ゾイド Wild Flowers~風と雲と冒険と~第一期 作:尾久出麒次郎
プロローグ
銀河の彼方にある『惑星Zi』そこには、優れた戦闘能力を持った金属生命体『ゾイド』が存在した。ゾイドは自ら戦う意思をもち、惑星Ziにおける帝国と共和国の戦争の中、最強兵器として君臨していた。
これはいくつもの戦乱が続く時代、幾多の英雄が生まれては歴史の闇へと消えていく時代のある物語。
北エウロペ南東部の国、マゼラン共和国辺境の町セブタウン。
別れの前夜、カミルは狭いベッドの上で母親にも内緒で買っておいたポンプアクションショットガン――HM210の仕様違いのモデルを取り出す。
三年間シルヴィアを探しながら獲った獲物や山菜を売って稼いだ金で買った物だ。
祖父のが狩猟用の二六インチ対して短い銃身の一八インチバレル、マガジンチューブも延長してストックもピストルグリップ付き、装弾数も四発の狩猟用に対して六発のタクティカルモデルだ。
旅人たちの護身用には七・六二ミリ口径のカービン銃やポンプアクション式ショットガンが人気だ。特にポンプアクション式ショットガンは一二番口径00バック弾は殺傷能力が高く、装填する際に独特の甲高い金属音が響く。
これが発砲前の威嚇や警告に効果があり、誕生から数百年経った今でも軍や警察に使われる理由の一つでもある。しかも使う弾薬の種類を選ばず、故障も少ない。カミルは思わず唾を飲み込みながらスリングベルトを装着する。
この銃が火を噴くことは誰かの命を奪うことになる。
出来れば使われる瞬間が来ない方がいいのだが、カミルはすぐにその甘い考えを、首を振って捨てた。
殺さなきゃ殺される、僕が躊躇ったばかりに祖父は強盗に殺されたのだ。
敵の命を奪うことを躊躇って命を落としたゾイド乗りや旅人も多くいる。
それに今までシルヴィアを探す間、生きる糧を得るために沢山の水鳥や動物を撃った。
動物を撃つのも人間を撃つのも同じだ、それは都合のいい言い訳に過ぎないのかもしれない。
人を殺めればその人は一生罪を背負う、自分と戦ったあのゴジュラスのパイロットだって自分の部下や家族の生活のために罪を背負った。ハロルド・ヒギンズもきっとその覚悟まで試してるのかもしれない。
僕は旅するお姫様と出会い、冒険し、そして恋をした。一緒に力を合わせてヘルガを狙う悪党たちを屈服させ、そして心を交わした。僕はヘルガと一緒にいたい、旅したい、冒険したい、そばにいたい、もっと話しをしたい。
僕の心と身体はもうヘルガのことでいっぱいだった。だけどヘルガの背負う使命はとてつもなく重い、ハロルドさんはそれをも背負う覚悟があるかと訊いた、僕はもう心に決めていた。
夜中の午前一時、カミルはこっそり静かに家の裏の空き地にいるシルヴィアの所まで来る。
「シルヴィア、静かにみんなを起こさないようにね」
シルヴィアは唸ることなく、静かに頭を下げてコクピットをゆっくり開けた。
ここ数日、母親も妹も時折シルヴィアに声をかけたりしている。シルヴィアも大人しくして母親曰く「素直でいい子」妹のウルスラも「大きくて可愛い」と言っていた。
でもそれも今日までだ、僕はもう覚悟を決めたんだ。
コクピットをゆっくり開けると、カミルはHM210にバックパックやデイパック、ウェストバッグをコクピット後部に押し込む。
そしてカミルはコクピットに座り、安全バーとシートベルトを着用、始動前チェックを行う。
左から右へと各種コントロールスイッチ装置、ナビゲーション及び無線装置、敵味方識別装置であるIFF、操縦桿であるスロットルレバー、レーダーコントロールパネル、ゾイドの燃料である原始海水と同じ成分のリキッドイオン(ゲル状の液体であるレッゲルでも可能)コントロールスイッチ等々……これらが決まった位置にあることを確認して次に各種パネルや警告灯のチェック。
よし、スターターレバーを引いてZOIDS ON! MFDが点灯してモニターが暗い外の風景を映して、モニターコントロールスイッチを摘んで自動モードに回す。
外の風景が自動的にグリーンになり、両方のフットペダルを踏み込むと固定されたペダルが解放されて戻り、シルヴィアは立ち上がった。コクピット内に駆動音が響き、自動操縦装置の設定をしながらセブタウンの外れにある街道まで来ると、シルヴィアの頭を降ろしてコクピットを降りる。
「それじゃシルヴィア、また会おうね」
シルヴィアは寂しそうに、あるいはカミルのことを心配してるかのようにも聞こえた。
「僕なら大丈夫、ちゃんと上手くやるからさ……寂しい思いはさせないよ」
カミルはふと、父親の最後に言葉を交わした時のことを思い出す。
――心配するな、俺は今度もちゃんと帰ってくるさ
それが父親の最後に聞いた言葉だった。
カミルは父親のように死ぬつもりはない。だけどここには、マゼランには二度と帰ってこれないのかもしれない、その覚悟も必要だとカミルは両手を握りしめて奮い立たせると、カミルは踵を反して家に向かって歩み始める。
シルヴィアも歩き始め、カミルは足を止めて振り向きたい衝動を抑える。シルヴィアも足を止めることなく、足音や駆動音も徐々に遠ざかっていった。