魔法使い「聖杯を嫁にしたんだが冷た過ぎて辛い」   作:シフシフ

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新しく学校も始まり、平日の睡眠時間が平均4時間を逝くシフシフです。このような初投稿小説にお集まり頂いてしまったとしたら恐悦至極にございまする。

なんて言うか、後半力尽きたかんがあったよ。眠くて眠くて全く執筆に力が入らない……こんなのが初投稿なんて……!




魔法使い「カルデアの資料が届いたので嫁と見ることにした」

「来てくれないなら招待する!!」

「は?」

 

 カルデアの一室で立香はバッと立ち上がり大声で言った。つい先程帰って来てムニエルや他の職員と魔法使いの話をし終えた次の瞬間の出来事であった。

 

 その目はキラキラしていて、悪意なんて欠けらも無いのだろう。世界を救ったカルデアという機関を見てもらいたい。……褒めてもらいたいのだ。

 

 ムニエルはそれを察して、しかし話を聞く限りだと難しいだろうと結論を出した。

 

「いやいや、だって取り付く島もなかったんだろ?マシュから聞いたよ」

「んー、でも割りと好意的だったよ?」

「えっ!?あの話しのどこら辺からそう思ったの!?」

「招待されたら来るよ、みたいな事言ってたしー」

「それは昔からある社交辞令だろ?!」

 

 社交辞令。その言葉を聞いた立香が「むー」と口を尖らせていると、休憩室の扉が開いてダヴィンチが入ってきた。

 何やら普段よりも化粧に気合が入っていると立香は感じた。

 

「やぁやぁ立香くん。どうだった?魔法使いは」

「うーん、若干怖かったけど……割とやっぱりいい人だとおもう!」

「うんうん。そうだね、その通りさ。ところで、彼の張った結界か魔法かで私達は内部の様子を伺う事ができなかった。詳しい内容を教えてくれないかい?見えたものとかでもいいからさ」

「了解!……なんか珍しいね、ダヴィンチちゃんがそこまで食いつくってなかなか無くない?」

「そうかい?私は天才だからね、面白い事には目が無いよ?割と色んなことに食いついてきたと思うんだけど」

「うーん、なんかそれとは違うというか……まぁいいや」

 

 立香が10分ほどかけて事の顛末を語ると、楽しそうだったダヴィンチの顔は徐々に困惑へと変わり、最終的に考え込む様に腕を組み黙り込んでしまった。

 

「……ムニエルー、どうしよ」

「何か考えてるなら何れ話し出すよ多分」

「それならいいけど」

 

 暫く考えていたダヴィンチだったが、「うん」と声を上げたかと思えば晴れやかな顔でニコリと笑う。

 

「ちょっとレイシフトしてくる」

「いやいやいやいや!おかしいだろぉ!?」

「まぁまぁ、ほんの数分さ」えちょ!立香ちゃんまで!?」

「なにかわかったの?」

 

 ちょぅと様子を見に、ね。と言葉を濁し部屋を出るダヴィンチの後ろを立香は着いて行く。

 

「……彼が立香ちゃんを見て尚動かないなんて、()()()()()()()()()()()()か、()()()()()()()()()かのどちらかだ。前者であった場合、ソレを確かめなきゃいけない」

「なるほど。でもダヴィンチちゃんが行く必要はあるの?」

「ふふん!知り合いだからね!きっと君達よりは優しいはずさ!」

「おー!……あれ……?(生前と姿が違うんじゃ……?)」

「ふふふ、見てろよ〜魔法使い。君に最高の女ってやつを魅せてやるさ!」

 

 えいえいおー!と腕を上げた2人をムニエルは呆れた眼差しで見送るのだった。顔は真っ青だったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▪

 

 

「むむむ……」

 

 私は頭を悩ませていた。

 内容はどのようにしてここから逃げだすか、これに尽きる。もちろん、次の料理は何を教わるのか、とか日常的なものもあるがそれを悩みなんて大袈裟なくくりに入れるつもりは無い。

 

 逃げ出すのは割りと簡単だろうと私は踏んでいる。ショウの監視は甘々だ。だが、問題はこの家を覆っている可能性の高い結界などの防衛魔術だ。

 痛みを発するとか、記憶が混乱して来た道を引き返してしまうとか、そんな優しいものをショウ程の魔術師が作るだろうか……と言われると……多分地の果てまで追いかけて来る死の魔法とか仕掛けられているに違いない。

 

「むー?」

 

 ソファーに座っていた私は横にパタリと倒れ、ぐでーっと天井をみる。うーん、やはりおかしい。天井が高い。ショウの改造─もしくは隠していたものを出現させたか─により、階段が撤去された我が家には昇降機の様な働きをする透明な床が階段のあった位置に設置されている。

 酷く狭い塔のように、エレベーターの様に上へと伸びる筒に設置されたそれに乗ると、上に連れていってくれる。上にいる時に乗ると下に連れていってくれるわけだ。

 

 便利だが初めて乗った時は怖くて死ぬかと思った。真下見えるとか怖いだろ。ショウ曰く眺めが良くて良いらしい。馬鹿なんだな、と思った。

 

 ……そう、天井が高いのだ。明らかに空間が歪んでる。天井が高く、魔法のエレベーターはその途中までしかない。だと言うのに2階にたどり着くのだ。

 

 《時間を征く者》の名すら持つ男だ。密接に関わる空間を扱えないとは思えないし、それらをいじくり回したからこそのこの家なのだろう。とはいえ、何をどうしたらこうなるのか……。

 

 ……まぁ要するに、こんな事が出来るショウの家から逃げ出せるのか、と言われると私の脳味噌は「ノー!むりー!」と叫び、心の中のアーチャーが「こ こ か ら に げ だ す な ん て と ん で も な い !」とやたらと強調した感情を送り付けてくる。

 

「それに」

「……なにか用か?」

 

 私がソファーから起き上がり、対面にある一人用のソファーを見ればそこにはショウの姿が。

 ……本当にいつの間にかすぐそばに居るんだ。いくら転移の魔法だからって、多少は何らかの前兆があっていいと思うのだよ。まぁ、ショウの転移の秘密が時間を止めて一生懸命動いている、なんて物だったら呆れてしまうが……

 

「ん、それはなにをよんでいるんだ」

「これか……多少、規模の大きい英雄譚だ。そして、その英雄達に対する考察や懸念、疑念や疑惑。調査の目的やそこに向かう者達の名前、所属などの書類だな」

 

 ……うむ?

 たしかにショウの目の前には無数の書類が山積みになっていた。しかし、なぜ英雄譚なんぞにそこまでの労力を?ショウまで協力するのか?それとも、こんなことをしますって言う報告?

 

「……ふむ。やはりアレらは書くのが良く似合う。どちらも煩いのが欠点だが。……ほう、祠は無駄にならなかったか。……礼装は見つけられなかったか。敵の手に渡らなかったなら重畳だろう」

 

 え、なんか、ブツブツといいはじめたぞ。……き、気になる。なんて書いてあるんだ?しかし、ショウの近くに行くのは気にいらない。むー、どうする。いやいや、まてまて……あれはショウの物語なのか?だとしたらソレが気になって読みに行くなんて絶対に嫌だぞ。……待てよ?英雄達と言っていたし、ショウではないかも。

 

「………………」

 

 じー。

 

「ほほう。なるほどなるほど。……馬鹿な、なぜそんなに面倒な選択を……いやしかし、なるほどそう来たか。ふむ……奴が絡んでたかならば仕方あるまい」

 

 じー…………。

 

「なんだと……?……そうだったか、であればいつか謝罪をせねばな。はっ?レオナルドが?あの……アレが……?ダメだな、考えてもやらんだろ、それは……」

 

 じー……!!!

 

「ん?どうかしたか、マユ」

「んんー……!」

 

 気が付くの遅すぎるだろう!!結局ショウの目の前まで来てしまったぞ!

 ショウが悪いのだ。気になることをブツブツ、ブツブツと……!

 

「…………読むか?」

 

 バレてる?!

 

「……………………ょ、よむわけないだろ!ショウがよまないなら、そこにおいておけ!」

 

 ぬぁー!ちがうちがう、そこは貰っておけ!というか好かれるという計画を思い出せ私!どうにかショウの生活に入り込まねば死ぬのは私なんだぞー!

 

「そうか。では()()()()()()()()()()()()()()()

 

 へっ?ええっと、ショウの持ってる本、私の顔より分厚い様に見えるのだが……?

 

「えっ……あ、あとどのくらいあるんだ?」

「随分と超大作のようでな、しかも─────」

「しかも……?」

 

 読むのは数日後になるかもと心配になった私がショウに尋ねると、やたらと溜めがながい。き、気になる……!私が読めるのはいつなんだ!

 

「─────二冊ある。作者が二人いるのでな、詳細は異なるが」

「にさつッ!?」

 

 ぽんっ!ともう1冊を手元に出したショウに私はずっこける。

 するとショウは至極当然と言った風に、片方を閉じ、先程出したもう1冊を私の元へ差し出してくる。

 

「こっちならマユも読みやすいかも知れないな。あの老人は童話が有名だ。待てよ……字はまだ完全な習得はしていないのだったな?」

「………すこしよめるし」

「ふむ。では勉強のついでに読むか。さぁ、こい」

「うわ!っておい!わたしをだきあげるな!そしてひざにおくな!」

 

 読めるのは嬉しいがなんで膝の上で読まねばならんのだ!死ね!

 

「読めない字があれば言え。教えてやる」

「…………ちっ。……これは?」

「ゆえに、だな。ふむ……怪物は名前を呼ばれた故に、奮闘した、か。……マユ」

「なんだ」

「初めから読んだ方がいいんじゃないか?」

「………………うむ」

 

 初めから読もう。

 全く……私は聖杯だぞ……アンリマユなんだぞ……知識の吸収は早くても経験の反映は遅いんだ。自我を持たないもの同士がくっついてるだけなんだぞ。

 

 字だって聖杯の知識で「聖杯戦争をする上で不自由がない程度に」は理解しているんだ。ただ、この体になったせいか、聖杯の知識を満遍なく全て取り寄せると言ったことが出来なくなってしまったらしい。

 だが、この本を見ろ。無数の英雄が登場する。小難しい単語が時折出てくる。

 聖杯の知識が刺激され、より聖杯の知識を引き出せるようになるはず!くくく、今に見ていろショウ。もう魔力は貰ってるんだからな!……呪いの方法を知らないだけで、いつか必ず呪ってやる。

 

 

 

 その後も、私は料理を作る時とトイレに行く時以外はずっと本を読んでいた。そしてショウはそんな私をずっと膝の上に乗せて字を教えてくれた。

 ……仕事がひと段落したのだろうか?恐ろしいことだ。

 

「ふんふふーん♪」

 

 それにしても、風呂と言うのはいいものだ。入った瞬間こそビリビリと痺れるような感覚があったが、慣れてしまえば心地よい。この感覚はまだ味わったことがなかったし、新鮮な気持ちだ。

 

「そうだろう?ところでマユ、どの英雄が気になった?」

「わたしか?わたしはなー、うーん、まようなー」

 

 私はまだ第1特異点とやらまでしか読めていないからな、候補は少ない。

 まぁ正直に言うなら目の前のこの男がなぜ私と一緒に風呂に入っているのかが1番気になるが……混浴と言うやつだろうか。

 

「さぁマユ、来い。頭を洗うぞ」

「む、わたしだってじぶんであらえるぞ!……たぶん、いやぜったい!」

「この国の風習だよ。一緒に風呂に入ったなら互いの体を洗い流す。その人物への労いも兼ねているし、尊敬する人物などに行う者もいる」

「ふむふむ。なるほど、ではまかせた」

 

 バンザイしろ、と言われてバンザイをすれば脇に手を入れられて持ち上げられ、ショウの膝の上に座らせられる。ショウはあの第3次聖杯戦争で見せた近接技術からして鍛えてはいるのだろうと思っていたが、なかなかの筋肉だ。お尻やももに当たる硬い感触から考えるに細マッチョと言うやつか?

 

「うぉう?」

「気にするな、シャンプーハットだ」

「……?」

「石鹸が目に入らないようにするための道具だ。そら、これでも読んでいろ」

「ほ、ほんだと!?ぬれたらたいへんだぞ!まだちょっとしかよんでない!」

「構わん。そも、濡れることはない」

「えぇ……?ほ、ほんとだ……」

 

 ショウに頭をわしゃわしゃと洗われながら、本を読む。

 若干読みづらくはあるのだが……まぁ、なんというか、頭を洗うというのは気持ちのいいものだな。

 

「……」

「ショウ?」

「なんだ」

「これはなんてよむんだ」

「しかり、だ」

「ほほう……」

 

 

 

 

 □

 

 マユちゃんと風呂なう。

 

 風呂なう……風呂なう……………………

 

 ブハッ(心の中で鼻血を噴き出す)

 

 あ、危ねぇ……マユちゃんが子供じゃなかったら確実におったてた俺の3倍のもう1振りの聖剣がガラティーンする所だった。

 何とか自分の太股に挟み納刀出来たが、今も尚ビキビキのムキムキのムケムケである。でもほら、スッポンポンのお嫁さんが目の前におって、しかもその生尻が太股にのってるとかさ、ロリコンじゃなかろうとおったてなきゃ逆に失礼というか。

 

 ね?分かるだろう。

 

 …………全く、シェイクスピアとアンデルセン君には心から感謝をしなければならないな。

 

「んしょ」

「!」

 

 はうぅ!?……馬鹿な、寄り掛かってきただと!この俺を背もたれにした……!?

 本が読みづらいのは理解出来るけどもね、密着する面積が増えすぎて……!!ガラティーンが……!!俺の太股によるアイアンメイデンを突破しようと言うのか……!

 

「マユ、洗い終わったぞ。湯船に入れ」

「うむ。なぁ、ほんもいれてへいきか?」

「あぁ」

 

 あぁ〜、危ねぇ。俺のピクリともしない圧倒的鉄仮面がなければ死ぬところだった。

 最近リホイミ使いすぎている感はあるが、ないと鼻血やべぇ。

 

「……ッ!」

「ん、どうした?」

 

 ハッ!?また侵入者!?何回来るの?誰だよ……いや、この反応の仕方だとまたカルデアか……??

 

「面倒な……また招かれざる客の様だ」

「きゃく?だれか、きたのか?」

 

 ……いやぁ……最悪だろタイミング。これは殺されても文句言えないよな?

 

 





次回!ダヴィンチ、死す!城之内スタンバイ!

……あれ?

誤字脱字コメント待ってますー!

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