魔法使い「聖杯を嫁にしたんだが冷た過ぎて辛い」   作:シフシフ

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あけましておめでとうございます。

新年なので新しいことに挑戦しようと考えまして……結果小説を書くことにしました!
上手くかけているか不安ですが、呼んでくれると幸いです。

新年らしく爽やかで清楚なタイトルと内容となっております^^


魔法使い「興奮すると少しでも沢山出る」

 ◽︎

 

「「「はい?」」」

 

 と困惑の声を上げた俺たち。目の前には触手。マユたんの部屋が荒らされている。よく見れば万丈も破壊されていた。

 人形師との会話を思い返すが、果たしてこんなものを作られるような会話だったか……?

 

 それとも、最高のぬいぐるみを作って欲しいが為に神代の素材や異世界の素材を渡したのが悪かったのだろうか。

 俺が所持している中でもっとも魔力に優れていたのだが……やはりぬいぐるみは布と綿で作るのが1番なのか……

 

「ま、まほうつかい……こ、これは……」

「わ、わぁお。なんて言うか……すごいサプライズだ」

 

 2人の幼女(片方はジジイ)に見上げられ、俺はどう返したら良いのか悩む。

 青崎さんは悪くないのだ。彼女は求められた最高のぬいぐるみを作ったのだから。

 目を凝らせば触手の先……と言うより根元には中々にショッキングな人形がある。腹や口、耳から綿が飛び出しており、同じくそこから大量の触手が湧き出しているようだ。

 

 俺の家に来たことによって結界等の外部的要素により人形内部で複雑に組み込まれていた素材に異変が生じこうなった……ということにしよう。うん。マユたんのこと考えてて検査忘れてたとかそんなんじゃないし。

 

「ふむ……これは──────」

 

 お?何だ触手くん。なぜ最初の獲物に俺を選んだ?

 そこはレオナルドにしとけよ!

 

「「ま、魔法使い(様)ーー!!」」

 

 あ、あひぃ!

 ……なんてことになるはずもない。服はしっかり着てるし魔術等で防備は万全。問題は……ヨダレか体液か分からないがベットベトだと言うことか。

 やっぱり俺じゃなくてレオナルドにやるべきだようん。俺は絵的にダメだがレオナルドなら映えるだろう。マユたんにやったら殺す。

 

「…………あれ?なんともなさそう」

「……いや、違う!あれは……魔術を喰らっている」

 

 え?なんかレオナルドからおそろしい言葉が飛んできたんですけど。

 え?食われてんの?俺の魔術。……呪文は使わない方がいいか。えっと……じゃあとりあえず燃やしてみ……ダメだマユたんの部屋だぞ。なら凍らせてみよう。

 

「『凍えろ』」

「────────ッ!」

 

 凍った……が、すぐさま溶けた……と言うよりも吸収された。口は攻撃用のようだ。吸収自体は全身で行うようだな。

 なるほど、この全身をまさぐるような動きも魔術を吸収するためか。

 

「が、がんばれ!」

「っ!」

 

 ま、マユたん……!!う、嬉しいっ!そんなことを言ってくれるなんて……おじさん頑張っちゃうからねっ!!

 

「そ、そうだね!頑張れ魔法「がんばれしょくしゅ!」……へ?」

 

 ……え?もしかして俺が触手に絡まれて興奮を……?や、やだ、頑張らないと……

 

「やれ!そこだ!そのいきだ!まほうつかいをぶっころせー

 !」

「マユちゃん!?応援する相手が違くないかい!?」

「あんなものをわたしのへやにもってきたまほうつかいがわるいのだ!しね!」

 

 あ、そっちね。そうだよね、ごめんねマユたん!けっこうまともな理由だったね!

 

「後で謝罪する」

 

 聞こえるかは分からないがとりあえず言っておいて……色々と魔術を試すがダメだな。

 それに自身にかけていた魔術の半分ほどが既に食われた。食うだけ強くなってるような気がしなくもない。

 

 ……もし、この触手が魔術の量や込められた魔力の多さで狙う相手を変えているのなら……そろそろマユたんに掛けた魔術の方が多くなる。急がなければ……つっても、ちぎっても生えてくるしなぁ……やはり呪文を使うしかないか……?でもこういうのって使ったらめちゃくちゃ強くなるパターンだよな……

 

「ふむ……」

「冷静に考えてる場合なのかい!?」

 

 ……マホカンタやアタカンタは「テンション」を上げることで無効化できる。

 理由はよくわからないがマホカンタなアタカンタは陰キャ呪文だから陽キャテンションには勝てないのだろう。

 

 そしてこいつは魔術に対して絶対的な防御と耐性、ついでに吸収を持っている。

 並の魔術ではどうしようもないし、中途半端に強力でも強化してしまうだけだ。

 よし、テンション上げて呪文使ってみるか(謎理論)

 

「いけー!しょくしゅー!」

「頑張れ魔法使い様ー!」

 

 問題はどうやってテンションを上げるかだ……やはり、マユたんだな。

 マユたんとの未来に思い馳せ……興奮しよう。

 

 

 

 ◼

 ショウがおぞましい触手に捕まった。

 ずきり、と心が痛むが……もしかしたらショウを倒せるかもしれない。

 

 リザが言うには魔術を食べる触手の様だ。魔法使いに対する切り札としてはお誂え向きだな。どこの誰だか知らないが魔法使いにこれを購入させた功績は素晴らしいぞ。

 

 全力で触手を応援しながら、私は部屋を素早く確認した。ぬいぐるみがそこかしこに転がっている。

 私に対する贈り物……というのはこっちの事だったのだろう。よく見れば触手の核となる部分にも熊のぬいぐるみがある。

 

 騙されたか……或いは時間差でああなるように仕組まれていたのだろう。

 それを見逃すようなショウでは無いと思っていたが……それかもっと外的な要因なのかもしれない。それこそショウが予想できないほどの。

 

「頑張れ魔法使い様ー!」

 

 隣でリザが必死に声を張り上げている。いけ好かないやつだ。嫌いだ。なんでこの家に居るんだ……。

 そんな思いしか出てこない。舌打ちしながらショウを見れば、ショウは目をつぶって抵抗せずに固まっている。

 諦めたのか、なにかするつもりなのか……

 

「───────マユ」

「っ!」

 

 な、なんでいきなり名前呼んだんだ。

 

 っ!?

 

 な、なんだ……?いきなりショウの覇気が増した……?!

 そ、それに変なオーラに包まれてるぞ……???

 

「マユ、頼みがある」

「い、いやだ!きかないぞ!」

 

 誰が助けるものか!ばか!しね!

 私に溜め込まれた魔力は私が使うのだ!!お前なんかに使うかばかめ!

 っ……!う、うるさいぞロビン!正直も正直!心の底から思ってるのだ私は!

 

「────マユ……俺じゃだめか」

「!?」

 

 うっわ!うわっ!なにそれ!なにそれ!?そんな真顔で言われてももも!?

 ま、まてまてまてまてててててて……よよよよ、よく考えろそもそま求められヘマ……!?(混乱)

 

「───マユ、愛してるぞ」

「!?!?」

 

 ひ、ひぃ……や、やめろ、き、気持ち悪ぞショウ!なな、なんなのだ、い、いきなり!?

 ゾワゾワする!鳥肌が立つわ!リザも見てるし聞いてるんだぞしね!しねしねしね!

 誰が聞くか!聞かない!きかないぞ!頼みなんか聞かない!何も話さない!

 

「あー!あー!あー!きーこーえーなーいー!」

 ─────『ならばこうしよう。直接話し掛けることにする。聞こえるな?』

「にょわぁ!?こ、こえがちょくせつ!?」

『かわいい』

「ひょぁ!?」

『マユ、いいか。この触手は不確定要素が多い。下手に呪文……魔法を使ってしまえば何が起こるか分からない』

「よ、ようすをみていればなんとなくはわかる!」

『マユ、俺を“応援”してくれないか』

「お、おうえんならリザがやってるだろ!わたしはやらない!」

『……もう少しで俺とマユに掛けられた魔術量が並ぶ。そうなればマユにも触手が襲い掛かるだろう。そうならない内に倒したい』

「そ、それは……いやだ」

『そうだろう?なら応援してくれ』

「………………」

『マユ?』

 

 魔術か、或いはほかの何かで直接話しかけてくるショウ。逃げられない声が常に耳元で聞こえてくる。

 可愛いとか言われると力が抜ける。最悪だ。

 …………でも、話していてわかった。ショウは案じていた。

 

 強力な魔術や魔法を使えば恐らく出られる。だが、そうなればリザや私は巻き込まれる。

 強力な防御を私達に施した場合は私達が狙われる可能性が出てきて……狙われたそこに一撃を叩き込んだとして……防御を食われてしまっている私達は死んでしまうだろう。

 

 私個人を案じている訳では無いのが気に食わない……いや、リザは不思議そうにこちらを見ている……つまり、この会話は私達しか分からないのか。

 

「わたしのためなのか?」

『あぁ。マユのためだ』

 

 いつの間にか尋常ではないオーラを纏っていたショウが、即答する。

 胸が鳴る。自慢げな感情が溢れてくる。ロビンがニヤけているのが伝わってくる。

 

「わ、かった……」

『ありがとう。マユ』

「とりはだがたつ、やめろ」

 

 仕方ないから言ってやるしかない。応援するだけでいいなら、やってやろうではないか。魔力は絶対に使ってやらないからな!

 私も私の部屋があの触手に占領され続けると考えると……いいものでは無いからな。

 私は言い訳もそこそこに叫ぶ。

 

「ショウ、しっかりしろ!まけるな!」

「────────!!!」

 

 途端に、覇気が吹き荒れた。

 魔力とは違う別の何か。覇気と言う表現以外にどう表すかもわからない不可思議な力。

 触手達はその勢いに耐えられず、引きちぎれ拘束が解ける。すぐさま再生するも……ショウに飛び掛るのを躊躇している様だ。

 

 

「───人は古来より、感情の昂りで奇跡を起こしてきた」

 

 

 ショウが僅かに宙に浮く。液体でドロドロだったはずの衣服はまるで新品のような輝きを失っておらずふわりと広がっている。

 

 

「マユ、見ているといい」

 

 

 そう言ってショウは掌に小さな炎を灯した。

 なんての事の無い単なる火の玉。だが、変化はここからだった。

 ショウが纏う覇気のようなものが火の玉に吸い込まれていく。私の周囲がパチッと音を立てた。防御魔術が作動しているのだ。ショウの掌の小さな炎に対して。

 横で苦悶の声がする。どうやらリザはショウから魔術を掛けてもらっていないようだ。

 

 

「───これは、高名な魔術師が使うような大魔術ではない」

 

 

 赤い火の玉が、オレンジに、黄色に、白に……色を変えていく。

 バチバチと防御魔術が悲鳴を上げている。リザの方からも魔術の気配を感じる。……恐らく、それはもう全力で防御魔術を使用しているのだろう。

 

 

「───気合い、勇気、愛情……それら心が生み出す理解困難な力」

 

 

 白に青が混じり、やがて青にかわる。……そしてそれがさらに小さく凝縮された。

 

 

「───人の感情が巻き起こす異常。唯一、人間が御せる“理不尽”」

 

 

 最早それは炎としての形を保っておらず……青い光の球としてそこにあった。

 防御魔術は反応しておらず、リザも荒い息はしているもののもう魔術を使っていない。

 

 

「───よって、これは最上級火球(メラガイアー)では無い」

 

 

 ぽ、という音と共に、光が触手に向かって飛ぶ。ゆっくりと……なんの敵意すら感じさせない暖かな光として。

 

 

 

 

「───火球(メラ)だ」

 

 

 

 

 光に触れた瞬間に、触手は消え去った。

 

 

 

 

 

 










(久しぶりすぎて辛いンゴ)

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