Wild Flowers~風と雲と冒険と~   作:尾久出麒次郎

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オリジナルゾイド第二弾登場します。


第八話、その3

 東区を走るバスの中でハロルドはのんびり歩いてるラオを見つけ、安堵すると近くのバス停で降りてラオを追いかけて声をかける。

「ラオさん!」

「ん? ああハロルドさん、どうしたんですか?」

「あっ、いいえ……姫様が心配していたので」

 ハロルドはそれだけ言うとラオは大袈裟に笑う。

「アッハハハハハハ……もう、あの子ったら心配性なんだから……さっき普段は西区を縄張りにしてるチンピラが観光客かと思ったらゾイド乗りの男の子を尾行してたの! 独立記念公園の時計台に待ってるのは危ないからって!」

 ハロルドはまさか……そんなと、内心高揚しながら人相を訊いた。

「ラオさん、その子は……君より少し年下で、紺色の髪にエメラルドグリーンの瞳の少年だった?」

「ええそうでしたよ! それにエウロペの人にしては白くて綺麗な顔をしてました! もしかして知り合いですか!?」

 ラオは興味津々なのか瞳を輝かせて訊くと、ハロルドは微笑みながら頷いて訊いた。

「その少年の名前は……カミル・トレンメルですか?」

「やっぱり知り合いなんですね!」

「ああ……明日は日没までに北区と東区の間、近郊のバルマ農場にいる。もし会ったら伝えてくれ! 君の覚悟、よくわかったと」

「はい、伝えておきます!」

 ラオはニッコリ笑顔で頷いてすぐに中央区のホテルに戻ると、部屋に入るなり不安に満ちた表情の姫様が歩み寄って来る。

「おかえりなさいハロルド、ラオは見つかった?」

「はい、ラオさんのことは心配いりません……」

 ハロルドは温かい笑みで微笑むと、姫様も安心した表情で微笑む。

「よかった……ねぇハロルド、何かいいことでもあったの?」

 姫様は秘密を探る無邪気な年頃の女の子の顔で訊く。

「バレてしまいましたか? さすがは姫様……ですが、今はまだ秘密です」

「イヴァーナにもね!」

 姫様は白い歯を見せて微笑みながら口元に人差し指を立てると、ハロルドは微笑みながら頷くと姫様は無邪気に笑った。

 

 

 ダイナーに入るとこの通りの店には必ずあるという掲示板に、日雇い求人の張り紙がびっしり貼られ、農園の収穫作業や祭りの準備手伝い、野良ゾイドの駆除と様々でカミルは思わず関心する。

「へぇ……色々あるんだな」

「僕は留学生だから、明日はこのバルマ農場に行ってパパオの収穫を手伝うよ」

 ノアは日給もそこそこのバルマ農場でパパオの収穫作業手伝いだという。

 そういえばこの時期、パパオの収穫シーズンかと思いながら四人席でノアと向かい合って座るとウェイトレスが来てカミルはベーコンチーズバーガーとミネラルウォーター、ノアはダブルチーズバーガーとコーラ、サイドメニューでサラダとフライドチキンにを注文してるとヘリック人の二人が図々しく座ってきた。

「よぉノア! 今夜はここでディナーか?」

「ああゴードン、サム、丁度良かった一緒に食べようか」

 ノアは快く頷く。ゴードンという男と知り合いらしい、大柄でなんとなくへリック軍に入隊する前――学生時代のロブ・ハーマンみたいだと思ってると、カミルの隣には対照的に小柄な腰巾着みたいな奴が座った。

「見かけない顔でだね? 貧乏旅行中のバックパッカーかい?」

「そう言わないであげてサム、彼ゾイド乗りなんだ」

 ノアはにこやかにフォローしてカミルは自己紹介してマゼランから来たことを話す。

「へぇ……僕らとあまり変わらなさそうなのに? マゼランの田舎者が?」

 サムという奴は初対面にも関わらず、さりげなくマゼラン人を見下すような眼差しに信用したくないと思いながら、ディナーを食べてる間、サムは聞いてもいないのに自慢ばかりしてる。

「僕はね、世界的に有名な大手広告代理店――以下省略」

 ノアやゴードンも慣れてる様子で適当に聞き流してる様子だった。

「それで? 明日はどこ行くんだ? ノアは男の癖にバルマ農場でパパオの実を収穫して小銭稼ぎかい?」

 サムは見下した表情で訊く、やっぱりノアは男だったんだ。

「収穫作業は力仕事もあるから男手も必要なんだ、ゴードンとサムは明日のカンカー村の遺跡で野良ゾイドの駆除だっけ?」

 ノアはサムの嫌味を受け流してると、フライドチキンを一切れ取ったカミルは訊いた。

「そこってラオが話してたカンカー村の野良ゾイドだっけ?」

「ああ、しかも倒した数によっては報酬上乗せしてくれるってよ。ソルダットアントの群れが遺跡に住み着いて……明日の九時にカンカー村の集会所に現地集合だって」

 ゴードンは話す。なるほどソルダットアントは北エウロペ連合国が共同開発した小型のアリ型ゾイドで一体一体は弱いけど数十機単位の群れを作るから脅威だ。それならとカミルはこちらも一機でも多い方がいいと判断した。

「ねぇ……その仕事、もう少し詳しく聞かせてくれない?」

 

 翌日の朝、カミルはカンカー村の集会所にある広い部屋でゾイド乗りの荒くれ者逹に混じってテーブルを囲んでいた。テーブルには地図と野良ゾイドの写真が数点、村の自警団のリーダーの男が説明する。

「――野良ゾイドのソルダットアント逹は観光地であるここから東のカンカー遺跡に住み着いて、近づくものを無差別に攻撃してくる。しかも先日、遺跡近くにある集落のペンションが襲われてオーナー夫婦二人と宿泊客三人が死亡した。遺跡はしばらく営業停止、一刻も早く野良ゾイドを駆除しなければ……この村は収入源の半分以上を失うことになる」

 カミルは説明を聞きながら見回すと、昨日知り合ったラオやゴードン、サムもいた。

「――アント駆除作戦である……オペレーション・ヒドラメチルノン。ヒドラ作戦のフェイズ1は高速機動ゾイドによる威力偵察と陽動で遺跡の南西のカンカー平野部に誘き寄せ、退避を確認したらフェイズ2に移行、あらかじめ仕掛けておいたIEDやかき集めた爆薬を爆破、その後、砲撃ゾイドによる火力攻撃で追い討ち、フェイズ3はGNDAとPMCの航空部隊が空爆を行う、そしてフェイズ4で小型ゾイドや高速機動ゾイドで残敵掃討作戦を行う……この中で仕事が初めてな奴はいるか?」

 自警団のリーダーは視線で舐め回しながら言うと、カミルは恐る恐る正直に手を上げると一斉に注目が集まってリーダーの男が訊いた。

「そうか君だけか、名前と乗るゾイドは?」

「カミル・トレンメルです……乗るゾイドはシルヴィ――ライガーゼロです」

 それで集会所の部屋の空気がざわつくが、リーダーの男は頷いてラオとサムに言う。

「よし、君はフェイズ1でコールサインはスカウト2だ。ラオはカミルのサポートを、誘き寄せるだけでいいから遺跡での火器使用は必要最小限に抑えてくれ……くれぐれも遺跡を傷付けないように」

 ラオは「はい」と緊張感のある表情で返事すると解散、作戦開始は三〇分後でラオはカミルの所に歩み寄る。

「カミル、あたし逹の役目は群れを刺激して誘き寄せよ、無線周波数は一五五・六メガヘルツで、あたしも限りサポートするから、くれぐれも無理をしないでね……やられないように意識して無謀な行動は絶対にやらないように!」

「うん、ありがとう」

 カミルは頷くとゴードンは不満気な表情で嫌味を言う。

「ライガーに乗ってるからっていい気になるなよ! ゾイドバトルとは違うんだから!」

「そうだぞ、くれぐれもヘマするじゃないぞマゼランの田舎者の貧乏人!」

 サムも便乗してカミルはムッとすると、ラオはやれやれと苦笑しながらフォローする。

「気にしないで二人ともあんたが美男子でライガー乗りだから嫉妬してるのよ」

「そうなのか?」

 カミルもあまり気にしてるつもりはなかった、するとラオは「あっ」と何かを思い出したような素振りを見せた。

「そうだ! カミル……と思ったけど、終わってからでも遅くないか」

「なんのこと?」

「ううん、終わってから話すわ、さっさと終わらせよう!」

「うん、わかった」

 カミルはラオは何を話そうとしたんだろうと思いながら、一旦忘れるよう言い聞かせてシルヴィアのコックピットに座る。安全バーを降ろしてシートベルトを装着するとエンジン始動、無線周波数を合わせるとラオのハウンドソルジャーも起動した。

 

 二機で山間部の遺跡の近くまで行き、目標地点から五キロの南の場所で配置に就くとカミルの属する二機だけのスカウトチームリーダーであるラオが報告する。

指揮所(CP)よりスカウト1へ、配置完了。指示があるまで待機します』

『CP了解、そのまま待機せよ』

 カンガー村の集会所にある臨時の指揮所(CP)から待機の指示が出る。

 

 その間にチャトウィン南区にあるガリン唯一の空港であるチャトウィン国際空港からPMCのルイボス・エア社所属で航空爆弾を装備したプテラス四機と大型のサーモバリック爆弾をワイヤーでぶら下げたGNDAのサイカーチスとダブルソーダが二機ずつ出撃する。

 カンカー村遺跡南西の平野部には南東と南西にGNDAとPMCに臨時で雇ったゾイド乗りで構成されたフェイズ2の砲兵隊やフェイズ4で殲滅にかかる遊撃隊が待機していた。

 

『各隊、配置完了を確認。これよりヒドラ作戦フェイズ1を開始、スカウトチームは威力偵察を開始せよ、繰り返す威力偵察を開始せよ。射撃を行う場合は遺跡に注意!』

 始まった! カミルは汗が滲み出たスロットルレバーを握り締めると、ラオはモニター通信を繋いだ。

『それじゃカミル、行くわよ!』

「了解!」

 カミルは緊張の籠った声になる。今のうちに胸のショックカノンをいつでも撃てるように安全装置(マスターアーム)を解除すると、山間部を塞ぐように作ったダムか城壁にも見える構造物の入り口からソルダットアントの群れが察知したのか、威嚇しながら迫ってくる。

『来た、あたしから行くわ! 行くわよラナ!』

 ラオが先行して「RANA」という名前のハウンドソルジャーの首の両側面に槍――クロスソーダー前方に展開していて、見せしめと言わんばかりに一機を串刺しにして放り投げると、怒りに駆られた二機が襲い掛かる。

「行くぞシルヴィア! あの二機をやる!」

 カミルはラナに襲い掛かる二機のソルダットアントのうち一機に前足で押さえつけ、そのまま噛みついて引きちぎり、その間に残り一機をラナが両前足で押さえつけて急所に頭部と胸部を繋ぐ接合部を噛み砕いて無力化するとラオは褒める。

『やるじゃないカミル! さあ……わんさか湧いてきたわよ』

「さぁ……来い!」

 カミルは湧いてきたソルダットアントの群れに向け、ショックカノンを一度だけ砲撃する、砲弾は群れの手前で激しく炸裂させた。

『よし、威力偵察はこれくらいにして陽動に入るわよ!』

 ラオの指示でカミルはシルヴィアを反転させて逃走に入る、あとはつかず離れずの距離を保ちながら平野部まで誘き寄せるだけだと思った瞬間だった。

 追いかけてきた群れの中の数機が、背中にあるガスト式二連装二三ミリ機関砲を撃ち始めた。

「撃ってきた!? こいつら野良ゾイドじゃないのか!?」

 カミルは思わず戸惑う野良ゾイドは確か火器管制装置(FCS)が使えず、火器の使用ができないはずで、ラオも戸惑っていた。

『どういうこと? まさか……スリーパー!?』

「スリーパー!? 遺跡に何で!? って、前からも!」

 正面からも一〇機近くのソルダットアントだ。止まったら逆に危険だと判断したカミルはシルヴィアを加速させ、退路を塞ごうとしてるソルダットアントに群れに向けてショックカノンを撃つ。

「止まるな! 撃ちながら道を切り開け!」

『このっ! 邪魔だからどきなさい!』

 ラオはラナの背中の砲塔バインドバスターや胸部の三連装ブレストボンバーで砲撃し、クロスソーダーで串刺しにしたまま道を切り開き、撃ち漏らしたソルダットアントを引き裂き、踏み潰し、食い千切る。

 待ち伏せを突破すると、ソルダットアント逹の中に紛れて腹部にビームランチャーを搭載した機体が砲撃し、シルヴィアのすぐそばで着弾・炸裂して悠長に誘き寄せてる場合じゃないと加速させてラオは悲鳴に近い声を上げる。

『スカウト1よりCP! ソルダットアント逹は火器を使用してる! 野良ゾイドじゃない! スリーパーよ!』

『こちらCP了解、スカウトチームは当初の予定通り陽動せよ! もう少しだ!』

 CPの言う通りカンカー平野に出るとカミルはシルヴィアを加速させて一八〇度スライディングターンしてショックカノンを撃ち、殿(しんがり)となって足止めを試みるが次から次へと湧いてくる。

「やっぱり無理か」

 カミルはシルヴィアを反転させると、平野部の端から端まで走り向けてスライディングターンするとソルダットアント逹の数は五〇機以上はいて、ラオはCPに報告する。

『スカウト1よりCP、ソルダットアント一個大隊、カンカー平野に時速約四〇キロでに進入し街道を南西に向かって進行中』

『こちらCP了解、ヒドラ作戦フェイズ2に移行する。スカウトチームは退避してフェイズ4に備えて待機』

『スカウト1了解』

 ラオに続いてカミルは「スカウト2了解」と返事した。

 

 解説

 

 ソルダットアント

 北エウロペ連合製のアリ型汎用小型ゾイド、生産性と整備性を考慮された設計から「北エウロペ版ガイサック」と呼ばれるほど、顎の力は凄まじく四機係でアイアンコングを持ち上げたという記録がある、共和国軍も採用を検討したが政治的な理由で見送られた。

 腹部は換装可能で輸送コンテナ、地対空ミサイル、榴弾砲等の火器、ゾイドを麻痺させるポイズンニードルやEシールド等と幅は広い。

 北エウロペ連合諸国は勿論、発展途上国や民間用として非武装型も多く輸出、ライセンス・コピー生産されてベストセラーになったが近年民間型に武装が施されテロリストや盗賊に使用されるという問題も起きている。指揮官用のカラリェーヴァ女王蟻モデルも存在する。

 全長10.1メートル 全高3.3メートル 重量17.7トン 最高速度時速150km/h

 キラーバイトファング

 スタリコフ設計局二連装ガスト式23mm機関砲(背部)

 


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