ゾイド Wild Flowers~風と雲と冒険と~第一期   作:尾久出麒次郎

2 / 48
 本作は二次創作であり、公式設定、作者の脳内妄想、作者の黒歴史ノートを基に再構成しています。


プロローグ

 プロローグ

 

 銀河の彼方にある『惑星Zi』そこには、優れた戦闘能力を持った金属生命体『ゾイド』が存在した。ゾイドは自ら戦う意思をもち、惑星Ziにおける帝国と共和国の戦争の中、最強兵器として君臨していた。

 これは、いくつもの戦乱が続き、幾多の英雄が生まれては歴史の闇へと消えていく時代のある物語。

 

 北エウロペ南東部の国、マゼラン共和国辺境の町セブタウン。

 

 西エウロペ大陸の某国で起きた紛争はカミル・トレンメルにとってニュースの中の出来事だった。

 陸軍中尉の父が戦死するまでは。

 母親から聞いた話しでは父は多国籍軍のゾイド乗りだったという。

 父は基地で超小型ゾイドを使った自爆テロに巻き込まれ、亡くなった。らしくない最期だったと葬儀に参列した軍の関係者の人は口を揃えて言った。

 父親はいつも家を空けてることが多く、帰ってくるといつも片道一日かけて多国籍軍が駐留するマゼラン陸軍基地に連れて遊びに行き、配備されていた複座型シールドライガー*1の後席に乗せてもらい、ゾイドの操縦を学んだ。

 葬儀を終え、カミルは父の死と悲しみを幼い子どもながらに受け入れた。しかし、まだ実感が沸かないまま、母親に部屋の掃除に駆り出された。

 掃除……面倒臭い、父の部屋に入ると机の上に置いてあった厚手のハードカバーの本が目に入る。

 カミルは吸い寄せられるかのように歩み寄り、なんとなく手に取る。

 

『Wild Flowers~風と雲と冒険と~ 著:バン・フライハイト、フィーネ・エレシーヌ・リネ』

 

 父さんがよく読んでた本だとカミルは手に取る。カミルも近所の子たちと同じように外国の漫画とか読んでいて、カミルも文字ばかりの小説を読まず漫画ばかり読んでいた。

 カミルはゆっくりとページを開き、心が吸い込まれるように惹かれた。

 

 かつて、自由と勇気……そして、あくなき探究心を持つ者が立っていた。

 彼は、戦争の嵐が吹き荒れるこの星で、平和のために立ち上がった。

 そして、彼は戦いを終結へと導いた後、旅立っていった。

 彼の愛したものは、風と雲と冒険だった……。

 

 南エウロペ大陸のエレミア砂漠で盗賊に襲われ、オーガノイドのジークとの出会いやシールドライガーを復活させて撃退したこと、古代ゾイド人の少女フィーネとの出会い。

 読書に夢中になってた時に二つ下の妹、ウルスラが現実に引き戻した。

「ああっ! お母さんお兄ちゃんが掃除サボってる!」

「カミル!! もう何サボってるのよ、全然掃除してないじゃない!!」

 夫を失ったばかりの母親はヒステリックに怒鳴り、カミルはビクッとした。

「ご、ごめんなさい」

 カミルは慌てて本を閉じると、怒鳴り声を聞いた猟師の祖父がやってきた。

「どうしたんだいトラゥデル?」

「お祖父ちゃん、カミルが掃除サボって本を読んでたのよ!」

 母親は叱ってくれと言わんばかりに祖父を見つめながら言う。

「カミルが? ほう珍しいなぁ」

 祖父のアルベルト・トレンメルは鋭く細い目で珍しそうに見つめる、どこを見てるんだろう? 祖父の視線はカミルの手元に向けられていた。

「カミル……掃除はもういいから読んできなさい。後はお祖父ちゃんとウルスラに任せなさい」

「ええっ!? お祖父ちゃんお兄ちゃんばっかりズルイ!」

 ウルスラは駄々こねると、アルベルトはポンと頭を置いた。

「カミルは遊んでたんじゃない、勉強してたんだ。漫画ではなく、本を読んで勉強をしてたんだよ」

「お祖父ちゃん、いいんですか?」

 溜息吐いた母親が訊いて祖父はゆっくり、そしてはっきりと言った。

「ああ。カミル、しっかり読んできなさい」

「ありがとう、お祖父ちゃん!」

 カミルは嬉しそうに微笑んで部屋を飛び出し、机に向かって読み耽った。

 心躍る冒険談だった。様々な人との出会いと別れ、生涯のライバル――レイヴンとの出会いと対決、新しいゾイドで生涯の愛機、ブレードライガー*2。一度お腹が空いたところでお昼ご飯を食べて、またすぐに続きを読む。

 イヴポリスで二度目のデスザウラー*3との死闘まで書かれ、読み終わった時には日が暮れていた。そして翌日には学校の図書室に入り浸り、バン・フライハイトや歴史に名を残したゾイド乗りたちの本を読み漁った。

 その中には時空を超え、遥かなる歴史(とき)に名を馳せた英雄たちと力を合わせ、惑星Ziの危機を救うという荒唐無稽だが心躍る小説でもたびたび登場し、カミルはいつしか志を抱いた。

 

 僕も、バン・フライハイトみたいになって冒険の旅がしたい! 最高の相棒であるゾイドに乗って旅がしたい。

 

 その頃からだった。

 町外れの山にライガーがいるという。

 その噂を聞いたカミルは早速、祖父にホバーボードを買って貰い、祖父が亡くなるまでの間、いろんなことを教わった。銃の扱い、自然の中での暮らし方、ゾイドとの接し方、身の守り方と様々だった。

 

 

解説

 

・マゼラン共和国

 北エウロペ南東部にあるの内陸国、公用語は共通言語とマゼラン語で新興国ほど裕福ではないが教育環境が非常に充実してるため識字率は先進国並み。

 人口約七〇〇万人で首都はパタゴニア、近年極端な教育政策によって裕福層を中心に優秀な人材が海外留学してそのまま移住するという海外流出が問題となっており、国際社会からも声が上がっている。

 国土の六〇%はミューズ森林地帯で産業は主に化石燃料や鉱物資源、野生ゾイドの生息域も広いため多く八割がヘリック共和国に輸出されている(残りはアンダー海の島国ブリタニア連邦)

*1
へリック共和国のライオン型の大型高速機動ゾイド、タテガミにEシールドを装備しており単にライガーと呼んでも通じる

*2
シールドライガーの後継機、Eシールドに加えて側腹部にレーザーブレードを装備してロケットブースターで高速接近しながら敵を切り裂く戦法を得意とする

*3
恐竜型ゾイド。惑星を何度も焼き滅ぼす力と非常に高度な知能を持ち、通常のゾイドが生き物に対してデスザウラーは神話の怪獣と呼べるほどの差があり古代ゾイド人の文明を滅ぼしたことから破滅の魔獣と呼ばれてる


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。