隣の席の文学少女   作:ユウツ

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盲腸で書けなかった。言い訳じゃないよ、うん、全然。


来客はだる絡み

 「上がりー!」

 

 室内にそんな声が響き渡る。

 干支試験2日目。俺たち兎グル―プは現在大富豪を行っていた。俺たち、といってもBクラスの生徒とDクラスの綾小路君とぽっちゃり君と俺だけなんだが……。今日も話し合いにはほとんど行われず、それをみかねた一之瀬さんがトランプを出して時間潰しをしようと提案したのである。

 結局、そのままトランプで遊んでいると終了のアナウンスが告げられ、3回目のディスカッションも終わった。

 

 「さてとー。ちょっと行ってくるね」

 

 一之瀬さんが唐突にそう言った。どうやらAクラスの籠城作戦を指示した葛城君に会いに行くそうだ。

 

 「もしよかったら俺もついていっていいか?」

 「ん? それは全然良いけど、綾小路君も葛城君に?」

 「そういうわけじゃないけどな……」

 

 すると綾小路君が同行したいと申し出た。その後何故か俺に振り返った。

 

 「安藤も一緒に行かないか?」

 「ん? ……何で?」

 「……特に意味はない。しいて言うなら暇そうだったからだな」

 「…………」

 

 この子ひどくない? てかそんな理由で誘わないで欲しいんだけど……。あ、でも。確か葛城君とやらがいるグループには龍園君もいたな。少し用があったし、ついていくか。どうせ暇ですから。

 

 「わかった。俺もついて行く。良いかな、一之瀬さん?」

 「別に構わないよ。それじゃ、急ごうか」

 

 そう言って一之瀬さんは小走りに竜グループのディスカッションが行われている場所まで向かった。

 すぐに竜グループのプレートが架けられている部屋の前に辿り着いた。

 

 「結構時間かかってるね」

 

 一之瀬さんの言う通りまだ竜グループは話し合いを行っているようだ。

 10分後ようやく扉が開き、生徒が出てきた。一之瀬さんはその中のスキンヘッドで強面の男子に話しかけた。どうやらあれが葛城君のようだ。話を聞いているとどうやらうまくいかなかったようだ。

 すると葛城君は俺に視線を向けた。

 

 「そっちの男子は無人島で見たが、こちらは初めて見る顔だな。Bクラスか?」

 「あー違うよ。彼はCクラスの安藤君」

 「Cクラスだと……?」

 

 俺がCクラスだと知ると、葛城君は鋭い眼差しで俺を見た。というかその容姿でされるとそこいらのチンピラじゃちびっちゃうよ? 俺はまだ大丈夫……。

 

 「Aクラスの葛城だ。よろしく頼む」

 「ああ、Cクラスの安藤です。よろしくお願いします」

 

 つい動揺して敬語になっちゃったよ。ていうか葛城君、先生って言われてもさほど違和感ないと思う……。

 

 「では一之瀬、俺はこれで失礼する」

 「うん。時間とらせてごめんね」

 

 一之瀬さんはその場で葛城君を見送る。その後こちらを振り返って肩を竦めた。

 

 「あれじゃ、どうにもなんないね。それにしても神埼君達出てこないね」

 

 確かに遅い。Aクラスは話し合いはしないから出てきたが、他のクラスの生徒はまだ話し合いを行っているようだ。実際のところ、1時間が過ぎてもそれから話し合いをしても問題はない。

 結局、30分ほど待って、ようやく他の生徒が退出した。しかし、そこに龍園君の姿はなく、神埼君と堀北さんと話し合っているらしい。しかし不幸なことに出てきた生徒の中には昨日綾小路君と逢引きしていた櫛田さんがいた。

 

 「あれ、綾小路君と一之瀬さん、それに安藤君!?」

 

 彼女は俺を見るなり昨日のことを思い出したのかあわあわとする。

 

 「大丈夫だ、櫛田。さっき安藤には弁明しておいた」

 「えっ、そうなの?」

 

 そうなのである。実は今日のディスカッションが始まる前に綾小路君から約30分ほど、俺と櫛田がどういう関係か、というのを力説され、昨日のは逢引きではなく、不幸な偶然だったと知った。ちなみにその時、櫛田さんとは家電屋で会っていたことを思い出した。そこで綾小路君もあのあざとい少女の蜘蛛の糸に引っ掛けられているのだと知り、可哀相になった俺は今日行きつけのバーがあるから行こうと誘ってあげた。

 

 「良かった~。それにしても珍しい組み合わせだね?」

 

 櫛田さんは俺たちが一緒にいることに驚きを隠せないようだ。まあ、B、C、Dクラスの生徒が一緒にいるなんておかしいもんね。しかも特別試験中ならなおさらだ。

 

 「堀北さんと神崎君を待ってるんだけど、まだ話し合い中?」

 「その2人ならまだ龍園君と話してるよ。中に入ったら?」

 

 櫛田さんは扉に手をかけて言った。一之瀬さんは終わるまで待つと言ったが、結局櫛田さんに強引に部屋に招かれた。中に入ると、3人は距離を置いて座っていた。俺たちが中に入ると3人からの視線を浴びた。龍園君だけは口を歪めたが、他2人は大した反応もしなかった。

 

 「よう。わざわざ偵察に来たのか? まあ、遠慮せず座れよ。……何でお前がいるんだよ?」

 

 龍園君は俺に気づくと眉を顰めて俺を睨んできた。

 

 「いや、そこの綾小路君に誘われたからさ」

 「綾小路……ああ、鈴音の腰巾着か。お前はいつも女のケツを追ってんな。守ってくれる鈴音がいなけりゃ今度は一之瀬かよ」

 

 龍園君は綾小路君を一瞥して呆れた口調で言った。てっきりこの前デートをしていたから、女の子の方が綾小路君にくっついてるのだと思うのだが……。

 

 「鈴音もこんな金魚の糞にいつまでも構ってないで俺の女になれよ、そうすりゃ最高の気分を味わせてやるぜ?」

 「結構よ。けれど意外ね。あなたのクラスは全員自分の支配下だとか言っていたのに、独断行動するような生徒がいるけど?」

 

 堀北さんは龍園君の下卑た視線を軽くかわして逆に龍園君を挑発するような視線を送る。

 

 「取るに足らないカスにわざわざ俺が手を下す必要はねえだけだ」

 「どうかしらね?」

 

 そのまま十数秒と睨み合いが続いたが、その沈黙を一之瀬さんが破った。

 

 「2人で盛り上がるのも良いけど、私たちも混ぜてくれないかな? 3人が何を話し合ってたのかも気になるしんだけど」

 「クク。そうだったな、おい一之瀬、俺はお前に面白い提案があるんだ」

 「提案? 一応聞くけどどんな提案なのかな?」

 「くだらない話よ、聞くだけ無駄だわ」

 

 堀北さんはすでに龍園君の話を聞いたようで切り捨てるように否定する。

 龍園君の提案とはB、C、Dクラスで優待者の情報を共有してこの試験の全容を看破しようというものだった。確かにひよりの見つけたあの法則に龍園君が至っていても自分のクラスの情報だけではそれが違う可能性があると考えたのだろう。しかし一之瀬さんは龍園君の提案を一蹴した。

 

 「ごめんね龍園君。Bクラスには君の行動で傷つけられた生徒がいる。ポイントのためだけに簡単に手は組めないよ」

 「そうか、それは残念だな」

 

 龍園君はこう言うがまったく残念そうには見えない。しかし、さすがはBクラスでリーダー的役割を持っている一之瀬さんだ。龍園君に対してあそこまで動じずにいられるとは。

 龍園君は部屋を出ようとドアに向かう時、一瞬綾小路君に視線を向けてなにかを口にした。そしてそのまま出て行ってしまった。ここは俺も退散したほうが良いかな。

 

 「えっと、みんなうちの龍園君がごめんね。クラスを代表して謝るよ」 

 「いやいや、安藤君が悪いわけじゃないから」

 「そうだな、逆に安藤に同情する」

 

 俺が頭を下げると一之瀬さんと神崎君が優しくそう言ってくれる。しかし、堀北さんは俺に鋭い視線を向ける。

 

 「私はあなたが龍園君に指示されてそういう態度をとっていると思うんだけど」

 「おい堀北、それは安藤に失礼だろ」

 「そうかしら? 無人島で良くわかったでしょう。Cクラスはそういうやり方をしてくるって。それなら彼がこちらに取り入って情報を流さないとも限らないでしょう?」

 「……確かに」

 「何で安藤が納得するんだ……」

 

 俺の反応に神埼君が呆れ口調で言ってくる。

 

 「いやー、実際俺が逆の立場なら俺もそう思うかも、と……。でも俺は別に龍園君に指示されてるわけじゃないよ、それに彼は俺のこと嫌いみたいだしね」

 「どうかしらね……」

 「おい、堀北」

 「あはは……。お邪魔みたいだし、俺はもう行くよ。そうすれば問題も解決する」

 

 変わらず俺に疑いの視線をかけ続ける堀北さんに苦笑し、俺は退散の意をとなえる。

 

 「悪いな安藤、堀北には俺から言っておく」

 

 綾小路君が申し訳なさそうにそう言った。俺は別に気にしていないと手を軽く振りながらさっさと部屋を退出した。

 

 その後4回目のディスカッションもほとんど進展がないまま終了した。しかし少し気になったのはうちのクラスの女子とおそらくDクラスの軽井沢さんがまたいざこざを起こしていた。てか町田君、あの子に良いように使われてる気がするけど大丈夫だろうか。まあ、随分くっついていたし、それを考えれば役得だろう。綾小路君に聞いたのだが、彼氏いるらしいぞ、その子。

 

 

 _______________

 

 

 その日の夜、バーでひよりと談笑してると意外な客が来た。

 

 「あ、安藤君だ―」

 「……」

 

 Bクラス担任の星之宮先生とDクラス担任の茶柱先生だ。星之宮先生は何故か俺の隣の席につき、茶柱先生もその隣に座った。

 

 「おやおや、デートかな? しかもこんな場所で、大人だねー。サエちゃんも見習ってほしいよねー」

 「おい」

 「ごめんごめん」

 「しかし、何故こんなところにいるんだ。ここはお前たちが来るような場所じゃないだろう」

 「まあ、ここは人がいないですし、それに1度来たら気にいったんで」

 「へえ、人がいないところで何をするのかな? そっちの子は同じクラスの椎名さんだよね?」

 

 この人はのりがいちいち隣のおばさんみたいだな。めっちゃにやにやしてるし……。

 

 「……ただ飲み物を飲んで他愛のない会話をするだけですよ」

 「そうですね」

 「へー? 2人は学校でも結構噂になってるけど、そういう関係じゃないのかな?」

 「おい、生徒のプライベートだぞ」

 「もう、サエちゃんは厳しいなー」

 「ただの友達ですよ」

 「へー、そうー」

 

 何だその棒読みは。すると星之宮先生は少し声色を変えた。

 

 「安藤君は今回の試験、どんな感じかな?」

 「どう、とは?」

 「もう優待者を見抜いたのかな?」

 「いえ、さっぱりです。でも龍園君はもう色々わかってるみたいですよ」

 「ふーん。椎名さんは?」

 「私も同じですね。Aクラスが沈黙を徹底してるのでほとんどのグループは同じだと思います」

 「2人ともつまんなーい」

 

 星之宮先生はウィスキーを頼むとそれを一気に呷った。

 

 「おい、生徒の前だぞ」

 「いいじゃない別に」

 「はあ。お前たち、もう戻った方が良いぞ、こいつ酔うと面倒だからな」

 「そんなことないわよー」

 

 俺とひよりは茶柱先生とマスターに頭を下げて、さっさとその場を離れた。後ろで星之宮先生がうるさかったが気にしない方がいいだろう。

 

 「あの2人は随分仲良しですね」

 「だな。あ、そうだ。龍園が言ってたけど今回のグループ分けで竜グループは優秀な奴を集めたグループだって言ってたんだけど、どう思う?」

 「……私も最初そう思いましたが、それだと不可解な点があります」

 「一之瀬さんだよな……」

 「はい。それに成績順でなら龍園君は選ばれません。恐らく先生が独断で分けている、というのが私の見解です」

 

 確かにな。そうなると普通に考えてひよりが選ばれてないのも変だしな。

 

 「しかし、Dクラスは残念ですね」

 「何で?」

 「修永君の話では龍園君の話についていけてないのは堀北さんです」

 「あー、まあな」

 「龍園君が言うように堀北さんはクラスの内情を理解していないのでしょう」

 

 確かに、堀北さんは他人を頼らずって感じがするけど龍園君みたいにクラスを支配してるわけでもないようだしな。すると突然ひよりは立ち止まり、考えるように手に顎を乗せた。

 

 「どうした?」

 「一之瀬さんが兎グループにいるのが先生によってなされたならそれに意味があるはずです」

 「というと?」

 「……これは推測ですが、一之瀬さんを修永君にぶつけるためだったのでは」

 「それは過剰評価だろ」

 「どうでしょう。修永君に、というわけではないかもしれませんが、意図があるのは間違いないと思います」

 

 確かにそう言われるとそんな気がする。もしかしたら俺の兄を知っているからそんなことをしているのかもしれないな。

 

 「まあ、どういう意図があるにせよ、もしひよりの推測が当たってるなら、それは無駄に終わるな。俺は特に何も行動を起こすつもりはないし」

 「相変わらず消極的ですね」

 「元々俺はこういう奴だ」

 「そうでしたね」

 

 そう言ってひよりは溜め息をもらす。逆にひよりはかなり積極的だよな。こんなぽわぽわしてるのにかなり向上心がある。最初は思ってもみなかった。

 

 「それでも、最終日、恐らく修永君の兎グループでは何かアクションがあるでしょう」

 「うん、俺もそう思う」

 

 実際俺じゃなくてひよりならその観察眼でその場の状況をしっかりと把握できるんだが。

 

 「まあ、明日は1日休みだし、じっくり考えてみる。優待者を報告してポイントを得るよりも他クラスの情報を得た方が良いと思うし」

 「はい、それが賢明だと思います。私も一緒に考えますよ」

 「ありがとう、それじゃおやすみ」

 「はい、また明日」

 

 

 

 




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