永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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決意

「ねえ、ゆう。この後買い物に付き合ってほしいんだけど?」

 

 病院から出ると、早速母さんが「買い物に付き合って欲しい」と言う。

 

「え? またどうして?」

 

「どうしてって……ゆう、私服がこれだけじゃダメでしょ……」

 

「あそっか」

 

 よく考えれば当然よね。

 

「うふふ、よく見ると可愛い娘ねえ……これは服の選びがいがあるわね……」

 

 な、なんか母さんの方角から悪寒がしたような気がするが、まあ気のせいだろう。

 ともあれ、地元のデパートで服を買う。1種類だけじゃどうにもならない。

 

 さて、若い女性向けのエリアに着いた。しかも、よりにもよって最初に連れて行かれたのがここだ。

 

「し、下着コーナー……!」

 

「ええ、ゆうも女性として生きてくんでしょ? まずはこういう所に慣れないと」

 

「そ、そうは言っても段階が……」

 

「先延ばしにしてもしょうがないわよ。さあ、サイズはもうお母さんが把握してるから、ゆっくり回るわよ」

 

「はいはい」

 

 正直まだ目が慣れないが、一応暫定的だが男には戻らずに数百年数千年と女として生きていくということになっている以上、こういうところに慣れるしかあるまい。

 

 

「ねえねえ、こんなのどうかしら?」

 

「ちょ、ちょっと大胆すぎるよー!」

 

「何言ってるの? 似合うわよ?」

 

 母さんが取り出したのは、今穿いてるのよりも明らかに布面積が小さく、色も派手な色のパンツだ。

 俺はつい昨日の昼まで男だったから分かるが、こういうのは中年オヤジとかじゃないと男受けしない。

 

「そ、その……そういうのは、あんまり男には受けないっていうか……!」

 

「まあ! お母さん女だからよく分からないけど、こういう勝負下着でお父さんを落としたのよ」

 

「どうだか……?」

 

「じゃ、じゃあゆうはどういうのがいいのよ?」

 

「俺……わ、私はっ、こっちの方がいいと思う」

 

 今穿いてるのと同じく、シンプルな白いフルバックショーツ。男受けする色といえば色々意見が別れるが、少なくとも白なら悪い印象は絶対持たれない。

 

「えー、これダサいわよ……」

 

「お母さん、若い男はこういうのが好きなんです」

 

 何故か丁寧語で話す。しかし、最初こそ緊張した下着売り場だが、30秒で慣れてしまえばどうってこと無いな。

 その後、またさっきみたいな大胆なパンツを勧めてきた母さんに対して、俺は縞パンに手を伸ばす。これも派手と言えば派手だがさっきのよりはずっとマシだ。

 

 やっぱ、俺が女として可愛いと思うのはこれなんだよね。まあ、わざと見せるわけじゃないけどさ。ミニスカートじゃどうしたって見える時は見えるだろうし現に俺の学校でも女子がそれなりにパンチラしてるし。

 お母さんはまた「子供っぽい」と反論してきたが、若い男の視点を知ってる俺がなんとか説き伏せることが出来た。

 

 母さん曰く、「ま、ゆうが言うと説得力半端ないからね」ということだそうだ。

 

 

 さて、パンツは白、縞パン、後は薄い色中心に固めてく。母さんが出してきた黒や紫のようなどぎつい色は全部却下だ。

 

 さて、パンツの方はともかく、ブラジャーはデザインが少なかった。

 とにかくこのサイズだと、なかなか難しい。更に母さん曰く「上下デザインを揃えないと駄目」というんだ。

 元男子としても、そこまでこだわらなくても、と言ったものの、母さんはこれだけは頑として譲らなかった。

 ともあれ、大半がセットになっていて、色が揃わないと言って却下されたオレンジの縞パン以外は全て揃えられた。

 

 ブラジャーの方は、そこまで多くの選択肢もなく、割りと意見の衝突もなかった。

 母さんは、俺用の大量の下着を持ってレジへと行く。

 

 

 さて、下着選びと購入が終わったら、次は服のコーナーだ。

 母さんはますます張り切ってる様子だ。

 

「さあさあ、可愛い娘のために、選んじゃうよー」

 

「はい、これ!」

 

「う、うわっ短っ!」

 

 いきなり渡してきたのはデニムのミニスカート、しかもめちゃくちゃ短い。街でも極稀にしか見ないようなものだ。ってこれじゃ座れないだろ……!

 

「ちょ、ちょっと短すぎない?」

 

「何言ってるの、今のゆうは美人なんだから肌は見せてなんぼよ。さ、試着して試着して!」

 

「わっ……わっ! 押さないでよ!」

 

 母さんに押される、以前なら押されてもびくともしなかったのに、この体になって簡単に押されるようになってしまった。

 

 母さんが素早くカーテンを閉める。もちろん外で監視しているから脱出は不可能だ。

 ううっ、着るしか無いか……

 

 着ていたジーンズを脱ぎ、そのままこのスカートに穿き替える。

 うわあ、凄いスースーする。落ち着かないよこれ。

 

 鏡で見る。凄い脚が露出していて……うううううっ、自分しか見てないのに恥ずかしいよお……

 

「ゆうー? 大丈夫ー?」

 

 母さんが催促する。見せたくないけど、いつまでもここに居たら開けられるよなあ。

 意を決してカーテンを開けてみる。

 

「ど、どうかな……?」

 

「まあ、可愛いわねえ! 我が娘ながら嫉妬しちゃうわあ!」

 

「た、確かにこれは可愛いけど、こ、この服じゃ座れないよ! パンツ見えちゃう!」

 

「ま、まあまあ。可愛ければいいのよ可愛ければ。恥ずかしがったり隠したりする仕草だって可愛いのよ」

 

「そ、そりゃそうだけどさ……」

 

 ど、同意せざるを得ないのが元男の悲しい性だ……

 

「それに、永原先生のプログラムでも、ミニスカート穿いて外出するってのがあったでしょ?」

 

「う、うん……でもそれは……こっちの方がいいと思うよ!」

 

 俺が指差したのは青いフレアミニのスカートで今試着中のデニムミニと同じくらいの丈だけど、デニムミニよりはまだ座れる分マシだと思いたい。

 

「まあ! それも可愛いわね、試着してみてよ!」

 

 良かった、今着てるほうが可愛いと言われて押し切られたらたまらない。

 

 もう一度試着室に入り着てみる。デニムミニを脱ぎ、畳んだら、このフレアミニを着る。

 うわっ、可愛いけど、脚にフィットしてない分さっきよりももっとスースーする……

 とにかく、母さんに見てもらわないと。

 

「ど、どうかな?」

 

「まあ! とって可愛いわよ!」

 

「あ、ありがとう……」

 

 内心こそばゆかったが、ここまで可愛い可愛い言われたら不感症にもなる。

 そもそも、俺自身が最初に姿見で女の子になった自分を見た時の第一印象も「可愛い」だったし。

 

「ふふ、でもさっきのも可愛かったから、両方買っちゃうわね。そうそう、こっちはどう?」

 

 また別のデザインのミニスカート、巻きスカートっていうのかな? さっきよりは丈が長めだが真っ赤な服で、少し色使いが派手なような……

 そう考えてる間に、母さんによって試着室に入れられる。

 

 

「……まあ可愛いわね! これも買っちゃうわ」

 

 もう知らん……買いたきゃ買え。

 母さんはせわしなく会計と売り場を往復する。

 スカート攻勢が終わったかと思えば更にワンピースやトップスなどにも手を出し始める。

 

「ねえねえ、ゆう、これはどう?」

 

 ヒョウ柄のワンピースを出してくる。これじゃ「大阪のおばちゃん」じゃないか。

 

「えーこれは可愛くないと思うよ。こっちがいい」

 

「そう? 地味じゃないの?」

 

「白は清純の象徴だからさ、頼むよ」

 

 俺は真っ白なワンピースを指差した。まだこっちの方が男子受け狙える分マシだ。

 

「分かったわ。でも、少しはお母さんの言うことも聞いてね。あんまり男子受けばっか狙ってると、女子から嫌われるわよ。お母さんでさえ、ゆうの今の身体には嫉妬しちゃいそうだし」

 

 女子受けと言われてもなあ……女の子が女の子に好かれてどうするんだろ?

 ……あれ? そういえばどうしてさっきから俺は男子受けなんか狙ってるんだ? 母さんの趣味から逃れるためだっけ?

 

 えーっと、もう一度整理すると、今の俺は女の子で、女の子だから可愛い服ってのは女の子の視点……のはずなのにさっきから男子の視線ばっかだぞ。

 えーっと、女の子は男の子に好かれたい生き物だから男子受け狙ってるとか? って、だとしたら半日足らずで俺は精神の女性化が始まってるということか? いやでも、今日の永原先生の話ならむしろそれはいいことで、いやでもでも……

 

 ……ええい、もうどうでもいいや。

 

「あ、ゆう、これもいいんじゃない?」

 

「え? ちょっと小さすぎない?」

 

 今度はTシャツを取り出した。でもサイズが小さい気がする。

 

「まあまあ、さっきのフレアミニと組み合わせて着てみてよ?」

 

 それにしても、さっきから試着しすぎだが、大丈夫なのか?

 とりあえず、再び試着室に入る。

 

 今回は上下の試着だから上下脱いでまず下着姿になる。うわっ、エロい。

 まずフレアのミニから穿く。そして、小さそうなシャツを着る。

 

 ……ちょっと待て! これ、丈が足りなくてへそが見えてるぞ! それに胸元も空いていておおよそ下着が見えない範囲なら最大限に露出が高い格好だ。

 

「ちょ、ちょっと! これは流石に嫌だよ!」

 

 俺は母さんに訴えかける。

 

「まあ、ちょっと見せてよ」

 

 そう言うは早く、問答無用でカーテンを開けてくる。

 

「あらあら、とってもスケベで可愛いわよ! これなら男子はイチコロよ!」

 

「いや、これはやりすぎだから、逆効果だから!」

 

 援助交際の時ならいいけどさ、と言うかそれくらいしか使い道がない。

 

「えー、そうなのー?」

 

「そうだよ、こんな格好して出歩いたら命がいくつあっても足りないよ!!!」

 

「あらそう、確かに痴漢には持ってこいよねえ……でもね、将来彼氏や旦那さんができた時に『いざ』というときに使いなさい」

 

 なっ……何を言うんだ……いやいや、女の子なんだから彼氏作るもんだっていってもなあ……

 

「そ、そう言う服はで、出来てからでいいでしょ」

 

「まあまあ、それに夏場の暑い日に家でいるときなんかにも使えるわよ」

 

 俺は「いくら家の中でもこれは嫌だよ」と訴えたが、結局これも買い物かごの中だ

 

「さて、一通り買い終わったけど、次はパーティー用のドレスね……」

 

「あ、あの! 可愛いのもいいんだけど、動きやすかったり過ごしやすい服も買ってよ!」

 

「そういえばそうねえ、パジャマとかも必要だよね」

 

 ふう、ようやくラフなズボンとかも買ってくれるようになった。

 パジャマもパジャマでまたピンク色中心だし、何故かスカートのパジャマもあったけど、まあ着心地良ければいいや。というか、現実逃避しないとやってられん。

 

 

 母さんが「これがいい」と言うと、大抵は買ってくれたのも幸いした。まあ、今の服でさえそうだけど、何着ても似合っちゃうってのも考えものだよなあ……

 

 

 下着やパジャマの他にも、普段着は夏用と冬用も必要だ。

 防寒のためのコートやマフラーといった類のものも買っていく。とにかく男時代に使ってた衣類はほぼ全て大きくなりすぎて使い物にならなくなっているということもあるだろうが、それにしてもあまりに大量だ。

 

 途中には母さんに1時間ほど待たされて近くのホームセンターから台車を買ってくる有様だし。

 

 

「それにしても、こんなに買い込んじゃって大丈夫なのか?」

 

「大丈夫よ、さっきの永原先生の話、聞いてなかったの? TS病は国指定の難病かつ極めて稀な病気で、しかも体格が変わっちゃうから衣服代も含めてある程度は生命保険が降りるって」

 

「そ、そうなのか……!」

 

「だから、今のうちに買っておくのよ! さあ、パーティー用のドレスを買うわよ」

 

 パーティ用のドレス、女性用のスーツ類、家事の際のエプロン、そういったいつ使うのか? と言うような服も買わされた。

 更に別のフロアに移動、ここでは靴を買わされた。普段の外出用とサンダルもいくつか買ってくれた。

 更に様々な形状の靴下や、防寒対策としてストッキングや手袋、更には長い髪を止めるための髪留めや、明らかにオシャレのための髪飾りやリボンまである。

 

 おいおい、これ保険で全部降りるのか? ちょっと信じられないんだけど。

 

 

 こうしているうちに、あれよあれよという間に荷物の量は膨れ上がった。

 昨今某国人によって行われている「爆買い」さえ真っ青な状況だ。というか、エレベーター大丈夫かこれ?

 

「あ、お客様、その荷物はエレベーターには難しいと思います。こちらの貨物用のエレベーターを使って下さい」

 

 ああ、やっぱり誘導された。まあ、店側としても大量に買ってくれるのはありがたいから買いすぎとは言わないけどってことだろうな。

 

 家に帰る頃には、すっかり日が暮れてしまっていた。

 

 

 あー、なんか凄い懐かしい。

 俺の部屋に入る。男の部屋ということもあって、片付けられていない乱雑さだ。

 気分転換にエロ本でも読むかなあ。

 ……いや、やめておこう、なんかそう言う気分じゃない。当事者になっちゃったせいか。

 

 ともあれ、疲れは不思議と出なかった。まあ、あんだけ寝てればねえ……

 それよりも、大変なのは今後の生活だ。まず気持ちの整理だ。

 今の俺の気持ちとしては……消極的だが永原先生のカリキュラムを受けたいと思う。

 

 というよりも、リスクが一番小さい方法はそれしか無い。

 家族で相談しろと言うが、「男に戻りたいなんて願っちゃ駄目」なんて言われれば、安全な選択肢なんて永原先生のプログラムを受けて一気に内面から女の子になりきってしまうしか無い。

 

 

 ……それに、俺は両親を裏切り続けた。せっかく「優一」と言う名前をもらったのに、名前と真逆のことをしていた。本当に、本当に申し訳ないと思っているが、結局男の頃はやめられなかった。

 でも、女の子になったら、優しくなれるのだろうか? 女の子らしくなれば、優しくなれるのだろうか? 分からない。でも、少なくとも乱暴な女の子は女の子らしいとは言わないことくらいは分かる。

 

「ゆう、ご飯よ!」

 

「あいあい!」

 

 実際にはこう言ってもできるまで時間かかるから後数分待てという意味だ。

 ……「ゆう」か、名前も変わるんだよな。

 「優一」のまま女の子として生きるのは不便だろう。

 

 でも、なんて名前になるんだろう? また両親が決めるのか?

 この年で? でも、俺が決めるにしてどうするんだ?

 

 ……そういえば、小学生の時、木ノ本桂子が言ってたよな。

 

「私、子って名前なんて古いって言われたけど、そうじゃないって。お父さんがね、子は一と了……はじまりとおわりって文字にわけられるから、最初から終わりまでずっとそう言う心を持ってほしいって意味があるんだって」

 

 桂の意味は忘れてしまったが、木ノ本が言っていた「子」と言う字にこめられた意味は今でも鮮明に覚えている。

 

 

 「優子(ゆうこ)」っかあ、優しい子、ずっと優しい子か……

 ……いいじゃない、おあつらえ向きだよ。果たして今後の俺の人生に「了」があるのかさえわからないが、でももし死ぬ時があったとしても、優しい女の子として死にたい。

 

 「優一」が「優子」、適当だって? 安直だって?

 

 ……否!

 

 そうだ、これから生きる俺には、乱暴に育った俺が、名前を汚した俺が生まれ変わるには「優子」という名前以外にない。そう確信できる。

 

 そうだ、だったら、カリキュラムは真剣に取り組まないと。今まで両親を裏切り続けた精算と償い、そして何より、俺自身が変わりたい。

 だから、女の子に、俺はなりたい。

 

 よしっ、気持ちの整理ができた。

 

 食卓に向かう。

 案の定まだ準備していた。母さんが「どうしてすぐに来ないの?」と言った。

 家の中では大人しい子を演じていたからそのまま黙り込むことも多かったが、今回は「自分の将来について考え事をしていた」と正直に答えた。

 

 でも、まだ俺の決意は話せない。

 

 母さんが「今夜ゆっくり考えなさい、明日の昼食の後、永原先生も含めて聞くから」と言ってきたからだ。

 

 ……にしても、食事の量が多い。最後の方はかなり苦しみながら完食した。

 いつもと変わらない量のはずなのに……あーそっか、両親はまだ男の頃の感覚で作ってるんだ。伝えそこねたのは俺のミスだな。やはりこういう状況では「ほうれんそう」が肝心だ。




投稿ペースはこんな感じでいいでしょうか?
とりあえず395話までは書き溜めてあります。
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