隣の席の文学少女   作:ユウツ

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干支試験のポイント合算がまったくうまくいかない……衣笠先生ーーー!!


名探偵ひより!

 無人島での特別試験から3日後。ひよりの予想通り、新たな特別試験を開始するメールが豪華客船の上にいる全生徒に送られた。そのメールには指定した時間までに指定された客室に集合するようにも書かれていた。そして俺とひよりの指定時間と集合場所は違っていた。

 

 俺は指定された時間に203号室に向かうと、Bクラス担任の星之宮先生と女子が3人がいて今回の特別試験の説明を受けた。内容としてはクラスから3~4人を干支になぞられた12のグループに分け、そのグループで行われるもののようだ。その時に説明に同席した女子が同じクラスなのを知った。俺は兎グループに配属された。ちなみに兎グループのメンバーはこんな感じだった。

 

 Aクラス・竹本茂(たけもとしげる) 町田浩二(まちだこうじ) 森重卓郎(もりしげたくろう)

 Bクラス・一之瀬帆波(いちのせほなみ) 浜口哲也(はまぐちてつや) 別府良太(べっぷりょうた)

 Cクラス・安藤修永(あんどうしゅうえい) 真鍋志保(まなべしほ) 藪菜々美(やぶななみ) 山下沙希(やましたさき)

 Dクラス・綾小路清隆(あやのこうじきよたか) 軽井沢恵(かるいざわけい) 外村秀雄(そとむらひでお) 幸村輝彦(ゆきむらてるひこ)

 

 なんと綾小路君と一之瀬さんと同じグループだった。

 そしてこの試験の肝と言えるだろう部分がある。それが1つのグループに1人いる『優待者』の存在だ。この試験の結果は4つしかない。

 

 結果1、試験終了時に『優待者』を『優待者』とそのクラスメイトを除く全員の解答が一致する。結果2、同様の場合に解答が一致しない。結果3、試験終了前に『優待者』と思われる者を学校に告げ、正解する。結果4、同様の場合にその解答が不正解する。簡単に言えばこの4つだ。この4つでいえば、難しいのは結果1、一番なりやすいのは結果2だろう。

 

 明日の午前8時に一斉メールが送られ、そこで『優待者』の者にそのことが伝えられる。試験は4日後の午後9時までで1日に2度、グループで所定の時間と部屋で1時間の話し合いが行われる。そしてその間は退室は基本認められていない。

 なんとも面倒そうな試験だが、とりあえずひよりと合流してからだな。

 とりあえずそう考えた俺はいつものバーでひよりを待つことにした。

 

 約1時間後ひよりの所も終わったようで俺と合流した。

 

 「お待たせしました」

 「いや、それで、どのグループだった?」

 「私は巳のグループでした。修永君は卯ですよね」 

 「ああ、一之瀬さんがいた。ちょっと厳しそうだ」

 「それはそれは」

 

 俺が肩を竦めてみせるとひよりはお疲れ様とでも言わんばかりに微笑んだ。

 

 「ひよりはこの試験どう思う?」

 「まだなんとも言えませんね。ただ、この試験で必要なのは考える力。先生があれだけわかりやすく説明していたので間違いなくそこがポイントでしょう」

 「確かにな……。なんにせよ、明日の『優待者』発表までは何もわからないな」

 「そうですね。それでは今日はもう戻りましょう」

 

 そう言ってひよりは立ち上がった。しかし俺は微動だにしない。

 

 「修永君?」

 「悪い、俺はまだここにいるよ」

 

 部屋にいるとルームメイトと全く話せない疎外感が嫌だからなんて言えない。ひよりは首を傾げたが、何か察したようで溜め息を吐きながらしょうがないといった顔でもう1度席に着いた。

 

 「ひより?」

 「なんだか、喉が渇きました。修永君のおすすめをお願いします」

 

 ひよりの優しさが心に染みる。俺は若干涙ぐみながらマスターにレモンスカッシュを注文してひよりとの会話に花を咲かせた。

 

 

 _______________

 

 

 翌日の朝。朝食を食べた後、俺たちCクラスは龍園君の招集を受けた。どうやら『優待者』を知るためのようだ。そして8時ちょうどに全員の携帯が鳴った。すぐに届いたメールを確認した。どうやら俺は『優待者』には選ばれなかった。ひよりの方を見ると、首を振った。ひよりも『優待者』には選ばれなかったようだ。

 

 「おい、『優待者』に選ばれた奴は手を上げろ」

 

 龍園君がそう言うと男女4人の生徒が手を上げた。龍園君はその中の1人から携帯の画面を見た。どうやらメールの内容を確認してるようだ。

 

 「なるほどな。とりあえずお前ら、ばれないように勝手にやれ。俺は行くところがある。行くぞ伊吹」

 

 そう言うと龍園君は伊吹さんを連れて、さっさとその場を去って行った。どうやら今回は『優待者』が誰だか知りたかっただけのようだ。

 

 「俺たちも行くか、ひより」

 「そうですね、修永君」

 

 俺とひよりもその場を離れた。後ろからは「このリア充がー!!」と悲痛な叫びが聞こえた。やはり龍園君と伊吹さんはそういう関係なのだろうか?

 

 その後昼食を食べて試験会場に向かった。2階の兎と書かれたプレートが架けられた部屋に辿り着き、中に入った。すでに俺以外の生徒は揃っていた。目を向けると綾小路君に一之瀬さんと目が合った。一之瀬さんは微笑みながら手を振ってきた。俺は軽く会釈はしておいた。

 程なくして試験開始の時刻を迎えると船内スピーカーの音が部屋に響いた。

 

 『ではこれより1回目のグループディスカッションを開始します』

 

 随分適当だな。生徒の自主性に任せるとは言っていたが、本当にその通りだな。突然の状況に動揺してグループ内に重たい空気が流れる。すると一之瀬さんが立ち上がった。

 

 「はいちゅうもーく。大体の名前は分かっているけど、一応学校からの指示もあったことだし、自己紹介したほうがいいと思うな。初めて顔を合わせる人もいるかもしれないし」

 

 さすがは一之瀬さん、Bクラスのリーダーをやってるのは知っていたが、こういう場でも率先して動けるのは素直にすごい。それにかなり慣れた様子だ。

 それからAクラスの生徒と一悶着あったが自己紹介は普通に行われた。

 自己紹介が終わるとそれからは一之瀬さんが取り仕切った。どうやら結果1を求めるのが一之瀬さんの策のようだ。他も何人かはそれに同意の様子だった。Aクラスの生徒は納得してなかったが。

 

 「安藤君はどうかな?」

 

 どうしたものか。この試験勝つのはそう難しいものではない。どうやら兎グループのCクラスに『優待者』はいないから、勝つにはそいつを見破るだけで良い。ただ、それでは全体の勝ちには成り得ない。すぐに試験が終わって一之瀬さんが他に集中するとなったりすれば、龍園君の邪魔になるしな。長引かせるにはとりあえず従っとくか。

 

 「俺もそれでいいかな。ポイントは欲しいし」

 

 俺が同意すると綾小路君達が続いた。するとまたAクラスの生徒が批判をした。Aクラスの町田という生徒が一之瀬さんたちとぶつかり合う。最初はAクラスの試験の間、一切話し合いをしないという意見に過半数が賛成していたが、一之瀬さんが一石を投じ、また迷う生徒が大半になった。その場はAとBの戦いだった。どうやらCとDはお呼びじゃないようである。

 結局話し合いはまとまりをえず、途中うちのクラスの真鍋さんとDクラスの軽井沢さんとの間でひと悶着あったぐらいで特に実りのある話は行われなかった。というか俺だけ一人ぼっちというか、なんか寂しかった。

 

 「一応、話し合いの場はあと5回作れるし、ひとまず今回は解散にしようか」

 

 一之瀬さんはさっぱりした声でそう言った。

 すると先ほどひと悶着あった軽井沢さんが声を上げて真鍋さんの足を踏んづけた。あれが女の本性なのだろうか。恐ろしいものである。ひよりが天然で本当に良かった。

 

 「安藤……」

 「あぁ、綾小路君」

 

 部屋を出ると、後ろから綾小路君に話しかけられた。

 

 「どうだった、今回の話し合い」

 「どうもこうも。話し合いとして成り立ってなかったと思うけど……」

 「確かにな」

 

 そんなことは分かり切ってるだろうに。

 

 「そういえば、無人島の試験ではDクラスはすごかったね」

 「まあな。堀北が頑張ってくれたおかげだ」

 「堀北さんが……?」

 

 ということは龍園君を欺いたのは堀北さんというのだろうか。…………それはないだろう。彼女と話せばそんなことは不可能なのはすぐにわかる。あの感じを演技で出してたならすごいが、まずないだろう。なるほど、Dクラスにはやはり裏から手を引く人物がいるんだろう。そいつはきっと堀北さんを隠れ蓑にしているということか。

 

 「すごいな、堀北さんは。まさか龍園君を欺くとは思いもしなかったよ」

 「Cクラスは随分奇抜な手段だったな」

 「確かにね……。ただ、あれも一種のチームワークだよ。俺たちは龍園君を信じて託した。結果はあれだったけどね」

 「……そうか」

 「それじゃ……」

 「ああ」

 

 綾小路君、やはり格好良いな……。

 

 そして、結局その日は2回目の話し合いも1回目と同じように特に意味のない時間となった。

 

 

 ________________

 

 

 「それは本当か……?」

 「はい。まだ推測ですけど」

 

 現在、バーでひよりと今日のことを話していると、ひよりがもしかしたら『優待者』の法則に気づいたかもしれないと言ったのだ。

 ひよりは1枚の紙を俺の前に差し出した。確認するとそこには巳のグループのメンバーが書いてあった。

 

 「それで、これを見てなにかわかるのか?」

 「恐らくですが、名前順でしょう」

 「名前順?」

 「はい。要するに干支の順番に位置する名字の生徒が『優待者』だと思います」

 

 なるほど、俺はもう1度メンバーを確認すると確かに巳の6番目に朝に手を上げた『優待者』の男子生徒の名前が記されていた。これが正しいならひよりの洞察は凄まじいな。俺はいつも一緒にいる女子生徒に戦慄を覚えた。

 

 「ひよりだけは敵に回したくないな」

 「良く言いますよ……」

 

 なるほど。となると俺のグループの『優待者』は……Dクラスの軽井沢さんか。まあ、まだ間違っているかもしれないが……。

 

 「とりあえず、龍園君に言いに行くか?」

 「いえ、その必要はないでしょう。恐らく龍園君も今日か明日には気づくでしょう。クラスの『優待者』は把握していますから」

 「すごいな龍園君は……。俺じゃ絶対無理だわ」

 「修永君はこの試験はあまり向いてないでしょうね。私は偶々気づきましたが、恐らくしっかりとメンバーの情報収集をしなければわからないでしょう。修永君は人の名前を覚えるのが苦手そうですから」

 

 いや、別に苦手ってわけじゃないんだけど。多分関わらないだろうから覚える必要はないと思ってるだけなんだよね……。

 

 「結局今回俺の出番はなかったな」

 「そうですね、修永君はCクラスの切り札として温存ということになりますね」

 

 それは買い被り過ぎだろう。第一俺はひよりの指示にしか従わないぞ。

 すると突然俺とひよりの携帯が一斉に鳴った。

 

 「何だ……?」

 「これは学校からのメールですね」

 

 俺とひよりは首を傾げながら、届いたメールの内容を確認した。すると俺とひよりの顔は一瞬で驚愕に変わった。

 

 『猿グループの試験が終了いたしました。猿グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい」

 

 「これは……どういうことだ?」

 「わかりません」

 

 試験結果はどうなったのかはわからない。試験の詳細は終了日の午後11時にならないとわからないが、これがもし正解してるなら―――――

 

 「ひよりと同じく、法則に気づいた奴がいるってことか?」

 「それはないでしょう」

 

 その俺の言葉をひよりはばっさりと切った。

 

 「法則を見つけたなら、恐らくクラスメイトに教えて一斉に見抜くはずですから、気づいたわけではないと思います。純粋に話し合いの場で『優待者』を見つけたのでしょう」

 「確かにそうだな。しかし、何でこのタイミングなんだ?」

 

 『優待者』を見つけたならすぐに学校に報告すればいいのに、迷ったにしてももう0時近い。さすがに遅すぎるだろう。

 

 「それは私にもわかりません。私たちを惑わすつもりなのか、ただ単に気分屋なのか」

 「流石にそれはないだろう。まあ、とにもかくにも真相は結果が発表されなきゃわからんな。ただの独断専行かもしれんし……」

 「そうですね。あまり気にしないのがベストでしょうね」

 

 

 結局今日はお開きということになり、俺はデッキにいた。部屋に戻ろうとしたら中から騒ぎが聞こえて逃げたのは内緒である。そして今はなんと男女の逢引きを目撃してしまい、隠れたところである。

 遠目で女子の方は良くわからないが、男子の方はなんと綾小路君だった。

 

 (ああっ、抱きついた。これからイケないことでもしてしまうんだろうか)

 

 俺がどきどきしながら見ているとそんなこともなく、すぐに離れて、女子の方は船内に戻って行ってしまった。しかし、残念なことにその女子が船に戻るときに俺の横を通り、俺と目が合ってしまった。

 

 「…………」

 「安藤君?」

 

 何でこの子は俺の名前を知ってるのだろうか、すると綾小路君もこちらに気づき、近づいてきた。なんか心なしか顔が赤いな。

 

 「何で安藤がここにいるんだ?」

 「すまん、涼みに来ただけなんだが、まさか2人が逢引きしてるとは思わなかったんだ。許してほしい」

 

 俺はそう言ってすぐさま謝罪をした。

 

 「ち、違うぞ安藤。俺と櫛田は別に逢引きなんてしてない!」

 「そ、そうだよっ安藤君っ。私たちは別にそういう関係じゃないから!」

 

 2人は慌てた様子で俺に言う。しかしそんな顔を赤らめながら言われても困るのだが……。

 

 「じゃ、じゃあ、おやすみ。それじゃ!」

 「あっ、安藤君!」「おい、安藤!」

 

 俺は2人の制止の声を無視してその場を逃げ出した。

 ふむバーに行こうと思ったけど、やめとこうかな。そろそろ先生たちが集まる時間帯だし、今日はさっさと部屋で寝よう。流石にルームメイトももう寝ているだろう。

 俺は誰も起きていないことを願い、部屋に戻ると、もう誰も起きていなかったので無事寝床につくことができた。

 

 

 

 _______________

 

 

 俺と櫛田が逢引きしていると勘違いした安藤は走って逃げてしまい、俺と櫛田は弁明すらできなかった。

 色々あり過ぎて疲れた俺は冷静になると喉が渇き、自販機に行くと、近くのバーで奇妙な組み合わせの3人組を見つけた。茶柱先生にBクラス担任の星之宮先生。そしてAクラスの真嶋先生だ。

 3人は思い出話? に花を咲かせていた。

 

 「それより……どういうつもりだ、チエ」

 

 すると茶柱先生は怪訝なムードで星之宮先生に詰め寄った。

 どうやら、この学校では竜グループにクラスの代表を集めるのが恒例らしい。しかし、どうやら俺の様子を探るために一之瀬を兎グループに送ったと話していた。

 

 「私は本当に偶然で一之瀬さんを兎グループに送っただけだよー? 島の試験が終わった時、綾小路君がリーダーだったことなんて全然気になってないしー?」

 「そういうことか」

 

 真嶋先生は納得したように頷くが、すぐに星之宮先生を厳しくたしなめる。

 

 「規則ではないがモラルは守ってくれ」

 「もー信用ないなぁ。それに私ばっかり責められてるけど、坂上先生だって問題じゃない? 龍園君を竜グループに当ててきてるし……それにCクラスには彼もいるしね」

 「そうだな。あいつの弟がまさかCクラスとは……」

 「彼が介入すれば龍園君も合わせて手に負えないし、彼を扱える子がいればだけど……」

 「なんにせよ、今年は例年と違い、生徒の質が特殊なようだからな」

 

 この試験に関する情報はほとんど得られなかったが、そろそろ引き返そう。収穫もあったしな……。それにしてもCクラスの彼とは誰のことだろうか……。先生が警戒するほどの人物。まさかとは思うが……。

 俺はその『彼』という人物を考えながら、部屋に戻った。

 




何度計算してもCクラスの『優待者』が4人いないとあわないからこうなりました。異論は認めるけどあんまり虐めないで!

一成「更新遅れたね」
作者「うん」
一成「何で?」 
作者「何で、主人公の名字安藤にしちゃったんだろうって嘆いてた」
一成「あー、伊吹さんいないもんね」
作者「他も重要人物だからはずせないし、大変だった」
一成「お疲れ」
作者「うん」
一成「(今日は素直だな……)」
作者「(本当に疲れたんだよ)」
一成「(こいつ、直接脳内に……!)」

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