魔法使い「聖杯を嫁にしたんだが冷た過ぎて辛い」   作:シフシフ

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初投稿!!!
前回の初投稿からなんと……たぶん1週間くらいかな?いやぁ、もう最新作ですよ。ふふふ、これが読み終わったら次回のシフシフの作品をお待ちください。


しかし、雑である。
2時間で仕上げろとか、担当(俺)も無茶を言うよね。執筆(俺)にだって限界はとても沢山あるんだぞ。





魔法使い「カルデア潜入。お尻が危険だったとは思わなんだ」

 ▪

 

 ショウの目が届いていない事を祈り、玄関から外に出てみればそこには2人の女性と立ち話をするショウの姿が見えた。

 

 驚いた私は声を上げてしまい、急いで隠れる。

 

 しかし、ショウ達は気付いたようで私の名を呼んだ。

 これでは逃げ出せないな、と観念して郵便ポストからショウ達を観察する。

 

 ショウは既にこちらに背を向けているため顔は見えないが、他2人はこちらを見ている。特に、私をして美人だと思わせる女性が驚いたように私を見ていた。

 

 なんだか、つい最近見たような外見だった。はて、何処だったか。そう思い返せばほんの数分前まで読んでいた本の登場人物にそっくりだった。

 

 ダヴィンチとか聞こえるし。まぁサーヴァントである事には気が付いていたが。だとするとその隣の少女は藤丸立香なる人物なのだろうか。

 なぜここに来たのだろう。……考えられるとすればショウに力を貸してほしい、などの理由だろうが……まだ1割と読めていないとは言え、流石に人理は救えたのではないのか?救えていなければ私達は自意識を持つことも無いはずだ。

 

 人理が焼却されているのならこの瞬間私達は存在しないのだから。

 

 となると、人理修復とは別の目的でここを訪れた事になる。もっと観察しなければ……

 

 耳を澄ませて会話を盗み聞きする。そして2人の行動に目を光らせる。

 むむむ……ダヴィンチちゃんとやらはショウを相手に挙動不審すぎるな……

 

 っ!

 

 ダヴィンチちゃんと呼ばれたサーヴァントを凝視していたら聖杯としての知識が刺激されたのか、情報が流れ込んでくる。

 

 なるほど。モナ・リザ、レオナルド・ダ・ヴィンチか。……むむっ!?魔法使いの友人であると周囲に話し、しかも肉体関係を迫った事もあるだと!?

 えっ?……ダヴィンチは男だったんだよな?昔からその身体ではあるまい。ま、まさかショウは……うっ!やめろアーチャー、悪かった、そうだなショウはノーマルだなはいはい。

 

 ん?なんだと?…………読み取り辛いな。複雑な感情や考えは受け取り難いようだ。

 ………………ふむ。なるほど。確かにな。一理ある。

 

 要するにショウに悪い虫がくっついて私からの心が離れてしまえば、簡単に捨てられてしまうし殺されてしまう。

 そうなればアーチャーもタダでは済まないし、ショウが目の前で他の泥棒猫に奪われるのは嫌だと。

 

 しかしどうする気だ。まさか目の前でショウに告白でもする気か?

 

 …………なるほど。確かにな……あのダヴィンチの反応は()()()()()だろう。

 つまり、奴よりもショウと親密である事を理解させれば良いわけだ。ふむふむ。私の魅惑のボディにショウがメロメロだ、とか言えばいいのか。簡単だな。

 

 では行ってこよう。

 

 てってって……

 

「なぁショ」

 

 と私がショウに近寄り話しかけるために名前を呼ぼうとすれば、アーチャーから待ったが入る。

 一体なんなんだお前は……。

 なに?ショウという名前は私とお前しか知らない物で、とても大切なものだから泥棒猫には聞かせてはダメだと?

 

 …………しかし大衆がショウの名を知ればショウを呪い殺す術も見つかるかも知れない。

 ……そんなんで死ぬわけないだと?……否定出来ない。

 確かに小さな確率に賭けるよりは堅実に着実に潜り込む方が現実的だな。

 

「まほうつかい」

「なんだ?マユ」

 

 おい、アーチャー。私の名前簡単に出されたぞ。

 ……いや、私の名前は真名では無い。となれば知られた所で大して脅威ではないのか。ぐぬぬ……なんか悔しいぞ。

 

「えっと……そのひとたちは?」

 

 ショウを足元から見上げ、小首を傾げるように尋ねる。だが私の問に答えたのは少女の方だった。

 

「あ、私はね藤丸立香っていうんだ!宜しくねマユちゃん!」

「うわっ、あ、あぁ……よ、よろしく?」

 

 まさかそっち……立香が答えるとは思っていなかった私はやや挙動不審になって安全地帯に逃れる。ショウにしがみついておけば緊急時の転移について行けるので安全なのだ。結界もあるし。

 

「あらら……かくれちゃったか」

 

 しかし、藤丸立香で確定か。ならば、聖杯の知識になかったあの英雄譚は作り物ではなく、本物ということか。ほぼ誰も知らない英雄譚だからこそ、聖杯にその知識が加わっていないのだろう。

 

「怖くないよー、ねぇねぇお父さんについて教えてくれない?」

 

 お父さん?ショウの事か?なんだ、私はショウの子供だと思われているのか。まぁ、容姿は確かに似ている。黒髪だしそう考えてもおかしくは無いな。

 

 ん、ここがチャンス?まぁ、そうだが……どちらかと言えばダヴィンチが尋ねてきた時に言った方が破壊力があるのではないか?

 

 まぁいい。お前の指示に従ってやる。ただし、私が何らかの協力を求めたら従えよアーチャー。

 納得の意を感じ、私はショウのローブを掴んだまま立香に言う。

 

「─────まほうつかいはわたしのちちおやではない。おっとだ」

「「えっ」」

 

 やや舌足らずである為か、可笑しな顔で固まる2人。ショウはどんな顔をしているだろうか。ほぼ真上に位置している為顔は読み取れない。

 

「あー………………そ、そうかー、おっとかー……どういう意味のおっとなんだろー」

「ダヴィンチちゃんが空を見上げ始めたー!」

 

 ダヴィンチは壊れたロボットのようにぎこち無い動きで空を眺める。

 ふっ。私の勝ちだな。……なに?追撃のチャンスだと?既にやるべき事はやったはずだが……純真さを前面に出してアピールだと?面倒だな……それに恥ずかしい。

 

 まぁ借り2つだと思えばいいか。

 

「おっと、というのはいせいがこんいんをむすぶことでだな」

「ストップ!やめてくれたまえ……私が死ぬ……」

「…………ふっ。わたしのかちのようだな」

「ッッッ!!!…………か、必ず振り向かせてみせるよ……!」

 

 いや、無理だろう。男だぞお前。

 アーチャーも納得している。多数決で私の勝ちだな。

 

「ざんねんだが、まほうつかいはわたしにメロメロなのだ」

「めっ、メロメロ……!?」

「そうだ。まいにちてとりあしとり『いろんなことを』おしえてくれる」

 

 料理とか文字とか、掃除とか道具の使い方とかな。

 

「くっ……!!!見損なったよ魔法使いッ……!」

 

 涙目で拳を握るダヴィンチ。いや、見損なったのはこっち側だと思うのだが?

 

「はぁ……俺は家に戻る。それと、カルデアへの招待も確かに受け取った。もてなす必要は無い。好きに見て好きに帰る。以上だ。マユ、家に帰るぞ」

 

 ショウに抱き上げられ、家に向かって歩き出す。

 私はダヴィンチ達に良く見えるようにショウにしがみつき、首元に顔を埋める。

 不思議と落ち着く匂いがした。何の匂いだろうか。本や紙のような匂いだ。逸話に似合わないな。てっきり焦げ臭かったり血の匂いでもするかと思ったが。

 

 あ、ダヴィンチと目が合った。

 まだショウを諦めないとはなかなか呆れたやつだな。

 

「………………べー」

「ッッ!!くぅ〜!!」

「あははは、可愛いなぁ。お子さんなのかな?それとも知り合いの子?」

 

 舌を出してからかったらなんだか胸がスッキリした。

 

「さて……カルデアに向かうか。ルーラ」

 

 え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※

 カルデアside

 

 バァン!とダヴィンチがホワイトボードを強く叩く。

 

「どうやったら魔法使いを落とせるか……!会議だ!」

「はいはい解散ー解散だー」

「そんなぁ!?あまりにも酷すぎるだろうホームズ!君には恋する乙女を応援しようという優しさは無いのかい!?」

「いやいや、そんなことは無いさ。君たちは魔法使いをカルデアに招く事に成功した。つまりチャンスはいくらでもあるんだ。君の魅力を魔法使いがカルデアにいる間に精一杯アピールする、僕らはそれを邪魔しない」

「爽やかな笑顔が憎たらしい」

「ははは」

 

 ダヴィンチの決心も虚しく、ホームズにホワイトボードは片付けられ、渋々集まっていた職員は各々仕事に戻っていく。

 

 だが、彼らは知らなかったのだ。

 まさか魔法使いの「もてなす必要は無い。好きに見て好きに帰る。以上だ」という言葉が文字通りであるなどと。

 

「…………ショウ」

「なんだ」

「な、なんでわたしたちにみんなきがつかないんだ?」

「透明になり気配を消しているからだ」

「そ、そうか……」

 

 そう、魔法使い達は無数の資料から得たカルデアの情報を元にルーラで接近し、その後は飛翔してカルデアに正面から侵入。

「ステルス」なる呪文を使い、完全な気配遮断と空間との調和、無色透明になり匂いも消えている。

 これを見抜ける物はこの場にはいない。かのホームズでさえ、強く疑い、探そうとしなければ見つけられないだろう。

 

「えっと……なにをしにきたんだ?」

「さてな、見に来いと言われたから見に来た」

「…………まさかもうかえるのか?」

「マユ、見たいものはあるか。そこに行こう」

「えっと、何があるんだ」

 

 魔法使いの内心はアニメの聖地を巡礼するオタク1割、マユたんカワユス6割、レオナルドにお尻狙われてたっ……!?が3割だった。

 

「シバやカルデアス……あの本に載っていた物はほぼあるだろうさ」

「えいれいたちにあえるのか!?」

「ふむ……どうだろうな。この様子を見ると座に帰ってしまった者達が殆どのように思えるが」

「くそ……みかたにつけてショウをころそうとおもったのに(小声)」

「……ふむ。ならば仮想空間の戦闘シミュレーションに彼らのデータは登録されているだろう。戦うだけの抜け殻だが、見る事は出来るだろうさ」

「むむむ……いや、いい」

 

 殺してやろうと思ったのに、と言う言葉が確りと聞こえていた耳のいい男ショウ。抱っこしてるのにそんな事言ったら聞こえるだろうに、と悲しみで前が見えなくなりそうだったがどうにか会話を繋ぐ。

 

「……なぁ、ショウ。ショウはどんなえいゆうたちとであったんだ?」

 

 マユはなんとなしにそう尋ね、返事が来なかった為にショウの顔を見る。

 そしてその顔を見て後悔した。

 

「────英雄になど俺は出会わなかった。持て囃された者、祭り上げられた者、晒された者。騙された者。そんな者達にしか俺は出会わなかった」

 

 さぁ、歩いてまわろう。

 そう言ってスタスタと目的もなく、ショウは歩き出す。抱き上げられたマユは離れる事も許されず、なされるがままに運ばれてゆく。

 

「────結局、誰もが俺を置いて逝く」

「っ!」

 

 小さく、本当に小さく呟かれた一言がマユの鼓膜を打った。

 胸が早鐘のように鳴る。言わねば、とマユを急かす。

 

「そんなことは……!!」

「あぁ、そうだ。だから、俺は…………!!」

 

 ─────君で全てを失おう。

 

 決意とは時に残酷な程に……悲壮な目を人に強いる。

 

 









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