Memory of purple   作:優しい傭兵

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記憶の片鱗

「ねえ兄さん。6」

「なんだ。7」

「前々から思ってはいましたけど、本当に馬鹿ですよね。8」

「いや、アレしか方法が思いつかなくて・・・。9」

「それをした結果がこれですか。ダメダメですね。10」

「ほんの少しの期間だから別に苦ではない。11」

「編入校を探してくれたお母さんからしたら最低ですよ。12」

「だからあれだけ説教くらったんだろうが。13」

「久々にお母さんの頭に角が生えてましたよ。1」

「勝てっこねえよ。お父さんでもな。2」

「心強いですが、敵になったら終わりですよ。3」

「2秒でチョンだろ。4」

「とにかく、これからはもっと後先考えて行動してくださいね。5」

「そうだな。もうこれ以上迷惑をかけるわけにはいかなしな。6」

「ダウト」

「くっそぉおおおおお!!!」

 

持っていたトランプを机にぶちまけた。

今は午後の4時半。桜が家にいるのは別に不思議な事ではないのだが、今の時間帯なら生徒会で仕事をしているはずの俺だが、今日は朝からずっと家に居る。

 

 

そう、3日間の謹慎処分だ。

 

 

あの事件、にこと二階堂さんを救う為に行った俺の愚行。それの結果が俺への謹慎処分だ。表向きはいじめを成敗したって感じだが、やり方がやり方だったので理事長から建前は謹慎処分、裏向きはほとぼりが冷めるまでという話をされた。

山田先生にも話を通してもらっているから悪い面では見られていないからよし。多分今頃なんで俺が3日間学校に来ないのか噂で持ちきりだろうな。

良い事したけど少しやりすぎだから自重しろって言うのが理事長と山田先生の本音。

んで今はその謹慎処分の3日目。早めに帰ってきた桜とトランプでダウトをしているんだが一回も勝てない。嘘のカードを出すと絶対にバレる。

 

こいつの未来の仕事は警察か探偵が向いてるんじゃないか・・・。

 

 

「どうします?まだ続けますか?」

「椅子に座って踏ん反り返ってんじゃない。あとそのニヤニヤ顔やめろ」

「口ほどにもないですね」

「冷蔵庫にあるプリン食ってやる」

「駄目です。それだけは許してください」

 

桜の大好物、プリン。

 

「では神経衰弱にしますか?」

「ドンピシャでカード当てるから却下」

「ババ抜きは?」

「運ゲーだな」

「ポーカーは」

「よしやろうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コール。フォーカードです」

「ワンペアだよちくしょおお!」

 

 

***

 

 

 

 

「これぞ勝利の美酒ですね」

「ただのジュースだよ」

「一緒に飲みます?」

「飲む」

 

コップに注がれたオレンジジュースを飲み一息つく。なんだかんだ桜とダウトから始まり、ババ抜き、大富豪、ポーカーなどと遊んだ。勝率?何一つ桜に勝てなかったよ!

 

 

「今日の食事当番は兄さんですが、今日のメニューはどういったものですか?」

「あー・・・それを考えるついでに買い物行かないといけないな」

「今からですか?」

「トランプしててすっかり忘れてた」

「おバカ」

「返す言葉もございません」

「私も一緒に行きたいんですがいいですか?」

「断る理由がないな。行こうか」

「財布を忘れてはいけませんよ。後はエコバックを」

「あいよ」

「そして自転車で私を後ろに乗せてください」

「歩く気は?」

「ありません」

「だよな」

 

 

 

 

 

ママチャリのサドルに跨り、桜を荷台に座らせる。買い物行く時はよく二人乗りはするけど桜が軽すぎて人が乗っているとは全然感じない。豆腐か?それともチーズでできてるんじゃないか?

 

「今日の献立はどんなものですか?」

 

スーパーまでの道のりを進んでいる時に桜が質問を投げかけてきた。

 

「今日は魚料理だな。チラシ見てて鮭が安かったはずだからそれを買う」

「焼き鮭ですか?それともホイル焼きですか?」

「候補の中に入ってる。楽だしな」

「ホイル焼きを所望します。兄さんのホイル焼きは大好きですので」

「嬉しい事言ってくれるな。なら今日はそれにするか」

「やったっ」

 

後ろを見なければ若らないが、恐らく桜は小さくガッツポーズをしているはずだ。しかも笑顔で。

桜は肉も好きだが魚も好きな人間だからな。特に焼いた魚料理が。

 

「それに俺の学校での弁当のおかずになるからな」

「兄さんだったらどんなモノでも白ご飯のおかずになると思いますが」

「美味いものは何度も味わいたいんだよ」

「反芻ですか?」

「コラやめなさい」

 

信号が赤に光ってるので横断歩道の手前で停車。

 

「兄さん」

「ん?」

「学校は楽しいですか?」

「楽しいぞ。仲の良い奴らと友達になったしな」

「女子高だから男の方からしたら耐え難いものだと思いますが・・・」

「許容範囲内・・・て訳にはならないが、ある程度ならな。それに」

「それに?」

「希もいるしな」

 

信号が青に変わったので自転車のペダルを踏む。

 

「希ねえさんに・・・会いたいです」

「そうだな・・・。お前はあいつに可愛がられてたしな」

「記憶喪失・・・。苦しい限りです」

「忘れたものは仕方ない。これからゆっくりとだ。焦る必要は無い」

「そうですけど、心は早く早くと思ってしまいます」

「おれもだ。早く思い出して欲しいってよく思うよ」

 

 

傲慢なんだろうなこの想いは。今の希がどう想っているのか知らないが俺は一刻も早く希に記憶を戻して欲しい。頭ではゆっくりと考えてしまっているが心では急かしてしまっている。・・・なんて本人の事を全く考えないでいるのだから。記憶喪失がどれだけ辛いのかもしらないのに。

自分がよくても希本人がどうなのか・・・。

こんなこと絵里などに言ったら百発百中ぶん殴られる。こんな考えはさっさと消してしまわなければ・・・。

 

 

「兄さん」

「お!?ど、どうした?」

「ボーッとしすぎです。どうせ最低な事考えてるなーとか思っていたのでしょ?」

「・・・・・・エスパー桜」

「ドヤ顔はしませんよ。まったく・・・怠惰なんですから」

「・・・すまん」

「自分で言いましたよね?焦ってはいけません。そしてちゃんと希ねえさんを護ってあげてください。もう二度とこんな記憶喪失などにならないためにも」

「・・・おう」

 

自分の言葉がそのままブーメランで帰ってきてしまった。恥ずかしい・・・。

 

「好きなんですよね。希ねえさんの事」

「・・・あの時から告白も出来てないからな・・・。この気持ちはずっと変わらない」

「なら、その願いを叶えるためにも、希ねえさんの力になってあげて下さい」

「・・・そうだな」

「やれやれ・・・。本当にダメダメな兄さんです」

「ぐうの音も出ない」

 

 

「それと兄さん」

「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スーパーを通り越しました」

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

無言のまま方向転回してスーパーに向かった。

 

 

「兄さん顔真っ赤です」

「うるせ」

 

 

 

 

 

 

 

スーパーに入り籠に必要な材料をどんどん入れていく。メインの鮭、しめじにタマネギ、にんじんとバター。後は飲み物で牛乳、炭酸飲料、お茶。最後に桜のデザートのプリン。

インスタントコーヒーの豆。ココアの元。後は調味料少々。

 

「桜、その隠しているプリンを直してきなさい」

「なんでバレたのですか・・・」

 

身長差で分かるのです。仕方ないからプリンはもう一個追加だ。

 

 

「兄さんの好きなイチゴヨーグルトはいいんですか?」

「まだ家に少しあるから大丈夫」

「兄さんのペースなら今日か明日で食べきってしまいそうな気がします」

「好物は別腹だから仕方ないんだよ。お前のプリンと一緒だ」

「プリンなら10個なんて余裕です!」

「だから横腹が少し出てきてるんだな」

「・・・・・・・・・なんで知っているんですか」

「前にお前洗面器の前でブツブツなんか言ってただろ。お腹が・・・とか。食事が・・・とか」

「なんでそこまで見たり聞いたりしているんですか!デリカシーがなさすぎですよ!」

「一緒に住んでるんだから無理があるだろ。俺から見たらどこが太ったのか教えて欲しいくらいだ」

「男の人には見えないところにお肉が増えているんです。女の子には色々あるんですよ」

「食事で取った栄養はすべてお腹の脂肪になるのか・・・・・・大変だな」

「失礼な。ちゃんと他のところにも行き渡ってますよ!」

「どこだよ」

「こことか」

 

こことか。と言われても分からないと思っていたら桜が今まで以上に胸を張って強調してくる。あれか?栄養はこの通りちゃんと胸にも来ているんですよとでも言いたいのか。いや確かに大きくはなってるよ。うん、少しは。けど桜の年齢的には今ぐらいが丁度良いと思うぞ。小さくても・・・うん・・・。妹相手になに考えてんだ俺は。

 

 

 

「兄さん。今思っていた事を1つの単語に表しなさい」

「え」

「早く」

 

 

 

単語・・・・・・。

 

 

 

 

「貧にゅん"ん"!」

 

 

脇腹に水平チョップが炸裂した。

結果、変な声が出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄さん帰りましょうか」

「・・・・・・ああ」

「反省してください」

「はい・・・」

 

買った品をエコバックに詰めて前カゴに入れる。

桜を後ろに載せてペダルを踏んだ。

 

 

「希ねえさん。今でも1人暮らしなんですか?」

「ん?らしいな。大丈夫だと思うけどな」

「心配です・・・」

「何かあったら絵里たちがいち早く気付くと思うけどな。絵里たちが希の保護者みたいになってるから」

「生徒会長さん。頼もしい人ですよね」

「友達の為に動けるやつはそうそういないもんな」

 

友達の為に動ける奴・・・か。

 

 

「ん?」

 

ポケットでスマホが震えた。取り出して見て見ると画面には『東條希』の名前があった。

 

「希?」

「希ねえさん?」

 

トーク画面を開くとそこには。

『今どこにおるん?』と書いてあった。

 

「何かのお誘いか?」

「デートですか!?」

「んなわけあるか」

「あうっ」

 

桜の頭に優しくチョップを落とす。

 

『今は桜と買い物終わったところだよ』既読

『もう少しで家帰ってくるん?』既読

『そうだな。どうしたんだ?』既読

『分かった』既読

 

 

そこから希の返信は無くなった。

 

「どうしたんだ希の奴」

「んー、デートのお誘いではなかったら謹慎中の兄さんの心配をしてくれたのかもしれませんね」

「昨日も絵里とにことか含めてグループ電話したんだけどな」

「急用の用事?」

「だったら何か言ってくるだろ」

「生徒会でのお題がどうとか」

「それなら生徒会長である絵里から連絡が来るだろ」

「・・・・・・なんなんでしょうか」

「俺にもわからん」

 

『何かあったら連絡しろよ』

 

と、だけをトークに書き込んで俺と桜は家に戻った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「はい、到着」

「お疲れ様です」

「悪いな買い物につき合わせて」

「私がしたいからしたので気にしないでください。プリンも買っていただいたので」

「体重にはお気をつけて」

「次はグーで行きますよ」

「やめてくれ」

 

俺の家はそこらの家より少しだけ大きめの一軒家。お父さんとお母さんも今は別の場所で暮らしているから俺たち兄妹でこの立派な家に住んでいる。家がでかいだけあって2人で住むには少し広いくらいだ。部屋もそれなりの数。俺の部屋、桜の部屋、父母の部屋、物置とその他色々。リビングもそこそこ。お風呂も洗面台は一緒の部屋になっている。後は・・・猫がいるくらい。名前はミィ。種類で言うとペルシャ猫。毛が多いモフモフ感がたまらない抱き心地最高の猫。今頃俺の布団の中で丸くなっているころだろう。

 

 

「ミィにも餌をあげないとですね」

「だからさりげなく猫缶入れてたのか」

「油断大敵です」

「別にいいけどな」

 

 

そんな時、ちょっとした違和感に気付いた。ママチャリを門の中に入れようとした時、門の鍵が開いてしまっている。いつもウチは門の鍵は内側のレバーを扉に引っ掛けて出かけているんだがなんでかそれが解かれてあり門が半開きになっていた。

 

「桜、俺から離れるなよ」

「え?は・・・はい」

 

強盗か?それか下着ドロか?とにかく気をつけながら門を開けて敷地に足を踏み入れた。

 

視線を先に向けると、家の玄関の扉の前に体育座りで座って顔を膝に埋めている人間がいた。

 

「え?」

 

 

 

近付くとその正体が分かった。

 

 

 

 

 

俺に連絡をしてきた張本人、希だった。

 

 

 

「希?」

「え!?希ねえさん!?」

 

近付いて希の肩をトントンと叩くと、ゆっくりと顔をあげてくれた・・・が、その目は真っ赤になっていた。

 

「おいどうした希」

「大和・・・・・・くん・・・」

「おう俺だ。どうし・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぁ・・ふぇ・・・・うぇええええ!よかったよぉぉおおお!!」

 

 

 

 

 

 

俺の首に両腕を回して、大泣きしながら抱きついてきた。

 

 

 

「の、希!?どうしたんだよ!」

「お願い!私の中から消えないで!私から取らないで!大事なものは絶対に渡さない!誰にも!貴方(・・)にも!」

「何を言ってるんだ希!?落ちつけ!」

「希・・・ねえさん?」

 

 

希が一体何を言っているのか分からない。消えないで?取らないで?渡さない?誰にも?誰の事を、一体何を言っているんだ。

半分荒れながら俺に泣き付いて来る希に俺は何をしたらいいのか分からなかった。出来ることは希を落ち着かせる為に背中と頭を撫でてあげることしか出来ない。

 

桜も呆気に取られてどうしたらいいのか分からないくらい混乱していた。

 

 

「やだよぉ・・・もう・・・・・・やだよぉ・・・。エリチ・・・にこっち・・・穂乃果ちゃん・・・海未ちゃん・・・ことりちゃん・・・大和くん・・・・・・どこにも行かんといて・・・ウチを・・・私を1人にしないで・・・」

 

 

泣き疲れたのか希が俺の胸の中で静かになった。その右手は俺の服を強く握り締めながら・・・。

なんだこれは。希の身に一体何があったんだ・・・。

 

 

「絵里たちにも聞くしかないな」

「どうします?」

「リビングで寝かせるしかない。桜は毛布を持ってきてあげてくれ」

「分かりました」

 

エコバックを桜に持たせて俺は希をお姫様抱っこする。玄関をゆっくりと開けて中に入り靴を脱ぐ。希の靴も脱がしてリビングまで運ぶ。

 

 

 

「希・・・」

「んぅ・・・・・・」

 

今は落ち着いたのか静かに眠っている。力が抜けているはずなのにさっきから俺の服を離そうとしない。

 

 

ソファに横にしてあげ、少し悪いが握られている手を解く。

 

 

 

希の頭を優しく撫でてあげる。今俺が出来るのはこれだけだった・・・。

 

 

希が言っていた言葉はなんだ?気の動転によるものか?また昔の記憶に触れて起きた頭痛によるものか?

 

 

それか・・・俺が希の横にいなかった間に起こった出来事の片鱗なのかもしれない。

 

 

 

「俺が付いてるぞ。離さないからな」

 

 

今は無事に目を覚まして欲しい事を願い、眠っている希の手を両手で包んだ。

 

 




桜とのトランプゲームをして買い物シーンというほのぼの系からのシリアスドーンッ!
一体何が起こったのかわからない人もいるでしょう。大丈夫です。書いた自分も何が起こったのかわかりません。ポルナレフの台詞が出てきそうな程何が起こっているのか理解が追いついていません。←駄目じゃねえか。

さてさて・・・イチャイチャでもぶち込んでやりますかね。←予告?

今回!新しく評価してくださった!
蓮零さん!ヤザワさん!ありがとうございます!

お気に入りがもう少しで100!このまま行くぞオラァアアアアア!


では今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!

では・・・・・・またな!

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