ゾイド Wild Flowers~風と雲と冒険と~第一期   作:尾久出麒次郎

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第二話、その3

 クソッ! 絶対に離すかよ……畜生、枝が今にも折れそうだ! 崖の高さは一〇メートルくらい。落ちたら運良くて一生車椅子、悪けりゃ即死だ! ジョエルは何とか二人を引き上げようとするが、完全にぶら下がった状態で力を入れるたびに枝が静かに悲鳴を上げてる。

「離すんじゃねぇぞ二人とも! 引き上げてやるからな!」

「体が、体が千切れちゃう! 痛い……」

 悲鳴を上げるセレナ、自分と女子生徒にしては大柄なアヤメリアの体重を受けながら右手で何とか自分の手に縋りついてる、その華奢な腕じゃ落ちるのも時間の問題だ。

「セレナお願い……なんとか頑張って、ジョエル! セレナをちゃんと引き上げなさいよ! 男でしょ!」

「わかってるようるせぇなぁっ!! なんでよりにもよって一番重いお前が下だなんてよ!!」

「失礼ね!! あたしそんなに重くないわよ!!」

 アヤメリアは震えた声で叫ぶと枝の軋む音が聞える。クソッこのままじゃ三人とも落ちる! 汗で今にも滑り落ちそうなセレナの右手と、どんどん曲がっていく木の枝を掴む左手、クソッ! 離してたまるかよ!

 ジョエルはせめて誰かが気付いてくれればと整備工場の方を見ると、さっきのケーニッヒウルフがいない。おいおいカミルはあの黒髪の女の子とデートか? そう思った瞬間、自分を恥じることになった。

 自分たちの真下にケーニッヒウルフが滑り込み、コクピットハッチが開くと出てきたのはカミルだった! ケーニッヒウルフが頭の横に右前足をくっつけると、カミルは飛び移った。

「ジョエル! セレナ! アヤメリア!」

 カミルは両腕を広げて受け止める体勢になりながら叫ぶと、ジョエルは微笑みながら叫んだ。

「カミル……セレナ! アヤメリアを離せ!」

「ええっ!? でも!」

「いいから離せ! アヤメリアなら大丈夫だ!」

 ジョエルはビキビキと曲がり始めた枝の悲鳴を聞きながら叫ぶと、アヤメリアは裏返った声で悲鳴を上げた。

「ちょっと本気なの!? あたし死んじゃうって!」

「いいから早く! 枝が折れる、助かりたかったら離せ!」

 ジョエルは今まで叫んだことのない声で怒鳴り散らすとセレナは下を向いてようやく気付き、そして離した。

「ごめん、アヤメリア」

「えっ……いやぁあああああああっ!!」

 断末魔の悲鳴で落下するアヤメリアを、カミルはお姫様抱っこで見事にしっかりと受け止めた! ナイスキャッチ! 心でガッツポーズを決めた瞬間、枝が折れた。畜生、セレナを! ジョエルは固い地面に叩きつけられる瞬間までセレナの手を離すまいと歯を食い縛った。

「あいた!」

「うおわっ!」

 地面ではなく黒い金属の塊の上に尻餅ついた。すぐ崖の上はすぐそこで、ゆっくりと低くなった。

「大丈夫ですか! お怪我はありませんか!?」

 コクピットから降りて来た女の子は、透き通るような柔らかい声でセレナは目を丸くして呟いた。

「あの子が……パイロット?」

「みたいだな、アヤメリアも大丈夫そうだな。降りられるか?」

「うん、それよりさっ! あれをもっと近くで見よう!」

 にやけるセレナの視線の先にはお姫様抱っこしてるカミルの姿だ、ジョエルは頷いて手を振った。

「大丈夫、ありがとう! 助かったよ!」

 

 それから大人たちが何事かと言わんばかりに駆けつけ、それからみんなで事情を説明して注意されたが、カミルとヘルガの二人は賞賛されてアヤメリアはその二人を、複雑な表情で見つめていた。

 

 

 カミルはアヤメリアと帰り、怖い目に遭ったからか口を閉ざしたままだ。いつもはからかわれながら歩いて帰ってるのに、アヤメリアは俯いたままだった。昔は散々泣かされ、粗暴でお姉さんぶった誰よりも強い幼馴染なのに……それでもやっぱり女の子だもんね、カミルは声をかけた。

「大丈夫? やっぱり怖かったよね?」

 アヤメリアは俯いたままコクリと頷くと、ボソボソと唇が動いて辛うじて聞き取れた。

「初めてなの……お姫様抱っこされるの……男の子に」

「えっ?」

 アヤメリアは顔を上げると、感慨深そうな顔をしていた。

「カミル、あんた……本当に逞しくなったね。昔は臆病で、女の子にも負けるくらい弱くて……よく泣いてたわね」

「僕を泣かしてたのはいつも君だろ?」

「はははははっ、そうよね。でも、その泣き虫カミルが……あたしを助けたのよ」

「女の子にはこの前も負けたよ、ライガーゼロのシルヴィアを見つけた日にね」

「あのヘルガって子と戦ったの?」

「うん、圧倒的だった」

 カミルは今でもあの圧倒的な強さは頭から離れない。シルヴィアに乗っていたからあそこまでもったのだ。

 それでもあの三人の付き人たちには叶わないという、だとしたらバン・フライハイトや生涯のライバル、レイヴンは? 一体どれくらいの次元だったんだろう? そうだ、カミルは家の前に着くと昼休みのことを思い出した。

「アヤメリア、すぐ戻るからそこで待ってて」

「いいけど」

 カミルは急いで「ただいま!」と言って家に入り、自室の棚から愛読書を取って急いで戻ると玄関前でアヤメリアは待っていた。

「はいこれ、読みたかったんだって?」

「おおっ!! 『風と雲と冒険と』じゃん!!」

「うん、死んだ父さんがよく読んでいた大切な本なんだ」

 これはカミルの大切な宝物、アヤメリアは粗暴で意地悪だけど筋は通す女の子だ。アヤメリアは数秒間カミルの目を見つめると、嬉しそうな表情で女の子らしい、愛らしい笑顔になる。

「ありがとうカミル。来週辺りに返すね」

「うん、感想聞かせてね」

「勿論よ、じゃあね!」

 カミルはその嬉しそうな背中を見送った。

 

 翌日から、カミルとアヤメリアは『風と雲と冒険と』で語り合い。昼休みはZiフォンでネットにアクセスしてバン・フライハイトやその仲間たちの生涯、その後の時代のゾイド乗りたちのことを教えた。

 放課後になるとジョエル、セレナを連れてヘルガの所へ行って遊んだりした。ヘルガはセレナとアヤメリアともすぐに打ち解け、三人で仲の良いグループが出来上がった。

 そんな日々が一週間過ぎる。

 

 シルヴィアの整備が終わり、格納庫から出てきたシルヴィアは上機嫌で、母親は呆れた表情でしばらくの間、家の裏庭の空き地に駐機してていいと、やっと折れてくれた。

 その夕方の帰り、すっかり馴染んだかと思ったアヤメリアと話していた時だった。

「――カミルってヘルガと話す時……可愛い声で笑うよね?」

「えっ? なんか……久し振りに酷いこと言われた気がする」

「酷いも何も、ありのままを言ってるのよカミル」

 アヤメリアは真剣な眼差しだ、今までとは見たこともない雰囲気でカミルは思わず困惑の表情を浮かべ、アヤメリアは問い詰めた。

「ヘルガのこと、どう思っている?」

「どう思ってるって……」

 カミルはヘルガのことが頭から離れなかった。学校にはいない、上品でお淑やかで誰よりも芯の強い、それこそ深窓の令嬢――いやお姫様だ。そんなヘルガのことを?

「セレナが見抜いてたわよ。あんた……あの子に恋してるんだって?」

「えっ!?」

 それでカミルはハッとした。アヤメリアはキッと見つめ、徐々に口調が強くなる。

「やっぱりね、ヘルガの付き人――イヴァーナさんが言ってたわ。あの子はいずれ国を背負うお姫様なのよ。あんたに釣り合うと思ってるの? 王子様やお姫様、身分の差を乗り越えた恋なんて、所詮は大人になりきれない大人たちの叶わない妄想! フィクションに過ぎないのよ!」

 カミルは両手を握り締めた。ヘルガに抱いてる感情、これが好きかどうかなんてわからない。確かに僕とヘルガでは身分の差は違いすぎる、だけど。

「どうしてそんなことを言うんだ!? 僕はヘルガが普通の女の子だろうが、お姫様だろうが関係ないよ。アヤメリアだってヘルガとあんなに仲良くしてたじゃない。友達同士じゃなかったのかよ!?」

「それとこれとは別よ! あの子は……住む世界が違いすぎるのよ!」

 アヤメリアはヘルガを除け者にしてる、少なくともカミルにはそう感じた。アヤメリアは決して仲間外れをしたりするような子じゃない、こんなことなら、自分が除け者にされた方がよかった。

「じゃあ君がヘルガに優しくしたのは嘘だったのか!」

「嘘じゃないわよ!」

「じゃあ何が言いたいんだよ!! 僕がヘルガを好きになろうがどうだろうが、僕の勝手だろ、そんなにヘルガが気に入らないのかよ!?」

「気に入らないのはあんたの気持ちよ!! この前出会ったばかりの女の子を好きになるなんて、馬鹿じゃない!? あたしだって……カミルのことが好きなのよ!!」

 アヤメリアは吐き捨てて家へと走リ出し、カミルは引き止めようとしたが足の早い彼女だ。止めようがなく、カミルは呆然と立ち尽くしていた。

 

 

 ハロルドは民家の壁に寄りかかってリトルシガーを吸い終え、カミルの同級生の少女――アヤメリアが跳び出してハロルドに気付くことなく、走り去っていた。一瞬見えた横顔には涙が夕日に反射していた。

 少し遠回りして帰ろう。ハロルドは携帯灰皿に吸殻を入れるとモーテルを遠回りする形で帰り、イヴァーナと姫様の部屋にノックして入った。

「ただいま戻りました」

 部屋に入ると姫様はテーブルで教科書とノートを広げ、イヴァーナの授業を受けていた。

「あら珍しいですねハロルド、わざわざ」

「おかえりなさいハロルド、そろそろ夕食を作ってくるわね」

 姫様は日課である授業を終え、モーテルの裏に駐機してあるグスタフMRAP――マルゴに繋いでる居住コンテナに向った。旅に出てからは家庭的なヨハンと料理を教わりながら作り、姫様は花嫁修業と密かに言ってる。

「それで? 私に用があるんですよね?」

「そうだ、あの子たちの関係をこじらせるのはやめろ。姫様が聞いたら悲しむ」

 ハロルドは全て見抜いていた、この一週間ハロルドはヘルガの所へ遊びに来た少年少女たちを見守っていた。ヨハンは一緒に遊び、イヴァーナは時折声をかけたり少年たちを脅して怖がらせ、ヨハンにからかわれては追い掛け回して和ませていた。

「なんのことです? 私はただ――」

「ヨハンや姫様をごましても、僕だけはごまかせないぞ! 今日、アヤメリアと言う女の子にカミル君が姫様に思いを寄せてることを話しただろ?」

「あら、私はただカミル君が一時の気の迷いから目覚めさせるには丁度いいと思ってたんですけどね。それにアヤメリアさん、幼馴染のカミル君に思いを寄せてますから」

 イヴァーナは涼しい笑顔で言うが、その裏にはどんな犠牲を払ってでも冷酷なまでに姫様を守り、強い王女に育てるという任務を遂行する鋼鉄の意志が秘められてる。

「任務のためだからと言って、煽っていいのか?」

「私は任務のためなら、どんな汚名も受けるわ。例え姫様に嫌われて、殺されることになっても」

「そうか……大した神経だ」

 この女は何を言っても無駄だ。一度任務を始めたら相応の権限を持つ者――国王でもない限りやめないだろう。ハロルドは部屋を出て向かいの部屋に帰って一人、もう一本吸いたい気分だった。

 嫌煙のヨハンには悪いと思いながらリトルシガーを取り、シガーマッチで点火した。

 

 それから夕食を取り、深夜になると一番神経が張り詰める時間帯になる。

 時計を見ると深夜一時で今頃、姫様は向かいの部屋でぐっすり寝てる。

 相部屋のイヴァーナは隣のベッドで襲撃に備えて暗器を仕込んだ普段着のまま、枕元には357口径マグナムリボルバー拳銃――ルイス&スヴェンソンRS435を置いて眠ってる。

 姫様より遅く寝て、早く起きる、熟睡しても一瞬で目を覚ます技能を持っているから頼もしいと同時に、恐ろしくもある。

 ハロルドは電気を消した部屋でプレートキャリアを装備し、北エウロペ連合やアーカディアで採用されてる七・六二ミリ短小弾を使用する傑作突撃銃――NK30の個人防衛火器(PDW)仕様の九インチ銃身モデル――NKS30Uを持って椅子に座っていた。

 骨董品クラスの旧式だがアーカディアでは近代改修されて通常型の一六・三インチ、空挺・特殊部隊用の一三インチタイプがあり、ハロルドとヨハンのはサプレッサーと近接戦闘用ダットサイト、フォアグリップが装着されている。

 ヨハンもタクティカルブーツを履いたまま寝てはいるが緊急時には静かに叩き起こして数秒で戦闘体勢を取らせなければならない。そろそろヨハンも寝入っただろう、そう思ってポケットの太くて長いドライシガーに手を伸ばした時、微弱な電流が流れた。

「ヨハン、起きろ!」

「……敵襲か?」

 できる限り小声でポンポンと叩くと張り詰めた口調に悟ってくれたようで素早く起きる。プレートキャリアは寝たまま身に付けていてヨハンは自分のNKS30Uを取ってチャージングハンドルを引き、重量ある亜音速弾を装填。

「囲まれてる、脱出だ」

 ハロルドが言った瞬間、Ziフォンが震えた。バイヴのパターンからしてイヴァーナも気付いたようだ。ハロルドはヨハンとアイコンタクトしてセーフティをセミオート。慎重に素早く、ドアを開けて構えながら廊下に出るとまだ中には侵入してないようだ。

「クリア」

 ハロルドが静かに鋭く聞えるような声で言う、ヨハンはあらかじめ決めておいたリズムでノックするとドアの向こうから落ち着いたノックが返ってくる。姫様だ、ゆっくり慎重に開けると薄いグリーンのネグリジェ姿の姫様がイヴァーナの上着を羽織ってる。

「狙いは私?」

「ええ姫様、囲まれています。窓には近づかないで」

 ハロルドは注意を促す。誘拐か暗殺かまではわからない、後者ならどこかに暗視スコープ付きライフルを構えたスナイパーがいる可能性もある。ここはモーテルの二階、上下左右どこからでも襲ってくる可能性がある。

 全方向に神経を張り巡らせると、天井から叩く音が複数こちらに近づいてくる。足音でヨハンは天井に銃口を向けるが、ハロルドは「まだ撃つな」と左手で制止しながら聴覚を研ぎ澄ます、足音から判断して二人だ。

 屋根の縁からバルコニーに降りてくるつもりだ。ハロルドは合図して、ヨハンと二人同時に素早く二発、壁越しに撃たれた二人は短い断末魔を上げて倒れた。部屋を出てハロルドが前衛、その後ろにイヴァーナが姫様の護衛、殿がヨハンだ。一階に通じる階段に向かい、踊り場に入った瞬間に下にいる銃を持った男たちと鉢合わせになった。

「いたぞ! 女の子だけは生かして捕らえろ!」

 敵が短機関銃をフルオート掃射しながら叫ぶ、静寂が破られて深夜のモーテルが戦場と化した。

「目的は私のようね」

 姫様はぐっと堪えた表情になる。やはり目的は姫様の身柄だ! ハロルドはNKS30Uで反撃、こんな時にも悲鳴を上げずにいる姫様は強い。

「やはりお目当ては姫様ね! どいつもこいつも姫様姫様と! たまには私も狙いなさいよ!」

 イヴァーナは悪態つきながらNKS30Uをフルオートで撃ちまくる、おい一〇〇連ドラムマガジン付けてるからと言ってそんなに撃つな、サプレッサーがだめになるぞ。

 ハロルドはポーチからMkZ破片手榴弾を取り出し、安全ピンを抜いて投げつけた。

「フラグアウト!」

 ハロルドは叫ぶと、転がり落ちた手榴弾は炸裂とともに断末魔が響き、煙と火薬の燃える匂いを感じながら倒れた男二人に足先で突くと動かない、即死のようだ。一階の踊り場に出ると裏口から出ればすぐそこは駐機場だ、オーナーには悪いが早過ぎるチェックアウトだ。

 宿泊料も前払いで済ませてる、駐機場から一番近い出口に向う。何の遮蔽物もない廊下だが、姫様の暗殺ならこのままハロルドたちと一緒に機関銃でモーテルごと蜂の巣にすればいい。

 誘拐なら、姫様を傷つけずに連れて来いと言われてる。すると正面玄関からガラスが割れ、慌しく入ってくる足音、銃特有の金属音も混ざって聞える。イヴァーナはヨハンの肩を叩き、アイコンタクト。

 廊下に設置された自動販売機に目をやると、ヨハンは頷いた。

「ハロルド! ここは俺とイヴァーナで押さえるから、姫様を!」

「駄目よヨハン! どうするの!?」

 姫様が悲痛な声で拒否するとヨハンは「こうするんですよ!」と言ってイヴァーナと自動販売機を引き倒した。イヴァーナは凛とした声で突き放すように言う。

「姫様、私よりハロルドの傍が安全です!」

「姫様早く!」

 ハロルドが強く促すと姫様はハロルドの所に身を寄せる。ここから先は通さないと言わんばかりにヨハンとイヴァーナは制圧射撃を開始、ハロルドは姫様を連れて外に出ると敵の気配はない。

 よし、敵の気配はない。リリアとハロルドのシールドライガー――アリエル二世まではすぐそこだ。そう思った瞬間、反対側の道路からジャンプしたのか真上から何かが通りかかり、自分たちの目の前に着地した。

 闇夜に輝く不気味な目はディマンティスだった。 

 クソッ! NKS30Uじゃコクピットの装甲貫通は無理だ。スピーカーからガイロス訛りの共通言語が響く。

『おとなしくその子を渡しな、命だけは助けてやる!』

「姫様を簡単に渡すほど、僕は甘くないぞ!」

 ハロルドはNKS30Uをフルオート射撃で威嚇すると、ディマンティスは両腕の機関銃を向ける。クソッ! 咄嗟に姫様を庇い、フルオート射撃の銃声と地面に着弾する音が耳元でコンクリート片が舞い、脇腹に熱い物に切り裂かれて激痛が走った。

 チッ! 破片か銃弾か!? 海軍時代に老兵から聞いたのだが、戦場では銃弾より飛んでくる破片にやられるケースが多いと聞いたことがある。だがどうやら俺は前者になったらしい。

「ハロルド! 出血してる!」

 気付かれたか、しかもかなり量が多い。姫様は必死で傷口を押さえて、出血を止めようとしてる。

「これぐらい心配要りません姫様!」

「でも、このままじゃ――」

 姫様のことだ、三獣士を助けるために敵に自分の身柄を引き渡しかねない。それだけは絶対に駄目だ! ハロルドは激痛に耐えながら右手でNKS30Uを構えて振り向いた瞬間、ディマンティスの胴体は落ちてきた巨大な足に踏み潰され、銃撃も止んだ。

 パイロットも必死でもがくが不可能だ、ハロルドは闇夜に輝く黄金色の目を見て確信した。姫様も驚愕の表情を浮かべると、昨日復帰整備を終えたばかりのライガーゼロ、シルヴィアが雄叫びを上げた。

 

 解説

・ノースエウロペ・コンツェルンNK30

・7.62mm口径短小弾を使用する北エウロペ連合国制式アサルトライフル。旧式で命中精度に難があるが構造が非常に単純なため恐ろしい程頑丈に作られてる。民兵から特殊部隊にまで使用されて各国でライセンス・コピー品が作られ、単にNKと通じる。折り畳みストックは標準で後方部隊護身用や屋内突入用のNKS30U、空挺・特殊部隊用カービンNK30U、5.45mm口径型NK55等がある。

 

・ルイス&スヴェンソンRS435

・ヘリック共和国の大手老舗銃器メーカー、ストーナー社と並ぶ企業R&S社の回転式拳銃で8連発シリンダーに357口径マグナム弾を使用する。4インチの357口径で435なので6インチで44口径の場合は644で装弾数は六発のみ、最大クラスの物は10.5インチで50口径は105とゼロは省略される。イヴァーナが使用してるのはRS435である。

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