永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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かしまし娘たちのお泊まり会 後編

「「「最初はグー! じゃんけんぽん!」」」

 

「「「あいこでしょ!」」」

 

 3人の女の子がじゃんけんで風呂に入る順番を決めている。

 あたしは「客をもてなす側」という理屈で「一番最後でいい」と申し出たため、桂子ちゃん、さくらちゃん、恵美ちゃんの3人がそれぞれじゃんけんでお風呂に入る順番を決めているのだ。

 

「よし決まったわ!」

 

 じゃんけんによると、まずは恵美ちゃん、続いてさくらちゃん、最後に桂子ちゃんで、桂子ちゃんのお風呂が終わったら、あたしと母さんの出番。

 ちなみに、父さんはその更に後ということになっていて、母さんが風呂に出るまで書斎から出てはいけないことになった。

 

 まあ、実際父さんは書斎にこもりがちで、今日は特にその傾向が強いので特に問題はないのだが、それにしたってちょっと可哀想だとは思う。

 

 とは言ってもだ。やっぱり女の子が沢山お風呂に入るんだから仕方ないかなあとも思ってしまう。

 ともあれ、まずは恵美ちゃんがお風呂に入る。女の子たちは全員、自宅から着替えとお風呂のセットを持ってきた。

 

「そんじゃ行ってくるぜ! 後はよろしくな!」

 

「「「いってらっしゃーい!」」」

 

 あたし、桂子ちゃん、さくらちゃんで見送りだ。

 恵美ちゃんはパジャマとタオル、その他お風呂セットを持って風呂場へと消えていく。

 というよりも、教えていないのに場所がわかるってすごいなあ、ちょっと目をそらした時に確認したのかな?

 うーん……まいっか!

 

 

「ねえ優子ちゃん、シャンプー何使ってる?」

 

 恵美ちゃんが風呂場に消えた後、3人が残されたあたしの部屋で、桂子ちゃんが開口一番に聞いてきた。

 

「うーん、男だった時と同じかなあー母さんが使ってたのをなんとなく」

 

「あらあらダメじゃないの。リンスは?」

 

「そ、それも何となく母さんのを……」

 

「ま、まあリンスはともかく、優子さんはシャンプー選びとかしないんですか?」

 

 さくらちゃんが聞く。

 

「う、うん……」

 

「ふむふむ、やっぱりツギハギだね優子ちゃんは」

 

「つ、ツギハギ?」

 

「例えば髪洗いにしても、洗い方はちゃんとしているのにシャンプー選びになるととことん鈍感でしょ? こう女子力のバランスが不均衡って言うの? もちろん全然女子力のないガサツ女よりはよっぽどいいけどさ」

 

「うーん、確かにそう言われてみれば……」

 

「まあ、無理も無いことだし、仕方がないことだとは思うけどやっぱりもっともっと女の子を勉強するといいわよ」

 

「そうですね……優子さんにとっても、新しい発見があると思います」

 

「新しい発見かあ……」

 

 そう言われるとワクワクする。女の子になって最初の1週間で行ったカリキュラムの日々を思い出す。

 あの頃に比べると、女の子としての新しい発見はめっきり減った。

 母さんも、カリキュラムが終わってからは急に大人しくなったし、そのカリキュラムだって一応日常的な学校生活をある程度送れるくらいの訓練でしかない。

 

 桂子ちゃんの行った「ツギハギ」というのはそう言うところだろう。今までも「女の子の感性」の不足はよく指摘されてきたが、「ツギハギ」というのは特にぴったりな表現だ。

 今のあたしの女の子としての振る舞いや行動は、外見が女の子になってしまったがための、とりあえずの応急処理みたいなもの。だから時折「優一」の名残が出る。

 もしかしたら周囲の本音は、「もうそれでもいい」というものかもしれない。

 でもあたしは、過去が嫌いだから、とにかく捨てたいと今まで何度も言ってきた。多分そのおかげで、みんなもっと女の子らしくなれるようにアドバイスをくれているんだと思う。

 ……だから、もっと積極的に聞いていきたい。

 

「シャンプーってどんなのがあるの?」

 

「うーん、詳しく説明すると長いし、私も全部把握しきれてるわけじゃないから……明日の模様替えの時に、一緒に探そうよ!」

 

「そうですね、それがいいと思います」

 

 桂子ちゃんとさくらちゃんが提案してくる。

 

「うん分かった。明日楽しみにしているね」

 

「それよりも模様替えよ。カーテンのサイズ図らせてくれる?」

 

「あ、うん。いいよ」

 

 桂子ちゃんはカーテンの外の雨戸が閉まっていて、外しても外が見えないことを確認してから、カーテンを外す。

 

「あ、そういえば巻き尺がないや……」

 

「……あの! 私がお母さんに聞いてきます!」

 

 さくらちゃんがすぐに提案しすぐに行動する。

 

「あ、あのそういうのはあたしが――」

 

「優子ちゃんはどんと構えてなさいって」

 

「う、うん……」

 

 桂子ちゃんに止められ、部屋の中で待機だ。

 

 

「はーい持ってきました……」

 

「うんありがとう」

 

 2分もしないうちにさくらちゃんが巻き尺を持ってくる。

 

「それじゃ図るわね……」

 

 桂子ちゃんとさくらちゃんによる、部屋の計測が始まった。

 

「ふむふむ、なるほど……」

 

 桂子ちゃんが頷いていて、さくらちゃんがメモ帳にカーテンのサイズをメモする。

 更にベッドのサイズも図り、メモする。

 

「優子ちゃんのベッド、大きいよねー」

 

「ああうん、男だった時は寝相も悪くて、1.5人分くらいの広さにしたのよ。今も実は寝相はよくないんだけど、ちょっと持て余し気味かも」

 

「なるほど。そういうことだったんですか……」

 

「女の子なら二人分入れるわねえ」

 

 さくらちゃんと桂子ちゃんが部屋を歩き回り、あるいは家具の隙間などを把握しながら、あるいはベッドに実際に寝てみたりしたりしつつ、レイアウトを考えている。

 二人ともスカートなので、結構危ないシーンもあるんだが、彼女たちの計算力はすごく、すんでのところで見えないようになっている。

 

「うーん、桂子ちゃんもさくらちゃんもすごいよ」

 

「え? 優子ちゃん、急にどうしたの?」

 

「こんなにあちこち動き回って、寝たり起きたりしてるのに、全然パンツ見えないもの」

 

「え、え? あの……それは……」

 

「もしあたしが同じ服で同じことしたら、簡単にパンツ見えちゃう気がするのよ」

 

 さくらちゃんは少し長めと言っても膝丈だし、桂子ちゃんに至ってはあたしと同じくミニだ。

 

「あーなるほど、そのあたりは計算よ計算。スカートで寝ようとするときにも順序があるのよ」

 

「なるべく膝を曲げない……それから……足を広げないの2つを守っていれば……見えないんですよ」

 

「あーそう言えば女の子座りからの立ち上がり方はカリキュラムでやったわね! それに似てるかも!?」

 

「え? そうなの? 優子ちゃん、女の子座りしてみて」

 

「うん」

 

 あたしは床に座って両足を後ろ側にW字に広げ、その間にお尻を落とす例の「女の子座り」をする。

 

「おー、優子ちゃんさすが! やっぱ女の子よねえ……」

 

「えへへ……」

 

 簡単にできることでもやっぱ褒められると照れてしまう。男には基本的に出来ない座り方なので、女の子になったという自覚を強める行為だ。

 

「じゃあここからパンツ見えないように立ってみて」

 

「うん」

 

 カリキュラムの時にやった時のように、まず少し腰を浮かせて足を横に放り投げる座り方にし、そこからまず中腰になって、更に膝もなるべく角度をつけずに曲げつつ、立ち上がってみる。

 

「おー、すごいねえ……ところでどうしてこれがカリキュラムに?」

 

「これは学校行事の時に制服で床に座ることもあるからって……その時は制服で体育座りは絶対ダメってきつく言われたわね」

 

「へえー、そういえばカリキュラムでは『恥じらいの心の育成』に重点が置かれてたんだって?」

 

「う、うん……特にミニスカートでの振る舞いは叩き込まれたのよねえ……」

 

 今となってはもう懐かしい思い出の一コマだけど。スカートめくりのおしおきのことはさくらちゃんもいるので話さないでおく。

 

「そうですねー、小谷学園は比較的スカート短い女子が多いですから……そういえば優子さんも最初から短かったですよねえ……」

 

「あの時から、とにかく女の子らしくなりたいって気持ちが強くて……」

 

 復学したばかりの頃は、今以上に優一の面影に怯える日だった。まだクラスの男子も、それを引きずってて、ちょっと嫌な思いをしちゃったし。

 

 

「お待たせー!」

 

「あ、恵美ちゃんおかえりなさい!」

 

 パジャマ姿でタオルを頭にかけ、お風呂セットを持った風呂上がりの恵美ちゃんが部屋に入ってくる。

 林間学校で着てたパジャマと同じかな?

 

「えっと次は……」

 

「わ、私です……」

 

 さくらちゃんがやはり恵美ちゃん同様パジャマとお風呂セットを持って、部屋に入る。

 

「およ? カーテン外してどうしたんだ?」

 

 部屋の異変に気付いた恵美ちゃんが声をかける。

 

「ああ、明日ホームセンター行くでしょ。そのための準備よ」

 

「おー気が効くな。そっか、お風呂から出たら勉強の時間だもんなー」

 

「夏休みの宿題消化でしょ? 恵美ちゃんは?」

 

「あたいはテニスが忙しくて全然。そう言う優子はどうなんだ?」

 

「うーん、7割くらいかな? 女の子の日の時にやったら意外に捗っちゃって……」

 

「へー意外だな。あたいはそんな日はその日用の練習したらぼーっと休むのが日課だぜ……そう言う桂子はどうなんだ?」

 

「半分くらいよ。優子ちゃんよりは遅れているかなあ……」

 

 テーブルでそれぞれの科目の進捗状況を確認する。

 

「うわあ、あたいが一番遅れてる。これでも間に合うペースのはずなのになあ……」

 

 確かに計算上はそうだが、少し予定は前倒しした方がいいのも事実。まあ、そのためのお泊り会でもある。

 

 

  コンコン

 

「はーい」

 

  ガチャッ

 

「お待たせしました……」

 

 やはりお風呂あがり、地味なパジャマ姿のさくらちゃんが登場し、桂子ちゃんが入れ替わりで風呂に入る。

 

「あ、さくらちゃん、夏休みの宿題はどうなってるの?」

 

「あー殆ど終わってるわよ。あと1つ2つくらい」

 

「え? 本当?」

 

「うん……見る?」

 

 さくらちゃんが問題集やプリントを出す。

 

「えっと……まず英語と数学は全部終わってます……永原先生の古典はまだ少し残っていて、それから――」

 

 さくらちゃんが進捗状況を報告する。間違いなくあたしよりいい。

 

「うへーすげえー」

 

「あ、私は部活がないから……その分有利なだけで、恵美さんはテニスで忙しいでしょうし……」

 

 さくらちゃんが申し訳なさそうに言う。

 

「まあまあ、そう謙虚になるなよ。あたいだって休息日とかにちゃんとやらなきゃいけねえんだしよ」

 

「……す、すみません……」

 

 さくらちゃんはどうも気が弱く、こういうことで謝りがちだ。

 気弱なのはあたしもだけど……

 

「あー、うん。それがさくらだもんな……」

 

「は、はい……」

 

「無理して強がる必要はねえぜ。さくらは女の子だからな。女の子らしくなる方が楽ってもんだ」

 

「恵美さんも……変わりましたよね?」

 

「そうか? あたいは相変わらずテニスバカだぜ」

 

「いえ、そうではなく……」

 

「うーん、あたいにはよくわからねえや」

 

「そうですか……」

 

 会話が途切れ、しばらくすると、桂子ちゃんが出てきた。

 開口一番「やっぱり優子ちゃんはシャンプーが手抜き過ぎる」と言ってきた。シャンプーの知識は明日、桂子ちゃんに教えてもらうことになるだろう。

 最後はあたし。もちろんパジャマを持って脱衣所に入り、まっぱになってお風呂場へ。

 どれだけ慣れても、この裸をエロくないと思わない日はないだろう。

 

 身体と頭を丹念に洗い、湯船に浸かりながら、さっきの恵美ちゃんとさくらちゃんのやり取りを振り返る。

 

 以前の恵美ちゃんなら「弱々しい奴だ」とか「情けない」と言った言葉を投げつけてきただろう。

 あたしがいじめられていた時の一件以来、2年2組の悪い所が……全てがうまく行った気がする。

 

 乱暴で荒れていた問題児の石山優一は、石山優子という女の子に生まれ変わった。彼女……つまりあたしの努力もあって性格は正反対で弱くて泣き虫、だけど優しいとみんなから言われる女の子になれた。

 女の子になったばかりの頃は、やっぱり優一の精算ができていなくて、それがいじめにも繋がったんだと思う。

 今思えば、あれは罰に近いものだったのかもしれない。優一の乱暴のせいで、男子たちは性格さえ歪ませてしまったんだから。

 でも、その「罰」も、あたしが乱暴していた期間に比べれば短い。弱々しくなったあたしは、すぐに耐えられなくなって泣いてしまった。

 

 だけど、あたしが辛かった時、桂子ちゃんと恵美ちゃんが協力するようになった。それまで、クラスの女子は完全に分裂していた。

 もしあたしがいじめられなかったら、今も桂子ちゃんと恵美ちゃんは喧嘩してて、こうやって仲良くお泊り会に来ることもなかった。

 

 あたしをいじめていた男子たちも、「優一はもういない」と認識し、そして最終的にはあたしの改悛の情を認めてくれた。

 あたしが優一時代に性格を歪ませてしまった男子たちも、やがて本来の性格に戻ってくれた。

 

 もし、あたしが女の子にならなかったら、あたしは罪悪感を抱えたまま、優一として乱暴に過ごし、話し相手も桂子ちゃんだけになっていた。

 クラスの女子も、桂子ちゃんのグループと恵美ちゃんのグループで分裂したまま、険悪な関係が続いていたはずだ。

 そして、あたしがいじめていた男子たちも、性格の歪みは更にひどくなって、もしかしたら取り返しの付かないことになったかもしれない。

 

 ……ああ、やっぱり、あたしが女の子にされたのは「救い」だった。あたしだけじゃない、2年2組のみんなが、救われていたんだ。

 いじめられたことだって……あたしはいじめられたからこそ、今までやってきた自分の悪事を深く知り、そして痛みを知ることができたんだと、今になって思うことが出来た。

 あの辛い日々のおかげで、より強く、女の子らしい女の子として生まれ変わることが出来たと思う。

 

 そしてあたしにも、好きな男の子が出来た。

 その子はあたしが優一だった時に一番いじめてた子で、あたしが女の子になって逆にいじめられたけど、元の性格に戻ってからは、責任感が強くて、女の子を守れる男の子になった。

 あたしはその子に何度も助けられて、いつか顔を合わせるだけで熱くなるようになった。

 それはその子も同じ、でもその子は、あたしをいじめたことを、引きずってもいる。だけど、何度も守るうちに、その子の中でも折り合いがついた。

 ……篠原浩介くん。あたしの大好きな人。

 

 でも、まだ迷いがある。心の中では、もう男の子を好きになることがわかった。

 あたしは林間学校で篠原くんに守られて、優しくされて、落とされた。多分これ以上ないというくらいに、王道な惚れ方だと思う。

 問題は身体的な所。そういった深層面では、あちこちに「優一」の名残が残っている。

 もちろん全部消すことは出来ないけど、まだ深層心理が男性になっている。

 心は男の子を恋愛対象にしているけど、身体は違うということ。

 

 これはより深い所で女の子にならないと解決できないという。

 明日の模様替えでそれが出来るかは分からないけど、でも、もう心が男の子に恋してしまっている以上、もう引き返すことは出来ない。

 もし彼氏になるとして、キスとかエッチということも、考えていかなければいけないことだから。

 

 決意を新たにし、湯船から出る。

 髪を拭き、身体を拭き、脱衣所でも拭き、ドライヤーをかけてパジャマを着る。

 ワンピースタイプのパジャマは着心地も良くてお気に入りだし、今日もお泊まり会だからお洒落したい。さすがに頭のリボンは外すけど。

 

 

「お待たせー」

 

「お、優子、そのパジャマスカートか?」

 

「えへへ、寝心地いいから気に入ってるのよ」

 

「そういえば、優子ちゃんそのパジャマ林間学校でも着てたよね?」

 

「うん、流石にワンピースタイプのパジャマはこれしかないから、あんまり着てないのよ」

 

「まあ……いいと思いますよ」

 

「よし、じゃあこの宿題を片付けようぜ!」

 

「あ、うん……」

 

 もう一度進捗状況を確認し、宿題消化に入った。

 ちなみに、意外にも成績はこの中ではあたしが一番だった。さくらちゃんは結構問題を間違えてるところもあった。逆に恵美ちゃんはテニス漬けということもあって、結構学力が危うい印象を受けた。

 

 母さんが「もう11時よー」と言うまで勉強会は続き、あたしたちは眠りにつく。

 当初、あたしは床で寝るつもりでそのように申し出たが、強引にベッドに押し込められ、寝相が悪いということでベッドには逆に寝相のいいさくらちゃんが寝る。床には布団を敷き、恵美ちゃんと桂子ちゃんが、それぞれ寝ることになった。

 

 電気を消してみんなで「お休みなさい」をし、一夜を過ごした。

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