high school D×D 〜仮面ライダードラグナー〜 作:ドラゴンズネスト
……聖剣、或いは魔剣と呼ばれる剣が世界中には数は少ないが存在している。
だが、日ノ本に存在する剣には聖剣と呼ばれる剣も、魔剣と呼ばれる剣も存在して居ない。
唯一つ存在しているのは『神剣』と呼ばれる剣のみだ。
ある少女の話をしよう。
日本に存在する退魔の名家に生まれた彼女は剣才に恵まれ、一族に伝わる神剣の後継者に幼くして選ばれていた。
厳しくも優しい父と見守ってくれる母、自分を慕う弟と家族に恵まれて幸せに過ごしていた。
その少女の剣才は正に剣に愛されていると言っても過言ではない。
だが、ある日彼女は全てを失った。
神剣の存在に目を付けた天界の一部の勢力が本来日本神話に属すべきその剣を狙ったのだ。
『世界を創ったのは我等の神だ。ならば異教徒の聖剣も我等が使うべきだ』
それが天界の言い分であった。天使たちによって家族を殺された少女を救ったのは、青い龍の騎士……ドラグナー。
神罰が下ると言う命乞いとも取れる呪いの言葉を吐き出す天使に対して、ドラグナーは言い放つ。『なら、その神様もお前達と同じところに送ってやる』と。
龍の騎士に救われた少女は狂気にみちた憎悪を天使とそれに組する信者たちへと、龍の騎士を慕う少女達へは仲間としての絆を、そして龍の騎士へと忠誠と情愛の入り混じった狂気に誓い愛情を抱くようになった。なお、ハーレムはオッケーらしい。
壁に叩き付けられるイリナと地に倒れるゼノヴィア……。教会から派遣された二人は運悪く彼女に見つかってしまった。
……狂気に染まった憎悪を抱いた彼女にとって、天界側に属する教会に所属する二人を殺すことに躊躇など無く、聖剣に至っても主への土産に丁度いいと思っている。命を奪う事への躊躇や禁忌など感じさせず、寧ろ聖剣二本を持っていけば四季に褒めて貰えるかもと言う想像で恍惚の笑みを浮かべながら、己に受け継がれた神剣を構える。
そもそも、悪魔側の勢力に捕われた彼女の友人でもある刀奈の妹達を助けるための武器として聖剣は有効だ。鋳潰して銃弾にしても良し、機械的に因子を発生させて強制的に力を使っても良し。最悪その機械と聖剣を暴走させて自爆兵器にしても良し……ぶろーくんふぁんたずむと言う扱い方も出来る。
限られた者しか使えないとしても、対悪魔兵器として聖剣を考えているのだから、その辺は己の主である四季と、新しく仲間になったベルトさんが如何にかしてくれるだろうと考えている。
自分の友人や主のいる場所をうろついている目障りな天界の側の人間を始末した上で、対悪魔用の武器も手に入る……そして、四季には褒めて貰える。彼女にとってはいい事尽くめである。
「くっ、お前はコカビエルの仲間か!?」
ゼノヴィアの持つ
そんな、情報には無かった強敵にコカビエルとの関与を疑ってしまうが、
「コカビエル? 何故私が鴉如きの下に着かないといけませんの? 私の主は鴉等とは比べる事自体が愚かなほど素晴らしい方ですわ」
ゼノヴィアの言葉に不愉快な表情を浮べるが、直ぐに四季の事を想像して恍惚の貌を浮べる。
『いや、それだとオレが極悪人に聞えるんだけど……』
そう言って近場に有る鏡面から飛び出し、契約モンスターのドラグレッダーを引き連れながらゼノヴィア達と少女の間に立つドラグナー。どう考えても先ほどの少女の言葉だと、悪の親玉に聞える。
……まあ、考え方によっては絵的に似合ってしまうかもしれないので、その辺の風潮被害は注意したいドラグナー……四季であった。
「ああ、主様ぁ」
そんなドラグナーの言葉も無視して恍惚の表情を浮べながら現れたドラグナーへと一礼する。確かに聖剣は欲しいが特に被害を被った訳でもない女の子二人を虐殺する寸前で間に合ったのは良かった……本当に。
確かに、鋳潰して銃弾に加工したり新しいハンドル剣の材料にしても良いのでドロップアイテムの聖剣二本は魅力的だが。
「取り合えず、不服だろうけど此処は剣を引いてくれ、夜架」
「畏まりました」
流石に一般の教会関係者まで手にかけたりはしないが、一定のラインを超えると問答無用で殺すと言う選択以外に存在しなくなる彼女の凶行を止めさせるのが専決だ。別に天使相手ならば良いが。最悪契約モンスターの餌にも出来るのだし。
彼女にしてみれば、レアアイテムが持ったモンスターにエンカウントした程度の認識だろう。
不平も不満も無くドラグナーの指示を受容れる辺りが彼女の己に対する狂信具合がよく分かる。……身内に危険が無いので全面的に放置しているが。
「ほら、これを貸してやるから先に戻っていてくれ」
「畏まりました、主様」
そう言って投げ渡すのは、ダークウイングとの契約のカードが入ったカードデッキ。それを恍惚とした表情で抱きしめると、ドラグナーへと一礼して鏡の中に飛び込んでいく。カードデッキを渡した場合は、誰にも見つからないように行動しろと言う意味なのだが、その辺は向こうも十全に理解している様子だ。
流石に彼女の狂信具合から考えて、この場で自分が引けと言えば素直に引くだろうと考えた結果だが……あの様子なら脇目も振らずに家まで向かってくれる事だろう。
「……た、助かったのか……?」
「そ、そうみたいね」
「取り合えず、あいつの事は本人に代わって謝っておく」
内心で『何一つ悪いとは思ってないだろうし』と呟きながら、心の中で彼女の暴走具合について溜息を吐く。教会関係者……一応裏の関係者にこそ限定されるが、彼女の視界の中で行動していれば、問答無用に殺しに掛かるのも良く知っている。
……寧ろ、天使の場合は既に死んでいる可能性も高い。視界に入った瞬間、死を覚悟する間も無く呼吸を保するレベルで『当然』と言った感覚に殺しに掛かる。……彼女にとって天使とは、目の前で生存している事すら許せない存在なのだ。
そんな彼女の思考を考えて頭を抱えると、背中を向けて立去ろうとする。
『『グゥ~』』
と、そんな音が響いた。後ろを振り返ると貌を赤くしたイリナとゼノヴィアの二人。先ほどの腹の虫の音は二人からだったようだ。
「……食べてないのか?」
無言のままに頷く二人、本当に食事を取っていない様子だ。……流石に教会がけちだと言っても、普通に旅費と食費程度は渡すだろう。聖剣もって何かの任務中に断食の修行も無いだろう。中国の選任じゃあるまいし、信仰とやらで霞食べて戦えたら、既に悪魔も全滅させられているだろう。
「……任務中に断食の修行でもやってるのか? それとも……重要な任務に片道分の切符しか持たせないほどけち臭いのか、教会は?」
「そんなわけは無いだろう!? イリナが経費であんな物を買ってしまったんだ!」
そう叫ぶゼノヴィアの指差す先には立派に見える額に入った絵があった。……辛うじて人に見えるが、前衛芸術かただの落書きかの二択程度の代物だろう。
随分とエクスカリバーは安いんだな、と思っていたがどうやら違っていた様子だ。だが、
「な、なんでそんな奴に財布を預けた……」
「日本出身だからと預けてしまった過去の私を殴りたい……」
「ちょ!? それは酷くない!?」
「「酷くないだろう」」
涙目で抗議するイリナに思わずゼノヴィアとドラグナーが声を揃えて答えてしまう。
「はぁ……奢ってやるから付いて来い……」
イリナは自業自得とは言え、巻き込まれたゼノヴィアの方が哀れになったドラグナーがベルトからカードデッキを外して変身を解く。……この状況で黙って立ち去れるほど四季は非常な人間ではなかった。流石に仮面ライダーの姿で店には入れない……そもそも、変身状態で財布は取り出せないし。どっちにしても、壱度変身を説く必要が有るのだ。
……身内が襲い掛かったお詫びでもあるのだし。