ありふれた贋作で共に世界最強   作:シュシュマン

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とある場所にて……

???「どうも皆様、作者のシュシュマンです」

???「南雲ハジメです」

???「神薙雪月だ」

シュシュマン「では早速、前回のあらすじから―――」

雪月「待て待て待て!」

シュシュマン「ん、どしたの?」

雪月「どしたの? じゃねぇよ! 普通に自己紹介しちまったけど、ここ何処だよ!?」

シュシュマン「ここ? そうだな…名前はまだ無かったけど、名付けるなら……『あらすじ部屋』、かな」

ハジメ「な、なんで僕達はその……あらすじ部屋に?」

シュシュマン「いや~新しい試みとしてね? この部屋に毎回誰かを呼んで前回のあらすじを言って貰おうかな~と」

雪月「……それで今回は俺達ってことか?」

シュシュマン「そう! ってことでお願いしてもいい?」

雪月「チッ、どうせ俺達に拒否権はないんだろ? ならやるしかねぇじゃねぇか」

ハジメ「アハハ…それじゃあ僕から………宿場町ホルアドで休んだ僕達は、いよいよオルクス大迷宮での実戦訓練が始まった」

雪月「元々の強さがチート級だったことや、メルドさん達騎士団のお陰で、俺達は苦もなく二十階層まで降りてくることが出来た。俺やハジメ、他の奴等も少しずつではあるが、着々と実力をつけてこれているな」

ハジメ「この先にはどんなものが僕達を待ち構えているのか?」

雪月「そして、ハジメに負の視線を向けてきている者の正体は?」

ハジメ&雪月「「第七話、はじまるよ(ぜ)!」」

シュシュマン「二人ともありがとね! また呼ぶかもしれないから、その時はよろしく!」

雪月「また呼ばれる可能性あんのかよ!?」

更新が遅くなってしまい、本っっ当に申し訳ありません。


第七話:巨獣現る

 小休憩も終わり、一行は二十階層の探索を再開する。

 

「今更だけどよ?」

「うん?」

 

 後列の方で、迷宮の天井を見上げていた雪月が呟く。

 

「今の所迷わずに進んでいるけど、迷宮の各階層って一体どれくらいの広さがあるんだ? 何回か千里眼を使ってるんだが、全く分からん」

 

 この二十階層に来るまで、雪月は自身が持っている技能‟千里眼”を使って試しに各階層がどれくらいの広さがあるのか確かめようとしたが、何回やっても階層全体を見る事は出来なかった。

 

「えっと確かね……迷宮の各階層は数キロ四方に及ぶって聞いたよ」

「ファッ!? す、数キロ四方って……そりゃ見えない訳だ。俺は一キロ先見えれば上出来ってレベルだからな………はぁ、千里眼なんて大層な名前がついているのに、情けねぇなぁ…俺」

 

 ハジメの言葉に雪月はがっくりと肩を落とす。雪月の‟千里眼”では一キロ先を見るので精いっぱいなのだ。数キロ先を見るなんて、到底無理な話だった。

 

「くっそ~。そんなに広いとは思わなかったぜ」

「マッピングされていない階層では全部探索するのに数十人規模で短くて半月、長くて一ヶ月かかるらしいよ」

「まぁそれだけの広さがあるなら、それぐらいの時間が必要になるだろうな。魔物だっている訳だし」

 

 数キロ四方にも及ぶ広大な範囲、更に魔物が襲ってくる状況で、すべてマッピングするにはそれぐらいの時間が掛かってもおかしくはないだろう。

 

「で、このオルクス大迷宮は四十七階層まで確実にマッピングされているんだって」

「なるほどな~道理でって、ん? 四十七?」

 

 雪月はここまで迷わずに来れた理由に納得したのと同時に、ある疑問が湧いていた。

 

(確かこの迷宮は最高到達層が六十五階層だった筈。てっきりそこまでか、もしくはそれに近い階層までマッピングされていると思ってたんだが……百年以上も前だからマッピングする余裕もなかったのか?)

 

 疑問には思ったが、これは今は考える必要はないなと、雪月はその事について考えるのをやめて迷宮の奥へと進んでいく。

 

 二十階層の最奥は、部屋の壁や天井がまるで鍾乳洞の様にツララ状になったり溶け出したりしていた。

 

「ほぉ~」

 

 雪月はその光景に目を奪われていた。鍾乳洞に関してはテレビ等で見た事はあったが、実際に見るのはこれが初めてだった。

 

「ここが迷宮じゃなかったら、ゆっくり見て回りたいところだな」

「雪月はこういうのが好きなの?」

「あぁ、こういった自然が長い時間をかけて創りだした造形は結構好きだな。見ていて飽きないんだよ」

 

 雪月はほんの一瞬、周りの光景に目を輝かせていたが、自分達が今どこにいるのかを思い出し集中する。

 

 ここは七大迷宮のひとつ『オルクス大迷宮』。何が起こるか分からないのだ。油断は出来ない。

 

 今回の実戦訓練は二十階層の奥にある下へと続く階段に辿り着く事である。そして辿り着いた後は転移で一気に地上へ! なんてことは出来ず、徒歩で歩いてきた道を戻る事になる。まさに地上に戻るまでが実戦訓練という事だ。

 

 複雑な地形のせいで横列ではなく縦列で進んでいく中、あともう少しで目標の場所に辿り着けるからなのか、周りを見ると気が緩んでいる様に見えるクラスメイト達が何人かいた。

 

(俺達がいるのは迷宮の中だってのに、少し危機感が足りてないんじゃねぇか?)

 

 雪月が呆れて吐息を漏らした直後、先頭を歩いていたメルド団長と光輝達が立ち止まる。クラスメイト達が訝しんでいる中、雪月はその理由に瞬時に気付き、「ハジメ、警戒しろ」と一言告げ、弓矢を投影する。どうやら魔物が近くに潜んでいる様だ。

 

「敵は擬態しているぞ! よく周りを見るんだ!」

 

 メルド団長の忠告が飛び、他の面々も警戒態勢に入る。

 

 雪月が周りを注視していると、壁のある部分に違和感を感じた。

 

「……そこっ!」

 

 弓に矢を番えて矢を放つ。放たれた矢は矢尻の部分が壁に突き刺さる。

 

 周りの視線が壁に集まった次の瞬間、壁の一部が変色しながら起き上がって来た! カメレオンのような魔物なのだろうか…壁と一緒だった色はあっという間に褐色へと変わっていた。その魔物は二本足で立ち、胸を叩いてドラミングをしだした。どうやらカメレオンの様な擬態能力を身に付けているゴリラの様な岩の魔物だ。

 

「よく見つけたな雪月! 奴はロックマウントという魔物だ! 奴らは剛腕だからに腕に注意しろ!」

 

 メルド団長の声が鍾乳洞内に響いた直後、今度は別の場所の壁の一部が変色し始めた!

 

「なっ!? まだ潜んでいたのか!」

「慌てるな! 戦い方は今までと同じだ。前衛と後衛に分かれて敵を足止めしつつ強烈な一撃を入れてやれ!」

 

 敵が複数潜んでいた事に驚いて慌てる者がいたが、メルド団長の号令で全員が気を引き締める。

 

 最初に現れたロックマウントは光輝達が相手をしていた。龍太郎が敵の攻撃を防ぎ、残りの二人(光輝と雫)が足止めしつつ、香織達後衛組が魔法で仕留めるつもりなのだろう。

 

 ロックマウントはこのままでは不利だと判断したのか、いきなり後ろに下がって大きく息を吸い出した。

 

「ゴォアアアアアァァァアアアアアーーー!」

 

 光輝達がその行動を訝しんだ直後、部屋全体を揺るがすような咆哮がロックマウントから発せられた。敵の固有魔法‟威圧の咆哮”である。魔力がこもった咆哮により、前衛の光輝達がまんまとやられて一瞬硬直してしまった。

 

 その隙にロックマウントはサイドステップして、近くにあった岩を持ち上げたかと思ったら、それはもう見事な砲丸投げフォームで! 香織達後衛組向かって投げ飛ばして来た。

 

 香織達は魔法で迎撃しようとするが、次の瞬間、飛んでくる岩が動き始めた。なんと投げられた岩もロックマウントだったのだ! 両手をいっぱいに広げ、妙に目が血走っていたり鼻息が荒いその姿は、某怪盗アニメに出てくるダイブそのものだ。

 

 香織達女子にとっては恐怖でしかないのだろう。思わず詠唱を止めて「ヒィッ!」と悲鳴を上げていた。

 

(ったく、世話が焼けるなホントに!)

 

 その光景を離れた所から見てた雪月は自身の戦闘の合間を縫って、香織達に飛び込もうとしているロックマウントに向かって矢を放つ。

 

 放たれた矢は綺麗な弧を描いて飛んでいき、ロックマウントの目に見事命中した!

 

「グァッ!?」

 

 いきなり飛んできた矢と目の激痛でロックマウントの体がぐらつく。

 

「やるな雪月、たいした命中精度だ!」

 

 その隙にメルド団長が飛んできたロックマウントを斬り捨てる。

 

「実戦は一瞬の判断が命取りだ。気持ち悪いとかで詠唱を止めたりしたら危検だぞ!」

 

 メルド団長に注意された香織達は青褪めながらも「は、はい! すいません!」と謝る。余程気持ち悪かったのだろう。まだ震えている。

 

 雪月はメルド団長がロックマウントを倒したのを確認した後、他のクラスメイト達の戦闘の状況も確認していた。

 

(よし、白崎達の方は何とかなったな。他の奴等もあと少しで終わりそうだし、俺も自分の方に集中して……)

「貴様……よくも香織達を……許さない!」

「あ?」

 

 何処からか怒気を含んだ声が聞こえたかと思って視線を向けると、正義感と思い込みの塊であり、我等が勇者の天之河光輝がキレていた。それに呼応しているのか、その手に持っている聖剣の輝きが増してきている。そして彼の視線は先程の見事な砲丸投げを披露してくれたロックマウントの方に向いていた。

 

(あの馬鹿まさか⁉︎ 何考えてやがる!)

 

 光輝が次に何をしようとしているのか悟った雪月は慌てて弓に番えた矢を光輝に向かって放つ。当たらないギリギリの範囲で。

 

「オイ待て光輝、お前何を!」

「万翔羽ばたき、天へと至れ! ‟天翔sうぉっ!?」

 

 メルド団長の声を無視して、キレた勇者は大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り下ろ……す前に突如横から飛んできた矢に驚いて中途半端に振り下ろしが止まってしまう。

 

 今彼が使おうとしていたのは‟天翔閃”。聖剣が纏っていた光自体が巨大な曲線を描く斬撃となって放たれる技である。しかし、今回は振り下ろしが中途半端だったことや、飛んできた矢のせいで斬撃は小さく、そしてあらぬ方向へと飛んでいった。

 

「くっ、誰だ矢を飛ばしてきたのは! 危ないだろう!」

「うるせぇどいてろ馬鹿!」

 

 光輝は矢が飛んできた方に視線を向けるが、その直後、光輝の横を一つの影が通り過ぎる。

 

「なっ、神薙!?」

 

 影の正体は雪月だった。弓矢を消し、新しく剣を投影した雪月は、勇者と同等かそれ以上のスピードでロックマウントへと迫る。ロックマウントは自分に迫って来る雪月を潰そうとその剛腕を振り下ろす。

 

 しかし、雪月はバックステップでそれを躱し、再び走り出す。後ろの方で誰かが何か騒いでいるようだが、構わず雪月は走り続ける。

 

 ロックマウントはすぐそこまで迫る(雪月)を再び潰そうとするが、その前に雪月が腰に着けていたコンバットナイフを奴の目に向かって投げる!

 

 咄嗟の事で防御が間に合わなかったロックマウントは次の瞬間、目に激痛が走り、一瞬怯む。

 

「ナイフは一か八かだったが、上手くいったな。お前の存在はこの綺麗な場所には相応しくない、とっとと去ね」

 

 ロックマウントの頭上に向かって跳躍した雪月は剣を大上段に構えそれを一気に振り下ろす。

 

「斬っ!」

「グゴォオオオァァァアアアアアーーー!!」

 

 断末魔のような叫びが響き渡り、雪月が地面に着地した数秒後、ロックマウントはその岩の体を縦に両断されて絶命した。

 

 それと同時に、雪月の持っていた剣の刀身が折れ、粒子に変わっていく。

 

 自身が投影した剣を見送った雪月は「ふぅ」と息を吐くと、足元に落ちていたナイフを拾って皆の元へと戻っていく。無事それぞれの戦闘を終えたクラスメイトの面々が雪月の戦いを見て呆然としている中、先程までキレていた勇者(光輝)が雪月に詰め寄る。

 

「神薙、一体どういうつもりだ! なんで俺に向かって矢をがふっ!?」

 

 雪月に先程の行動の意図を聞こうとする前に、頬に衝撃が走る。雪月が光輝を思いっきり殴ったからだ。尻餅をついた光輝は自分がどうして殴られたのか分かってないのか、殴られた頬を手で押さえながら雪月を睨む。

 

「なんでかって? お前が馬鹿な事をしようとするのを止める為だよ」

「ば、馬鹿なことだって!? 俺はただ、香織達を怖がらせた魔物を倒そうと…!」

「その時に使おうとした技が問題なんだよ!」

 

 雪月の声が洞窟内に響く。怒気を含んだその声に光輝だけでなく他の面々も押し黙る。

 

「はぁ…さて勇者、質問だ。お前はさっきそれなりの大技を使おうとしたな?」

「……あぁ、‟天翔閃”っていう技だ。俺が使える技の中では威力がそれなりに大きい技だ」

「だろうな。じゃあ次の質問。俺達がいるここはどんな場所だ?」

「どんなって……」

 

 光輝が辺りを見渡す。それに釣られて他のクラスメイト達も見渡し始める。

 

「鍾乳洞のような場所か、もしくは洞窟のような場所としか思えないが?」

「そうだ……最後の質問だ。こんな場所でその威力の大きい技を使ったら、最悪どうなると思う?」

 

 雪月の質問に光輝が答えようとする前に、雫が「あっ」と声を漏らす。静寂に包まれた空間の中でその声はよく響き、周りの視線が雫に集まる。

 

「最悪……この場所が崩落する可能性があった?」

 

 彼女が行き着いた答えを聞いたクラスメイト達が、一斉に雪月の方に向き直る。

 

「……あぁ、その通りだ」

 

 雫の出した答えに表情一つ変えずに正解だと告げる雪月。クラスメイト達がざわめく中、光輝はそれを聞いて目を見開いていた。雪月はそんな光輝を睨み付けながら…

 

「そういう事だ。お前があのまま技を放ってたら、下手をすれば俺達全員がこの場に生き埋めになってたかもな」

 

 雪月が底冷えのするような声で告げた最悪の事態にクラスメイト全員が青褪めていく。

 

「お前は、一時の怒りに身を任せて、ここにいる全員を危険に晒しかけた」

「お、俺は………」

「知らぬ存ぜぬなんて通らせねぇぞ? 頭の良いお前なら周りを見て少し考えりゃすぐ分かるだろうが」

「うっ」

 

 光輝の言葉が詰まる。実際雪月が止めなかったら、皆を崩落に巻き込んでいたかもしれなかったのだ、他でもない……自分の手で。

 

「お前は、誰よりももっと冷静でいるべきだろうが……」

 

 そう言って、雪月は光輝の横を通り過ぎる。入れ替わるようにメルド団長が光輝の横に立つ。

 

「光輝、お前の気持ちも分からんでもない」

「メルドさん…」

「けどな、雪月の言ってる事は間違ってない。お前のあの技はこんな狭い所で使うモンじゃない。ま、俺の言いてぇことはあいつがほとんど言っちまったから、俺はこれ以上は何も言わん」

「はい……すみませんでした」

 

 光輝は俯いたまま立ち上がろうとしなかった。香織達が慰めようと傍に寄っていくが、その時、香織の視界の端に何かがキランと光るのが見えた。

 

「なんだろうあれ……なんか……キラキラしてる?」

 

 その言葉に、その場にいた全員が彼女の指差した方に視線を向ける。

 

 視線の先には、壁の一部が崩れて、中から青白く発光する鉱物が壁から生えていた。どうやら先程光輝が放ったミニ天翔閃が壁の一部を削った際にあの鉱物が顔を出したようだ。

 

「ほぉ、ありゃグランツ鉱石か。大きさも中々のモンだ。珍しい事もあるもんだ」

「メルドさん、そのグランツ鉱石ってのは?」

 

 聞いた事のない鉱石の名前を聞いて、気になった雪月がメルド団長に問う。

 

「あぁ、あれは宝石の原石のようなものだ。何か特別な効果があるって訳じゃあない」

「宝石…ですか」

 

 メルド団長の話によると、グランツ鉱石はその涼やかで煌びやかな輝きが貴族の間ではかなりの人気を誇っているのだとか。加工して指輪やイヤリング、ペンダントなどにして求婚の際のプレゼントなんかに選ばれる宝石トップ3に入る代物らしい。

 

「はぁ~……綺麗だわ」

「だね~」

「私もああいうのプレゼントされてみた~い」

 

 メルド団長の話を聞いていたほとんどの女子が、頬を染めてうっとりしていた。雪月も内心確かにと納得していた。それほどまでにそのグランツ鉱石の輝きは原石の時点で見事なものだった。

 

「素敵……」

 

 香織も周りの女子達と同じくうっとりしていた。そして、周りに気付かれないようにチラリと視線だけをハジメの方に向けていた。だがしかし、香織の想いを知っている雫と雪月にはバレバレであった。そして、その香織の視線に気づいていた人物がもう一人いるのだが……

 

「どう思う八重樫? 白崎のあの表情」

「まぁ十中八九、南雲君にプレゼントして貰いたいって顔してるわね」

「だよなぁ~。ハジメも罪な奴だよな」

「ほんとにそう思うわ…」

 

 

 雪月が雫と香織の様子についてヒソヒソと話していると……

 

「だったらよぉ、俺等で回収して持って帰ろうぜ!」

 

 そんな事を言って唐突に動き出した奴がいた。檜山だ。グランツ鉱石に向かって走り出し、壁をどんどんよじ登っていく。

 

「おいコラ! 勝手な行動をするんじゃない! 安全確認だってしてないんだぞ!」

 

 メルド団長が止めようとして走りながら注意するが、聞こえないふりをしているのだろうか檜山は無視していた。

 

「ねぇ雪月」

「ん? どした?」

 

 ハジメが雪月の後ろの方に来て声を掛ける。

 

「さっきメルドさん、あのグランツ鉱石は珍しいって言ってたよね?」

「あぁ、言ってたな。大きさも中々のモンだって」

「それで思ったんだけど……ああいうのって大抵トラップがあるんじゃないかなって」

『っ!!』

 

 ハジメの言葉を聞いた雪月と近くにいた雫の目が見開く。それと同時に、檜山が鉱石のすぐ近くまで来てしまった。

 

(くそっ! なんでその可能性にすぐ気付けなかったんだ!)

 

 雪月がその考えに行き着けなかった自分自身を責めていると、フェアスコープで鉱石の周りを確認していた騎士団員の一人が顔を一気に青褪めながら叫ぶ。

 

「団長! トラップです!」

『っ!?』

 

 団員の叫びにその場にいた全員が表情が固まる。

 

 だが、一歩遅かった。

 

 檜山の手がグランツ鉱石に触れる。その直後、鉱石を中心に魔法陣が展開される。珍しいグランツ鉱石に見惚れて、不用意に触れた者への罰としてのトラップなのだろう。

 

 魔法陣はあっという間に洞窟全体を覆い尽くしていき。その輝きを増していく。その光景は、かつて元の世界の教室で見たあの魔法陣を彷彿させる。

 

「今すぐ撤退だ! 急いでこの部屋から出ろ!」

「雪月! これって!?」

「あぁ、おそらく転移型のトラップだろうな! ったくあの馬鹿野郎が!」

 

 メルド団長が撤退の指示を出し、全員が急いで部屋の外に向かうが……その前にまばゆい光が皆の視界を真っ白に染めた。

 

 それと同時に一瞬の浮遊感に包まれ、周りの空気が瞬く間に変わっていくのを感じた。雪月は即座に着地の姿勢を取り、何とか尻からの着地を回避する。

 

「ふぅ。ハジメ、大丈夫か?」

「痛つつ…うん、なんとか」

 

 雪月は近くで尻餅をついていたハジメに手を貸す。周囲を確認すると、景色が変わっていた。どうやら予想通り転移させられたようだ。

 

 転移したのは巨大な石造りの橋の上のちょうど中間に位置する場所だった。橋の長さはざっと見ても百メートル近くはある。部屋の天井も二十メートル以上は離れていた。とにかく巨大な部屋、そんな印象だった。

 

 橋の横幅は十メートルくらいあるが、手すりどころかあかりとなる緑光石すらなく、足を踏み外したら真っ逆さまだ。橋の下を覗くと、そこには川はなく、闇が広がっていた。

 

「うっわ…底が全く見えねぇ。千里眼を使っても見えないとか、どれだけ深いんだよこの穴」

「周りに手すりとかもないみたいだし、落ちたら助からない…よね、これ」

 

 ‟千里眼”を使っても底が全く見えない、深淵の如き闇がそこには広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。ハジメの言った通り、まず助からないだろう。

 

 再び周りを確認すると、橋の両サイドに通路と上へ伸びてる階段が見えた。おそらく通路は奥に、階段は上階へと続くものだろう。

 

 雪月は既に立ち上がっている光輝達の近くにいたメルド団長に視線を向ける。メルド団長がそれに気付き、次いで雪月の視線が上階への階段の方へ移すのを確認する。その意図を理解し、険しい表情をしながら指示を飛ばす。

 

「お前達、すぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け! 急げぇ!!」

 

 雷の如く轟く命令に、生徒達はわたわたと動き出す。雪月もまだ立ち上がれてない生徒に手を貸して階段の方に急がせる。

 

 しかし、迷宮のトラップはまだ終わっていなかった。突如、階段側の橋の入口に複数の魔法陣が現れ、中から大量の魔物が出現したからだ。更に、追い打ちをかける様に通路側の方にも魔法陣が出現した。しかし、こっちの方は大きい魔法陣が一つだけだった。

 

「っ!」

 

 通路側に現れた魔法陣を見た瞬間、雪月は全身からドッと汗が噴き出して来た。

 

(こ、この嫌な感覚……まさか!?)

 

 雪月は生徒達の合間を縫って、魔法陣の前に立つ。剣を投影し、いつでも戦えるように……

 

(朝から感じていた嫌な予感は、こいつだったのか!?)

 

 雪月が魔法陣を睨み付けていると、そこから一体の巨大な魔物が姿を現した。その直後、その魔物を呆然と見つめていたメルド団長が呻くような呟きが耳に残る。

 

‟まさ、か……ベヒモス……なのか……”

 




 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 中々思うように書けず、今回もまたかなりの亀更新でした。

 次回はもうちょっと早く書けるといいなぁ

 それでは、また!三└(┐卍^o^)卍ドゥルルル
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