永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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文化祭 出し物を決めよう

「それでは、クラスの出し物はどうするか決めてください」

 

 文化祭は10月末、制服も冬服に戻り、今日は10月最初のロングホームルーム。基本的にこのロングホームルームで文化祭の出し物は決まる。

 ここで出し物を第三希望まで決め、他のクラスと調整する。

 

 喫茶店、模擬店、お化け屋敷、更にはオリジナルの映画を撮影した上での劇場やプラネタリウム、他にもアトラクションやゲームコーナー、フリーマーケットに迷路なんて言うのもある。

 先生たちが用意した出し物候補の他、自分たちで考えて提出してもいい。

 その場合は高確率で当選することになる。

 

「私はプラネタリウムがいいと思うのよ」

 

 桂子ちゃんがまず発言する。天文部らしい発言だ。

 

「うーんでもよお……俺たちよく分からねえし」

 

「ここはお化け屋敷なんてどうだ? 手軽だろう?」

 

 浩介くんと高月くんとで意見が別れる。

 

「えーお化けえ!?」

 

「うん、夏祭りの時に見てちょっと楽しかったよ……カップルに人気になると思うな!」

 

 そういえばあたしは浩介くんと夏祭りでお化け屋敷に行ったんだよね。

 って、ノーパン状態でお尻触られたこと思い出しちゃった……

 

「えーそうですかあ? 私はちょっとチープだと思いましたよあれ」

 

 龍香ちゃんが反論する。というか龍香ちゃんも入ったんだ。

 

「あの……夏祭りは一部の人しか行ってないので分からないと思うのです……」

 

 今度はさくらちゃんの反論。

 

「うーんじゃあどれがいいかなあ?」

 

「うーん……あ! そうだ!」

 

 浩介くんが閃いた声。

 

「どうしました? 篠原君」

 

「喫茶店だよ、それもメイド喫茶!!!」

 

 クラスがちょっと騒然となる。

 メイド喫茶ってあの「おかえりなさいませご主人様」ってやつ?

 もちろん知っていたけど、まさか自分がやる可能性なんて考えにも及ばなかった。

 

「ちょっと男子! メイド喫茶って……そんなの嫌よ!」

 

「わ、私も……恥ずかしい……です……」

 

 虎姫ちゃんが怒ったように言うと、さくらちゃんが同調する。

 

「高月君、メイド喫茶にする理由を教えてくれる?」

 

 永原先生が高月くんに理由を問い合わせる。

 

「ああいやほら、うちのクラスってさ、先生含めて美人多いじゃん。石山に木ノ本は言うに及ばず、河瀬だって美人だし……志賀や安曇川だって工夫すればきれいになると思うぞ」

 

 あたしと桂子ちゃんの印象が強いような気もしたけど、確かにさくらちゃんや虎姫ちゃんもオシャレすればかなりかわいくなると思う。

 

「おいおい、あたいはどうなんだよ!?」

 

 恵美ちゃんが食いついてくる。

 

「ああ、うん。田村も一時期よりだいぶ良くなってると思うぞ」

 

「いやむしろ田村のメイド服はギャップ演出にはいいかもしれない」

 

 別の男子が同調する。

 

 恵美ちゃんのメイド服姿。うーん、あんまり似合わなさそうなイメージが有る。

 対するあたしはどうだろう? うーん、よく分からない。でも桂子ちゃんはかわいいだろうなあ……

 

「ふふん、メイド喫茶でクラス優勝間違いなしだぜ!」

 

「うーん確かに男性客は多くなりそうよねえ……」

 

 盛り上がる男子とともに、桂子ちゃんが何やら思慮している。

 あたしもメイド服のことを少し思い浮かべる。

 

 うちの学園祭にも、クラス対抗の出し物の決定戦があって、一般客や教師陣などから投票がある。

投票数が最も多い出し物には、ささやかな景品も出るそうだ。

 

「でもメイド服着るのかあ……」

 

 龍香ちゃんはまだ躊躇している。

 

「そうねえ、私はいいんじゃないかなって思うよ。文化祭はせっかくの晴れ舞台だし」

 

「むむむ、桂子さんらしいですねえ……」

 

 やっぱり男に好かれたいと考える桂子ちゃんは積極的だ。

 今までは優一が怖くて話しかけられなかったが、優一がいなくなっても、桂子ちゃんは男子からは「高嶺の花」のような扱いになっている。

 

「そうそう、メイド服を試して、うちのクラスのミスコン代表も決めねえと」

 

「おっ、そうだな」

 

 

「あ、その前にまず第二第三希望を決めてください。他のクラスも同じことを考えてないとはいい切れませんから」

 

「おっとそうだった。第二希望はどうする?」

 

 永原先生の言葉でクラスの軌道が修正される。

 でもあたしは第二第三希望についてあまり熱心になれなかった。

 

 メイド服、メイド喫茶、コスプレ。

 女の子になっても、今まではそうしたこととは無縁だった。

 でもせっかく女の子に生まれ変わったんだから思いっきりいつもと違うコスプレをしてみたいという気持ちも、もちろんある。

 とりわけ、海で水着になって以来、そうした目立ちたいという願望が強まり、あるいは恥じらいよりも先行するようになった。

 

 単なる好奇心からなのか、それとも女児向けの朝アニメにあるように女の子が持つごく普通の変身願望なのかは分からない。

 

 あたしが周囲の話に参加せず、メイド服やコスプレ願望についてぼんやりと考えていると、クラスでは第二希望と第三希望がほぼ決まりかけていた。

 

「はい、それじゃあこれでOKです。メイド喫茶については男子の参加方法についても考えてください」

 

「うーん、厨房でよくね?」

 

「だな」

 

「むむむ、女子ばかり目立つのかよ……」

 

 恵美ちゃんが不満そうに言う。

 

「恵美ちゃん、男が表に出てもしょうがないでしょ」

 

 あたしが言う。

 実際小谷学園は去年の文化祭を見る限り、ミスコンの影響もあって男性の参加の方がやや多い印象だし、キチンと役割を分けたほうが、色々と効率的になるという一面もある。

 それにうちのクラスはそんなイケメン少ないし……あたしが好きな浩介くんも、あたしは顔や体格に惚れたわけじゃないし。

 

 さて、ロングホームルームはまだ少しだけ残りの時間がある。残り時間で決めることがまだあるのだ。

 

「さて、次は小谷学園ミスコンテストの2年2組代表決めです」

 

 永原先生が宣言する。そう、この代表決めが厄介なのだ。

 

「あたいは嫌だぜ」

 

 恵美ちゃんが真っ先に嫌だ宣言する。

 男性受けはともかく、女性受けはいいからなあ恵美ちゃん。他のクラスならあえて女性狙いという選択肢も無きにしもあらずだ。

 ……まあ、実際の所あんまりそういうことはしないんだけど、一応女子ウケを狙いまくって優勝した例も過去にはあるとか何とか。

 でも、その戦略で優勝しても、男子とかから不満が爆発したり、後々亀裂になりかねない諸刃の剣でもある。

 

「とにかく、代表になりたいって人はいますか?」

 

「はーい先生!」

 

 あたしがさっそく手を上げる。あたしは立候補の他にもう一つの考えがあった。

 

「はい石山さん」

 

「あたし代表になりたいです!」

 

「他には?」

 

「はい、私もなります」

 

 桂子ちゃんが手を挙げる。

 

「うーんそうすると、石山さんか木ノ本さんどちらかということになりますが……?」

 

「あの、あたしはもちろんですけど、桂子ちゃんが出ないのも変だと思います!」

 

 実は、桂子ちゃんは何故か去年のミスコンに参加していなかった。

 参加するしないは自由なのでいいのだが、1年生の時点でも「クラス一の美人」何て言われていたから、そのせいで去年優勝した3年生の人がケチ付けられててかわいそうだった。

 というか桂子ちゃんだけでなく、女子票のことを考えると恵美ちゃんだって参加してもいいはずだ。まあ本人は嫌がってたって話だけど。

 

「うーんそうよねえ……どうしようかしら?」

 

 とはいえ、桂子ちゃんが出ないというのはやはり永原先生にも思うところがあるようだ。

 

「あの、私も代表になりたいんですけど……二人出場はできないんですか?」

 

 桂子ちゃんが質問する。

 

「うーん原則では無理ってことになっているけど……そうねえ、職員会議にかけてみるわ」

 

 ミスコンテスト、恵美ちゃんが辞退し、あたしと桂子ちゃんが出場したとする。

 そうすれば、間違いなく全学年を含めても、あたしが女の子になるまで学園一の美少女とされていた桂子ちゃんと、巨乳美女だけどTS病で元は乱暴男だったという異色の経歴を持つあたしの一騎打ちになることは容易に想像がついた。

 

 もしあたしだけが出れば「桂子ちゃんを出さないのはおかしい」となるし、逆に桂子ちゃんだけを出せば「優子ちゃんを出さないのはおかしい」という声が必ず聞こえるだろう。

 

 ともあれ、クラスから2名出場できないとなると、政治的な妥協の末、2人ともミスコンに出ないという最悪の状況にもなりかねない。

 そうなれば他からの不満はもっと高まるし、それで優勝した子も素直に喜べないし、後ろ指を指されてしまう。

 あたしも桂子ちゃんも出ないミスコンが盛り上がるとは到底考えにくく、イベントそのものが重大なダメージを負うことになりかねない。

 これについては色よい返事を待つしかない。まあ学年主任の小野先生や教頭先生を撃退している永原先生だし安心感はある。

 

  キーンコーンカーンコーン

 

「それじゃあ、今日のロングホームルームはここまでにします。休み時間に入ってください」

 

 永原先生の号令とともに生徒たちが休み時間に入る。

 

「いやあ優子ちゃん勇気あるねえ。まあ私も、さすがに去年のことがあるから代表にはなるつもりだったけど」

 

「ええ、ミスコンの代表になりたいって。なかなか言い出せないものですよ」

 

 桂子ちゃんと龍香ちゃんが話しかけてくる。

 

「うーん、そうかな?」

 

「うんうん」

 

「でも、黙ってても代表に担ぎ出されると思ったから、いっそのことと思って……」

 

 あたしとしても、これだけかわいくて、小谷学園一の美少女と評判だった桂子ちゃん以上の評価を受けているのに、「私そんなにかわいくない」は嫌味だ。

 

「ふーんそうなんだー」

 

「確かにそれはそうですけど……」

 

 でも実際、うちのクラスは美人が多いという高月くんの言葉は間違ってない。その証拠に、龍香ちゃんだって他のクラスなら代表レベルの美人さんだし、さくらちゃんや虎姫ちゃんだって、きちんとオシャレすれば代表になれるかもしれない所まで来ている。

 ともあれ、2時間目以降の授業に、今は気持ちを切り替えねば。

 

 

「ミスコン代表の件ですが、校長先生が二つ返事でOKしてくれました。基本的にエントリー人数は自由だそうです」

 

 帰りのホームルームでそんな話が出る。

 永原先生によれば、元々ほとんど自主規制のような感じだったらしい。

 まあ、小谷学園の校風考えたら当たり前だ。

 

「よっしゃ、それなら河瀬も出そうぜ!」

 

「ちょっと高月さん!」

 

 龍香ちゃんが抗議している。

 

「志賀もいいと思う。こういうのが意外と人気出るんだよねえ」

 

 別の男子まで盛り上がる。

 

「あ、あの……恥ずかしいです……から……」

 

 さくらちゃんがうつむいている。

 

「あ、あの!!!」

 

 あたしが声を上げる。

 クラスが注目する。

 

「みんなを出したい気持ちもわかるけど、前例を破るということも考えて、ここはあたしと桂子ちゃんの二人だけで出るから!」

 

「わ、分かったぜ」

 

「石山が言うなら仕方ねえよな」

 

「うんうん」

 

 高月くんが分かったというと他の男子も納得してくれた。

 

「はーい、盛り上がっている所悪いけど、連絡事項はまだ終わってないわよ……いいですか?」

 

 永原先生が声をかけると、クラスも静かになる。

 

「……二つ目ですが、模擬店のメイド喫茶が通りました。2年2組はメイド喫茶になりました」

 

「おお!」

 

「やったぜ!」

 

 男子陣から特に歓声が上がる。

 あたしもちょっとだけ楽しみではある。

 

「シフトとかどうしよう?」

 

「混雑する時間帯に、石山や木ノ本を入れてえよなー!」

 

 男子の盛り上がり方がすごい。

 

「……コホンッ、とにかく連絡事項は以上です。各自部活や委員会等に入ってください」

 

 永原先生の連絡事項を終え、帰りのホームルームは解散となった。

 

 

「……優子ちゃん、天文部行くよ」

 

「はーい!」

 

 桂子ちゃんに呼ばれて天文部へ行く。

 

 

「おい、桂優ちゃんじゃん」

 

「本当だ、二人とも今日もかわいいな」

 

「最近は特に優子ちゃんがかわいいよな」

 

「優子ちゃんに彼氏できたんだってな。ついこの間まであいつだったのにな」

 

「しかもさ、同じクラスの篠原らしいぞ」

 

「くあーっ羨ましいなあおい!」

 

「くっそー俺桂子ちゃん狙おうかなあ……」

 

「そういえば桂子ちゃんはフリーなんだっけ?」

 

「そうらしいぜ。男子も牽制しあってるらしい」

 

「そういえばミスコンどうするんだろうな?」

 

「そっか、同じクラスだよな」

 

「いやいやさすがに2人とも出てくると思うぜ。お前はどっちに入れるんだ?」

 

「俺は……って聞かれてるぞ」

 

「やべっ、退散退散っと」

 

 

 天文部室の前で別の部活の3年生の先輩たちがあたしたちのことを噂していた。

 あたしと桂子ちゃんが歩いているとそれだけで学校の噂話を支配してしまうことがこれまでもよくあった。

 

  コンコン

 

「はーいどうぞー」

 

「失礼しまーす」

 

「あら、木ノ本さん石山さんいらっしゃい」

 

 坂田部長が迎えてくれる。

 

「でねー、さっき隣の漫画研究会が私達の噂していたのよ」

 

「そうですか。確かに二人が歩くと目立ちますわよ」

 

「うーんやっぱり二人っていうのが大きいのかなあ?」

 

「そうだと思いますわよ」

 

 坂田部長が言う。

 

「ところで、桂子ちゃんモテモテなのに彼氏いないよね」

 

「そうなのよねえ……いっそのこと私から打って出るっていうのもありかなあ……」

 

「木ノ本さん、もしかしたら何だか近寄りがたい雰囲気なのかも知れませんわ」

 

「うーん……」

 

 桂子ちゃん、男の子の人気だって高いし、性格だって悪くない。それでも、いつか誰かが告白するという姿勢だけだとダメなのかな?

 

「やっぱり桂子ちゃんも積極的にならないと」

 

「うーん、あんまり自分からって感じしないのよねえ……」

 

「それじゃあダメですわよ。女子も積極的になるべきですわ」

 

 坂田部長も同意見みたいだ。

 

「そうなんだけど……何となくそう言う気分しないのよ」

 

 うーん、結構根深い。

 

「まあ無理にとは言いませんが……さ、展示の最終調整を続けましょうか」

 

「「はいっ!」」

 

 今日も恒星の位置の調整だ。

 宇宙を再現した3Dソフトを使いながら数センチ、数ミリの調整を続けていく。

 

 

「さあ、これで大丈夫ですわ」

 

「うん、私もこれで満足……優子ちゃんは?」

 

「あたしは特に異議はないわ」

 

 正直凝りすぎとも思うし。

 

「これに去年も展示した太陽系のミニチュアも合わせれば好評になりますわ」

 

 あたしは太陽系のミニチュアに目をやる。

 

「これも展示するの?」

 

「ええ、スペースは十分ですわ」

 

「倍率の比較図とか載せてみてはどう?」

 

 せっかく両方展示するならあたしが提案する。

 

「あら、良い提案ですわ」

 

「ええ。私も優子ちゃんに賛成」

 

「えっと……こっちが12光年で……こっちが海王星までだから……」

 

 桂子ちゃんが計算している。

 

「1光年が63241天文単位くらいで……海王星が遠日点30天文単位強だから……」

 

 ミニチュアはどちらも同じくらいの大きさだから、仮に同じとすると1光年で2100倍で……12光年ミニチュアだと2万5200倍くらいなあ

 

「そうねえ……両方のミニチュアの大きさも勘案すると2.5万倍くらいかなあ?」

 

 あたしの計算とほぼ一致する。

 

「木ノ本さん、詳しく測ったほうがいいと思いますわ」

 

「そうね……それから1光年とか1天文単位の物差しも入れないと……」

 

 殆ど終わりかけていた天文部の展示作業に、追加の仕事が加わった。

 そういえばこういう案内ってあんまり作ってなかったのかな?

 

 ともあれ、あたしも仕事に取り掛かる。

 少しずつ、文化祭が動き出した。

 本番は二日間。頑張っていかないと。

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