隣の席の文学少女   作:ユウツ

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高度育成高等学校学生データベース

氏名   安藤修永
クラス  1年C組
部活動  無所属
誕生日  8月25日

評価
学力    C-
知性    D
判断力   D-
身体能力  C-
協調性   E

面接官からのコメント
学力身体能力は平均をやや下回る。小学6年生の時に授業に出ずに家にいた時期がある。ただ、それまでは成績も優秀だったのでやる気の問題だと思われる。コミュニケーションを疎かにして小・中学校と友人と呼べるものはいない。面接ではしっかり受け答えができていたので、自ら率先して関わっていく自主性を磨く必要がある。

担任メモ
クラスメイトの椎名ひよりとよく行動を共にしているようで良い傾向に見える。経過観察を続ける。



魔王な椎名さん

 

 修永がひよりと共に昼食を食べてから1週間が経過した。授業がある平日は毎日共に登校し、お互いが紹介した本の批評を行う。教室に入ると最初の頃は「またか!?」「あの2人って……」と騒いでいたが、3日ほど経つと慣れたようでクラス内も落ち着いていた。ただ、クラスの中であの二人は付き合っているという結論に至ったようだが……。

 2人の仲も中々進展したようで修永はひよりを椎名と呼ぶぐらいの仲にはなった。(本当はひよりが同い年でさん付けは距離を感じると言ったからなのだが……)

 

 今日も椎名と一緒に人気のないベンチで昼食を食べながら、最近貸した俺ガイルの話をしている。俺が持ってきた数少ないラノベだ。金曜日に3冊貸したのだが、土曜日の朝に電話がきて追加を頼まれ、面倒だから12巻まで全部渡したのだが、日曜日の夕方に電話で「読み終わったので返したいのですが……」と言われた時は戦慄した。

 ちなみに電話番号とメールアドレスは学食に行った日の帰りに俺が頼んで交換してもらった。他人の連絡先を聞くのがあんなに緊張するものだとは思わなかった。

 

 「そういえば、もう少しで中間テストですが、勉強は進んでいますか?」

 「……そうなの?」

 

 椎名は溜め息を吐いて少しジト目気味になった。最近椎名は俺を糾弾する時よくジト目になる。その時は口調も強い感じになり、大体言い返せない。正にあなたは俺のお母さんですか、という感じである。

 

 「はぁ、坂上先生が何度も言ってましたよ。授業に出てるのに何で知らないんですか」

 「いや、考え事とかしてると聞き逃しちゃうんだよね」 

 「それは教師の話よりも大事なんですか?」

 「いや、まあ、どうだろね」

 「ということは一切テスト勉強はしていないと、そういうことですね」

 「まあ、そういうことになりますかね……」

 

 ていうか別にテスト勉強しなくても適当にやれば、平均点は取れるしな……。

 

 「では、今日からテストまで授業が終わった後図書館でテスト勉強をしましょう」

 「……わかりました」

 「それでは、そろそろ教室に戻りましょう」

 「うい」

 

 ベンチから立ち上がると椎名は思い出したように「あっ」と声を上げた。

 

 「テスト勉強するからといって、授業を疎かにしてはだめですよ」

 「……はい」

 

 俺は小さく返事をして教室に向かう椎名に付いていく。

 

 

 _______________

 

 

 授業が終わり、椎名と図書館に向かった。図書館内はテスト勉強のためか、いつもより席が埋まっていた。俺と椎名は適当な席に座り、椎名が実力を見るためと全教科のテスト形式のプリントをやった。

 とりあえず初日なので俺は簡単な問題を9割ほど正答にして、中間ぐらいの問題を半分ほど、そして比較的難しい問題は1割正答にした。採点のために椎名に渡した。

 椎名は採点をしていき、最後まで終えてふむと頷いた。

 

 「基本的な所はできていますね、たまにケアレスミスがありますが、数をこなせば問題ないでしょう。あとは応用がこなせるようになれば、テストは心配なさそうですね」

 

 まあ、そうなるようにしたからな。というか、このテスト予想問題作ったのって椎名だよな。こんなの作れるって椎名って相当頭が良いのか?

 

 「なあ椎名。この間の小テスト何点だった?」

 「小テストですか? 確か90点辺りでしたね」

 「……なあ、何で椎名ってCクラスなんだ? あのテスト結構難しかったと思うんだけど……」

 

 確かあの小テストは80点までは簡単に取れるが、最後の小問がかなり難しいはず……。90点台を取るにはあれを何問か正解しないといけない。そんな奴がCクラスにいるのはおかしいだろ。

 

 「そうですね、これは推測……というかほぼ確証なんですけど、学力だけが採点基準ではないということでしょう。試験を行ったわけではありませんが、身体能力、それにコミュニケーション能力などといった部分の情報を何らかの形で得て、それを基準に振り分けられた、と考えます。私どちらも苦手ですから」

 「なるほど、他のクラスの生徒を知らんから何とも言えないけど……確かに椎名は運動もコミュ力もないな」

 

 俺がそう言うと椎名は少しだけむっとした。

 

 「自分でわかってはいますけど、そこまで断定されると傷つきますね……」

 「いや、ごめんごめん」

 「いいですよ、私が運動ができないのは事実ですし……。ただコミュニケーションに関しては安藤君は言えないと思いますけど……」

 

 それを言われると痛い。事実、俺が学校で会話できるのは椎名だけだからな。

 椎名がつんとして俺が苦笑いしていると、奥の席からバンっと机を叩く音がして肩がびくっとした。そちらの方に視線を向けると赤髪の男子生徒が黒髪の猫目の女子生徒の胸ぐらを掴んで何か言い争っている。男子の方は大声で暴言を言っているのはわかるが、女子の方は声が小さくて何を言っているかわからない。ていうかあれ胸触ってね? セクハラじゃね? 合法セクハラか?

 

 「あれは確かDクラスの……図書館であんな大声で。他人の迷惑は考えられないのでしょうか」

 

 椎名は不機嫌気味にそう言った。赤髪の男子は鞄を持って図書館を出て行った。それに続いて二人の男子生徒も出て行った。黒髪の女子はまた勉強を始め、二人の男女が困惑した表情でその女子を見つめる。

 

 「何があったんだろうな?」

 「容姿などで決めつけは良くないでしょうが、大方テスト勉強をしない不良生徒のために勉強会を開いたものの、あの女子生徒が強く言いすぎてあの男子生徒の不満が爆発したんでしょう」

 「なんか、ぴったり合ってそうですごいな……」

 

 実際ほぼその通りというひよりの才能を発揮していた。

 

 「まあ、赤点は即退学ですからね、あの様子だとかなり危ないのでしょう」

 「えっ!? そうなのか」

 「えぇ、まあ。ただ安藤君は問題ないと思いますよ今の状態でも半分ほどは取れるでしょうし。これから勉強すれば余裕でしょう」

 「そ、そうか、よろしく頼む」

 「はい、任せて下さい」

 

 さっきの出来事で空気が悪くなったので今日の勉強会はお開きとなった。

 

 

 次の日の朝、俺はレンタルビデオ店で借りた俺ガイルの1期を一気見したので一晩中起きていたのでとても眠かった。まあ、椎名に普段から眠そうな目をしていると言われたし大丈夫だろ。

 

 そう思っていた時期が俺にもありました。

 

 「馬鹿なんですか?」

 「すいませんでした」

 

 現在、俺は椎名に超謝っていた。何故かと言えば、椎名にいつもより眠そうと言われ、ごまかそうとしたが、一瞬でばれてこんな状況になった。というか、こんな直球に罵倒されたのは初めてだ。

 

 「そうですか、安藤君は私が本を読む間も惜しんで予想問題を作っている間、アニメを見ていたと。そうですか、そうですか」

 

 椎名はいや、椎名さんは笑っているが目が笑っていない。まじで怖いんだけど……。

 

 「安藤君? どうでしたか、楽しかったですか、安藤君? どうなんですか、目をそらしてないでこちらを見て下さい」

 

 というか、すでに登校してる生徒もいるんだけど……。めっちゃ視線を感じる椎名は全く気にせず、いつもの抜けた目ではなくホラーじみた目で詰め寄ってくる。いつもの犬のような詰め寄り方ではなく、ゾンビのような、今にも襲いかかりそうな感じだ。

 

 「あの……」

 「何ですか?」

 「い、いやぁぁぁ、返却日が近くて、それで……「何ですか?」はい、僕が悪かったです。申し訳ありません」

 

 椎名ははぁと溜め息を吐いた。

 

 「今日、安藤君の部屋に行きます」

 「はい…………はい?」

 「安藤君は近くに娯楽物があると、また勉強しなさそうですから。テストまで私が預かっておきます」

 「いや、でも「何か問題がありますか?」ないです、はい」

 

 「では、行きましょう。遅刻すると良くないですから」

 「はい」

 「あっ、そうでした」

 「な、なに?」

 「眠いからって授業で寝ちゃだめですよ」

 「はい、もちろんです」

 

 椎名さんはにこりと微笑んだ。

 

 「もし寝たら……」

 「ね、寝たら……?」

 「私、ちょこっとだけ怒るかもしれません」

 

 俺は絶句した。あれで怒っていたわけではない、ちょこっとも。もし、怒ったらあれより怖いのかと恐怖し、栄養ドリンクもびっくりなくらい眠気が覚めた。椎名がいれば全国の一夜漬けの子たちは助かるんじゃなかろうか。一家に一人椎名。

 授業中も眠くなって瞼が落ち始めると、隣から強烈な殺気が俺を襲い、目が覚める。俺の近くの席の生徒も肩をびくっとさせる程だった。

 

 授業も終わり、椎名が無言の圧力を掛けてきて俺はしゅばっと立って、前を行く椎名に付いていく。

 俺の部屋に着いて椎名を入れた。というか、異性を部屋に入れるなんて入学した頃の俺じゃ考えられないな。理由はちょっとあれだが……。

 部屋に入った後俺と椎名は朝と同じ状況になった。しかも今回は俺は土下座で椎名が俺を見下ろす形になっていた。

 

 「これは何ですか?」

 「p〇4です」

 「ぷ、ぷれ? んんっ、まあゲームですね」

 「はい……」 

 「やったんですか?」

 「いや、その「やったんですか?」やりました」

 「これは私が預かります」

 「どうぞ……」

 

 そうして、紙袋にp〇4やパソコンを入れて椎名に差し出した。

 

 「それでは今日はこれで帰ります」

 「えっ、勉強は?」

 「睡眠を取らずに勉強をしても大して集中はできませんから、それなら今日はしっかりと睡眠を取って明日集中してやった方がいいので」

 「あ、ありがとう」

 「いえ、それでは、お邪魔しました」

 「あぁ、また明日」

 

 椎名はドアに手を掛けたところで止まった。

 

 「そうだ……テストが終わったら『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』のアニメ、私も見たいのでもう一度借りて下さい。もちろん安藤君の自腹で」

 「わ、わかった」 

 「それでは、今度こそ。おやすみなさい」

 「あぁ、それじゃ」

 

 …………染まってくなぁ。あ、俺のせいか。

 

 

 それからは毎日椎名と図書館で勉強した。一度自分の勉強は良いのかと聞いたが、教えることも勉強になると言われたのでそれからは気にしなくなった。

 

 

 _______________

 

 テスト3日前

 

 今日は椎名が茶道部に少し寄ると言っていたので、時間潰しに校舎の近くを徘徊していた。というか、テスト目前なのに部活があるんだなと思った。

 

 テニスコートの近くにいると、怒鳴り声が聞こえた。近くにいた茶髪の男子がそちらを見て、俺も横から声のした方を覗く。そこには前に図書館で騒いでいた赤髪の生徒と龍園とその仲間1号・2号が対峙していた。赤髪の生徒は龍園の仲間1号・2号に取り押さえられた。その後、龍園が何か言ったかと思えば、赤髪の生徒が襲いかかろうとして一触即発の瞬間横からピンクっぽい髪の女子生徒が仲介に入った。

 すげーな、あんなとこに入るなんて俺じゃ怖すぎて無理だ。まあ、椎名の方が怖いけど。

 

 あの女子生徒と龍園が何か言い合った後龍園はこの場を去って行った。クラス一緒なのに一瞥もされなかった。まあ、いいんだけど……。

 その後その様子を見ていた茶髪の男子が赤髪の子を抑えた。ふむ、ここはCクラスとして謝っておくか。

 

 「あの……」

 「んだテメェ!」

 「怖いな……」

 「須藤落ち着け」

 「そうだよ、それで君は?」

 「あー、えっとCクラスの安藤修永だ。さっきはうちのクラスの龍園がすまないな」

 「テメェ、龍園の野郎の仲間か!」

 

 須藤という生徒は俺がCクラスの人間だと知ると再度威嚇してきた。

 

 「須藤落ち着け……すまん、俺はDクラスの綾小路清隆だ」

 「いや、良いよ。多分龍園が原因だろうから仕方ない」

 

 須藤君は不機嫌気味にさっさと鞄を持ってどこかへ行ってしまった。

 綾小路君と自己紹介していると先ほど仲介をしていた女子が「ふーん」と興味深そうに俺のことを見ていた。

 

 「な、なんだ?」

 「いんや、Cクラスに龍園君に従ってない生徒がいると思わなくてさ」

 「あぁ、俺にはあまり興味がないんだよ、俺は支配するに値しないカスってところだよ」

 「へー、そうは見えないけどなあ」

 「と、ところで君の名前は?」

 「えっ? あ、あぁごめんね。私は一之瀬帆波。Bクラスだよっ」

 「そうか、よろしく一之瀬さん」

 

 一之瀬さんは笑顔で「うんっ」と元気に言った。もてるだろうなぁ、こういうの。俺には縁の無い話だけど。

 

 「ねえ、安藤君も綾小路君も、連絡先交換しようよ」

 「えっ、あ……あぁ、いいぞ」

 「俺も構わない」

 

 人生2回目のいや、綾小路君も入れたら3回目だが、同年代の連絡先をゲットした。それにしても綾小路君はクールだな、女子の連絡先に一切動じてない。慣れてるのか。こやつもて男か。

 俺が羨ましげな目を向けると綾小路君は首を傾げた。

 

 「何だ?」

 「いや、別に」

 「それじゃ、何かあったら連絡していいかな?」

 「ん? あぁ俺は構わないけど、自分のクラスの情報はあまり話せないぞ。大して知ってるわけでもないけど」

 「まあ、もしかしたら遊ぶことになったりするかもしれないでしょ?」

 「うん?」

 「綾小路君もよろしくね?」

 「あぁ、よろしく」

 

 やはりクールだ、かっこいい。しかし、俺が女子と遊ぶ時が来る日はあるのだろうか。

 

 「それじゃあねー!」

 「あぁ、じゃあな」「またな」

 

 そうして2人と別れた。なんにせよ2つも連絡先を入手できるなんて今日は良い日だ。俺の高校生活も捨てたもんじゃないんじゃないだろうか。

 俺はふふっと不敵に笑った。

 

 「あ、椎名のとこ行かなきゃ」

 

 時間を確認するとすでに30分も経っていたので急いで図書館に向かった。

 

 

 _______________

 

 

 中間テストがつつがなく終わった。あれからさらに3日間みっちり勉強させられた俺はようやく終わりが来て歓喜の念が絶えなかった。

 ちなみに一応テストでは8割台の点数にしたので椎名も文句はないだろう。

 

 俺は椎名から帰ってきたゲームやりながら、喜びを噛みしめていた。

 その時不意に俺の携帯が鳴った。俺はゲームの手を止めて携帯を見るとメールが1件来ていた。椎名からだ。

 

 「んんっ? …………はっ?」

 

 俺はメールを開き、内容を確認すると素っ頓狂な声を上げた。

 

 

 『テストお疲れ様でした。ところで安藤君、明日は空いていますか? もし空いていたら、テストの労いも兼ねてどこか遊びに行きませんか?』

 

 

 これは…………で、デート!?

 

 

  

 




これ書くために一回売ったよう実の1~4巻を買いに行った。これこそ無駄遣い。
 
一成「ねえ、僕本当に出番ないの?」
作者「…………」
一成「何か言ってくれよ……」
作者「……ワンチャン……」
一成「!?」
作者「ねえよ」
一成「……(泣)」

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