番後ろの長い席に座る。あたしと篠原くんもそこに並ぶ。

 バスはあたし達を乗せてすぐに、ブザーと運転士さんの声とともに発車する。

 

 

「永原先生の故郷っていうのは?」

 

「このバスで行けば付くわよ。といっても、実は私も自分の家や当時の真田の城の正確な位置までは覚えていないのよ。記録頼りね」

 

「そうなの?」

 

「ええ、何分、500年近くも前のことですから。でも、なんとなくぼんやりと風景は覚えているわね」

 

 バスが幾つかのバス停を通過し、あるいは停車して乗客を乗せていく。

 地域輸送に特化したそのバスにとって、私達は珍しい存在。でも、永原先生にとっては、500年の人生の原点の場所。

 

 やがてバス停の一つで永原先生がブザーを押し、3人分の運賃を払って降り立つ。

 バス停の向かいには六文銭の旗がなびいている。近くの交差点に向かうと、何か石碑が見えてきた。

 

「永原先生、あの石碑は一体?」

 

「ふふっ、今に分かるわよ」

 

 そう言うと更に歩く、横断歩道の向こうから、石碑の文字を見る。

 

「さ、真田氏発祥の郷……」

 

「ええ、この公園は私の主君、真田源太左衛門様を始めとする、真田氏を記念して作られた真田氏記念公園なのよ」

 

 永原先生が公園の中に入る。するとそこには真田氏ゆかりの地の観光案内がある。色々な記念館や史跡があるみたいだけど、それなりに距離があるみたいだ。

 

「……そこじゃないわ。もう少しついてきて」

 

 永原先生がそう言うと、更に奥に進む。あたしと篠原くんが慌てて続く。

 すると何やら石像が見えてきた。

 

「永原先生、この石像は一体……」

 

 3つの石像にはそれぞれ名前が書いてある。左から「真田幸村公」「真田幸隆公」「真田昌幸公」とあってそれぞれ「何とかの将」と小さく書いてあり、その上には3人の男の顔が掘ってある。

 

「先生、この3人の男は一体……」

 

 篠原くんも疑問に思っている。

 

「真ん中の御方が、私の主君だった真田源太左衛門様よ。私が仕えていた時の諱は別だけど……そうね……後には真田弾正忠とも名乗られたわ。その頃の私はもう女の子だったから、今でも源太左衛門様と私は呼んでいるわ」

 

「真田幸隆というのね……」

 

「え、ええ……でも、あまり似てないわね……」

 

「そ、そうですか……と、当事者が言うと違うなあ……」

 

 大河ドラマも、先生曰く「似てない」そうだからそんなものなのだろうか?

 

「ところで先生、右の人物は一体?」

 

「真田安房守殿よ。真田源太左衛門の三男に当たられる方で、兄二人が長篠で戦死なされたので家督を継いだわ」

 

「あ! そう言えば、去年の大河でも出てたな。真田昌幸って……表裏比興だっけ?」

 

「ええそうよ」

 

 確か関が原で敗れて配流先で死んだんだっけ?

 

「左は……もういいわよね。恐れ多くも安房守殿の次男、真田左衛門佐殿の名を勝手に剽窃して作り上げた架空の人物よ」

 

 やはり、永原先生は真田信繁が真田幸村として周知されることがよほどお気に召さないらしい。

 あまり触れないでおこう。

 

「ところで永原先生、他に見る所はあるの?」

 

「ええもちろんよ。ちょっとついてきて」

 

 永原先生が手招きする。

 あたしたちは公園を出てひたすらに歩く、細い道を歩く。

 

 15分位経っただろうか、畑の前で永原先生が止まった。

 

「そう確か……私の記憶だと、ここら辺に私の家があったのよ」

 

「え、永原先生……ここって一面が畑よ」

 

「当たり前じゃない。私がここを離れたのは本能寺の変の時よ。430年以上も前の空き家が残ってるわけないじゃないの」

 

「そ、それもそうよね……」

 

「せ、先生はここで何を?」

 

「畑仕事をして年貢を納めて……それをしながらも伝令役の足軽として兵役にもついてたわね」

 

「以前にも話したと思うけど、畑仕事中に石山さんと同じ症状で倒れて、農民仲間に家に運んでもらったわ。でも……女の子になっていたと知られたら殺されると思って……真田家を事実上出奔したわ」

 

「でも永原先生、そんな短いのになぜ真田に思い入れが?」

 

「……詳しいことは新幹線で話すわ……新幹線の時間まで、まだかなり時間があるから、もう一箇所ほど付き合ってくれる?」

 

 永原先生に言われるがままについていく、先ほどと同じくらい、更に15分経って、私の足にも疲れが見え始めた。

 小さな狭い道を一本抜け、やがて上り坂に。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 すると歴史館のような建物が見えた。

 どうやら、真田家を記念しているらしい。

 

「今回はここには寄らないわ。もうちょっと先よ。この山の向こう」

 

「せ、先生、石山がちょっと苦しそうです」

 

「そう? 篠原くん、おんぶしてあげなさい」

 

「え……え……」

 

 篠原くんがまたちょっと赤くなる。

 

「あ、あの……無理しなくても」

 

 まだあの登山の時よりは楽だし。

 

「い、いいよ! ほら、い、石山!」

 

「う、うん……ありがとう……」

 

 また背中を貸してもらう。なんだろう登山のときよりドキドキしているのに、心は落ち着いていると思う。

 複雑な交差点を左に曲がり、やがて人家もまばらな道路をひたすら進む。

 

「そこを右に曲がってくれる?」

 

「はい」

 

 右に曲がる道は明らかな山道だ。

 おなじみの六文銭と寺の卍マーク、その下には「真田氏本城跡」とある。

 

 古い神社を尻目に、更に曲がりくねった道を進み、本格的な山になる。

 

「……ここにはね、かつて堀があって要塞だったのよ。滅多に来ることはなかったけど、今でもこの城のことは思い出すことがあるわね」

 

「でも、ここ、ただの山じゃない」

 

「昔は、城だったのよ。はっきり覚えているわ。私がまだ男だった頃の、数少ない記憶よ!」

 

 永原先生が強く言う。そうか、朽ち果てて、僅かに原型を残すのみのこの城が健在だった頃から、永原先生が生きていたということ。

 それはあまりにも壮絶な人生だ。もはや400年以上も前に死んだ主君のことを、未だに想い続けているのだから。

 

 時折掲示があり、史跡を案内する。そんな時代から永原先生は生きていた。中腹あたりに来ると、村を一望できる光景が見えた。

 

「頂上まで登る? それとも、もう帰る?」

 

「うーん、そろそろ帰ろうかな」

 

「そうね……バスと新幹線の時間もあるから、引き返しましょうか……二人共ごめんね。私の昔話に突き合わせちゃって……本当はさっきの歴史館とか、他の見どころある場所を1日かけて回りたいんだけど……」

 

「いえ、いいんです」

 

「俺も、何か他の人より得した気分だったよ」

 

 本来の林間学校はそろそろみんな遅めの昼食の時間。バスを使うから移動で丸一日潰れてしまうのだ。

 体力も十分回復したので、篠原くんに降ろしてもらい、自分の足で歩く。

 

「えっとね、ここを直進してくれる? 大丈夫よ。私は何度もここに来てるから、地理は知ってるわ」

 

 そりゃあまあ、永原先生にとってここは生まれ故郷なわけだし。

 やがて、急カーブし、川を渡った少し先で、バス停を発見した。

 

 かなり待った気がするが、ともあれ、上田駅に戻るバスに乗ることが出来た。

 

「永原先生、真田への思い入れというのは……」

 

「さっきも言ったけど……長くなるから新幹線で話すわよ。でも大まかに言うと、私の、罪の記憶のことについてよ」

 

「罪?」

 

「このことは……墓場まで持ってくつもりだったけど……石山さんと篠原君にだけ、特別に教えてあげる。このことは、絶対に口外しないって約束してくれる?」

 

 多分永原先生の正体と過去以上に知られたくないこと。

 

「……う、うん」

 

「俺も、もし口外したら切腹するよ」

 

「ふふっ、勇ましいわね。そうね……切腹……かあ……私の身分じゃ無理だったわね」

 

 永原先生は、何処か遠い目でバスの風景を見ていた。

 

 

 上田駅に到着、次の新幹線までは後30分あるという。

 

 時間つぶしを兼ねて、おやつと称して駅ナカでお菓子などを買う。一部は新幹線にも持っていくそうだ。

 

「あ、そうそう。これ、篠原くんと石山さんの分よ」

 

「あ、ありがとう」

 

「お、おう……」

 

 気の抜けた返事で切符を見る。

 「乗車券」という切符と「新幹線特急券・グリーン券」という切符の2枚がある。

 

「グリーン券? これグリーン車なの!?」

 

「いや、石山よく見ろ、ここの文字……これ一番高い切符じゃねえか!」

 

「ええ、どうせ今回の不祥事でお金は旅行会社が払ってくれるんだから遠慮しちゃダメよ。それにあそこならそこまで人もいないでしょうし」

 

「そ、そうですか……」

 

 

 ともあれ、時間も潰れたのでホームに降り立つ。

 あたしたちが乗る車両は最後尾車両なので結構歩く。自由席指定席の部分にはそれなりに人がいたのに、ここら辺には誰も並んでいない。

 夏休み土曜日だって言うのに人がいないのかな?

 

 やがて駅構内の放送で、新幹線が間もなく到着であることを知らせ、青い新幹線車両が入ってくる。

 永原先生の言うとおり、ここには確かに殆ど人がいない。横1列あたり3席しかなくて、見ぬからに広い。

 座った瞬間の座り心地はたしかに格別だが、切符の料金からするとちょっと躊躇する。

 

 新幹線は発車する。リクライニングを使い、3人共思い思いに心地の良い状況を作る。

 

「それじゃあ、篠原君、石山さん。話すわね」

 

「う、うん」

 

 新幹線の発車後、自動放送と車掌の放送が一段落してから、永原先生が話す。

 

「あのね……私、恋愛したことがないって石山さんに言ったでしょ」

 

「う、うん……」

 

「石山さんに……友達になって欲しいって篠原君言ったよね?」

 

「あ、ああ……」

 

「でも、今はこの車両に居るのは私達だけだから、単刀直入に言うわね。石山さんも篠原君も……両想いなんでしょ?」

 

「え!? そ、それは……」

 

「な、永原先生!?」

 

 答えに詰まってしまう。でもあたしと篠原くんの、その態度そのものが両想いですと自白しているようなものだ。

 

「まあ、どちらでもいいわ。でもね、TS病の子にとって恋愛は……どう転んでも将来的には大きな困難が伴うわ」

 

「やっぱりそれって……」

 

「……ええ、石山さんも私も、篠原君が老いて死ぬ時、よほどのことでもない限り、今篠原君が見てる姿のまま生きているわ」

 

「それじゃあ……」

 

「今恋愛していても、数百年後の遠い将来、石山さんの中で思い出は風化していくわよ。どれだけあがいても、あがいきれないのよ」

 

「じゃ、じゃあ、俺は風化しない思い出にしてみせる!」

 

「……おすすめはしないわよ。風化しない思い出にするってことはよほど強烈なこと。私の体験みたいにね」

 

「で、でも永原先生は恋愛したことないって――」

 

「私も……恋愛には一つトラウマがあるのよ」

 

「え? でも先生は……」

 

「正式な恋愛なんてないわよ。だって初恋が……ひどかったのよ」

 

「せ、先生の初恋って?」

 

「ええ。そのことについて話したいの。私の罪深い記憶よ」

 

「永原先生、初恋が罪って……」

 

「聞いてくれる? 私はね……同時に二人の男性に初恋したのよ」

 

「え!?」

 

「しー、石山さん、声が大きいわ」

 

「す、すみません……」

 

「あ、あの、それで先生の初恋の相手というのは……」

 

「数え年で88歳の老人男性と……13歳の男の子だったわ」

 

「な……何だよそれ!?」

 

「それっていつごろの?」

 

「私が数えで136歳の時の話よ。笑っちゃうでしょ? 48歳年下の男性と、123歳年下の男性に、同時に初恋するなんてね」

 

「先生……先生が136歳の時って……ちょうど江戸幕府誕生50年目なんじゃ」

 

「……篠原くん、鋭いわね」

 

「ま、まさか……」

 

「ええ。私が初恋した二人の相手。一人は真田伊豆守殿、これだけでもひどいのにもう一人は……よりにもよって江戸幕府の4代将軍様だったのよ」

 

「もしかしてそのきっかけって……」

 

「……ええ。私はあの病気になって、真田家を出奔したわ。そして真田の村に戻りながら、主がお戻りになられても、別人のふりをし続けたわ。TS病だと知れて、殺されるのが怖かったから」

 

「……本能寺の時になって、不老がバレ始めると命惜しさにすぐに逃げたのよ。あの後の安房守殿や伊豆守殿、左衛門佐殿がどれだけ苦労なされたのかを知っておきながら、村に戻ろうともせず、諸国を流浪し、平和になったらノコノコ江戸に住み始めて……そこでも不老の噂が流れたのよ」

 

「でも、『TS病になれば不老になる』とは知られていなかったから、私は4代様の命で拝謁が許されたわ。伊豆守殿は命惜しさに出奔した裏切り者で臆病な私を、お許しになられたのよ」

 

 これは以前にも聞いたことがある。

 

「ただ優しくされた伊豆守殿の膝で、私は考えられないくらい泣きじゃくったわ。そして上様の家老が無礼だと叱責された時、普段は政務を家臣に任せきりだった上様が、ただ一言『よい、泣かせてやれ』と」

 

「……もしかしてそのエピソードがきっかけで」

 

「……ええ、泣き止んだ後、私は上様にも労いの言葉をもらったわ。実はね……そこでまた泣いてしまったのよ」

 

「上様はただ『辛かったろう、気の済むまで存分に泣け』と仰せになって、江戸城に泊まるように言いつけられたわ」

 

「……」

 

「その日はただ、今までの我慢してきたものが流れ出ただけでよかった。でも翌日だったのよ。私は……伊豆守殿と4代様の顔をはっきり直視できなかったわ。それでも礼儀作法があるから、必死にやせ我慢したわよ」

 

「いくら否定してもしきれない。私はそれまで、優しくされたことなんて無かった。戦に明け暮れ、ずっと逃げ惑い、偽ってごまかしただけの136年……それを受け入れてくれただけで、私はおかしくなってしまったのよ」

 

「つまり優しくされただけで、恋に落ちたってことなの?」

 

「……ええ。普通に考えなくても馬鹿みたいな話よ。でも、あの時の私はあらゆる感情で混沌として、頭がおかしくなっていたのよ」

 

「ただの足軽、それも事情はどうであれ脱走兵が自分の仕えていた家のご隠居、それも90歳近い老人と、天下の征夷大将軍、それも10代前半の少年に同時に初恋するなんて」

 

「確かに、奇妙な話だ」

 

「奇妙な上に、あまりにも不敬な話よ。恩を仇で返す無礼極まりない所業よ。このことは、江戸城に住んでいた時に、いつバレないかと心配になったわ。伊豆守殿と4代様がこの世を去り、元禄に入る頃までは気が気ではなかったわね」

 

「それにね……一番奇妙なのは……私は老化しない、不老の女で、伊豆守殿より更に50歳近くも年上だったってことよ。更に言えば、初恋の人は二人とも、もう300年以上前に死んでいるのに、私はこうしてまだ生きてるんだもの」

 

「そういえば、先生は真田に再士官したかったって……」

 

「ええ、もう一回真田に普通に奉公すれば、自然とこの歪んだ初恋も消えると思ったのよ」

 

「永原先生は真田家の子孫には……」

 

「大正の頃までは当主が変わる度に会っていたわ……ええ、会う度にまた奉公したいって言っていたんだけど、歴代当主様がどうしてもお許しになってくれなくて……いつしか、遠い昔に伊豆守殿に分不相応な恋心を抱いていた罪悪感もあって、子孫の方とはもう50年以上会ってないわ」

 

「そうですか……」

 

「篠原君、石山さん。TS病の子の恋愛は、将来大きな困難を伴うわよ。かと言って、私みたいに100年以上も恋愛をしないと、とんでもない事になってしまうわ」

 

「私は何とか気持ちを押し殺して同年代の死を待つことが出来たわ。伊豆守殿はあの5年後に、4代様も27年後に病で早死されたわ。そしてそれ以来、恋愛には斜に構える事ができるようになったのよ。でも、石山さんは――」

 

「永原先生、あたし……あたし恋する乙女になりたいんです!」

 

 永原先生の話を聞いたけど、でも、やっぱり気持ちはごまかせない。

 

「……」

 

「将来のことはよく分からないわ。でも、やっぱり気持ちを押し殺したくないって。もしかしたら、クラスのみんなも『元いじめっ子を好きになるなんて』って言うかもしれないけど」

 

「そう……それなら止めないわ。折り合いを付けるのを先延ばしにする子も、たくさんいるもの」

 

「……でも、篠原くんはまだ友達だから。そのあたりから整理したい」

 

「あ、ああ……」

 

 篠原くんも返事をしてくれる。

 

「そう、じゃあ私の話もおしまい。そろそろ次の駅よ。終点まで乗るからね」

 

 その後は、3人で新幹線の贅沢を楽しんだ。殆ど他のお客さんもおらず、のびのびと楽しめたと思う。

 本当は列車によってはアテンダントの車内サービスとかがあるそうだが、こちらはシートのみの営業になっている。

 リクライニングでは篠原くんは思いっきりくつろいでたけど、あたしがそのくつろぎ方したらパンツ見えちゃうし……でもそこまでしなくてもいいかな。とも思う。

 それぞれのくつろぎ方でいいだろう。

 

 新幹線の後は、在来線に乗り換える。そこから更に何度か乗り換えて、ようやく家や学校がある沿線まで来た。

 

 

「既に学校の方には連絡してあるから、そのまま家に帰っていいわよ」

 

「永原先生は?」

 

「今回の事件の処理のために学校に行くわ」

 

 それぞれの最寄り駅を考えるとあたしが最初に降りて、永原先生は学校に、そして篠原くんは更にその先になる。

 

 都会の電車はさっきの電車と違い、一駅一駅が短い。

 急行・快速といった速達してくれる電車の一駅くらいの距離と時間だろうか?

 

 

「あ、次だ……」

 

 次で最寄り駅。

 

「石山さん、気をつけてね」

 

「う、うん……」

 

 二人に見送られ、電車を降りる。

 一人で駅を降り、いつもの道を歩いて自宅に着く。そういえば鞄も何もない手ぶらというのは珍しい。

 財布から家の鍵を取り出し開ける。

 

 

「ただいまー!」

 

「あ、優子おかえりなさい。大丈夫だった?」

 

 母さんが出迎えてくれる。やっぱり事情は知っているみたいだ。

 

「あ、うん……守ってくれたから」

 

「あらあら。荷物はまだ届いていないけど、今日には届くそうだから後で洗濯機に入れておくわね。今日は優子、ゆっくり休みなさい」

 

「う、うん」

 

 久しぶりに自室に戻る。

 1時間位PCでゲームをしていたら、運送業者らしき人が荷物を運んでくれた。

 気が抜けたからなのか、少々気分が悪いかもしれない。




これで第三章も終了です
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