咲き誇る、花のプリンセス 作:はーる
※このシリーズは原作とは違う設定が埋め込まれています
※原作Go!プリンセスプリキュアと違います
※今のところはるかちゃんとクローズ+αしか出る予定はありません
※それを踏まえた上でどうぞ
春野はるかは焦っていた。ダラダラと冷や汗を垂らし、ガクガクと足を震えさせて。手にはファンシーな雄英のパンフレットが握られており、大きな地図が描かれている。それは校内の地図なのだが。
もう一度、はるかは地図を見た。そして、目の前にある教室の名を見比べる。目の前には明らかに自分が行くべきではない「仮眠室」という教室が存在し、さらにはるかの焦りを募らせた。
わなわなと手を震わせたはるかは、叫ぶ。
「ーーーーま、迷ったああああああああああああああああ!!!」
この最悪な状況に耐えきれずに、人目も気にせずに叫んだ。
実技試験を終えた後は、本当に落ち着かなかった。あのような結果で大丈夫だったか、遅れをとっていないか、そして、個性の反動によってリカバリーガールに運ばれた、自分達を助けた少年は無事なのだろうか、色々な事で頭がいっぱいになり、この数日心もとなかった。それによって寮で同室の友達に心配されたのは言うまでもない。
合格通知が来た時は、その友達と一緒に見て大いに喜んだ。あのオールマイトが直々に映像を通して合格発表してくるのは予想外だったが、何はともあれ、はるかは雄英の受験に合格したのだ。
瞬く間に注目の的になり、はるかは卒業まで「学園唯一の雄英進学者」と囃し立てられた。ノーブル学園を卒業した今、はるかはその異名に応えなければならない。
寮生活も終わり実家に帰省したはるかは、雄英に入学するにあたって様々な手続きを済ませ、今に至る。今日からあの雄英に登校すると思うと、胸が踊って仕方がない。そう登校する前はーーー思っていた。
しかし、
「う、嘘……!?あ、あれ……私どっかで道間違えた……?な、何でA組からは遠いはずの仮眠室に着いちゃったの……!?」
何度も何度も確かめるも、目の前の教室ははるかが向かうべきであろう「1ーA」からは遠い仮眠室。
そう、はるかは迷っていた。これから通う学校の中をだ。
玄関口はまだ良かった。そこからパンフレットを見て順調に進んでいるのかと思いきや、いつの間にか道を間違えていたらしい。途中で気づかなかったのは初めてだからということで許してもらいたい。
「え、えーと……こっからA組はどう行けば……うわあああああああああん!!広過ぎるぅぅううう!!!」
この仮眠室からA組に移動しようとするが、校内が広すぎてどのルートを辿ればいいのか分からない。完璧な迷子であった。
来た道を戻るという選択肢もあったが、ずっとパンフレットを眺め続けていたはるかにはその記憶すらない。完全に救いのない状態である。
「と、とにかく歩き回らないと……!ここで立ち止まってちゃ、時間だけが無駄になっちゃう!頑張れ、私!」
取り敢えず、歩いてみよう。
そう決めたはるかは、ただの勘で右の道を進み始めた。
「な、何で玄関に着くの……?」
やみくもに歩いていたら何故か最初の玄関口に着き、はるかは戸惑いを隠せなかった。
おかしい。自分は階段を降りていないはずなのに何故玄関に着いてしまったのだろう。誰かの誘導個性が発生しているのか?と疑う程に、はるかはここに着いたことを信じられないでいた。
折角早く着いたというのに、これで時間を潰し、さらに遅刻のダブルコンボは精神的にも社会的にもキツい。入学早々「遅刻魔」というレッテルは貼られたくない。
「……ううん、待って。玄関に着いたということは、またここからA組を目指せば行ける!」
幸が味方したのか、はるかはそんな考えを思いついた。早速パンフレットを開きA組の場所を確認する。
「おい」
その時、ポンッと誰かに肩を叩かれた。
絶対に迷わないと心に唱え続けていたはるかは、突然の声に「ひゃ!」と驚きを顕にする。
パンフレットから顔を上げ振り向けば、そこにははるかと同じ雄英の制服を着た男子生徒がいた。
黒髪を若干オールバックにして、目は少々吊り目である。表情から気怠けさが伝わってくる。少しだけ制服を気崩している彼も、はるかと同じパンフレットを握り締めていた。
「お前、こんな所で百面相してて何やってんだ?」
彼にそう指摘されてハッと気づく。
ここは雄英の玄関。当然、見ず知らずのここの生徒も利用するわけで。冷静に辺りを見渡せば、自分たちの同じ制服を着た人達がジロジロとこちらを見ていた。
それも仕方がない。パンフレットと格闘している少女を見れば、誰だって目に入る。その事に気づいたはるかは、カッと顔を真っ赤にさせた。
「…………おい」
「っえ、は、へあ!?」
またポンッと肩を叩かれて我に返る。どうやら自分が目立っている事実に呆然としていたらしい。
羞恥に身を縮ませるが、これ以上目の前の彼に迷惑はかけられず、はるかはボソボソと質問に答えた。
「あの……実は迷って……」
「……そのパンフレットは何だよ」
「いえ、あの、何か……見てたんですけど全く別の所に行ってしまって……」
ダラダラと汗を流し続けるはるか。そんなはるかの姿を見て、ハァと溜め息を吐いた青年。こんな入学初日に校内で迷う人間に遭遇したのだ。彼の心境など手に取るように分かってしまう。
ああ、初対面の人にこんなに迷惑をかけるなんて……と恥をかいていると、「何処だ」と言われた。
「…………へ?」
「だから、何処に行くんだよ」
思わず聞き返すと面倒臭そうに返され、慌ててはるかは「1ーA!」と答える。すると、青年の表情が驚愕に変わった。
「俺の行くところと一緒じゃねぇか」
「え?……ってことは同じクラス!?っていうか同じ歳!?うわぁ!大人びてるからてっきり二年生か三年生かと思った!」
同じクラスで同年代なことに驚きを隠せないはるかは、興奮したかのように飛び跳ねる。
対して青年は、それなら話が早いと言わんばかりに淡々と返した。
「どっかの方向音痴さんが迷わないように、俺が前を歩くとするか」
「ほ、方向…………お願いします……」
方向音痴と言われムッとしたはるかだったが、実際そうなってしまったので素直に頼む事にした。満足気に先を歩く青年の後を追う。
ふと、はるかは名前を名乗っていないことに気づいた。これから同じクラスになるのだ、ここで聞いても減るものではないと、青年の隣に並んで覗き込むように聞いてみた。
「ねぇ、あなたの名前は?私は春野はるか!」
「………………」
青年は少しだけ間を置いて、名乗る。
「黒須ーーー黒須春斗だ」
その名を聞いた時、はるかの心がズキリと痛んだような気がするが、はるかはそれに気付かないふりをした。代わりに「何か、名前が似てるね!」と笑顔で返した。
「……大きい……」
黒須のおかげで1ーAについたはるかは、まずその戸のでかさに驚いた。異形型でも簡単に通れるようになっているのだろう。デカデカと描かれた「1ーA」に、はるかはついに来た、と手汗をかく。
何とか合格を手にした雄英の受験。しかし、それはただの通過点にしかならない。ここから、ヒーローになるための布石を整えなければならない。
その為にはここで良い成績を残し、良い状態でヒーローになる。まずは、それが第一の目標だ。
「…………よし!」
意気込んだはるかは、扉の取手に手をかけて、一気に開けた。
「おはようございまーーーー」
ドンッ!と強めに開けてしまったが、それにも負けぬ大きさで、はるかは挨拶をーーーしようとした。
しかし、それは途中で途切れる事となる。何故なら、窓際の席でガミガミと言い合っている光景が目に入ったからだ。金髪でガラの悪そうな男と、黒髪に眼鏡でガタイがいい真面目そうな男。その二人が、クラス中の注目を集めていた。
「机に足をかけるな!!その机は公共のものだぞ!?」
「うっせぇ!!黙れ!!!テメェ何処中がゴラァ!!!」
明らかにヒーローを志すものには程遠い金髪の男が逆ギレする。それにめげずに反論する黒髪の男も大したものだ。大方、大き過ぎる正義感に駆られたのであろう。
それはともかくだ。ああいう人も合格したのか、とはるかは少しだけ吃驚した。明らかに不良そうで、正直に言えば敵の方が似合いそうな彼。実技や筆記の事件の結果が良かったからここにいると思うが、あの人とこれから一緒となると、少しだけ不安が募った。主に「仲良くなりたいけど、仲良くなれるかな」という交友関係について。
「暴言三昧だな、あいつ」
「うん……でもここにいるってことは、ヒーローになりたいって事だよね?」
「そうだな。たぶん、皆の注目を浴びたいとかそういうもんだろ。それより席の確認をしてこい」
「え、あ、そうだ!席!」
隣に立っている黒須に促され、はるかは慌てて席の確認をしに行った。黒板に書かれているのを見るに、どうやらあいうえお順で構成されているらしい。はるかは「は」から始まる所を順番に辿っていく。
「えーと……私の席、は……」
その自分の席と前の席を見て、固まった。はるかの席は窓際の二番目の席。そこはまだいい。問題は、前の席の「爆豪勝己」という名前。
はるかは今一度、あの金髪の男の席を確認した。どうやら言い合いが終わり、不機嫌に出入口を睨みつけている彼の席は窓際の一番前ーーーつまり、はるかの前の席は、彼ということになる。
「…………だ、大丈夫かな……」
さらに不安になる。仲良くなるチャンスではあるが、全部罵倒で返される気しかしない。
とにかく、何にでもなるか。とはるかが吹っ切れた時であった。
「お友達ごっこがしたいのなら、他所にいけ」
突然そんな声が聞こえ、はるかは出入り口を見る。そこには寝袋にくるまっている薄汚い男が、眠そうな目でこちらを睨んでいた。
「はい、静かになるまでに八秒もかかりました。合理性に欠けるね」
その男はよっとと、寝袋のまま立つ。一体どういう原理で立っているのかは知りたいものだ。
「担任の相澤消太だ。よろしくね。ーーーー早速だが、これを着てグラウンドに出ろ」
彼はーーー相澤は寝袋の中から体操着を取り出して、全体にそう指示した。
個性把握テストまで書きたかった。
取り敢えずシリーズにして続けようと思います。
高校生プリキュアがいるんだから、別に高校生でプリキュアになってもいいよね?