永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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日焼け止めクリーム

「ど、どこから塗ればいい?」

 

「とりあえず肌に塗ってくれればいいから。場所は任せるわよ」

 

「お、おう……」

 

 パカっと蓋が開く音がする。あたしは何処を触られてもいいように身構える。

 ふと左腕が持ち上げられる感覚。

 

「い、いくぞ……」

 

「はい……」

 

 左腕に浩介くんの手が触れる。心臓はこれからされることにときめいてドキドキし、体の奥は逆に反射的な嫌悪感。

 でもだめ、我慢しなきゃ。あたしは女の子……あたしは女の子……

 

 まず、手のひらから手の裏がクリームで塗られていく、そして腕へ、腋を避けて肩へ。

 そのまま首を塗ってくれる。

 

「そうそう、そこが結構焼けるのよ。ありがとう」

 

「お、おう……」

 

 突然お礼を言われた浩介くんがぎこちなく返事する。

 浩介くんの手が右肩から右腕へと移り、徐々に日焼け止めクリームで塗られていく。そして腕から手の裏、最後に手のひらと、先程の逆を行く。

 

「ぬ、塗ったぞ……」

 

「手と首だけじゃダメよお……」

 

 これじゃ背中も足も日焼けしちゃう。

 

「う、うん……分かった」

 

 ゴクリと唾を飲み込むような音とともに、右足が持ち上がる。

 あたしは足の裏をくすぐられた。

 

「きゃはっはっ……あはははは」

 

 思わず笑い声が出る。

 

「ど、どうした?」

 

「ご、ゴメン……く、くすぐったくて……つ、続けて……」

 

「うん……」

 

 ゆっくりと足の裏をクリームで塗られていく。

 

「きゃははははは」

 

 浩介くんに塗られると同時に、足の裏を無意識にくすぐられて笑い声が出る。ちょっと水着がめくれてる気がするのでさり気なく戻す。

 

 ちらりと後ろを見ると、浩介くんがあたしのお尻を凝視していることがわかった。

 

 あたしも浩介くんの気持ちが分かってしまう。

 浩介くんはきっとあの中に手を入れたい、触りたい、もっと生々しく言えばあたしを犯したいという欲望と必死に戦っているに違いない。

 そう考えるとまた体の奥が熱くなる。

 

 あたしの心はそうだ。浩介くんにあの中に手を入れられたい、触られたい、もっと言えばあたしは浩介くんに犯されたい。

 まだ露骨に出てないけど、心の何処かでそんなことを考えてしまっていることだろう。でも、身体の反射の方は、さっきから嫌がっている信号ばかりだしている。

 あたしは脳を使って、「あたしは女の子」とひたすら暗示をかけ、強引にそれを押し殺す。

 

 右足の膝辺りに来ると、今度は左足の裏をさっきより丁寧に塗ってくれる。

 今度はかなり丁寧に塗ってくれたのであまり笑わない。

 

 しかし、またしても浩介くんの手が止まってしまう。

 

「あ、あの……」

 

 浩介くんが言う。

 

「浩介くん、太腿もだよ」

 

「あうあう……」

 

 浩介くんが恐る恐る太腿に触れてくる。あたしは太腿に、クリームと浩介くんの手の感触を感じる。

 

「んんっ……」

 

 ちょっとだけエッチな声が漏れる。パレオに触れないようにしているのか右と左を忙しなく往復していて焦らしているような感覚を受ける。

 

「あっとあの……」

 

 浩介くんが話しかけてくる。

 

「あ、ゴメン、ちょっと待ってね」

 

 あたしは少しだけ背筋で背中を起こすと、背中に手をやり、パチンと水着のブラジャーを外す。

 

「はい、背中もお願いね」

 

「う、うん……わわっわかったよ……」

 

 浩介くんの手がまず肩に触れる。背中をゆっくり撫で回され、クリームを塗られていく。

 ぐるぐると円を書くように触られる。浩介くんが塗ってくれるクリームの触感が心地よい。何より浩介くんに触られていると思うと否が応でも興奮度は高まる。

 心臓はもう破裂しそうにバクバク行っている。普通なら、あたしの水着は外側の海水だけではなく、内側からも濡れていなきゃいけないのに、そんな気配は一向に来ない。

 

 後ろの浩介くんからは、胸がちょっと見えているはずだがそのことには触れない。パレオの上の腰の部分まで満遍なく日焼け止めクリームが塗られていく。

 そして腋から腰にかけて、側面に浩介くんの手が回り、クリームでゆっくりと両手で塗られていく。胸の高さの所は特にぎこちなく、だが慎重にやってくれた。

 

「浩介くん、これ付けてくれる?」

 

「え? え!?」

 

「だって、浩介くんが付けてくれないとぽろりしちゃうよ……」

 

 あたしが意地悪に言う。でも実際に付けてくれないと立てない。

 

「わわっ、分かったよ……ゴクッ」

 

 浩介くんがまた唾を飲み込む様子が聞き取れた。

 

 浩介くんが水着の両端をつかむ。水着を少し上に引っ張られて、胸が圧迫される感覚を覚える。

 間接的だけど、男の子に胸を弄られちゃったの初めてかも。

 今までの女子同士で結構セクハラされてたのに比べれば小さなことだけど、やっぱり異性というだけでドキドキが違う。

 

「あれ? い、石山……これどうやってはめるの?」

 

「うーん? カチって音が鳴れば大丈夫よ」

 

 その後も浩介くんは何度も悪戦苦闘し、そのたびに胸が押される感覚がし、そのたびにあたしは心臓を興奮させ、代わりに身体の本能が拒絶反応を起こす。

 40秒くらいたち、ようやく背中から「カチッ」と鳴る音がする。

 

「で、できたよ……こ、これで全部かな?」

 

「うーん、まだかなあ……」

 

 本来ならこれくらいで十分だけど、あたしは、兼ねてから考えていたことを実行する。

 

「え? でもどこが……」

 

「ほら、水着の中よ」

 

「ええ!? いやいやそれは何でも……」

 

「お尻は塗らなくてもいいけど、このスカート外すこともあるのよ。だから念のためそこの腰をお願い」

 

「え!? でもどうやって……」

 

「そ、それは……その……」

 

 ううっ、口で言うのはやっぱり恥ずかしいけど、今更引けないや……

 

「め、めくるなり、中に手を入れるなりしてくれればいいから!」

 

 はうう……

 

「ううっ……」

 

 浩介くんがまた息をのむ。緊張で声にならないうめき声を出している。

 そりゃあドキドキするだろう。

 

「み、水着だから恥ずかしくないし!」

 

 明らかに強がった声で言う。

 

「わ、分かったよ……」

 

 浩介くんにパレオの袖をつかまれる。一気にぶわっではなく、ゆっくりした速度でめくられていく。

 パレオで隠されていた白い水着とお尻のラインを丸見えにされ、水着よりも上の腰の部分を塗るため、完全にめくれ上がった状態にさせられる。

 

「いやーん」

 

 ついエッチな声が出てしまう。計算したわけじゃない。

 普段は下着とか見られるのを恥ずかしがるのに、海では開放的にエロくなるギャップが萌えポイントだから、恥ずかしがっても仕方ないはずなのだ。

 

「うっ……恥ずかしくないんじゃなかったのかよ……」

 

「だ、だって……いくら水着って言っても……やっぱり浩介くんにめくられると恥ずかしいよお……」

 

 やっぱりスカート状のものをめくられるっていうのは水着でも恥ずかしいのかも。

 これって女心が分かってないせいかな? それとも、女心なんだろうか?

 女の子になったばかりのあたしには分からない。

 

「と、とにかく……塗るぞ……」

 

「う、うん……」

 

 水着のショーツが風を受けて少し涼しい。本来ならパレオなしの人が多いから、これが普通なんだけど、やっぱり腰にあるパレオの感覚がスカートと、水着のショーツも下着と錯覚してしまう。

 

「んっ……」

 

 浩介くんがあたしの大きなお尻に触れないように緊張しているのかさっきよりもかなりぎこちなく塗ってくる。

 一瞬ビクッと身体が気持ち悪くなる。ダメダメ、あたしは女の子……あたしは女の子……女の子は男の子が好き……

 背中から下腹部の横側にかけてを塗ってくれる。これで本当に背中側の日焼け止めクリームは終わりだ。

 何だろう、名残惜しい気がする。

 

「お、終わったぞ……」

 

「あ、あの……!」

 

「ん?」

 

「スカート、元に戻してえ……」

 

 自分でも信じられないくらい甘えた声で言う。

 好きな男の子に構われたいがために、立ち上がれば直るという単純なことにさえ気付けないくらい頭が劣化する。

 

「お、おう……」

 

 浩介くんがゆっくり丁寧にパレオを元に戻してくれる。

 水着だからパレオというんだっていうこと、自分でも分かっているはずなのについスカートと言ってしまう。まるでスカートめくりされた女の子がプレイの一環として元に戻す様に懇願しているみたいな構図だ。

 

「はにゃーやっぱり恥ずかしかったー」

 

 全身が熱くなる感じで、恥じらうあたし。

 

「い、石山……お前、すげえな……」

 

「ん?」

 

「本当にお前は、昔……石山優一って言われていたのか?」

 

「ふふっ、そうよ。でも、そういう風に思ってしまわれちゃうくらい女の子になれたなら、うれしいわ」

 

「昔のお前と、何もかも正反対で……な」

 

 うん、努力が実ってる。

 

「ふふ、とにかくありがとう。あ、ちょっと待って前も塗らなきゃ」

 

「ふええ!? まま、前……」

 

 浩介くんが動揺している。ちょっとあたしも赤くなる。

 

「し、心配しないで! 前はひとりでできるから……ク、クリーム貸して!」

 

 浩介くんが顔をそらしながら返してくる。

 恥ずかしいけど見てほしい、恥ずかしいけど見られたい。もっと浩介くんに、あたしのことを知ってほしい。

 

 むしろ、浩介くんの前でもっともっと恥ずかしい目に遭いたい。顔を真っ赤にしたい。赤い顔を見られたい。

 ……頭が変になっちゃう。恋をすると女の子は変わるというけど、それは本当。

 クリームを手に取り、まずおでこに塗る、次いで頬っぺたとあごと耳、耳も後ろも入念に塗る。

 首の全部から前の肩を塗る。

 浩介くんは顔を赤くしながら顔をそらす。

 

「浩介くん……お願い……あたしを見て……」

 

 猫のように甘い声。好きな男の子の前で恥ずかしいところを見られる感覚。本来なら恥ずかしい目には遭いたくないものなのに……

 パレオをめくられたのをきっかけに、頭がおかしくなっている。

 浩介くんが腰を捻りながらこちらを見る。どうしてそんな不自然な体制になったか、あたしにはわかる。

 

 胸の上部、水着で隠れていない部分に手をかける。

 むにっむにっと胸の感触がする。浩介くんが顔を真っ赤にして下を向いている。

 

「嫌なら無理に見なくてもいいけど……できれば見てほしいな……」

 

 少しだけ正気に戻り、無理に見るようには言わないようにする。

 やりすぎたらそれはそれで嫌われちゃうということを知っているせいだ。これは他の女の子にはないアドバンテージ。

 

 胸を入念に塗ったら今度は胸の下、おへそを含むお腹の部分だ。

 あたしはいわゆる「やせ型」ではなく、お腹もちょっとだけ出ている。だけどもちろんデブというわけではない。

 むっちりとしている感じ。

 言うなれば男の子の性欲を掻き立てるような体になっている。

 

 続いて前足、膝より下は浩介くんに塗られちゃっているけど膝より上は塗られていない。

 こちらも入念に塗っていく。

 

「浩介くん……」

 

「どうしたの?」

 

「何だか、塗り終わっちゃうの名残惜しいなあって……」

 

「そ、それって……!?」

 

「あのね、あたし……まだ身体の反射的本能が、男の子のままって言ったでしょ?」

 

「うん」

 

「でも、こんなことまでしてもらったのに、どうやら治りそうにないって分かって……」

 

「……俺には、石山が辛くしている気持ちがわからない」

 

「うん、浩介くんは悪くないよ。だって……これはTS病の子の、それも女の子になりたいって思ってる子にしか分からない悩みだもん」

 

 あたしはそう言うと、日焼け止めクリームを手元に持っていき、手につける。

 何故話しかけたか、それはここから先はやはり特に見てもらいたいから。

 下を向いて太腿を視界に入れ、塗っていく。

 前側、横側、そして内側へ。足を少し開いているので、浩介くんの目は中身の水着の……女の子の大事な所に向けられているはず。

 ちょっと見てみる。浩介くんにあたしの股間をガン見されていた。息も荒くなり、必然的に興奮度も高まる。まさに目で「犯される」感覚。

 

 ……でもダメだった。意識はとてもドキドキし、顔はもう真っ赤になっていること間違いなしなのに、どうしても、いくら塗って塗られても、濡れてしまうことが出来ない。

 それどころか、身体の反射が、どんどん危険信号を出している。私は女の子だから男の子に興奮するのが普通だって、何度も言ってるのに。

 

 焦る気持ちとともに太腿中がクリームまみれになってしまう。もう作業工程は一つしか残っていない。

 あたしは水着をちょっと整え仰向けに寝る。

 

「恥ずかしいけど、めくる……ね」

 

 水着なのに恥ずかしいという感情、それは水着でも、浩介くんに意識されていることから来る恥ずかしさかもしれない。

 

「はぁはぁはぁはぁ……」

 

 浩介くんが息を荒くしている。

 あたしはゆっくり水着の裾をつかもうとする。

 

  ガバッ!!!

 

「あっ!」

 

 しかし、たくし上げようとしたパレオはなく、浩介くんに思いっきり上までめくられていた。

 

 浩介くんに無言でクリームを強奪される。

 

「はぁ……はぁ……優子ちゃん……」

 

 浩介くんが我を忘れて「優子ちゃん」と呼ぶ。

 

 ただ息を荒くし、水着の上の下腹部にクリームの塗りだくっていく。

 最初の恐る恐る塗られるのとは違う、乱暴な塗られ方。

 あたしは浩介くんの方の体を見ないで、顔だけを見る。身体を見たら、何か嫌な予感がするから。

 

 鍛えていた浩介くんは本気になれば多分優一でも勝てるか分からないくらい力は強い。

 多分、しようとすればこのまま無理矢理犯すことだって可能なはず。

 心と頭はとても興奮している。それを察知して体が動く、でももう一方でやはり反射的な嫌悪感を与えている。

 

 

 あたしは女の子だから、好きな男の子と愛し合いたいの、お願い、分かって優一! あなたはもう、役目を終えたのよ!!!

 

 

 心の中に残る、優一に話しかける。

 でも、言うことを聞いてくれない。

 あたしの体の中の格闘撃を知ってか知らずか、激しく興奮しながら、乱暴に塗っていく。それとともに、あたしの中の理性もどんどん溶けていく。

 ああ、このまま犯されてもいい。あたしはそう思う。

 

 

「こ、浩介くん……も、もう大丈夫だから……」

 

 少しして、あまりに塗られすぎていたのに気付く。冷静になった一瞬の隙きを突いてあたしが言う。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「もう十分塗られちゃったから!」

 

「はぁ……はっ! あ……」

 

 浩介くんが我に返る。浩介くんはパレオをめくり、白い水着が丸見えで、下腹部に無理矢理クリームを塗っていた所を見た。

 むしろ水着越しに触ったりしてないだけ奇跡のような状況だ。

 

「わっ……ご、ごめん!」

 

 浩介くんが急いでパレオを元に戻す。

 

「ごめん……俺……俺、何てひどいことを……!」

 

「いいのよ、あたしが、あたしが煽ったせいだもん」

 

 浩介くんに罪の意識を感じてほしくなくて言う。

 

「で、でも……」

 

「浩介くんは本能に従っただけ、何も悪くないわよ」

 

「だけど……俺、それでも……」

 

「お願い!!! 謝らないで!!!」

 

 責任感の強い浩介くんに、謝ってほしくないと思い、強く言う。

 

「……」

 

「女の子として、見てくれたから……我慢できなくなったんでしょ? それでもう、あたしは嬉しいから……」

 

「あ……ああ……」

 

「許せないのはあたし自身よ。こんな、彼氏彼女でもし辛いようなこと……治療の為なんて言ってさせたんだもん……なのに、結果は出せないで」

 

「石山……」

 

「またそう呼ぶの?」

 

「え? だって……」

 

「できれば面と向かっても『優子ちゃん』って呼んでほしいけど、今は……無理強いはしないわ。こんなわがまま聞いてもらったんだもの」

 

「……石山は、石山は思い込みが激しすぎる」

 

「え?」

 

 浩介くんから意外な言葉が出る。

 

「確かに、女の子らしくなりたいっていう気持ちは分かる。でも、それにしたって……石山はすぐに結果を出そうとしすぎてる」

 

「……」

 

「そうすぐに治るものじゃないだろ? あれからまだ3ヶ月しか経ってないのに、17年近くも続けていたことを……変えられねえよ……」

 

「うん、だけどあたし……」

 

「分かってる! 分かってるよ! 石山がどういう思いで女の子らしくなりたがっているのかも……でも、急がば回れって言うだろ?」

 

 何も言い返せない。それは、浩介くんの言う言葉が確かな正論だからだ。

 

 

「ねえ、日焼け止めも塗ったし、もう一回、海で遊ばない?」

 

「あ、ああ……だけど、その前に……その……」

 

「ん?」

 

「ちょっとトイレ! 長くなるけど待っててくれ!」

 

 浩介くんが、急いで立ち上がり、走り出す。

 その時、ちょっとした拍子に、彼の水着の短パンを見てしまった。

 

「うっ……!!!」

 

 急激に吐き気が襲い掛かってきた。

 浩介くんを見た瞬間、心と体の本能が、激しく乖離していくのを感じる。

 感情は、あたしのことをちゃんと女の子として見てもらえた嬉しさで爆発しそうなのに、今は必死で身体の吐き気と戦っている。身体的な、吐き気による嫌悪感が、あっという間に嬉しさを吹き飛ばしてしまう。

 

「ぜえ……はぁ……ぜえ……はぁ……」

 

 必死で吐くのをこらえ、吐かずに済み、息を整える。

 

「ええう……えう……うわっ……うっ……ひぐ……」

 

 ブワッと涙が出る。顔を覆い、一人で寂しく泣く。

 ただひたすら、悲しみの感情が支配する。

 「すぐに治るものじゃない」と、永原先生にも、浩介くんにも言われた。

 悪いのは、ただ欲張りなだけのあたしなのに……わがままなあたしなだけなのに……あたし……どうしてこんなに聞き分けのない子なんだろう……

 

「うえっ……ひぐっ……ぐずっ……」

 

 今までは、泣いた時もそばに誰かがいた。

 そして、泣くたびに、慰めてくれる人が居た。

 でも今は居ない。

 今までも、色々なことで泣いた。それは多かれ少なかれ、泣かせた側にも理由がある泣き方だった。

 

 でも今は違う。

 わがままで欲張りな女の子が、自分の思い通りにならないからと、駄々をこねて泣いているだけ。

 

 例えその欲求が正当であろうとも、今までの涙とは違う。泣けば済む問題じゃないなんて、小学生でも分かることなのに。

 だから誰もそばに居てくれない……本当に世の中上手く出来ている。

 周りはあたしのことを奇妙な目でジロジロ見ている。まるでわがままなあたしを罰するかのように。

 わがままで駄々をこねた罰として、誰も助けてくれず、一人で孤独に、みんなに晒されながら泣かないといけない。

 

「ぐずっ……ひぐっ……」

 

 ようやく、泣き止み始める。浩介くんはまだ戻ってこない。

 

 

「……どうしたの石山さん?」

 

 声をかけてきたのは永原先生だった。




まあR-15だし大丈夫でしょ……多分

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