魔法使い「聖杯を嫁にしたんだが冷た過ぎて辛い」   作:シフシフ

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引越しとモンハンワールドが重なっていた為、小説投稿はおろか、執筆すら出来ていなかったぜ。
モンハンワールドも名前はシフシフでやってます。ヴァルハザクの装備がかっこよくて強くて好き。
でもテオ・テスカトルに火耐性-20で挑んだのは慢心のしすぎだなと自分でも思った。2乙した。

というわけで新居に腰を落ち着けたので初投稿です。

タイトルが全て。

あと、魔法使い視点に入る際は「◻」、嫁視点に入る際は「◼」、第三者視点に入る際は「✳」となってる気がします。


PS。
ジャンヌと邪ンヌとセラ様が私のカルデアに来ました。無課金勢の割りに星五持ってる数はそこそこ。
でも私のカルデアはバーサーカーがメインなのです。フォーリナーが来ようともヘラクレス無双は終わらせねぇ!






魔法使い「聖杯ちゃん熱を出す。俺は鼻血を出す」

 想定外な事態に見舞われてしまった。

 まさか聖杯ちゃんが風邪をひいてしまうとは。フバーハは実際には体を温めたり冷やしたりする呪文では無い。

 寒さや暑さに強くなるだけ……と言うよりも一時的に凌げるに過ぎない。無効化では無いのだ。

 

 だと言うのに自分は平気だからと過信して聖杯ちゃんの肉体面を考慮しきれていなかった。俺の落ち度だ。

 

「ま、まって、はしるなっ!」

 

 聖杯ちゃんを抱いたまま祠に飛ぶ。

 何故か、単純な話だ。……これ以上のチャンスはなかなか来ない!

 

 風邪で弱った聖杯ちゃんの看病……勝ったなッッ!

 

 と言うのが半分、俺のせいだと罪悪感に心が押し潰されそうなのが半分だ。

 もう魔王の使い達が家の支度を終えているだろう。流石に食材の調達は無理だろうから適当に俺が買ってこよう。あの外見で買い物はダメだろうな、聖杯ちゃんの反応からしても。いや、マヌーサを街全体にかければいけるか……。

 

「とまれ!ゆらすな!」

「断る。そして話すな、舌を噛むぞ」

 

 一応言うが、一切揺らしてなどいないぞ?トベルーラにより飛翔しているため、揺れることは無い。揺れていると感じているのは聖杯ちゃんが暴れているからだ。俺のせいじゃない。

 

 階段をガン無視して祠の内部へ。

 

「おや、魔法使い様?随分とお急ぎの様で……あぁ、使用するのですね」

「あぁ、りゅうおうよ。この少女の登録を頼む」

「えぇ。お任せ下さい」

 

 ここに居たのか……黒バナナ。お前ここの担当だったか?……ローテーション組んだんだったか?悪いな、忘れていた。

 

「えっいまのだr」

「目を瞑れ」

 

 

 祠に飛び込み帰宅する。

 地下室だ。特に置くものもないし、なんかこう秘密の抜け道っぽいからと言う理由で設けた。

 しかし?木箱が新たに増えている。魔王の使い達がここに配置したのだろう。軽く魔術で調べた所、日用雑貨の予備や保存期間の長い食料……防災用品のようだ。

 

 ルーラの使える俺が何故旅の祠なんてものを作ったかと言うと……金儲けの為だ。

 ルーラはとても便利だが、この世界でルーラを使えるのは俺だけ。転移と言う行為自体が非常に珍しいのだから仕方ない。

 

 そこで機械などが嫌いな古風な考えの魔術師達を相手にこの祠による高速移動を提供しているのだ。

 古風な考えを持たない魔術師達も使っていたりするが。

 

 そもそも旅の祠はドラクエに出てくるアレを俺が再現したものだ。バシルーラを自分に使ってランダムワープをして旅をしていた頃、その着地地点に作っていた。この地球上に相当な数があるだろう。何せ数千年の旅だったのだから。

 

 龍脈が強いところだったり、人類未踏の地であったり神秘に溢れていた場所ばかりだ。逆に言えば街などの人の多い場所には少ない。

 人払いはもちろん、その他に対する警戒も十分だ。

 

 この神殿では俺とその近辺の人物しか通常立ち入ることは許されていない。

 転移門の維持の為には()()の魔力が必要なんだが、近寄ると魔力を持っていかれる。俺からしたら誤差すら感じない程度なのだが……魔力が0になると死んだり気絶したりする。処理は面倒なのだ。

 今回は聖杯ちゃんを神殿化した祠に「俺の近辺の人物」として登録し、仮に1人でここに来ても使えるようにしようとしたのだ。

 

 旅の祠を利用する魔術師達は登録など済ませてはいない。使用する際は予め俺に連絡を寄越してもらい場所を指定し、大量の触媒と金を持ってこさせる。

 触媒の魔力が優先して吸われる為、触媒の魔力が持つ間に祠に飛び込む必要があるが、命には関わらない

 

 ……金がかかる?割と人気なんだぞ。他にも俺が確保した肥沃な土地を使わせてあげる……まぁ土地貸しだな。それも莫大な利益を生んでいる。俺は何もしなくても金が手に入るのだ。使わないけどな、普段。

 それで経済が麻痺しても困るので弟子に押し付けている。可哀想な奴だ。今も家の教訓と現状を比べ断るべきか?とか悩んでいるだろう。それでも俺が莫大な資産を持つことに変わりは無い。

 

「……うぅ」

 

 っ、思考がそれた。聖杯ちゃんが俺の腕の中で辛そうに震えている。顔も赤いしやや呼吸も荒い。……はぁ、初めは「ぉ?デレた?」とか思っていたが……こっそり魔術で調べて普通に風邪を引いていた。

 忘れているかもしれないが、聖杯ちゃんは生後数時間、赤子も同然なのだ。下手を打てば病死なんて事も有り得なくは無い。

 

 ……キアリーと言う手もある。しかし、呪文で治した場合は耐性が付かない。きれいさっぱり治してしまうからな。

 

「辛いか?」

「ふんっ」

 

 顔を俺から背けながらも若干元気が無さそうな聖杯ちゃん。必死な抵抗が可愛い。……俺は鬼畜か?馬鹿なのか?すぐさま体を温めてやって栄養のある食事を取らせなくてはならないと言うのに。

 

「今から部屋に向かう。少し我慢しろ」

「……」

 

 階段を上がり1階へ。部屋は2階だが、魔王の使い達が1階で待っているだろう。

 そう思い1階に上がれば予想通りに魔王の使い達は玄関ホールに揃っていた。しかし、片膝をついて()()()の方を向いているのは面白いな。

 俺達が地下から帰ってくるとは思わなかったんだろう。

 

「──────魔王の使」

「──────ッ!」

 

 俺が後ろから声を掛けると、魔王の使い達は即座に反転しその二対の腕にいつの間にやら抜き放った4種の武器を振り切った。

 合計にして20の腕が()()()()()()()()()()()()。斬撃、打撃、刺突の嵐が巻き起こる。5体が同時に攻撃を放とうものならば互いの体が邪魔をして満足な攻撃は出来ないだろう。しかし、そこは魔王の使い。見事な腕裁きで特技を繰り出してきた。

 

「────アストロン!」

 

 そこで俺は俺以外の周囲のもの全てにアストロンを展開する。当然、魔王の使い達にもだ。

 何故って?そんなの簡単だ。まだ礼を言っていない。

 

 もはや何本なのかも分からない剣閃が俺に当た───る前に何かにぶつかり、その全ての物理エネルギーは魔力弾に変換され放たれる。

 最低で20発、複数回攻撃特技が無数にあったため反射も無数だ。もしもアストロンを使っていなければ夢のラブラブマイホームは即座に木っ端微塵だっただろう。

 

 武器がアタックカンタにぶつかり甲高い音を立て、反射された魔力弾がアストロンにぶつかり破裂音を巻き起こす。……まぁ俺以外はアストロンに守られている以上、音は聞こえていないだろうが。

 

「………………へっ?」

 

 聖杯ちゃんが間抜けな声を出した。可愛すぎる抱き締めたい。

 

「ウガ?」

 

 魔王の使いが間抜けな声を出した。嫁に傷を付けたら殺す。いや、付けそうだったし殺すか。……なんてな。今はそれどころではない。

 

「熱烈な出迎え、感謝する。……どうやら仕事はこなしたようだな?ご苦労、外で待っていろ」

 

 何やら必死に弁明を行っている魔王の使い達を無視して2階へ。聖杯ちゃんは目をまん丸にしたままフリーズしている。なにこれ……お持ち帰りしよう。……してたわ。

 

「……はっ!い、いまなにが!?」

 

 ……!!!!!!!!

 …………つ、強めにしがみついてっ……!不味い!ホイミ!鼻血ホイミだ!!

 

 あっぶない……!鼻血を出したら聖杯ちゃんにかかってしまう。それはいけない事だ。血で彩られるのはまだ未来の話なのだから。

 

「まほうつかいこたえろ!いまのはなんだ!てきたいしているのか!」

 

 おうふ、顔が近いですよお嬢さん(鼻血ホイミ)。ダメだこれ、リホイミをかけておこう。鼻血リホイミだわ、

 胸ぐらを掴んでゆすろうとしているのだが、自分が揺れている。俺は揺れていない。可愛い。

 

「まさか君は……誰も居ないはずの地下から現れた人物を即座に信用するのか?」

「はぁ?だとしてもやりすぎだ!しぬぞ!」

「死なん」

「おまえじゃない!わ・た・し・がっ!」

「……何故君が?」

 

 俺がそう尋ねると、聖杯ちゃんはきょとんとした顔をした。その顔にはありありと「何言ってんだ」と書かれている。

 

「俺は君の夫だ。君は俺の家族だ。……死なせる訳ないだろう?」

 

 フッ。かっこいいな俺。今の俺はかっこよかった。

 ……ん?聖杯ちゃんがジト目になってしまったぞ。可愛いが、なにか不満があるんだろう。

 

「何か不満が?」

「とうぜんだろ」

「そうか。部屋に着いたぞ」

「ぇぇ……きらい」

 

 部屋に着いた。何か聖杯ちゃんが言っていた気がするが俺はナニモキコエナカッタ。嫌われて等いない。絶対。

 扉を開けたそこはシンプルな部屋だった。ぬいぐるみ等は購入していないし、小物も買っていない。

 

 必要最低限の家具が設置されただけの部屋だった。

 

「こざっぱり」

「後に色も付くだろう。簡素なのは今だけだ」

 

 さて、お粥でも作ってやろう。腕によりをかけて全力のフルコースで胃袋を掴むつもりでいたが、よく考えたら初めて食事をするのだ。いきなり旨いものと言うのも舌がバカになる。

 初めは質素に、そこから徐々に美味しくしていこう。

 

 聖杯ちゃんも美味しくしていきたい(願望)

 

 ベッドに近寄り、魔術で掛け布団を退けて聖杯ちゃんを優しく寝かせる。掛け布団は何時でも聖杯ちゃんが掛けられるように聖杯ちゃんの足元にセット。そしてパジャマをテキトーに選別し聖杯ちゃんに渡す。

 

「……これは?」

「それを着て眠っておけ」

「………………」

「俺は君の食事を作ってくる」

 

 俺は部屋を後にし、扉を閉めて─────────扉に耳を押し当てる。

 ふふふ、盗み聞きだ。

 

「────やさしかった」

 

 おおおぉ、うむうむ!そうだそ聖杯ちゃん。俺は優しい。

 

「────だが、どうせうそだ」

 

 ……馬鹿な、まさか俺がただのド変態だとバレているのか……?やはり胸などを触ったのが悪かったのか?お姫様抱っこの時にさりげなく揉んでいたのがバレたのか!?

 

 く、くぅううう。仕方ない、盗み聞きは終わりにしてお粥を作ろう。

 

 

 

 

 

 ◼

 

 

 私は今、ベッドの中に居る。

 新品のふわふわの毛布などに包まれ、体がホカホカしているのだ。最早ここから抜け出そうなどとは思えない。魔法使いが居なくなった後、暫くして鍵を掛けに行ったので、奴が入ってくることは無い……と思いたい。流石に、奴もノック無しに入って来る事は無いだろう。

 

 あぁ……あったかい。

 頭がぼーっとするような感覚で、波に揺られるような緩やかな眠気。魔法使いは私が風邪を引いていると言っていたが、そんな訳が無い。

 仮にも神霊だ。更には聖杯と英霊を核にした超神秘的な存在なのだ。風邪なんて引くか馬鹿め!

 

「へっくち」

 

 むむむ?

 暖かいのに、くしゃみが出た。……まさか、魔法使いめ不良品を掴まされたか?それとも新品だから細かい毛などが落ちていないのかもしれない。ぐぬぬ、安眠妨害反対!まだ寝たことないがな!

 

 ん?何やらおでこが暖かい。とてもポカポカで……少しゴツゴツしている。そう、まるで……人体のような暖かさ……で!?

 

「─────大丈夫か?」

「っ!なっ……!なななはなな?!」

 

 ま、魔法使い!なんで中にいるんだ貴様は!鍵は閉めたぞ!?ってドア開いてないし!?……転移か、お前は転移なんて馬鹿みたいに魔力を消費しそうな魔法をポンポコ連打しているのか?!家の中のこの狭い範囲でか!?

 

 いや待て、そもそもここはやつの工房なのでは?それならばほぼ無制限に転移も可能なはず。

 ぐぬぬ……なぜその程度の可能性に行き着かなかったのだ私は……!!!まさか本当に風邪なのか?知識で知っていても体験などした事がないからな……。

 

「って!さわるなっ!」

 

 私の額に当たる手を弾く。……というか叩いたら除けてくれた。力が無さすぎて悲しい。

 

「粥の準備が出来た。リビングで食事を取りたいところだが、君を動かすのは酷だと思ったのでな。さぁ楽な姿勢になれ」

「かぜなんてひいてない」

「口を開けろ」

「じぶんでたべれる!」

 

 馬鹿なことをいう魔法使いから私専用の?小さな鍋をふんだくる。……重い。「む」などと変な声を上げな魔法使い。

 全く私を子供扱いする……な……?

 

「あっつい?!」

「おっと」

 

 私が放り投げた鍋を魔法使いは片手で上手く捕らえ、吹き飛んだ中身を見事に受け取って見せた。

 が、私の手は真っ赤になってしまっている。完全に火傷だ。……あぁ、どうやら認めねばならないらしい。思考もままならないでは風邪じゃないとは言えないな。

 

「……はぁ。手を見せろ」

「ぅぅ……あつかった」

「当然だ。だが、頭から被らなかっただけマシだっただろう」

 

 ヒリヒリと痛む手を素直に差し出す。魔法使いならば簡単に治せるはずだ。何せ時空を操るとされる男だ。

 

「酷い火傷でもないな。──ホイミ」

 

 魔法使いが短く唱えると、その体の周りを見た事の無い─聖杯の知識にも存在しない─文字?が列になって現れ魔法使いの周りを回る。それと同時に青白い光が魔法使いの手から私の手へと当てられる。

 

 火傷により赤くなっていた皮膚が見る見るうちに元に戻っていく。これが魔法使いの代名詞……時間遡行による治療だ。死者ですら蘇生可能だとされている。

 近くで見、肌で感じわかった。……何もわからないという事が。

 

 何をどうやって時間を戻しているのか、さっぱり分からない。というか、なぜお前は火傷しないんだ魔法使い!

 

「無駄な抵抗は止せ。栄養を取らねば治るものも治らないぞ」

「ぅぅ……」

 

 くっ、背に腹はかえられないか!仕方ない、食事を済ませ素早く眠ることで魔法使いとの会話をシャットアウトしよう。

 

「ん……はむっ」

 

 魔法使いがふーふーと息を吹きかけ、冷ましたお粥をスプーンで私の口に運んでくる。

 そんな事するな、とか色々と考えるものがある。なので目を瞑って一気にスプーンに飛びついた。

 

「……んむんむ……っ!?」

 

 美味しい!噛めば噛むほど甘みがまして……!というか、これが「甘さ」なのか!思えば産まれて此方、空気と唾液しか口には存在していなかった!

 ふむふむ……美味!おいしいぞぅ!

 

「あむ。もぐもぐ、ぱくっ!」

 

 お腹がペコペコだった事にもようやく気が付いた。どうやら体の機能自体もまだまだ眠りの中にあったようだ。今更ながらに伝えてくるとは!

 はっ!?初めてがこれ程質素なものであったと言うことは……これからグレードアップしていく食事は常に美味しく感じるのだろう?!うわー、やったな。これは楽しみになってきたぞ!

 

 そんなことを考えながら、運ばれてくるお粥に飛びつく事20分。

 

「──────────うぅ、もうだめだ」

 

 私は恥ずかしさのあまり枕を抱きしめ毛布の中に潜り込んでいた。

 

「はぁ。はずかしい……わたしはなにをしているんだ」

 

 きっと必死に食らいついてくる私を奴は内心でバカにしていたに違いない!

 あぁ……一生の恥だ!

 

 あぁぁ!もう!アーチャー!貴様はさっきから「微笑ましい」的な感情を送り付けてくるなぁぁぁあ!!

 そんなことは分かっている!子供だからな!私は子供だからな!必死に食べる姿はさぞ滑稽で愛らしいものだっただろうさ!死ね!死んじゃえ!

 

「……ぐすん」

 

 

 

 ✳

 

 一方その頃、魔法使いは食器を洗っていた。その手付きは見事なもので、手元を一切見ずとも完璧な洗浄だった。

 

「…………………………」

 

 しかし、洗い場は真っ赤に染まっている。決してトマト料理を作った訳では無い。

 それは、鼻から溢れ出した愛情だった。

 

「……!」

「……?」

「……。」

 

 少し……いや途轍もなくお見苦しい主の姿に、魔王の使い達は困惑しながらも血みどろのお皿をもう一度洗浄するのだった。

 

 

 

 




次回、主人公の名前が明かされる……!?(過去作と同じ)更には聖杯ちゃんに新たなる名前が……!?(過去作と同じ)

名前が明かされたあとは時間が加速していくかも……?まぁグタグタとだらだらとイチャイチャさせてもいいんすけどね!ネタが続かないことを除けば!

誤字報告、コメント、待ってます。

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