魔法使い「聖杯を嫁にしたんだが冷た過ぎて辛い」   作:シフシフ

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筆が勝手に……!

予想が外れて3000代をキープしているので初投稿です。

ちなみに、急いで書いたため、誤字脱字は酷そう(未確認)

しかし、このテキトー感。これを投稿した暁には確実にお気に入りが減るはず。
勝ったな(謎)










魔法使い「妻を泣かせる夫の鏡(自嘲)」

 

 肝の冷える思いだった。

 突如として内から湧き上がる激情。抑えんと力を込めた瞬間にはそれを強引に突破してアーチャーの意識が表面化したのだ。

 

 それ程までの想いだとは思わなかった。

 

 アンリマユと言う神霊が聖杯に乗り移り、アーチャーと聖杯を核に形成された脆い人格だとして、仮にも神霊だ。その精神を突破するとは……。

 他人の願いを叶えるという聖杯と、人格や意識が本来存在しない私だからこその現象なのかも知れない……アーチャーが核になっている事も大きな理由なのだと思う。

 

「…………おどろいていた?」

 

 アーチャーの声が響いた時、魔法使いは素早く振り返った。アハトがやってきた時などとは比べ物にならない程に。

 

「…………」

 

 あぁ、よく分からないな。

 なぜ、私がこのような事で悩まなければならないのか。

 

 魔法使いに手渡された服……と言うよりも魔術礼装を見る。

 

「てんのドレス……なるほど、せいはいにふさわしい」

 

 大聖杯の起動に必須な特殊礼装……これがなければ大聖杯の完全な起動は困難だろう。つまり、魔法使いの狙いは復讐では無く初めからこの天のドレスだったのだろう。

 そして、これを簡単に手に入れるために私やアーチャー、ダーニックすらも利用した。

 

 アハトは魔法使いをよく理解していたが、そこすらも計算済みだったのだろう。アハトの意識を大聖杯に向かわせ、天のドレスの警戒を解かせた。

 さらには怒ったふりをして魔力を放ち結界やその他もろもろの魔術を破壊、あとは頼み込んでくるアハトを無視してさっさとドレスを奪い帰るだけ。

 

 大聖杯が奪われてしまったとしても……魔法使いから守り通せるとは到底思えない。どれだけ防備を固めても転移されて終わりだ。

 

 ダーニックに大聖杯を奪わせて、その後天のドレスを保有している自らが横取りと言うわけだ。横取りと言うよりは正面から叩き潰すのだろうが……。

 

 私はいそいそと天のドレスを着込んで行く。

 その時だ。

 

 ガタン!

 

「ひうっ!?」

 

 と大きな音が隣の部屋から響いた。……悲鳴をあげたのは私だ。

 そろりそろりと隣の部屋を覗き込めば……ダンボールの山?

 

「なんだ、これは?」

 

 ひとまず手前にあったダンボールを開く。そこにはキッチン用品。次のは下着などの無数の服。随分と……雑多にあるな。テキトーにカゴに突っ込んで来たのだろう。……うぅ、やっぱりモノ扱いしているだろ魔法使いめ……。

 

 それに安物ばかり……大切に思ってないだろ!

 うぅ、大人ものを探してやる。アーチャーのために買ってるんだろ?!知ってるぞ私は!

 

「あれ?……んー?」

 

 あれ、無いな。どこにも無い。それどころか男物すら無いぞ。……魔法使いの事だ。地下室の方に転移させて隠すつもりだな!

 廊下を駆け、地下への扉を開けて階段を駆け下りる。……なんもない。

 

 ……うーむ?アーチャーを受肉させた後のことは考えていない?それとも……まさかな。アーチャーの受肉を考えていないはずが無い。

 まだ時期尚早という事か?

 

「──────────何をしている?」

「っーーーー!(驚き過ぎて声が出ていない)」

「ここは寒い。上に行くぞ」

「……」

 

 ……い、いつの間に後ろにいたんだ魔法使い……ビックリした。

 こんなの大聖杯守れるはず無いな……ダーニック、顔も覚えていないが可哀想な奴だ。

 

「……着替えておけ、そのドレスは些か目立つ」

「ふんっ!」

 

 貴様の話など聞くか馬鹿め。

 だが、着替えろだと?……どこかに出かけられるのか?魔法使いの選んだ服を着るなど業腹だ。自らで選べるのであればありがたいな。それに!先程ちらりと見た限りだと服のセンスは皆無だ。とりあえずフリルのついた可愛らしいものを選んでおけば良いなどと、安直にも程がある。

 

「…………俺では君の趣味が分からない。だから街に君を連れていく。理解出来たか?」

 

 やや、優しげな口調でそういう魔法使い。

 

「……わかっている」

 

 私はそっぽを向いた。……わかっているのだ。わかろうという気持ちすら無いことも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やった、やったぞ。……聖杯ちゃんとのお出かけの約束を取り付けることに成功した。

 

 ふふふふふ、プイッとそっぽを向かれてもなぁ、なんて言うかなぁ、「ツンデレ」っぽく見えて可愛いと思うんだよ……。ふふふ、ふふふ。

 

 ……変態だな、俺。聖杯ちゃんに嫌われ無いように生きなくては。

 それにしても、冬木では現在ゴスロリドレス争奪戦が始まっているせいで買い物に行けない。聖杯ちゃんにそんな血なまぐさい戦場を見せる訳には行かないのだ。

 トラウマになったら可哀想だからな。……!?……トラウマになり、夜な夜な「眠れなくて……」とか枕を抱き締めながら俺の元に……?

 

 くっ、堪えろ……!正気になれ俺!

 わざと連れて行く時点で最低だ!しかもそれでは真の意味でお互いに愛し合う的なあれではない!

 

 と思う。

 

 あぁだけど、もう少し甘えて欲しいなぁ。頼りなくてすまないな。

 

「少し休んでいろ」

「?……かいものは……いかないのか?」

 

 っ!……買い物、行きたいのか?あぁ、俺の言い方が悪かったか。いや、天のドレスとか何が起きるか分からんし、あと早くゴスロリ着てもらいたくてテキトーな理由付けをしただけなんだ。

 いや、もちろん買い物には行くぞ?だが、今ではないのだよ。

 

「……今ではない」

「……ふんっ」

 

 あああぁぁぁぁぁあ!?……機嫌を……損ね、た?

 うううぅ……天のドレス、可愛いですね……。

 

「手早く準備を整える。家具の設置だ。……外は何があるか分からん。来い」

 

 来い、俺の胸の中に(イケボ)

 

「やだ」

「……危険だぞ。いいのか?」

「ならけっかいをはれ!」

「断る」

「うぅ……」

 

 か、可愛い……天のドレスの膝あたりをギュッと握りしめながら俺を睨んでいるッ!!目覚める!新たなる扉が、開くぅ!……あ、このトビラとっくに開いてましたわ。蝶番が外れただけか、なぁんだ。

 

「っ!?」

 

 めんどいので勝手に抱き上げる俺氏。

 ……なんだ、なんだこの匂いは!!!!!!天国か!?

 

 おお、此処こそがオケアノス……。

 

「お、おろせ!そしてしね!」

「断る。では始めよう」

「バカなのか!?わたしをだいていたらなにもできないだろ!」

「そうだな」

「おろせ!」

「断る」

「!?」

 

 この柔らかくも芯のある感じ、離すわけないよな。

 天のドレス着ていてもわかるスベスベモチモチ感。離してなるものか!

 なので、えー、モシャスは怖いけど仕方なく使います。これ以外の呪文で労働力の作り方知らんし。

 

 抱き上げたまま階段を上がり、一階へ。そこには立ち並ぶ5体のマネキン。まだ照明無いから怖いね。うん。

 

「ひっ?!……マネキン?」

「あぁ」

 

 あぁ……可愛い……癒される。そして恐がらせた、悪いな。

 さてと、人数を無駄に増やすと大変だ。なので1体1体がこういった引越し作業的な事が出来ると嬉しい。

 

 モシャスでマネキンを変化させる対象は─────

 

「いったい、なにをするきだ?」

「モシャス。さぁ、俺の為に働くがいい──────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────魔王の使いよ」

 

 

 その変化は劇的だった。無機物であるはずのマネキンが()()()。その表面がボコリと盛り上がり、ねじ曲がりその姿を変貌させて行く。

 

 そして、その変化の瞬間から沸いて出るおぞましき気配。明らかなる邪悪の気配だ。

 

「っ!……は、っ!」

 

 その気配に当てられて私の体が震え始めた。

 怖い、恐ろしい。勝てるはずがない。私は無力だ。余りにも無力なのだ。権能も能力も何もかも封じられ、出来ることなど何も無い。

 

 蠢く肉塊はその形を変えていき、牙を持つ顔となる。

 筋骨隆々、顔すらも筋肉に覆われているのでは、と思うほどに厳つい顔だ。その頭は頑丈そうなヘルムに守られ、胴体も同様だ。

 

 しかし、最も特異的な場所は……その腕だ。

 左右対称に二本づつ。計4本の腕にそれぞれ別々の武器を持っている。

 アレらが振り回されればどのような戦士であれ致命傷を逃れることは出来ないだろう。

 なるほど、確かに「魔王の使い」に相応しい。

 

「─────────」

「……へっ?」

 

 しかし、そんな恐ろしい戦士達は一斉にそのギラつく武器を仕舞い、膝をつき頭を垂れた。

 他ならぬ魔法使いに向かって。

 

「後ろにある荷物を俺達が生活しやすいように並べろ。お前達の独断と偏見で構わん」

「───!」

「もういい、やれ」

 

 頭を垂れながら了承の意を示し、動かずに待っていた魔王の使いに魔法使いは顎で指示していた。

 

「───────はぁ!?」

 

 私がこんな声を出したのも仕方の無いことだろう。あんな化け物共5体に頼むことが家の模様替えだと!?巫山戯ているのか!?

 沢山手があるからとかそんな理由なのかまさか!?違うよな、違うと言ってくれ魔法使い!!

 

「……ん?どうかしたか」

「な、な……なんでも、ない……」

「そうか」

 

 ……そうか、此奴はこんな化け物を簡単に従えるような存在なのか……この魔王の使い1体でも並のサーヴァントは苦戦を強いられ、近接攻撃しか出来ないのであればほぼ確実に負けるだろう。宝具などにもよるだろうが……

 

「……怖かったか?」

「……」プイッ

 

 ……脅しか。そうなんだろう?魔法使いよ。逃げたら何が追ってくるか、分かるだろうと言いたいのだろう?

 ……逃げられるものか、まるで監獄だ。いや……地獄か?

 

 私は自らが落ち込んでいるのを自覚している。

 どうせ、魔法使いは鼻で笑いながらどこかに向かうだろう。そう考えていた。だが、今回は少しだけ違ったのだ。

 

「それは……すまなかったな」

「ぇ?」

 

 思わず見上げれば、魔法使いは少しだけ困ったような顔をしているように見えた。真下から見上げたため、正確かはわからないが……少なくとも私にはそう見えた。

 

「……さて、中に居ては邪魔だろう。少し外に出よう」

「ぁ……や、やだ……」

 

 余りにも珍しく見えたから、私はボケーっと見つめていた。魔法使いの声にはっとして私は魔法使いの提案を蹴る。だが、魔法使いは私の声を無視して歩き出す。

 

「……俺は君の事を何も知らない。……それは君も同様だろう」

 

 扉が開いた。眩い光が私の目を閉じさせ、吹きすさぶ風が私の熱を奪う。

 風から私を(アーチャー)守るようにそっと、魔法使いの抱きしめる力が強まる。

 

「だから、語らおう。もうすぐ陽は落ち始める」

 

 あぁ、嫌だ。お前は、やっぱり私を見てはいないんだ。

 お前の言う「君」がアーチャーであることなど、とうに気付いているのだ!

 

「────俺は、君の事が知りたい」

「っ」

 

 そう言う魔法使いの顔が、笑っているように見えた。

 

 胸が跳ねる。

 アーチャーのでは無く、私の胸が。

 聖杯の強制力はやはり恐ろしい。

 

「わ、わたしは……しりたくなど……ない。きさまなど、しねばいいんだ……!」

 

 あぁ、何故……涙が溢れ出す……?

 

 魔法使いが求めているのはアーチャーだ。私の中のロビンフッドなんだ。

 

 この言葉が、私に向けられることなど、無いのだ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ま、不味いぞ!泣かせてしまった!!魔王の使いはやっぱり怖すぎたか!?

 うーん、いい性能なんだがなぁ……。

 

 後で謝ろう!ごめんね聖杯ちゃんっ!!







スマホを替えたら色々と変わってめちゃくちゃ戸惑ってます。改行とかが変だったりするかもです。はい。
許してヒヤシンス。


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