咲き誇る、花のプリンセス   作:はーる

1 / 2
蕾の少女

 

 

 

 

 

 

 

 幼い頃からずっと、針の山に座っていた。

 

 『お前がプリンセス!?無理だろ!』

 

 ジクジクと突き刺さる度に血を流して、心にぽっかりと穴を開けて。

 

 『花のプリンセスだってよ!なれるわけねぇのにな!』

 

 「なれるよ……」

 

 そう言っても、誰も拾ってくれない。

 誰もこの夢を、認めてくれない。

 

 「わたしは、プリンセスになるんだもん……」

 

 ギュッと握り締めた絵本には、とても可憐なお花のお姫様が描かれている。

 彼女はこのお姫様のようになりたかった。強くて、優しくて、美しい花のプリンセスに。それが彼女の幼い頃からの夢。

 だが、それを公言すれば、彼女の周りは彼女に細い針を突き刺していく。ぷつぷつと軽く刺すものもいれば、ズブズブと心まで突き刺してくる慈悲のない輩も存在する。

 それを跳ね除けてでも、少女はプリンセスになりたかった。

 

 「なる、んだもん……」

 

 そう、たった一言だけでいい。

 誰か、その一言を言ってくれれば。

 

 『なれるよ』

 

 その言葉を誰から聞いたのか、少女は忘れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タンッ、と少女はローファーの靴音を鳴らしながら駆けていた。道行く人々を通り過ぎ、彼女は風に逆らうがままに道を駆け抜ける。

 栗色の髪をお団子にし、前髪を花のピンで留めている。くりくりと愛らしい瞳は一層可愛らしさを引き立たせていた。紫色のセーラー服を身にまとっている少女は、肩に桃色の鍵のチャームが付けられている鞄を背負い、一直線にある場所を目指す。

 そこには少女の運命が決まる、一大イベントがあった。いや、少女だけではない。少女以外の、全ての夢を持つ人間が運命を決める場所。少女はそこに向かっていた。

 長い道程であった。努力を遮る障壁もあったが、少女はそれを全部壊してここまで来た。たとえ断崖絶壁に立たされてしまったとしても、彼女はそれを乗り越えた。

 そして、今。少女はその場所へと到着する。

 

 「ーーーーここが、雄英高校……!」

 

 自分と同じ目的でここにやってくる人々を見て、少女は息を飲んだ。

 全て、自分の敵となる人達。今この時だけ、ここは戦場となる。

 ーーー国立雄英高等学校。

 ここが、少女の最初のスタート地点だ。

 

 

 

 これは、花のプリンセスヒーローを目指す少女が、最高のヒーローになるまでの物語だ。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 『お願い、雄英の受験を受けさせて!』

 

 『でも、はるか……』

 

 『お前、雄英だぞ……?行けるのか……?』

 

 『私、頑張るから!今よりもっと努力するから!だからお願い、二人共!!ーーーー私を、信じて!!!』

 

 

 「……って言って、随分経ったなぁ」

 

 春野はるかは、眼前に広がる雄英高校を前にそう回想した。

 親に無理言って許しを貰った、雄英の受験。自身が通うノーブル学園の時よりも、遥かに苦戦した。

 それもそうだろう。この雄英高校は、国が誇る最高峰のヒーロー育成校なのだから。当然倍率も高く、凡人じゃ手の届かない所にある。

 そんな所に受験するなど愚の骨頂。だが、はるかは何としてでもここに合格したかった。

 自身の夢を叶えるために、何としてでも。

 

 「…………」

 

 この雄英を受けるノーブル学園生は、はるかしかいない。

 他の人達は皆、ヒーローとはかけ離れた夢を追っている。ヒーローになれる素質がある個性を持つものも、全員。

 つまり、ここではるかが受かれば、彼女はノーブル学園初の雄英入試合格者という箔が付けられるのだ。……それが目的ではないが。

 

 「でも、私しかいないって、緊張する……」

 

 友もいないこのプレッシャーに押されながらもーーーはるかは前を向いた。

 ここで立ち止まっていては、夢に向かって進めない。狼狽えるな、打ち勝て。

 

 「頑張らないと……ッうあ!」

 

 「へあ!?」

 

 そう意気込んで足を進めていた時、前にいた人と運悪くぶつかってしまった。

 余所見をしていたからであろう。はるかは額を抑えながらも、そのぶつかってしまった人に向かって謝罪を口にした。

 

 「ご、ごめんなさい……!」

 

 「い、いいいいいいいいえいえ!こ、こちらこそ!!!!!」

 

 相手はバッ!と勢いよく頭を下げた。それに習って、はるかも慌てて頭を下げ返す。

 緑がかかったモサモサ頭の少年。見る限りひ弱そうに見えるが、この少年も受験する為にここにいるのだろう。

 つまり、自分のライバルーーー。

 ぐっ、と気を引き締めたはるかだったが、少年の体がふるふると震えていることに気づいた。そう、まるで産まれたての子鹿を連想させるような。

 ぱちくりと少年を見ていたはるかは、彼の様子にちょっとだけ緊張が解れた。人間、他人が慌てたりすると返って落ち着く生き物なのであろう。

 はるかはニッコリと、緊張で震えが止まらない少年に言った。

 

 「緊張、しますよね!」

 

 「ううううえっ!?は、はい!ソウデスネ!!」

 

 「お互い頑張りましょう!!少しでも、試験監督の目に止まってくれるように!」

 

 「は、ハイッ!!」

 

 「では!ぶつかってしまって、すみませんでした!!!」

 

 会話は短い。だが、それでいい。

 彼は自分のライバルなのだ。ここで会話を広げて情を譲り合っても、返ってそれが面倒な事になる。はるかはそれを避けた。出来るだけ、自分の力だけで伸し上がるために。

 ーーーこんな場でなかったら、もっとお話したかった。合格したら、会えるのかな?

 だったら意地でも、合格しないと。

 見送ってくれた友や家族を思い浮かべたはるかは、少しだけ足を速めた。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 

 

 雄英高校の受験には、対受験者用のロボットが用意される。

 それぞれ加算されているロボットを倒し、ポイントを稼ぎ、合格ラインまで達した者だけが、雄英の門を潜れるのだ。

 今回は1〜3ポイントのロボットと、0ポイントの超大型ロボットが用意されている。この事を説明してくれたヒーロー「プレゼントマイク」が言うには、このロボットを倒しても何の価値も生み出さないので、逃げた方が得策とのこと。

 つまりポイントを稼ぎつつ、敵の攻撃も避けながら受けろという事だ。ここで、ヒーローとして適しているのか、見極められる。

 

 

 はるかは指定された受験場で、軽くストレッチをしながら時を待っていた。そして同時に、少しだけ焦燥を感じていた。

 はるかの個性は、どちらかと言えば戦闘に不向きなものである。もっと鍛えれば戦闘やサポートに適する強力な個性になれるが、今回のは別だ。

 それは、相手がロボットだからだ。自分の個性がロボットに伝わるのか、それだけが頭を占め、さらにはるかを焦らせる。

 

 「う〜……緊張する……」

 

 産まれたての子鹿のような彼を思い浮かべながら精神統一してみたが、一向に心臓はどくどくと高鳴り、高揚が抑えきれない。

 これで不合格になったら笑い者だ。気を引き締めろ、とはるかがパチッと自身の頬を叩いた時だった。

 

 

 

 

 『はい、スタート!』

 

 

 

 

 

 

 そこに響き渡る、プレゼントマイクの声。

 最初、何を言っているのか判断出来なかった。

 

 『どうしたどうしたぁ!?もう匙は投げられてるぜ!さぁどんどん行けお前らァ!!!』

 

 プレゼントマイクのハイテンションの試験開始に、はるかも、他の受験者もなかなか理解出来なかった。

 だが、次のプレゼントマイクに少しだけ時間を要することになったがーーーーーほぼ全ての人間が理解した瞬間、猛烈なドミノ倒しが始まる。

 

 「う、うおおおおおおおおお!?!?」

 

 「ど、どけ!!どけええええええ!!!」

 

 皆、自分のポイントを取られまいと、必死に足を動かす。汚く、欲に呑まれるままに。

 もう他人なんてどうでもいい。開始合図が投げられた今、もうこの場にいるのは自分の敵なのだから。

 馴れ合いなどくだらない。ポイントは俺のものだ、と受験者は一斉にポイントのあるロボットを壊し始めた。

 

 「ッ!!」

 

 はるかもその流れに則り、ロボットへと突っ込む。

 ロボットがはるかを標的に捉えると、『ブッコロス!』と物騒な言葉を吐きながら殴りかかってきた。

 

 「ッはぁ!!」

 

 それをはるかは、手を翳して受け止める。

 刹那、バァン!とはるかの周りに花が舞い、風を引き起こした。グンッとロボットが風圧に押されるのを見逃さなかったはるかは、そのまま拳を振りかぶり。

 

 「ーーーッ!!」

 

 ぶん殴る。

 それはロボットに直撃し、数回バウンドした後ーーー破壊。

 ロボットを壊した後、ひらひらと彼女の周りに花が舞い、彼女の勝利を祝っているかのように見える。しかし、その可愛らしい激励よりも、はるかは意外に呆気なく壊れたロボットに拍子抜けしていた。

 はるかの個性は『花』という個性である。手のひらから花弁をひらひらと出したり、先程のように花弁を力に変え、強力な力を生み出すことも出来る。場合によれば、翳すだけで台風のような花の風を生み出すことも可能だし、もっと鍛えれば様々な状態異常を引き起こす花を作り出すことも可能なのだ。

 だからはるかは「もしかしたら花の力だけでは軟弱すぎて壊れないんじゃないのか」と思ったていたが、自分が思っているよりも拳は強かったらしい。

 

 「ーーこれなら、行ける!」

 

 俄然やる気が湧いてきたはるかは、意気揚々と地面を蹴って、次のポイントを破壊し始めた。

 

 

 

 

 

 何ポイント目か、もう覚えていない。しかし、結構な数のロボットを破壊したと思う。

 

 「はぁ、はぁ……!」

 

 何体目か分からない小型ロボットを、振りかぶった拳で粉砕したはるかは、疲弊により膝をつく。彼女の個性は、力を使う度に体力を消耗するデメリットを持っている。水を汲めば徐々に飲み干されていくように、じわじわとはるかの体力を削っていった。

 もう立つのも辛いかもしれない。肩で息をしているはるかは、ふと辺りを見渡した。

 周りは疲弊しているはるかの姿など目もくれず、残っているロボットを血眼になって探している。誰も、彼女を労わろうとしない。

 これが試験。これが欲にまみれた人間の姿。

 

 「負けて、いられない……!」

 

 ググッ……と、はるかは他の受験者に充てられ、立ち上がる。既に体が悲鳴を上げているが、無茶をしなければこの試験は突破出来ない。

 しっかりと立て直し、ギッ!とロボットを探し始めたーーーその時であった。

 

 

 

 「う、うわああああ!?」

 

 

 

 他の受験者からの、悲鳴が聞こえたのは。

 その悲鳴が聞こえた瞬間、はるかの周りにいた受験者も響めく。そして、皆一様にーーーーまるで誰かに操られたこのように、一斉に上を見上げた。

 こちらに向かってくる度に、轟音のような風がやってくる。他のロボットとは比べ物にならないーーー下手すれば学校の倍くらいあるのではないかと思うくらいの、有り得ないデカさ。ゆっくりと、自分達を始末する為に破壊しながら歩いてくるその姿は、まるで地獄の万人のようであった。

 0ポイントの仮想ロボットーーーープレゼントマイクが、「やるより逃げた方がいい」と言っていた、何の価値もないロボット。

 なら、皆は何をするか?ーーーー勿論、逃げの選択肢に他ならない。

 

 「に、逃げろおおおおおおおおおおおお!?!?」

 

 「お前ら走れえええええ!?踏み潰されるぞおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 先程の光景が嘘のかのように、皆あのロボットから必死に逃げの体制を取る。それ程までに自分の命が欲しいのは明白。それもそうだ、わざわざ危険を冒してまでポイントを取る必要はないのだから。

 そしてはるかも、その一人であった。自分も早く逃げないと、と体を動かそうとするも、個性の過多による反動で、体が動かなかった。

 

 (やばい、死ぬーーー?)

 

 ロボットがやってくる。止まるわけがない。あれは受験者を落とすために作られたロボットなのだから。

 万事休すか、とはるかが諦めかけたーーーその時であった。

 

 「……ぅ、ぁ」

 

 はるかの耳に、呻き声が入ってきた。

 その声を聞いた瞬間、はるかはその声をたどる。そして、辿った先ーーー丁度、ロボットの直線状にいる、ロボットによって破壊された瓦礫に埋もれる、女の子がいた。

 苦しそうに呻き瓦礫に埋もれる女の子。必死にもがいているが、彼女自身の体も全然動きていない。恐らく、彼女の体も自分と同じ、個性を過多し過ぎた結果なのだろう。

 

 「……ぃ、う」

 

 ロボットが彼女に気付かずに歩いてくる。このまま放っておけば、彼女はあのロボットに踏み潰されるであろう。

 誰も彼女に気付かない。気付いたのは、私だけ。

 つまりーーー彼女を助けられるのは、私だけ。

 

 

 

 

 

 

 その事に気付いた瞬間、あれだけ重かった体が、急に軽くなった。

 重りが取り除かれたかのように、はるかの体は風のように軽くなる。

 刹那ーーーはるかは、あの女の子に全速力で駆け出していた。

 体の限界など諸共せず、息を切らして彼女に駆け寄っていく。誰かの止める声が聞こえるが、そんなの、今の状況に比べれば虫の声だ。

 

 「ーーー大丈夫!?」

 

 女の子の傍に屈み、彼女の様子を伺う。

 顔を蒼白とし、今にも吐きそうな彼女。早急にこの瓦礫を退かさなければ、とはるかは拳を引いて、彼女の枷と化している瓦礫に拳を突きつけた。

 

 「ーーーッ!」

 

 体がビリビリと電流のように走ったが、今はそんな事を気にしている場合ではない。

 瓦礫を退けたはるかは、ぐったりとしている女の子に肩を貸す。

 

 「大丈夫、大丈夫だからね……!」

 

 そう彼女に言い聞かせて、グッと足を動かし始める。

 走る事は出来ない。しかし、もし万が一の事があったら、最後の力を振り絞って彼女だけでも投げ飛ばす予定であった。

 とにかく、あのロボットから退避をーーと考えていた時、彼女達の体に影がかかる。

 

 「ッ……!!」

 

 もう、ロボットの足は彼女達の頭上にまで迫っていた。

 悲鳴が轟く。女の子の諦めたかのような声が聞こえる。グッと唇を噛み締めて、その時を待っている。

 

 

 女の子を助けなければまだ勝機はあった。命はあった。そう、はるかも他の受験者と同じように、逃げに徹していればよかったのだ。

 なら何故、危険を冒してまで女の子を助けたのか。

 

 

 (体が、勝手に動いていた)

 

 

 誰かがそう言っていた。考えるより先に、体が動いていたと。

 きっとはるかも、そうだったのだ。

 

 (この子、だけでも)

 

 また、体が動く。限界を超え、女の子を助けようと花が力に変わる。

 そしてはるかは、最後の力を振り絞って彼女だけでも助けようとしたーーーその時であった。

 

 

 

 

 ブォン!と、突風のような風がはるかの側を通った。

 

 「!?」

 

 突然の強風に、はるかと女の子は堪らず目を瞑る。それは一瞬の事で、次には彼女らはその風の行先を見上げていた。

 その風を生み出した少年は、既にロボットの眼前まで飛び上がっていた。彼女達からしてみれば、もう豆粒のように小さくなっている少年の体。

 一体、何を。そう疑問を抱いたーーー刹那。

 

 

 『ーーーーーー!!!!』

 

 

 

 バゴォン!と、生み出される風と共に破壊される、0ポイントロボット。

 顔は飛車げ、機体を強く損傷したロボットは、風船のように爆散した。

 

 「ーーーーえ!?」

 

 ギョッ、とはるかは目を向いて、ボロボロになったロボットを見た。ロボットは既に原型を留めておらず、反動によって後ろへと倒れていく。

 はるか達の周りがロボットの部品によって散乱する。こちらに落ちてくる欠片は全てはるかの花の壁で防いでいるが、それよりも先程の光景が離れなかった。

 

 (な、何あれ、何あれ!?あ、あれを壊したの!?嘘!?)

 

 先程の少年が、あの巨大なロボットをぶっ壊した。それが何よりの衝撃であった。

 一体、どんな個性の特訓をすれば、あれを一発で倒せるというのだろう。

 

 「……でも」

 

 はるかは見上げた。正確には、降下を始めている少年の姿を。

 結果的には助けられた。自分達を助けようと一歩踏み出した彼に。

 

 ーーーありがとう。はるかはそう、零した。

 

 

 「…………って、あの子もしかして着地出来ない……?や、やばくない?ま、待って、ちょっと!」

 

 

 その後、空中で頭から落ちている少年を見て、はるかは大いに慌てて助けるのであった。

 

 





 この後は雄英に合格してクローズとなんやかんやあったりとか、そんな風な構成になっています。とにかくクローズと絡ませたい。
 僕のヒーローアカデミア×Go!プリンセスプリキュアのクロスはなかなか書く人はいないと思います。今回は私が両方大好きだったので書きました。その中でもはるはるが凄い大好きで……あの子可愛くないですか?????
 まぁそれは置いといて。今回はテスト投稿にお付き合い頂きありがとうございます。続きは皆様の評価を見ながら検討したいなと思っています。何せ異端のコラボですから、プリキュアとジャンプですから。そもそも今のところプリキュア要素が全然出てこなくてこれ批判ばっか来るんじゃないのかと内心ビクビクしています。(ちゃんとプリキュアにはなります)
 では。またお会い出来ることがあったら。


 結構急ぎ気味に書きました。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。