ゾイド Wild Flowers~風と雲と冒険と~第一期   作:尾久出麒次郎

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第一一話、その1

 第一一話、首都炎上、チャトウィン紛争

 

 リリアのデュアルスナイパーライフルを受けたフューラーの背部バックパックは派手に爆発してグシャグシャになったが、それでもフューラーはよろよろと立ち上がって歩み寄り、カミルはまだやるつもりか? と操縦桿を握り直す。

 するとノアはモニター通信越しに悲壮な眼差しで言う。

『凄いね二人とも……愛の力かな?』

「悪いけどオーガノイド――オメガのことはもう諦めろ!」

 カミルは毅然と言い放つが、悲しみと寂しさが混じった不敵な笑みになって問いかける。

『カミル、ヘルガ、僕がどうしてテラガイストでフューラーに乗って任務に就いてるか、わかる?』

「何が言いたい?」

 カミルは急に何を話したいんだ? いや、もしかして聞いて欲しいのかもしれない。

『ジョイス・チェン――レイヴンは知ってるかい?』

『レイヴン……バン・フライハイトの宿敵ね』

 ヘルガが答える、カミルも勿論知っている名前だった。

 

 二度目のデスザウラー戦後、レイヴンは数々の戦争犯罪を犯したテロリストとして国際指名手配され、リーゼと共に戦後の混乱に紛れて姿を消した。

 バン・フライハイトやガーディアン・フォースの追跡をかわしながら北エウロペを経てデルポイ大陸に逃亡し、一年後のニカイドス諸島本島でブレードライガーと交戦。

 ブレードライガーは相討ちになりながらも勝利したが、破れたジェノブレイカーはトライアングルダラス由来の吹き荒れる電磁波嵐の海に落ちて姿を消した。

 二週間の捜索の末、ゾイドコアが停止したジェノブレイカーは引き揚げられたがレイヴンとオーガノイドのシャドーの姿はなく、折り悪くギュンター・プロイツェンの遺児――ヴォルフ・ムーロア率いる鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)がデルポイ大陸に侵攻。

 デスザウラーの放った荷電粒子砲はデルポイ大陸も被害を受けていて、あっと言う間に手に落ちた。ネオゼネバス帝国の国家樹立が宣言されてガーディアン・フォースも撤退、捜索も打ち切られた。

 レイヴンとリーゼは消息は不明のままで、ニカイドス島の都市ニビルで二匹のオーガノイドを連れた二人が目撃されたが、それを最後に姿を消している。

 そしてネオゼネバス帝国皇帝ヴォルフ・ムーロアの腹心――ズィグナー・フォイアーが死の直前に出版した回顧録で告白している。

 彼の告白によるとヴォルフはオーガノイドを連れた二人にコンタクトを取って宮廷に招き、かつてバン・フライハイトがルドルフにゾイドの乗り方を教えたように、レイヴンはジョイス・チェンと名を変えてヴォルフ・ムーロアを指南。

 宿敵レイ・グレックに勝つため、皇帝として多忙を極める中でゾイド乗りとしての腕を磨いたという。

 その過程でジョイスはヴォルフにT-REX型よりもライガー系の適正があると助言し、ヴォルフもそれに従いライガーゼロを経てエナジーライガーに乗り換え、ヴォルフのバーサークフューラーは彼が譲り受けた。

 リーゼの方は娘を亡くしたターレス家の養子となりリーゼロッテ・ターレスと名乗り、ヘリックシティ国立大学に進学して後に大学教授となり、古代ゾイド人の研究に大きく貢献した。

 父プロイツェンの野望の手駒にされていたジョイスだが、プロイツェンの息子であってもヴォルフは掛け替えのない生涯の親友同士となり、互いに本音を言い合える仲だったという。

 

「何が言いたいんだ? ノア……まさか!」

 レイヴンはオーガノイドのシャドーを連れていた、まさかノアも? 答えの代わりに精悍な笑みになると、カミルは背筋が凍った。

『そう、僕にもいるんだよ……シグマァァァァァァッ!!』

 ノアは叫ぶ、外部スピーカーを通して呼んでいるのだ。

 昨夜の独立記念祭で一瞬だけ見えた鳥型――地球の鶴に似た姿をした白いオーガノイドが翼を広げてどこからともなく姿を現すと、青白い閃光となってフューラーと合体。

 グシャグシャになったバックパックは数秒で工場から出荷されたばかりの新品のように元に戻り、本体の細かい傷も修復されて各関節部が光って駆動キャップが発光、赤い目も発光して第二ラウンドだと言わんばかりにフューラーは雄叫びを上げた。

 バスタークローを前方に展開して回転させると突っ込んできた。

「速い! なんてスピードだ!」

 さっきより速い! カミルは全身から冷や汗を噴き出しながら回避させる、速いのは単純な速度ではない。バスタークローを向けてすぐ動き、避けられたと判断すると、すぐに次の行動に移行して攻撃を仕掛けてくる。

『カミル君、避けて!』

 ヘルガの声が響く。

 コックピット内にロックオン警報が鳴り響くと、シルヴィアは回避行動に入ってビームキャノンの砲撃をかわす。

「ぐぅぅ……」

 全方向からの激しいGに体を持っていかれそうになる。カミルは上下左右前後のランダムに襲い掛かるGに耐える、待て……シルヴィア、いや待ったらやられる! 自動回避システムをOFFにしたらやられる! 

 フューラーはビームキャノンを撃ちながら接近してくる。シルヴィアは待ってたと言わんばかりに懐に飛び込むと、フューラーも素早く爪と牙に切り替えて背部のバスタークローはリリアに向けて砲撃する。

『近づけない!』

 ヘルガは悲鳴に近い声が響く、接近されると二本のバスタークローを回転させ、まるで意志を持ってるかのように接近を許さずヘルガでさえ手こずるレベルだ。

 これがオーガノイドの力なのか?

 フューラーのバスタークローがなんの前触れもなく回転を止めた次の瞬間、素早く開いてEシールドを展開! しまった! 次の瞬間には強烈な衝撃がコックピットを襲い、二機は弾き飛ばされた。

「うわぁぁああああっ!!」

『きゃああああぁぁぁぁっ!!』

 カミルとヘルガは悲鳴を上げ、次の瞬間には地面に叩きつけられて何回もバウンドした。

 カミルは全身の鈍い痛みと、疲労感に苛まれながら損傷箇所をチェックして警報スイッチを押して切りながらヘルガを気遣う。

「ヘルガ! 大丈夫?」

『私は大丈夫、カミル君来る!』

 ヘルガの一声でカミルはシルヴィアを立ち上がらせるが、一瞬逃げ遅れてフューラーに踏みつけられて押さえられてしまった。

「しまった!」

 カミルが気付いた瞬間、コクピットが衝撃で揺さぶられる。一二七トンの巨体に踏みつけてただで逃れられる訳がない、ノアは無線で呼び掛けてくる。

『さぁ、オーガノイド――オメガを渡してくれる? それともカミル、僕と一緒に来る?』

「オメガをネオゼネバスに連れて帰ってどうするつもりだ!?」

『さぁ……皇帝に献上するかもしれないし、研究材料にするかもしれない』

 ノアの口調は相変わらず空虚で中身がないように聞こえる、すると一瞬の隙を逃さなかったヘルガがリリアを立ち上がらせ、接近。バスタークローの届くギリギリの範囲外からマルチディスチャージャーを前に向けて噴射すると同時に叫んだ。

『カミル君逃げて!』

 黒い煙がフューラーの視界を奪うと、フューラーの押さえつけが微かに緩んだ瞬間にイオンターボブースターを全開で噴射! シルヴィアを拘束から逃れた。

「よし、逃れた!」

 カミルはすぐにシルヴィアをスライディングターンさせると、風で煙が晴れたがいない! 上かと向いてみるがそこにもいない。

「いない、ヘルガ! 気を付けて」

『どこ? いたわ! 三時の方向!』

 リリアはカミルから見て右を向いてる、つまり後ろの小高い遺跡の上にいる。

 カミルがフューラーを視認した瞬間、目を見開いて背筋が凍った。

 

 

 ノア・カワシマ・アイゼンハイムは小高い遺跡の上にバーサークフューラーのエルザを着地させる、向こうはまだ見つけてない。

 今がチャンスだとノアは荷電粒子砲発射モードを選択すると専用のマスターアームスイッチをARMにして左右のアンカースイッチを下げる。

 エルザの両踵にある二対のアンカーを下ろして固定されると、四つのランプがグリーンに点灯して心地よい電子音が鳴り響くとMFDに共通言語で表示される。

『フットロックアンカー固定完了、放熱フィン展開』

 自動的に尻尾を真っ直ぐ伸ばされて後部から順に上下の放熱フィンを展開。

『放熱フィン展開完了』

 MFDに表示されて電子音が鳴り響くと、ノアは次の段階に移行させる。口腔内の砲身収納スイッチを展開の位置に動かした。

『荷電粒子砲発射体勢移行』

 エルザは口を大きく開けて普段は収納されてる砲身が伸ばされながら、凄まじい反動に備えて前傾姿勢になると、荷電粒子コンバーターの稼働を開始。

『砲身展開完了、荷電粒子供給開始』

 MFDに表示されるとゲージにどんどん溜まっていく、シグマと合体した状態だから荷電粒子の吸入が早い。口腔内の砲口にエネルギーがチャージされる間にノアはMFDに表示されてる荷電粒子砲の出力を通常にして拡散範囲を最大に調整する。

 バーサークフューラーの荷電粒子砲は威力は低いが広範囲に攻撃できる拡散モードと、範囲は狭いが一発で重装甲の大型ゾイドを貫ける収束モードがある。出力も通常出力で撃つのが常識だ。

 もしフルパワーで撃つとフューラー自身の大きな負担で、コンバットシステムが一時的にフリーズする、バスタークローのビームキャノンとの併用で撃つトリプルバーストでも通常出力で撃つのだ。

『荷電粒子砲発射準備完了』

 MFDに表示されて心地よい電子音が鳴り響くと、ノアは昨日一緒に遊んだカミルとヘルガの顔が脳裏に浮かんでトリガーを引く親指が固まって動かなくなるが、躊躇いを振り払って引くと発射。

 凄まじいエネルギーの奔流が広い範囲に行き渡り、ライガーゼロとケーニッヒウルフに襲い掛かった。

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