無人島生活2日目。今日でこの無人島を去ることになる。今日もCクラスの生徒たちは思い思いに夏休みの旅行を満喫している。初めは龍園君に反対してたものたちも2日目ともなればそんなことは忘れたかのように楽しんでいる。
しかし、そんな夏休みを楽しんでいるものたちの中で俺だけは海の前でどぎまぎとしていた。昨日の夜にひよりから水着を着ると言われてからずっとこの状態だ。
昨日のうちに岩場の奥に人がいないスポットを見つけていたのでそこで遊ぶということになった。それでひよりには先に行ってくれと言われている。
「お待たせしました」
海を前にどぎまぎしていると不意に後ろから声がかかる。遂に来たかと俺は意を決し、バッと後ろを振り返った。
「……パーカー?」
「はい。他の方に肌を曝すのは恥ずかしいので」
それって俺には恥ずかしくないってことですか。いや、俺のことは男として見ていないということを暗に意味しているのだろうか……。嬉しいのか悲しいのかわからんが、ひよりの水着姿が見れるならどっちでもいいか。
するとひよりはパーカーを脱ぎ始めた。なんだか妙に色っぽい。俺はいつもの彼女のゆるふわ雰囲気とのギャップにどきどきとしていた。
ひよりはパーカーを完全に脱ぐのではなく、チャックを開けて前をはだけさせて俺を上目遣いで見た。
「あの……どうでしょうか……」
ひよりは若干頬を赤らめて恥ずかしそうにする。そして肝心の水着だが、ビキニである。色は白でフリルがついたタイプの。それがひよりの透き通るような白い肌にマッチしてまるで1つの白磁のようだった。そこまで大きいとは言えないが、高校1年生としては平均であろう双胸に目がいかないように気をつける。そして彼女の恥ずかしがる様が若干の幼さを出してそれが絶妙にはまって……って俺は何を評論してるんだ。言うべきことがあるだろう!
ひよりは俺の言葉を待っているのか足を擦らせてもじもじしている。可愛い。
「め、めっちゃ可愛い、ぞ?」
「……何故疑問系なんですか……。でも、ありがとうございます。恥ずかしいですが、着た甲斐があります」
「わ、悪い……」
「いいですよ。修永君も水着似合ってますよ」
「おう」
「それに……」
「っ!?」
ひよりは俺に近づくと腕やら腹筋やらを触ってきた。くすぐったいが、そんなことよりひよりの2つのお山が俺に当たってしまいそうだ。
ひよりはそんなことも気にせず興味深そうに俺の身体をチェックしている。
「前から思っていましたけど、やっぱり修永君の身体ががっちりしてますね。普段だらだらしている人間には見えません」
「そうか……? 特に筋トレとかはしてないが」
「では天性のものでしょうか。運動できない人からしたら羨ましいことこの上ないですね」
それは自分のことを言ってるんだろうか。ひよりにこんな無駄な筋肉はついてほしくないぞ。
ひよりは満足したのか俺から離れて、近くの木陰にパーカーを置きに行って戻ってきた。
「それでは、泳ぎますか?」
「そうだな。ちなみにひよりは泳げるのか?」
「心配要りません。浮き輪を借りてきたので問題ありません」
「つまり泳げないということか……」
なんかひよりが浮き輪を持つと子供っぽくなる気が……ってちょっと待て。
「膨らませてこなかったのか?」
「あ……失念してました。膨らませてきます」
「俺が行くよ。そっちの方が早いだろうし……」
「でも……」
「ここで女に行かせるのはダサいからさ。俺にやらせてくれ」
「……わかりました。すいません、お願いします」
「おう」
俺は畳んである浮き輪を持ってテントの方に戻る。すると龍園君のパラソルの所に綾小路君と黒髪の女子がいた。龍園君はその女子に厭らしい笑みを浮かべている。あっ、石崎君がジュースシャワーしてる。もったいない。
少しして綾小路君とその女子が離れたので俺はそれを追った。
「綾小路君ー」
俺が声を掛けると2人はその場で停止した。
「安藤か……」
「おはよう。今日は偵察か何か……?」
「まあ、そんなところだ」
「誰……?」
俺と綾小路君が話していると隣にいる女子が俺を睨んで警戒しながら綾小路君に問いかけた。
「あー……Cクラスの安藤だ。中間テストの時に色々あって知り合ったんだ」
「安藤……あー。確か一之瀬さんが言っていたCクラスの面白い人ね」
なんかやはり俺は有名人になってしまったのだろうか。というか一之瀬さん、変なことを流すのはやめていただきたい。
「えっと……それで君は?」
「知らないのか、安藤?」
俺が頷くと綾小路君は驚いた表情をする。彼女も有名人なのだろうか?
「Dクラスの掘北鈴音よ」
「ちなみに生徒会長の妹だ」
堀北さんが仏頂面で言うと綾小路君がそう捕捉した。というか生徒会長とはあの人のことを言ってるんだろうか。だとしたらまったく。
「似てないな……」
「っ!?」
俺がそう言うと、彼女はバッとこちらに顔を向け、恨みがましいような視線を送ってきた。
「そ、それより、偵察の成果はあったか?」
怖くなった俺は綾小路君に視線を向けてそう言って話を変えた。
「全然だな。堀北はどうだ?」
「正直論外ね。Cクラスは試験を放棄したと思ってるわ」
2人はそう言った。まあ、それが普通だろうな。というか堀北さん、そんな強く言わなくても……。
「まあ、そう思うよな」
「あなたはどうなの。龍園君に支配されて無理やりでしょうけど……」
「それは違うな堀北さん。俺は悪くないと思ってる。そして、クラスの人間も大半がそう思ってるはずだよ」
俺がそう言うと堀北さんはそれを鼻で笑った。
「あなたも龍園君に忠実な駒というわけね」
「さあ、どうだろ。ただ、この試験のテーマは『自由』。すぐに人のやり方を馬鹿にする君の固い頭じゃ、龍園君は倒せないと思うけど」
「龍園、君?」
「くだらないわ。行きましょう綾小路君。ここにいても何も得るものはないわ」
「あ、ああ……」
綾小路君は戸惑いながら堀北さんについてここを離れていった。
少しサービスしすぎたと思ったけど、彼女には無理だったかな。あれでは龍園君には一生勝てないだろうな。
その後俺は急いで浮き輪を膨らませ、ひよりのいる所に急いで向かった。
「そんなことがあったんですか」
「まあね。あの会長に妹がいたとは知らなかった。全然似てなかったけど……」
現在、俺とひよりは2人で海の上でぷかぷか浮きながらさっきあったことを話していた。
「可愛かったんですか?」
「何が……?」
「その堀北さんという女子です」
「さあ? 可愛かったんじゃないか?」
俺がそう言うとひよりが真顔になった。なんというか怖い、魔王状態一歩手前といった感じだ。
「そうですか、可愛かったんですか。それは良かったですね」
「何で顔を顔をそんなに近づけるんだ。というか、可愛いのかもしれないが、初対面で睨んでくるような人だったんだぞ……。俺は苦手だ」
「まあ、わかってましたけどね」
浮気を疑われる夫とはこういう気分なんだろうか。いやそもそも俺とひよりはそういう関係じゃないし……。
「ともあれ、このままでは龍園君の1人勝ちになるのではないでしょうか」
「そうだな。俺は龍園君がやられる姿は見てみたい気もするが……」
「不謹慎ですよ。ですが、わからなくもありませんけどね」
「まあ、5日後のお楽しみといった感じかね」
「そうですね」
その後は海から上がり、バーベキューでできたものを適当に食べて、砂浜でひよりにケルン大聖堂を作ってくれと言われたので、作った。作ってる間ずっとひよりが背中にくっついて興味深そうに見ていたので、いつもより時間がかかってしまったが何とか作ることができた。昨日約束したいつか、は今日になってしまったようだ。
そんなこんなで夕方になり、俺たちCクラスは体調不良を言い訳に船に戻ることになった。3人を除いて。
そして船の上で夕食をとった俺とひよりはバーで談笑していた。
「随分嬉しそうですね。そんなに来たかったんですか?」
「ああ、ここに来ることが俺の往年の夢だったんだ」
「……随分と小さな夢ですね……」
ひよりは呆れてものも言えないといった感じだった。しかしここのバーテンダーはとても優しい。俺がシャカシャカするやつが見たいと言ったら、喜んでやってくれた。それだけではなく、くるくる回したり、投げたりして大いに楽しませてくれた。これから旅行の間は毎日来ようと思った。
「ですが、修永君が子供のように目を輝かせているのはとても可愛らしかったです」
「えっ、そんなだった?」
「はい。あんな修永君は新鮮でしたね」
そう言ってひよりは微笑んだ。俺は逆にそんな姿を見せてしまい、恥ずかしさが絶えなかった。話を変えようと俺は船に戻るときの話を切り出した。
「んんっ、それにしても龍園君は戻らなかったな」
「はい。まあ、わかっていたことですけどね」
そう。龍園君は帰りの船に乗らずに島に残ったのである。
「ああ見えてクラスのためを一番思ってるのは龍園君ですからね」
「ほんとね。けど多分彼は自覚してないだろうね」
「そうですね。だからこそ山田君は慕っているんでしょう。他の方にも気づいてもらえればいいんですが……」
「報われないもんだね。本人はそんなこと望んでないだろうけど……」
「前修永君が言っていたように伊吹さんが龍園君に熱い視線を送っているというのもあながち間違っていないかもしれませんね」
なるほど。案外適当に言ったんだが、ありえなくはないか。この旅行でカップルがいくつかできたと聞くし、伊吹さんとやらは島に残って龍園君の指示で動いてるらしいし、何か進展でもあれば面白いな。
「まあ、龍園君は鈍感そうだから、もしそうだとしてもかなり時間が掛かると思うけどね」
「あっ、そうですね。そう考えるとなんだか物語のようですね。伊吹さんが苦労しそうです」
それから俺とひよりは龍園君に聞かれたら、間違いなく怒るであろう勝手な妄想話で盛り上がった。
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それから5日後。特別試験が終了した。俺とひよりは部屋のテレビでモニターされたその結果を見ていつも? のバーに来ていた。俺とひよりは心底驚いていた。なぜなら-----
「まさかうちが最下位とはな……」
「私も驚きました。それにまさかDクラスが1位とは、さすがに思いもよりませんでした」
「ああ。モニターでも龍園君は相当驚いてたしな……」
「つまり龍園君も予想していなかったことだったんでしょう」
「ああ……あ、マスター、レモンスカッシュをお願い」
「……」
俺はマスターから差し出されたレモンスカッシュを飲んだ。この5日ここに入り浸っての俺のお気に入りである。今日もうまい。
「ぷはっ、今日もいい味出してるね。最高だよマスター」
「……」
「すごい馴れ馴れしいですね……」
俺がしたり顔でマスターに言うと、マスターは当然とばかりの顔をした後、シェイカーで新しい飲み物を作って俺とひよりの前に差し出した。
「……」
「嬉しかったんですね……」
「今日も渋くて決まってるだろ?」
「渋い、ですが、随分仲が良いんですね?」
「そりゃあ、ほとんどずっとここにいるからね。マスターとはもうマブダチだよ」
「……」
「呆れますね。せっかくの旅行を楽しむ言っていたのは修永君ですよ?」
「楽しんでるじゃないか。それにひよりもどうせ部屋でずっと小説読んでたんだろ?」
「まあ、そうですが……」
そう言ってひよりは呆れた様子で出されたものを飲み始めた。
「あ、おいしいです」
「ファジーネーブルだな。やっぱうまいな」
「ファジーネーブル?」
「ああ。オレンジジュースにピーチシロップを入れたものだよ」
「なるほど、甘くておいしいです」
ひよりがそう言うとマスターはさらに機嫌が良くなったのかシェイクパフォーマンスを披露した。やはり格好いい。弟子入りしようかな。
「それでさっきの試験結果ですが……」
「ああ。ひよりはどう思ってるんだ?」
「私はまず間違いなく、Dクラスに龍園君の策を見破るキレ者がいると思っています。ただ、そんな人がいれば龍園君が気づかないはずがありません」
「つまりそのキレ者とやらは普段は表立って動いてるような奴じゃないな」
「はい。おそらくは」
なるほど、Dクラスにそんな人間がいるのか。おそらくDクラス内でもその人物のことを知っているのはごく小数だろう。でなければ、やはり龍園君に気づかれる。
「一本取られましたね……」
「そうだな。ま、これで龍園君も気を引き締めるだろう」
「そうですね。出し抜かれて黙っているような人でもありませんし……。それに恐らく……」
「……?」
「この旅行、まだ何かあると思います」
「また特別試験か?」
「それはわかりませんが、多分そうでしょう」
確かに、日程ではさらに1週間もある。その間に何もないというのは考えにくいかもしれないな。
「つまり、逆襲のチャンスということです」
「確かに……龍園君も本気で挑むだろうな」
「はい。それに……」
「……?」
ひよりは俺を見つめてにこりと微笑んだ。
「今回は私の騎士様もいますから」
「……」
そういえばそんな話もしたか。ならまあ、少しは頑張るとするか。
俺は肩を竦めて見せた後、騎士っぽく礼をした。
「姫の願いとあれば……」
まあ、俺の出番がなければそれがベストだけど。
そう言ってお互いに小さく笑った。
そしてその3日後。ひよりの予想通り、豪華客船に乗っている生徒全員の携帯が同時に鳴った。
雑になった……。水着とバーを書きたかっただけなのにどうしてこうなった……。
一成「深夜テンションで書いたからじゃない?」
作者「多分」
一成「ファジーネーブルなんて飲んだことあんの?」
作者「ない。ていうか未成年だから、酒飲んだことない」
一成「じゃあ書くなよ……」
作者「気をつけます……」
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