ゾイド Wild Flowers~風と雲と冒険と~第一期   作:尾久出麒次郎

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第一一話、その2

『カミル君、逃げて! 荷電粒子砲よ!』

 ヘルガの悲鳴に近い叫び声、カミルはすぐにシルヴィアを射線上から退避させると同時に荷電粒子砲が放たれる。冒険を始めて早々荷電粒子砲の洗礼を受けるなんてついてない!

「くっ! 避けきれるのか!?」

 放たれて拡散する荷電粒子の奔流、それが無数に散らばる。するとシルヴィアは立ち止まって姿勢を低くする。

「シルヴィア! なにやってるんだ!?」

 カミルは慌てて動かそうとするが、操縦を受け付けない! 次の瞬間、拡散した荷電粒子の奔流がシルヴィアの周りで着弾する。カミルはやられると、心臓を鷲掴みにされて冷たい感触が全身に行き渡ったがシルヴィアに当たることはなかった。

「よ……避けきったのか」

 カミルは安堵すると、シルヴィアは唸ってヘルガが呼び掛けてくる。

『カミル君、大丈夫!?』

「僕は……大丈夫、ヘルガは?」

『こっちも大丈夫、今のは下手に動いたら当たるわ……難しいけど、発射から着弾までのタイムラグがほんの一瞬だけあるから着弾地点を瞬時に見極めれば動かずに避けられるわ』

「……だからシルヴィアは動かなかったのか」

 カミルは下手に動こうとした自分の未熟さを痛感するが、そんな暇はない。

『さぁ今度はこっちの番よノア君!』

 ヘルガはデュアルスナイパーライフルを展開させて、スナップショット! 同時にフューラーはブースターを噴射させてジャンプして回避すると、バスタークローを前に向ける。

『当てられるものなら当ててみなさい!』

 ヘルガの凛とした声と共にリリアはマルチディスチャージャーを降りてくるフューラーに向けてチャフを噴射、薄い金属片をばら蒔いてレーダーロックを妨害される。

『なにっ!? ロックオンできない!』

 困惑するノアだが瞬時にバスタークローを回転させてそのままリリアを貫こうとするが、ヘルガは動きを読んでいた。リリアの両肩にあるミサイルポッドから四発発射、瞬時にEシールドの展開する間もなく四発とも着弾した。

『うわぁあああっ!』

 ノアの悲鳴が響き、フューラー自身も怯んだのか着地に失敗してバウンドするとヘルガが叫んだ。

『カミル君、今よ!』

「了解!」

 カミルは全速力でシルヴィアを走らせる。よろよろとフューラーが立ち上がるが、立て直す前に叩け! 頭部のフェアリングが展開、両前足が閃いて右前足をフューラーの左脇腹目掛けて叩き込む。

「ストライクレーザークロー!!」

 手応えあり! フューラーが悲鳴を上げて再び倒れると、戦意を喪失したかのように動かなくない。再び立ち上がった時に備えてカミルはショックカノンを向ける。

 するとレーダーに新手を告げる警報がなり、MFDの画面を見ると思わずギョッとした。

 レーダー画面を見ると、多数の小型ゾイドの群れだ!

「ヘルガ! レーダーに凄い数の反応がある!」

『こっちでも確認したわ! まさか今の荷電粒子砲に反応して!?』

 ヘルガの言う通りにノアのフューラーが撃った荷電粒子砲で呼び寄せてしまったようだ。

 するとフューラーの再起動を終えたノアが立ち上がらせる。

『そうみたいだね、今のでスリーパー達を呼び寄せてしまったみたいだね』

 カミルはフューラーに目をやるとバスタークローを後ろを向けてスラスターを展開する。

『今日のところは引くよ。こっちも別命が出たしね……君たちも速く逃げた方がいいよ』

 ノアはそう言うと、背中のブースターと両足のバーニアを噴射させてジャンプ、闘技場から脱出した。

 

 

 ヨハンは思わず言葉を失ってハロルドのシールドライガー、アリエル二世に見惚れる。

『くっ、なんだこのシールドライガー? 動きが読めない!』

 ダークスパイナーを操縦してるゼルマも困惑してる様子だった。

 近代化改修してるシールドライガーとはいえゾイドの性能的にはダークスパイナーに軍配が上がる。だが、そのダークスパイナーが格闘戦でたじろぎ、困惑させるほどの軽やかな動きで攻撃をかわしている。

「凄い……あんな動きができるのか」

 ヨハンは援護射撃しようと照準を合わせるが、今FCSが狂った状態で撃てばアリエル二世に当たるかもしれない、それを察したイヴァーナがモニター通信で呼び掛ける。

『ヨハン、下手に撃たない方がいいわ』

「ああ、わかってる。通信は通じるみたいだな……レーダーにも他の敵影はない」

 ヨハンは不安定なレーダー画面を見ながら周辺警戒をする。

『ええ、あのダークスパイナー……ジャミングの出力をかなり抑えてるわ、本当ならこっちのコントロールを奪えるけど……下手に放てばGNDAや保守強硬派に察知される可能性があるようね……向こうは操縦系統やFCSを妨害するので精一杯みたいよ』

 イヴァーナのマルゴも動けないようだ、だがアリエル二世はジャミングによる妨害を全く受けてないようにも見える。噛み付きをかわし、前足の爪や尻尾の一撃を空振りに終わらせている。

「いったいどうやってジャミングを防いでるんだ?」

 ヨハンの疑問にイヴァーナが答える。

『精神リンクよ……ハロルドとアリエル自身が意思を共有し合うことで性能以上の力を発揮する。ハロルドは以前乗っていた先代のアリエル――ブレードライガーに乗って、この精神リンクを使いこなし……レオマスターの称号を得たのよ』

 無線越しにゼルマの苛立ちが徐々に露になってるのがわかる。

『クソッ! 何でだ!? なんでシールドライガーごときに!』

『それは君の経験不足とゾイドの性能に慢心してるからだ。君のぎこちない操縦にダークスパイナーも思うように動けていない』

 さすがレオマスターのハロルド、訓練生に厳しく指摘する教官のようでそれがゼルマの神経を逆撫でしたようだ。

『くっ……』

『ゾイドを操縦桿やペダルで操ろうと思うな! ゾイドは心で動かすんだよ心で!』

 ハロルドはそう言いながらアリエル二世の爪が浅くダークスパイナーの足を引き裂いた。

 

 

『クソッ! 引っ掻かれた!』

 雑音混じりのイヤホンからゼルマの焦った口調が聞こえる。

 ハロルドは浅かったと感じながらも次は致命傷を与えてみせると微笑む、イヴァーナの言う通り今のハロルドは精神リンクでMFDの計器類も見ていなければ操縦桿すら握っていない。

 今ならダークスパイナーの動きが手に取るように本能でわかる、それはアリエル二世自身の戦闘経験とハロルドのゾイド乗りの経験からだ。もしブレードライガーだったら、数秒で倒していただろう。

 あのゼルマという女パイロットは腕は悪くないが、明らかな経験不足だ。

 格闘戦による爪での引き裂き、牙による噛みつき、尻尾で叩きつけようとするが無駄な動きが多くて回避のチャンスが見える、このまま疲弊していけばいずれ隙を見せるだろう。

 だがダークスパイナーの格闘戦能力は高く、特に尻尾の一撃を食らえば鋭い爪と牙で止めを刺される。シールドライガーのアリエル二世では切り札のEシールドなら決定打になるが展開する時に隙が生じる。

 ブレードライガーだったら一撃で切り裂いてやるが、そんなことは考えない。

 ハロルドがダークスパイナーに目を向けてる時、遺跡の方で轟音と凄まじいエネルギーの奔流のような光にセンサーも反応してる。

 この反応と轟音に光は荷電粒子砲か? 姫様とカミル君は大丈夫だろうか?

『ノア……荷電粒子砲を撃ったか?』

 ゼルマの呟きでダークスパイナーが立ち止まる。見えた! その隙を待っていた! ハロルドはアリエル二世のアーディアのガブリエル()アドバンスド()ディフェンス()システムズ()社製Eシールドを展開して最大出力にする。

 アリエル二世の前面にエネルギーフィールドを展開すると、後ろ足で地面を蹴ってダークスパイナーに跳びかかった。

「シールドアタック!」

 ハロルドは叫び、ダークスパイナーは受け止めきれずに悲鳴を上げる。手応えあり!

『なぁっ!? うぉわぁあああああっ!!』

 ゼルマの悲鳴と共にダークスパイナーが倒れると、電子妨害がクリアになってハロルドはEシールドを解除して三連衝撃砲でロックオンした。

「戦闘中に気を取られるな! それに無駄な動きも多い!」

『くっ……さっさと撃ったらどうだ!?』

 ゼルマはギリギリと悔しさを噛み締めた表情で強がるが、ハロルドはロックオンを解除する。

「僕たちは戦争をしてるんじゃない、力を蓄える旅をしているんだ。オーガノイドの力は僕たちも必要としている」

 するとクリアになったレーダーで接近警報が鳴る。MFDのレーダー画面を見ると、反応がびっしり! この反応は小型ゾイドの群れだな! 真っ先にイヴァーナが叫んだ。

『ハロルド! 勘づかれたわ! GNDAの保守強硬派よ!』

『この数で囲まれたら一溜まりもないぞ!』

 ヨハンの声もクリアになる。電子妨害がクリアになったビッグマザーとマルゴは動き出すと、再起動したダークスパイナーもよろよろと立ち上がってゼルマはハロルド達に言う。

『お前たち、死にたくなかったらチャトウィンの南区に行け……今のところそこが一番安全だ! また会おう!』

 そう捨て台詞を吐くとダークスパイナーは天井のない遺跡の中に逃走したかと思った瞬間、甲高い轟音が響く。隠していたのだろう、漆黒のホエールカイザーがダークスパイナーを乗せて離陸する。

 ヨハンは驚きの声を上げる。

『ホエールカイザー!? あんな所に隠していたのか!』

『ええ、しかもネオゼネバス空軍の特殊作戦支援機よ』

 イヴァーナの言う通り、黒いボディに目立たない場所に低視認(ロービジビリティ)仕様のネオゼネバス帝国の国籍マークが見え、前部ハッチの奥にはダークスパイナーが見えた。

 レーダー画面を見るとGNDAのゾイド達が迫ってきてる。すると、闘技場の遺跡からバーサークフューラーが姿を現し、背中と両足のブースターを噴射しながらジャンプ、ホエールカイザーに飛び乗った。

 ハロルドは嫌な予感がした。

「ヨハン、イヴァーナ、すぐに姫様とカミル君を!」

『その必要はなさそうだぞ』

 ヨハンは少し安堵したような声になる。崩落した瓦礫の上にシルヴィアとリリアが姿を現して姫様がモニター通信で元気な顔を見せてくれた。

『みんな! 大丈夫!?』

「こちらは大丈夫です、今のバーサークフューラーは?」

 ハロルドが訊くとカミルが答える。

『ヘルガと一緒に撃退しました! 急いでここを離れましょう!』

『さすが姫様とカミル君! さぁチャトウィンの南区に向かいましょう!』

 ヨハンのビッグマザーが前に出てGNDAの攻撃に警戒しながら、チャトウィンの南区へと進路を取った。

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