お母さんと買い物に出ていると、海の方に巨大なドーム状の何かが見えた。
「お母さん、アレは?」
「う~ん、気にしなくて良いよ、あんまりに騒がしい場合は、私たちが何とかするから」
お母さんが何とかするって言うなら……相手が心配だけど他は大丈夫だね。
「あ、そうだたっくん。連盟の方にたっくんと同い年の子が加入したんだ。成人前は連盟からの依頼とかが任意に成るし、絶対に大人が一人ついてく事になるから危険は無いんだけど……その子、両親が…と言うよりお家の方針で武者修行とかに出されたんだって、それで連盟のある人が任務中に拾って加盟させて……うん、木刀一本で熊に立ち向かっていたから保護したんだけどね。
親御さんも放任主義って言うか……かなり考え方が古臭い人でね、お母さんが物心付く前に亡くなって、親父さんが……うん、まあそんな感じで。
たっくんと同い年の男の子で能力が『多重屈折現象』名前は佐々山小次郎……山じゃなくて木ならパーフェクトだったね。
基本子どもが少なくてね、しかも女の子ばっかりなんだよ。
良かったら仲良くしてみない?たっくんが良ければ、ちょっとの間家で預かってみようと思うんだけど」
いきなり何を言い出すこの人は……みたいな目で見ていたら。
「酷いなぁ~私だって情くらい持ってるよ?それにたっくん、友達作るの怖がってるでしょ」
「―――ッ!!」
図星だった。
未だに友達を作るのは少し怖い。
すずかとアリサは結構流されて友達になったが、自分から新しい友人をつくろうとは思えて居ない。
「それにさ、その子ならきっとたっくんの親友に成れそうな気がするのさ!!
それにそれに!!『多重屈折現象』って良いよね、解明して導入したいよ!!」
やっぱりそういう落ちか……
「それに彼の能力は凄いよ、条件はまだ分かってないけど、投げた物も増える、そして少しの間ならのこるんだ!!」
……何が凄いのかよく分からない。
「矛盾しているのに残るのが凄いんだ。何かの手順を踏んで世界に認めさせたとか言う訳じゃなくて、ただ投げただけで増える。これは凄い事だよ?何処まで出来るようになるかわからないけど、極端に言うと、小石を投げて土砂崩れみたいな現象を起こせるかもしれないんだ!!」
うん、確かにそれは凄い。
「たぶん、抑止力によって同じ物の多重存在を認められないから……
~徒歩十分で家に到着~
と言う訳で、同一物が存在していてもおかしくない、イレギュラーな物ならもしかして……
あれ?家に着いちゃった?うわ~ついつい夢中になっちゃったよ、ゴメンネたっくん」
本当に長かった。科学だけかと思えば、魔術的な思考のことにも精通していらっしゃった様で……
神秘やらなんやらって、この世界にも存在してるの?
「まあ、小難しい話はおいておいて、同年代の男の子の異能力者と仲良くなってみない?って話だよ!!」
「それなら、うん」
そう、頷いて、ご飯の用意が出来るまで九歳の誕生日に貰った自室で、記憶…否、記録にもぐって色々と調べていた。
夕飯になって、お母さんに呼ばれ、席に着くと、隣に見知らぬ顔。
「……どなたですか?」
「……自分は佐々山小次郎と言います……」
「ああ、きみが…僕は本多匠、よろしくね………って、エェェェ!?」
あれ、なんでもう居るの!?
「たっくん、いきなり叫ばない。じろー君はさっき、連盟経由で迎え入れたんだよ」
何でもありか!!連盟ィィィ!!
「よ、よろしくたのむでござッ……頼みます」
ござ?
「うん、こっちもよろしく。きみの能力は『多重屈折現象』らしいね」
何も無かったかのように、至って自然に返してみる。
「うむ、とは言っても未だ影も見えないほど不完全な物で、二割の確率で二つが限界で御座る」
……
「もしかし、御座る口調がデフォ?」
「うむ!!……ってもうばれてしまったで御座るか!?」
……何だか面白い
「まあ、結構特殊な環境で育ったって聞いたから。九年も使ってれば癖になっちゃうよね」
うん。仕方ないよね
「仕方ないと言いながらその生暖かい視線はなんで御座るか!!」
「そんなことより、戦闘系の能力みたいだけど……修行とかしてるの?」
まあ、して居たんだろうけど……
「某、旅芸人殿に拾われる前は常に修行の毎日に御座った。父上は生きる術と修行しか付けてくれなかった故、娯楽に飢えて居ったが、修行しか出来る事が無かったで御座る」
哀愁漂う遠い目で、何かを見ながらそう話す小次郎くん。
「前世の記憶が有る分、余計に辛かったで御座る。」
娯楽を知っているけどそれが無いのは実に辛い物で御座る。
小次郎はそう続けた。
「まあ、確かに。いきなり電気の無い場所に放り出された感じだったのかな?」
「実際に電気が通ってなかったで御座る。水道も通っていなかったので、井戸か川で水の確保はしていたで御座るよ」
想像より酷い環境だった!?
「本当に?」
「本当で御座る。ほぼ完全な自給自足で御座った。今世で会った事の有る人間は父上を除いて皆さんで……六人?で御座る」
「大変だったな、坊主」
お父さん!!何時の間に!?
「今帰ったぜ、気付かれないように席に着こうかと思ったら、ちょうどドアを開けたところでそこの坊主と目が合っちまった」
何時もなら見つからなかったんだけどな、と呟くお父さん。
「で、こいつが今日から家で預かる坊主みたいだな」
そう言って、小次郎の頭に手をのせるお父さん。
「よ、よろしくお願いいたすで御座る」
「お、何だか愉快な喋り方だなぁおい」
そう言って豪快に笑うお父さん。
「お父さん、今日は遅かったね」
「そうだね、クーちゃん何時もならもうちょっと早いよね」
お母さんも尋ねる。
「今度は有澤のやつらだ。実験施設が一つ吹っ飛んじまった。そんなモン今の時代望まれてねえってのにロマンの一言でふざけたもん作りやがってよ……」
何を作ったのか知らないが、まあ、碌なモンじゃなかったのだろう。
「まあ、そんな事は今はどうでも良い。と言うより思い出させないでくれ」
お父さんはそう言ってお茶を啜り、
「で、坊主。能力は『多重屈折現象』だったか?同時には無理だがほぼ同時になら出来るから時間が有るときに練習に付き合ってやるよ」
何でか気前の良いお父さん。
「息子の能力が直接戦闘向けじゃなかったからな、此処最近人と『闘って』ねえからな」
まるで心を読んだかのように教えてくれるお父さん。
「でも、少し前あの少年と…」
「あんなモン闘いじゃねえ。まあ、もしかしたら戦いに発展して楽しめたかもしれねえけどよ」
当たり前だろ?と言わんばかりの言い方だ。
「未熟者故、がっかりされるかも知れませぬがよろしくお願いするで御座る」
小次郎がカチコチに成りながらそう返事を返す。
「かまわねえ、むしろその歳で良い勝負に成ったら俺の立場がねえよ」
親の顔でそう返すお父さん
「今日から長いか短いか分からないけど暫くはじろー君、きみも家族の一員だね」
なかなかに良い子が来たね!!っと妙にハイテンションなお母さん。
「小次郎、気をつけろ、君は狙われている」
「いきなり物騒で御座るな!?あと御母堂、じろーだと別の名前になってしまうで御座るよ?」
小次郎の主張にお母さんは気にしない気にしない、と返した。
「じゃあ、あとで部屋を教えるね」
「タク坊、クロたちを後で紹介しておけよ、確か隣で飯食ってんだろ?」
「うん、小次郎が居たせいか、いつの間にか食事を持ってみんなで隣の部屋に移動したみたい」
「……前世の記憶が有るとは言え今は子どもだ、ダメージがでかいかもしれないからちゃんとした対応の仕方を先に教えておいてやれよ」
実は我が家で一番気が利くかもしれないお父さんです。
密かに無印は終わりました。