隣の席の文学少女   作:ユウツ

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坂柳と迷ったんですけど椎名書いてる人いないから椎名にしようと、見切り発車注意。


良いセンスだ

 

 「今日はここまでだ、復習を忘れず行うように」

 

 教卓に立つクラスの担任である坂上数馬はそう言って眼鏡をくいっと上げ、教材をまとめて教室を後にする。それを確認した俺はいそいそと帰宅準備を始めた。

 

 (この学校に来てからもう1カ月か)

 

 東京都高度育成高等学校、俺が通うこの学校は希望する進学・就職先にほぼ100パーセントこたえ、全寮制で学校内にはさまざまな施設が揃っている。また、学校からは毎月お金が10万円も支給されるという夢の学校と、つい先日まではそう思っていた。しかし、そんな夢のような話もあるわけはなかった。俺は昨日の坂上の話を思い出す。

 

 「遅刻に欠席、授業態度などの評価によって査定され、君たちの持つクラスポイントは490と半分ほどまで減少した、それにより、今月支給されるプライベートポイントも半分まで落ちたのだ」

 

 どうやらクラスの様子を監視カメラあたりで見られていたらしく、それをもとに評価しているだろうと、Cクラスの支配者の龍園翔が推測した。Cクラスのポイントが半分で済んでいるのも龍園がクラスでがらが悪い奴をまとめたからだろう。俺たちの下のDクラスは0ポイントで龍園はクラスの注目をそこに移し、クラスの混乱を鎮めたのだ。

 龍園はDクラスを潰そうと画策しているようだが、まあ俺には興味がないようで良かった、あいつの側近なんてぱしりみたいなものだからごめんだし。

 そうして鞄に教材を入れ終えた俺は教室を出ようと立ち上がる。しかし、この時俺は昨日の事を考えていて周りが見えてなく、前に人がいることに気づかなかった。俺の席は窓際最後列で出口のある横を向いた時、隣の席の生徒も立ち上がっていることに気づかなかった。

 

 「きゃっ……!」

 「あっ、すまん」

 

 ぶつかった女子生徒は衝撃で持っていた本を落としてしまった。俺はそれを拾おうとすると。

 本はアイリッシュの『幻の女』にチャンドラーの長いお別れか、どちらも歴代ミステリーの名作として有名な作品だ。

 

 「良いセンスだ」

 「……!」

 

 俺が某ゲームの有名なセリフを言うと、女子生徒は突然目を輝かせて俺に詰め寄った、というか近いんですけど……

 

 「知っているのですか?」

 「……っ、まあアイリッシュの方は中々好きだな、というか離れてくれないか」

 

 それを聞くと彼女は離れるどころかより一層距離を詰めてきて、俺が拾った本の手に自らの手を重ねてきた。きらきら輝いてる目を俺の顔に近づけた。その様子にクラスの視線がこちらに集まる、幸い龍園は授業が終わってすぐ教室を出たようで助かった。

 

 「私もこの作品はとても好きでして、特に処刑が迫っても女性の行方が掴めないあの焦燥感は何と言っても「ちょ、ちょっと待ってくれ」何でしょうか?」

 

 そう言うと彼女はようやく離れてくれた、というか俺は君の名前も知らないんだけど…………、まあ隣同士で自己紹介もしてないのもあれなんだけど。

 

 「あーっと、すまん、ちょっと急ぎの用があるんだ、それじゃ……」

 「あっ……」

 

 そして俺は拾った本を彼女の机の上に置いて鞄を抱えなおし、足早に教室を後にする。クラスから出るまですごい数の視線を浴びた、本当に龍園がいなくて良かった……。

 俺は校舎から出ると、彼女の事を考えながら。

 

 「氷菓、読みたいなあ」

 

 どこかの古典部部長の行動に似ていた、と思いながら、俺は図書館へと向かった。




主人公のデータはそのうち書きます。
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