…………これは一体どういう状況だろうか。
「すー、すー……」
俺の頭上では椎名が目を閉じて規則正しく寝息を立てていた。
めちゃくちゃ可愛い。写真撮りたい。じゃなくて!
というか頭になんか柔らかい感触が……ってこれ!?
「っ!?」
寝惚けていた意識が一気に覚醒して、俺は自分が椎名に膝枕されていることに気づいた。
俺は驚いて飛び起きそうになったが、椎名を起こすのは悪いと冷静になった。頭には椎名の手が置かれていて多分撫でられていたのだろうか。これではまるで子供のようだと恥ずかしくなった。
もうすでに6時だが、少しは寝かせるべきだろうと思い、俺は慎重に椎名の手を退かし、椎名が起きないようにそっと起きた。そして椎名をベッドの上に運び、横にした。
(何故寝落ちしたんだ……!)
俺は切実に昨日の俺を悔やんだ。
意図してではないとはいえ、お泊りを体験してしまった。というか椎名も椎名だ、膝枕してるってことは俺が寝落ちした時は起きていたはずだろう。それなら俺を起こしてくれよ……! 何で深い眠りに誘っちゃうんだよ!
俺は深く溜め息を吐いた。
「……朝飯でも作るか」
俺はキッチンに向かい、朝食を作り始める。
普段は適当に作るが、今日は椎名もいるし気合いを入れて作るか。
そう思い俺は目玉焼き、ウィンナー、味噌汁を作った。そういえば、椎名は米派だろうか?
考えていると匂いにつられたのか椎名がキッチンにやってきた。
「おはようございます。とってもおいしそうですね」
「ああ、おはよう。ちょっと待ってくれ、もうすぐできる。ちなみに椎名は朝は米で良かったか?」
「はい、構いませんよ」
「そうか、それなら良かった」
「はい、。あの、顔を洗いたいので洗面所をお借りしても良いですか?」
「あぁ、いいぞ」
俺は完成した料理をテーブルに運ぶ。並び終えると椎名が戻ってくる。座布団に座り、手を合わせ「いただきます」と声にし、朝食を食べ始めた。
「椎名、昨日は途中で寝ちゃってごめん」
「いえ、私も寝てしまいましたから同罪です。あ、この味噌汁おいしいです」
「ありがとう。……じゃなくてっ」
「……?」
「何で起こしてくれなかったんだ。そうじゃなくてもさっさと帰ればよかっただろ」
「……はっ、そうでした!」
椎名はそう言うと落ち込んで小さく「仕返しが……」と言っていた。何のことだろう。
「安藤君、どうでした?」
「何が」
「ですから、膝枕です」
「どうって…………最高でした」
「いえ、そうではなくて。驚きましたか?」
「はっ? あ、ああ、まぁ。かなり。」
「そうですか。それならやったかいがあります。その時寝てしまっていたのは残念でしたが……」
俺が言うと椎名は満足したように微笑みながらうんうんと頷いた。
直に俺たちは朝食を食べ終えた。
「ごちそうさまでした、とってもおいしかったです」
「お粗末さん。口に合ったなら良かったよ」
「はい。こんなにおいしいなら毎日いただきたいです」
「…………」
この天然が! 朝一発で衝撃のファーストブリットを叩きこんできやがった。流石は天然恐るべし。逆だと思うけど……。
「んんっ……ともかく、もう帰った方がいいだろ」
「そうですね。ですがその前にお皿くらい洗わせて下さい」
「ああ、頼むわ」
そう言って椎名とキッチンに立った。椎名が皿を洗い、俺がそれを拭いて水切りかごに置いていった。こうしているとなんだか……いやいや。
「こうしていると、まるで新婚夫婦のようですね」
「ぐはっ……!」
椎名から撃滅のセカンドブリットが炸裂! 修永のライフはもうゼロよ!
というか、何で言ったし、普通思っても言わないだろ。
落ち着け俺。どうせ椎名のことだ、大した意味もなく言っただけに違いないんだ。
「ふー、よし。落ち着いた」
「……?」
「それじゃあ、部屋に戻りな。またアニメ見るにしても着替えたりしたいだろ?」
「そうですね。それでは、1度戻ります」
「おう」
玄関で椎名は靴を履き、ドアを開け、る前にこっちを振り返った。
そして強烈な置き土産を残していった。
「なんだ?」
「これは俗に言う朝帰りというものなんですかね」
「はっ?」
「それでは、またあとで」
椎名は部屋を出て行った。
抹殺のラストブリットが炸裂した。オーバーキル!
俺は玄関の前に立ち尽くし、椎名からの連絡で携帯が鳴り響くまで停止していた。
寝起きの椎名は俺には荷が重すぎたようです。
ていうか朝帰りなんてどこで知ったんだよ。多分そういう意味で言ったんじゃないと思うけど……。
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結局今日は部屋にいると俺がもたなそうなので、出掛けることにした。
お互い準備を整え、時間をおいて寮の前に集まり、とりあえずケヤキモールに向かう。
というか前々から思ってたんだけど、椎名っていつ勉強してんのかな? 思い返してみれば、部屋であれだけ本を読んでて、最近は俺の部屋でアニメ見て、テスト前も俺の勉強見て自分のをしてるとこはほとんど見ない……。前に授業を聞けば十分と言っていたが、マジだったんだな。しかし、本当もったいない。運動は仕方ないにしても、コミュニケーション力があれば、間違いなくAクラスの逸材だろうに。
「今日はどうしましょうか。まだお昼には早すぎますし……」
「そうだな。うーん?」
そういえば、俺と椎名は純粋な遊び目的で出掛けたことないな。休日一緒でも、新刊の購入とかアニメ借りに行って、そのままカフェに寄って俺の部屋だからな。健全な高校生の休日とは言えない。ましてや異性同士だとなおさらだ。
しかし、普通の高校生って何して遊ぶんだ?
俺は思いついた高校生っぽい遊びを出していく。
「カラオケ、ゲーセン、映画、とか」
「ふむ……」
「ボウリング、ショッピング、帰る。どれにする?」
「最後のはどうなんでしょう……」
椎名は溜め息を吐き、安藤君ですしと納得していた。ちょっと悲しい。
「私1度ゲームセンターというものに行ってみたかったんです。安藤君の貸すものに何度も出ていて、気になっていたんです」
「そうなのか? じゃあ、行くか」
「はい……!」
目的地の決まった俺たちはゲーセンに向かう。多分椎名はあまり好きじゃないと思うけどなー。
ゲーセンに到着し、中に入った瞬間椎名が眉を顰めた。
「随分騒がしいですね」
「うん。言うと思ってた」
まあ予想してましたよ。椎名は基本静かなところが好きだからな。俺は人が少なければうるさくても問題ないけど。
眉を顰めていた椎名だが、UFOキャッチャーを見るなり目を輝かせた。
「これが噂の……やってみてもいいですか?」
「お、おう」
椎名は猫のぬいぐるみのUFOキャッチャーをやり始める。クッションになるような顔がでかいやつだ。椎名は初めてだからか、全くとれない。椎名は無言で黙々とプレイする。声には出さないが、不機嫌だ。顔を見ずともわかるほどに……。彼女は随分のめり込むタイプのようだ。
「…………」
「……偉い人は言いました。UFOキャッチャーは貯金箱であると」
「くっ……」
俺が有名なネタを使うと椎名はようやく停止し、こちらを向いた。若干涙目である。そんなに欲しいのか?
椎名は俺を見てからぬいぐるみに視線を向け、また俺を見る。まるで何か俺に訴えているかのようだ。そんな捨てられた子犬みたいな目で見るなよ……。
俺は溜め息を吐いてUFOキャッチャーの前に立ち携帯でポイントを払い、プレイする。
1回目でぬいぐるみの向きを変え、2回目で耳の部分をうまく引っ掛けて掴むことができ、ゲットした。
「あっ、取れた……」
「……」
ぬいぐるみを出し、椎名を見ると少し悔しそうな顔をしていた。まあ君は10回以上やって取れなくて俺は2回で取ったから、わからなくもないけど……。
椎名は猫のクッション型ぬいぐるみをじーっと見ている。俺が左右上下にぬいぐるみを動かすと椎名もそれにつられて視線が動く。
このまま楽しむのも良いが、あまり悪ふざけしすぎて不機嫌になられても困るしな。
俺は椎名の前にぬいぐるみを差し出した。
「椎名、これあげるよ」
「いいんですか……?」
「もちろん」
「あ、ありがとうございます」
椎名は俺からぬいぐるみを受け取ると、最初は戸惑っていたが、すぐに嬉しそうな顔をしてぬいぐるみを抱きしめた。はい、とても可愛いです。
そしてその後はゲーセン内をぶらぶらしていると椎名があるものを見つけて立ち止まった。
「安藤君、プリクラですよプリクラ! あの伝説の……!」
「いや、ちょっ……!」
「行きましょう」
「待ってって、うわっ」
椎名は俺の腕を掴んでプリクラの筐体の方へ向かう。何がどう伝説なのかはわからないが、アニメ知識だろう。
プリクラの中に入ると椎名は目を輝かして中を興味深そうに見る。
「こんな風になってるんですね。アニメで見てどんなものなのかずっと気になってたんです」
やはりアニメで見て興味が出たそうだ。
「俺は写真は苦手なんだが……」
昔、七五三の時に写真屋さんまで行ったのだが。笑ってくれと言われたので笑ったのに、全然笑えていなかったらしく、撮影に2時間以上かかってしまったことがある。どうやら俺は兄のような作り笑いは一生できないのだと思い知った日だった。それ以来なんとなく写真は面倒なものとして俺の中で決定されてしまった。
そんな黒歴史を思い出している間に、椎名はさっさとポイントを払ってしまい、始まってしまう。本当話聞かないねあなた。
「安藤君、さあさあ」
椎名はカメラの前に移動すると俺を手招きする。仕方ないかと諦めた俺は椎名の横に移動した。
すると目の前に女性2人が写っている写真が現れ、機械音で「ポーズをとってね」と聞こえた。俺たちはポーズなどわからないので写真の2人を真似て撮ることにした。
最初は横に並んでポーズをとるだけだったが背中を合わせたり、カメラに顔を寄せて頬をくっつけたりなど接触が多いのがあった。真似ることに集中している俺は特に気にせずにポーズをとった。
撮影が終わってから、ようやく自分が恥ずかしいことをしていることに気づき、羞恥で悶え死にそうだった。
落書きができると言われ、椎名は軽快に向かっていた。
「これが、やってみたかったんです」
どうやら椎名の目的はこちらだったようだ。
まだ顔が熱い俺は椎名に飲み物を買うと言って離れた。だって今写真見たら、俺気絶する自身あるぞ。
自販機で自分と椎名の飲み物を買った俺は落ち着いた後、プリクラに戻った。ちょうど椎名は出てきていた。椎名は写真を見てにこにことしていたのでまあ、やったかいはあるだろう。
俺はさっき買ったお茶を椎名に渡した。
「ありがとうございます。ごめんなさい、ポイントが……」
「いや、いいさ。プリクラは椎名が払ってくれたからな」
「そうですか、すいません」
椎名は申し訳なさそうにお茶を受け取った。
「それにしても疲れた。写真は本当に苦手なんだ」
「そうなんですか?」
「ああ、どうも作り笑いの才能がなくてな」
「……? でも、安藤君普通に笑えていますよ?」
「えっ?」
すると椎名は俺の前に写真を出した。
写真の中の男女は正にバカップルといったポーズをとっていた。そして女子の方は嬉しそうに笑っており、男子の方もしょうがないといった感じで小さく笑っていた。
「誰だこいつは……」
「……? 安藤君ですよ?」
「……俺って目さえ美化されれば結構イケメンになれたかもしれないのか……」
「……よくわかりませんが、安藤君は普通に格好良いと思いますけど……」
「……」
俺はさりげない天然アタックを耐える。
そして椎名は2枚ある写真の1枚を俺に差し出した。
「どうぞ……」
「あ、ありがとう」
俺はまだ写真の中の男が自分であるのが信じれなく、何度も写真を確認した。しかしどうあってもそこにいるのは俺と椎名の2人。
俺は何度目かわからないが、再度自分の目を恨んだ。
その後椎名に「私は安藤君の目、好きですよ?」と言われ、耐えられなかったのは秘密。
それと、ちょびっとだけ写真が好きになりました。
ゲーセンなんて学校にあるかわからないけど、お許しください。
作者「話すネタないから今日中止ね」
一成「ひどいよ! ここしか出番ないんだから!」
作者「チッ、じゃあ昨日ようやくWW2買いました」
一成「それ近況報告じゃん!」
作者「ここ書くのに使う時間で1話かけるんだよ!」
一成「たった100文字でそんなにかかるの!?」
作者「1度書いたからにはつまんなくてもやめられないんだよぉぉぉ!」
一成「そんなに嫌なの!?」
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