魔法使い「聖杯を嫁にしたんだが冷た過ぎて辛い」 作:シフシフ
新しい年なので初投稿ですね。
ちなみに。話しはすすみません。(謝罪と進まない事を同時に報告する爆笑ワード)
それと今回も超特急で仕上げたのです(行事が多くてかけなかった)
誤字脱字の報告待ってます。あとあれです、なんか今回やけっぱち感が……面白くなかったらお気に入りを消したあと「消してやったぜ」とコメントをすると作者はハーメルンをそっ閉じして部屋に引きこもりゲームをします。
ほかのコメントをしたり、高評価を付けたりすると、作者はハーメルンをそっ閉じして部屋に引きこもり満足感に浸ります(おい)
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太陽が西へと傾いていく。
扉の先は先程家に入った時とは全く違う景色だった。
花畑の広がる丘では無い。深い深い森の中だ。熱帯雨林なのだろうか、木の枝から地面まで伸びる苔や大きな葉っぱも確認できる。
「うぅ……ここは?どこなのだ?」
「知らん。人のいない所に転移しただけだ」
お、お前には聞いていない!まったく……。
それにしても聞かれては困る話でもする気なのだろうか。魔法使いは知らないと言いながら森の中を進む。その足取りに迷いは無い。確実にどこかへ向かっていた。
「君は……聞きたくないのだったか」
「……ふん」
魔法使いの低い落ち着いた声が私にそう問いかける。私はそっぽを向くことでそれに応えた。
聞きたくはないが、何であれ魔法使いの情報を得るチャンスではある。
しかし、素直に聴くのは癪に障る。腹立たしい。なので腕を組んで目も閉じる。聞く気は無いと態度で表すのだ。
……魔法使いの腕の中で、という辺りが何とも格好が付かないな。
……なかなか話さないぞ?
と片目を開き確認をしたら目が合った。日が傾いたせいか真っ黒に見える瞳に吸い込まれそうになる。
「っ!」
私は急いで目を閉じる。
心臓がバクバクと嫌な音を立てていた。もしや殺されたり……するかもしれない。
「聞きたいようだな?」
「ち、ちがっ」
「……そうだな。質問をしてくれないか?俺はそれに答えよう。まずは君から俺に、そしてそれが終ったら俺から君に質問をしよう」
「……すこし、まて」
「あぁ」
し、質問?沢山知るチャンスだと思っていたが、てっきり一人語りでもしてくれるものだと……うーん、絞り出すなら……沢山ありすぎて何処から聞けば良いか……。
ま、まずは特別大きな疑問からぶつけてやろう。
「────どうやって、まほうつかいになったんだ?」
私がそう聞くと魔法使いは思案顔になり少し上を向いた。
どこか遠い過去を思い浮かべているのかもしれない。少しだけ、顔の筋肉が引きつったように見えた。
チャンスだ。畳み掛けて弱点を探すのだ!ふっふっふ、心の弱みにつけ込んで身の安全を確保するのだ。
「いったいなにをぎせいにしたんだ?どれだけのものをすててきたんだ?どんなものをだいしょうにそのちからをえたんだ?」
「……」
よし!いいぞ!……あ、あれ……これって下手すれば怒られて殺されるのでは……い、いや気にするな!どうせなら赤っ恥をかかせるとかなんかして復讐してからだ!
「……その問いに対し着飾らず最も簡潔に答えるとすれば────」
「すれば?」
魔法使いがこちらを見た。いつもの様に、私の目を真っ直ぐに見つめている。言いたくないことを言う、そんな雰囲気が無表情からも伝わって来る気がする。
不思議な緊張が私の内側から湧き上がる。アーチャーだろう。アーチャーは魔法使いが無辜の民達を救う英雄で、上に立つに相応しい人物であると信じている。
つまり、彼女にとってこの問いは意味のあるものなのだ。
暗き深淵に手を伸ばす為には灯火がいる。その深淵を歩いて行くというのなら、尚更に。
その灯火は魔力であったり、感情であったり────他人であったりする。
根源へ至る為には何らかの犠牲は付き物だ。何かを失わずして新たなるものを得るなど類人猿には不可能なこと。
アーチャーが不安に思っているのは魔法使いが「魔術師らしい」か否か、だ。力を得る為にはどんな事でもして来たのか、それとも違うのか。
どうか、違ってほしい。そんな想いが私に伝わってくる。
「俺は……“何も捨てる事が出来なかった”」
「!?」
「どうしても捨てたい“もの”があった。どんな手を使ってでも失いたい“もの”があった」
……また、見たことの無い顔をした。
悔やむような、自分に呆れたような不思議な顔。茜色の光に当てられ明暗が分けられ、そのように見えるのやも知れない。
だが……私とアーチャーは確かに「魔法使いが後悔をしている」とそう感じたのだ。
「だが、俺には勇気が無かった。それを失うために必要な行為を……行う事がどうしても出来なかったのだ」
何も失わず、魔法使いになる。
その言葉の重さ、それを私達は理解出来ない。聖杯を使って根源に至るにしたって無数の犠牲の上に成り立つのだ。
懸命に研究に励み、何らかの方法で至ろうとも、結果的に何かを失うのだ。
もしも、魔法使いが言うように「何も失わない」という条件で根源を目指せ、などと言われたらほぼ全ての魔術師は匙を投げるだろう。
魔術師そのものが先達の犠牲の元に成り立っているのだから。
「おまえは、なにもうしなわずに……ここに?」
「楽な方法など他にもあった。横道に逸れて解決する事だって出来た。道はいくらでもあった。だが、俺は何も選ばず真っ直ぐに進んだ」
……分からないな。また、魔法使いがわからなくなってしまった。聞けば聞くほどわけが分からん。知れば知るほど理解が追い付かない。
感情を失った訳ではないのも、先程の表情でわかった。
こいつは……本当に何も失っていないのか……?
何も失わずに根源に辿り着いたと?
「それが──────失わざる者、即ち魔法使いだ」
「わふっ。あ、あたまをなでるな!」
茶化して逃れる気だな!質問攻めにしてくれるわ!
「まほうつかい、おまえのしそんはいるのか?」
「……いや、居ない」
やはり居ないか。まぁ、聖杯から遡って座の記録を見ると、数千年前の歴史にもこの魔法使いらしい人物が登場しているし、長寿なのだろうが……作らなかったのか。
「じゃあ、かぞくは?」
「君だけだ」
「なっ!〜〜〜〜!!」
突然跳ね上がる心臓。硬直する体。目が魔法使いから離れない。
おお、おちおちおちつけ私。すぅー、はぁー。よし。
アーチャーめ、おめでとうと言ってやる。そして嬉しそうな感情を垂れ流して私を混乱させるな!びっくりするだろ!!祝ってやるから落ち着けそして魔法使いは死ね!貴様のせいだぞ!
あぁ顔が赤い!熱い!恥ずかしい!
だが、夕陽のおかげでバレてはいないな。私が魔法使いに赤面など考えたくもない!
うぅ……聖杯の影響力とアーチャーの感情の暴力が辛い。
「で、でしは?」
「生きているのは1人だな」
おぉ?弟子をとっていたのか。何も失わない為に外界との交流をやめたとばかり思っていた。あぁ、それも世俗を捨てることになるのか。……だが積極的に世俗に関わるような性格でもあるまい。自らの手の届くところ全てを助けようとした……という訳でも無いだろうさ。
……一体何を失いたかったんだ。物か?人物か?わからん。
「えーっと……つぎは……いまなんさいだ?」
「わからん。……数えるのをやめたのは1200歳あたりか」
「……な、ながいきだな」
やはり、色々な物語にでてくるのはこいつで間違いないようだな。
「アーサーおうもしっているのか?」
「あぁ。男装が下手な奴だった」
「ん?……まぁいい。マーリンはしっているか?」
「奴は気に食わんな。ほいほい街に繰り出しては女遊びを……君が知るべきことではなかったか、忘れろ」
むむむむ……謎が深まる。
アーサー王伝説では……魔法使いはマーリンに連れてこられて王に紹介されその実力をピクト人相手に遺憾無く発揮するし、ブリテンの食卓事情を軽く改善した。
いざブリテンを去ろうという時、アーサー王の「ブリテンを助けたい。どうすれば良いか」という問いに対して「踏み止まり足掻くも良し。お前の好きにしろ」と冷たく突き放したとされている……らしい。
確かに、魔法使いは私に優しくない。分かるぞブリテン。お前達の気持ちが。
「物語に出て来る魔法使いで黒髪の男は大体が俺だ。まぁ半分以上はフィクションだがな」
「そうなのか……すごい(小声)」
なんか凄いとか言ってしまったのだが……アーチャー、やめろそう言うの。おまえは核として働け。爆発はするんじゃない。お前の感情が荒ぶるとこちらの表層にまで出てくるんだぞ……。
「凄くなど無い。巻き込まれただけだ」
うわ聞こえてた!?
「しね」
「死なん」
確かに死ななそうだ。
はぁ、どうすればいいんだ私は。魔法使いはいずれ準備が整い次第、私という意識を殺しロビンフッドにするつもりなのだろうが……はぁ死にたくない等の考えも聖杯に植え付けられたのだろうか。
魔法使いに従う?それはとても嫌だ。なら……私が魔法使いを従わせたい訳だが……無理だろうなぁ。無理は承知で何か頼んでみるか?それで気持ちよく応えてくれるようなら何とかなるかも知れん。
はっ!
そうか、魔法使いは失いたいものを失えなかった。
その失いたいもの、というのが何か……私は分かってしまった気がする。
この男は無表情だ。冷酷で氷のようだ。だが、殺意は放つし、先程のように表情を変える事もある。人間としての性を持ちながら長く生きるもの達は総じて「感情」に苦しむのだ。
友人、知人、家族などは死んでいくのに、自らは生き続ける。永遠に続く別れに心を壊してしまうものも多い……はずだ!
魔法使いは不老不死なのかもしれないが、感情を捨てられなかったから大切だと認識してしまったものを切り捨てる選択肢を取れなかったのでは無いか?
ふふふ、合ってそうな予感がするぞ。なぁ、アーチャー。
……同意の感情を感じるぞ。合ってそうだな。
つまり、大切なものだと認識さえさせてしまえば私の勝ち!その後はポイして逃走だな。
「…………な、なぁ」
「なんだ?」
…………んー!?なんだ!なんだか言葉がつっかえるぞ。邪魔すぎないかこの感情達。
私は演技をしてスムーズに進めたいのだ。恥じらい等捨てろ!
「そ、その……」
くぅっ……!顔がぁ、顔が熱いぃ……
うぅ、こっちを見るな魔法使い。そっぽ向け。というか私を抱いて歩いているなら前をむけ!!危ないだろ!
「ま、まえをむいてあるかなくていいのか?あぶないぞ」
んにゃぁぁあ!?違う、そうじゃない!もう私は何を言っているんだバカ!
ぐぬぬぬ……この体になってまだ数時間だ、なかなか制御が効かん!これも魔法使いの策略なのか!?
「……そうだな。前を向くとしよう」
……ん?なんか、あれだな。雰囲気が元に戻ったぞ。
あれ、もしかして私の今の言葉、励ましと捕えられたのでは?
……あぁ、最悪だ。いや、大切な者として認識されたい、という目的には一応沿っているが……私の個人的な感情で言うなら最悪だ。何が嬉しくて自分をゴミスペックな器に閉じ込めた奴を励まさなくちゃ行けないのか。
「はげましてないぞ」
「あぁ」
「……なんかうれしそうにみえるのだが、はげましてないからな」
「わかっている」
ぐぬぬ……。アーチャーまで喜んでいる。巫山戯るな、私だけいつも置いてきぼりじゃないか……
「はぁ……どこにむかっているんだ?」
「……旅の祠、という魔術礼装だ」
「まじゅちゅ、まじゅちゅっ!……ま、じゅ、つ!……れいそう?」
「魔術礼装だ」
「まだはつおんがにがてなのだ!しねっ!」
「死なん。発音については少しづつ学べ。焦る必要は無い」
死ね魔法使い死ね。
こんな体にするとか、本当に呪ってやる。いつか必ず殺す。貴様の考えなど読めているのだぞ。
それにしても旅の祠か。大掛かりな魔術礼装なのだろうな。このような場所に隠すとは。
「で、そのたびのほこらというのはどんなものなんだ?」
「簡潔に述べるなら、俺が使うルーラと言う魔法の範囲を限定し、代わりに永続的に発動するようにしたものだ」
「ふむ」
「まぁ、使えばわかるだろう」
……なんか、軽く言ってるがとてつもなくすごい事なんだぞソレ。
自身の工房内ならいざ知らず、こんな遠いところ……いや、どの程度離れているのかは知らないけども。
とにかく遠いところからの擬似転移はとにかく魔力がかかる上に不安定なのだ。魔法使いの転移は安定しているのだろうか……嫌だぞ、頭だけ飛ぶとか。
「見えてきた」
「どれだ?」
「あれだな」
おっとと、少し持ち上げられた。
ふむ、良く見えるな。んー、パルテノン神殿みたいな……古代ギリシャの建物みたいだな。周りの風景とミスマッチ過ぎないか?……熱帯雨林にある癖に苔どころかシダとかもくっ付いてない、まるで新品だ。
「なぁ、まほうつかい」
「なんだ」
「あれはどこにつながっているんだ?」
「家だ」
「わたしたちの?」
「……………………あぁ」
ふーむ。つまり軽い散歩だったと。……まぁ、私と会話するために……アーチャーと、だったな。うむ。……うむ?そう言えば魔法使いから質問なんてされてないぞ?どういう事だ……私のあとは質問をしてくるんじゃなかったのか?
まさか嵌められたのか!?自分は聞かない気か!ずるいぞ!って、そうか……私はまだ生後数時間、語るものなど大して無かったから聞かなかったのか。
「……認めてくれるのだな」
「む?」
「君は意識をしていなかったかも知れないが────」
な、なんだ?私は何か言ったか??
「今、君は“私達の家”と言ったぞ。まぁ事実その通りなのだから、君からすれば当然なのかもしれないがな」
「ッ────!!しねっっ!」プシュー
ひ、ひっ、卑怯者ッッ!!
なぜ蒸し返した!?私自身が気がついて無かったんだぞ?!そういうときは無視をしろ馬鹿め!!
ああああぁ!嫌だ、いやだいやだ!聖杯とアーチャーのせいだ!死ね死ね死ね!
魔法使いが近いと顔が赤くなるのも!心臓がうるさくなるのも!やけに落ち着かないのも!
ぜえぇええええええんぶ!聖杯とアーチャーのせいだっ!
バカバカバカ!
「顔が赤いぞ……やはり、裸で放置した時間が長過ぎたか……」
「ひうっ────!?」
か!かかかかか、顔が近いんだお前はいつも!おでこをくっつけるな!手でわかるだろう!?あぁ今抱っこされてるから無理なのか……じゃなくて!?どけっ!!ぐぬぬぬ……力が足りない!押し退けられない!
「……力も上手く入らないか、これは不味いな。早く祠で家に戻ろう。そうすれば準備が整っているはずだ」
「ち、ちがっ……ぅ……」プルプル
うぁぁぁあ!もう地上いやだぁー!魔法使いの馬鹿!生き地獄だ!生殺しだ!全然私に興味ない癖に変に優しくするな!
女心で遊ぶなぁ!!!
恐らく読者はこんな事を考えているのでは?という作者が妄想したやつの下から四番目くらいのやつを発表。ネタバレしてもいい場所、的なやつです。なるほどーくらいに思ってくださいね。
Q、なんで嫁パンチを避けるの?当たった方が可愛い成分貰えて魔法使い嬉しいんじゃないの?
A、魔法使いは全力で嫁の攻撃を回避しなくてはならないのだ。
ヒント:反射魔法。
強いと言うののは、童貞というのはいつでも孤独という事(彼女無し)
コメント待ってますー。新年初コメントはだれなのか!?