出会い、別れと残ったもの   作:PPlaper

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無垢な、男だった。


顕現してから二カ月ほど。


せっかく現世に降りたのだから、と家庭の真似事をしていた中で、出会った子。


困っているのを見かけて、声をかけたのが始まりだった。


彼は、驚いた様子だった。


彼は、泊まる場所に困っているようだった。


私は、家族ごっこの相手を見つけた気がして、少し喜んでいた。


雄羊の羊毛

女性と別れた私は、宿の周りを散策していた。

 

 

女性のことを考えていた。

 

 

まるで、母性のかたまりのような女性であった。

 

 

思わず、色々なことを話してしまった。

 

 

私は、失敗したなぁ、と思った。

 

 

 

 

 

もっと、優しい言動を心がけてみようか、と思った。

 

 

まあ、すぐにぶっきらぼうな口調に戻ってしまうのだろうな、とも思った。

 

 

 

 

 

 

散策しながら、思う。

 

 

 

 

これまでは、こんなに人と深く関わったことはなかった。

 

 

人を助けても、何も言われないことが多かった。

 

 

これまでは、漠然と、そんな社会なのだろう、と考えていた。

 

 

 

 

 

しかし、彼らと出会った。

 

 

 

 

 

 

ぶっきらぼうで、だけどどこか優しい、『彼』

 

 

偶然見つけたバーで、意気投合したのだったか。

 

 

彼に託された短剣は、今も持っている。

 

 

ただ、日本に持って入れるだろうか、と心配になった。

 

 

 

 

 

 

厳格な法のようでありながら、どこか子どものような面も持ち合わせていた、女、女神テミス。

 

 

あの女が神様とか言い出した時は、どうかしてしまったのか、と思ったが、私の前から一瞬で消えたところを見るに、本当に神様だったのだろう。

 

 

あの女の天秤は、今も持っている。

 

 

ただ、これは日常生活では使えないため、インテリアになるのだろうが。

 

 

 

 

 

 

全てを優しく包み込むような雰囲気でありながら、コロコロと表情を変える、女性。

 

 

その、包み込むような雰囲気に任せて、色々話してしまったなあ、とまた、思った。

 

 

 

 

 

 

 

と、ここまで考えて、『彼』と女性から名前を聞いていなかったな、と思った。

 

 

 

 

 

 

人とぶつかる。

 

 

 

 

 

その少年は、意外と力強く、私が倒れてしまった。

 

 

自然と、少年を見上げる形になった。

 

 

少年は、おぬし、面白いことになっておるのう、と言った。

 

 

私は、不思議な口調の少年だ、と思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これもまた、出会いと別れの一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、立ち上がって、何がだ、と尋ねた。

 

 

少年は、まさか気づいておらぬのか、と驚きの表情をした。

 

 

私は、寝ぐせでも付いているのか、と聞いた。

 

 

少年は、一瞬固まった後、大笑いした。

 

 

私は、どこについているのだ、と焦って髪を手当たり次第に撫で付けた。

 

 

少年の、笑いが増した。

 

 

 

 

 

 

 

少年は、ひとしきり笑った後、すまぬな、おぬしには分からんことじゃ、と言った。

 

 

私は、寝ぐせではないのか、と聞いた。

 

 

少年は、寝ぐせではない、気にせずともよい、と言った。

 

 

私は、そうか、と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

少年は、ところで、ここらで何か見なかったか、と言った。

 

 

私は、何かとは何だ、と聞いた。

 

 

少年は、なんでもいい、山羊とか、雄羊とか、そういったものを見た覚えはないかの、と答えた。

 

 

私は、山羊はわからないが、羊なら見た、と答えた。

 

 

少年は、本当か、嘘であったら承知せんぞ、と言った。

 

 

私は、嘘なものか、時間もあるし、案内してやる、と言った。

 

 

少年は、よかろう、案内せよ、と言った。

 

 

私は、なんか偉そうだな、と思いつつ、こっちだ、と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

道中、少年は、私を見つめていた。

 

 

私は、何か用か、と尋ねた。

 

 

少年は、身体に異常はないのか、と聞いた。

 

 

私は、ない、と言った。

 

 

少年は、本当にか、と再度聞いた。

 

 

私は、ああ、と返した。

 

 

 

 

 

 

 

30分ほど歩いて、目的地に着いた。

 

 

 

 

この街の郊外の牧場だ。

 

 

あまり、人はいなかった。

 

 

私は、少年に、どうだ、と聞いた。

 

 

少年は、呆れた様子で、そうじゃなあ、羊とか聞かれたら普通そうじゃよなあ、と言った。

 

 

私は、違うのか、と聞いた。

 

 

少年は、いや、間違ってはないんじゃが、と困った様子で返した。

 

 

私は、まあ、せっかくだから、少し見ていこう、と言った。

 

 

少年は、ああ、うん、そうじゃな、と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牧場には、多種多様な家畜たちがいた。

 

 

搾乳や、ふれあいなど、そういったものはあまりなかった。

 

 

一番驚いたのは、羊がハーレム状態だったことだ。

 

 

 

 

 

私は、少年に、見ろ、羊だぞ、と言った。

 

 

少年は、いや、ただの羊ではなくての、わしが探しとるのはもっと、こう…、とここまで言って、足を止めた。

 

 

少年は、頭を抱えて、なんでそんなとこにおるんじゃ…お前神獣じゃろう…、と言った

 

 

 

 

そこにいた羊の中でも一番毛並みが美しく、ハーレムの中心にいた羊が、何かに気づいた様子で、こちらを向いた。

 

 

羊は、少年の方を向くと、メェー、と嘶いて、猛然と突進してきた。

 

 

 

 

 

 

運悪く、近くに牧場の人がいないときだった。

 

 

私は、危ない、逃げるぞ、と言って、少年の手を引いた。

 

 

少年は、必要ない、と言って、そこから動かなかった。

 

 

私は、いいから行くぞ、と言って、少年を抱き抱えようとした。

 

 

しかし、少年は、ビクともしなかった。

 

 

少年は、必要ないと言っておろうが、と言った。

 

 

そうこうしてるうちに、羊はもう目前まで迫ってきていた。

 

 

私は、もはやこれまでか、と思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思った瞬間、羊が輝いた。

 

 

羊が、光の玉になり、少年へと迫っていく。

 

 

光の玉と、少年が、一つになる。

 

 

 

少年が光り輝いた。

 

 

 

少年の欠けたなにかが、少し埋まった気がした。

 

 

 

 

 

 

光が収まると、少年は、こちらを向いて、だから大丈夫だと言ったじゃろう、と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、思わず、こう聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

君は、神様か何かなのか、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年は、こう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「その問いには是、と答えよう。我が名はウルスラグナ、東方の軍神にして、英雄神である。というか、おぬしに言われたくないんじゃがのう」

 

 

 

 

 

 

私は、どういうことだ、と聞いた。

 

 

 

 

少年は、じきにわかる、というばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年は、今日は付き合わせてしまってすまんかったの、と言った。

 

 

 

私は、べつに、と言った。

 

 

 

少年は、ふむ、何か困っとることはないか、でき得る限りではあるが、力になろう。化身を見つけてもらった礼もあるしの、と言った。

 

 

 

私は、特にはない、と言った。

 

 

 

少年は、ふむ、ならば、これをやろう、と言って、両手にすっぽり収まるくらいの大きさの、毛玉を渡してきた。

 

 

 

 

 

私は、何だこれは、と言った。

 

 

 

 

 

少年は、神の力のこもった毛じゃ、もらっておけ、と言った。

 

 

 

 

私は、まあ、もらっておこう、と言って、受け取った。

 

 

 

 

 

少年は、うむ、と頷くと、おぬしと再び合間見えることを楽しみにしておるぞ、と言って去っていった。

 

 

 

 

 

私は、ああ、またな、と言って、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それにしても、不思議な口調の少年じゃったなあ、と思った。

 

 

 

おっと。

 

 




彼は、私の作ったご飯を、まるで食べ盛りの子のように食べてくれた。


彼は、おそらく大事な人にしかしないような話を、私にしてくれた。


彼は、私に、本当の家族のように接してくれた。


私には、親族はいたが、こんな暖かい関係ではなかった。


彼は、私のことを、母親のようだ、と言ってくれた。


だから、私も、母親のように、何か力になってあげたかった。


だから、彼に、私の権能を分け与えた。


彼に、道を見失ってほしくなかったから。


彼に、私を忘れてほしくなかったから。


そして、血よりも重いものを分けたなら、血を分けていなくても、本当の家族になれるような気がしたから。


さよなら、私のかわいい子。


願わくば、次は、こちらを尋ねてほしいな、なんて。
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