では2話目ゴー
「………なんだって…こんな事に…」
あの後、希の発した言葉は俺の心に突き刺さった。まさか希が会わない間に俺との記憶が無かった。記憶喪失という言葉は何度も聞いたことがある。実際に俺の回りでなった奴は居なかったから本当にあるとは信じては居なかった。
まさかそれが……しかも東條希本人がそれになっていたとは考えすらなかった。予想すら出来なかった。
信じられなかった。こんな事が、こんな現実が…しかも今俺の目の前で起こるとは思いもよらなかった。
山田先生が、
『久しぶりの再会なのは分かるが今はHRだ。いきなり女子に手を出す気かお前は?』
その言葉ですぐ我に返った。本当は色々と聞きたい事があるがそれは後にしようと考えた。
俺の席は窓側の1番後ろの席だとの事。今だけは落ち着こうと思ったとき、絢瀬が小さな声で。
『後で生徒会室に来て……話すから…』
と耳打ちしてくれた。
HRで山田先生が注意事項や俺に関する情報など色々と喋っていたが、俺はそんな事に耳を傾けれなかった。頭の中が希の記憶喪失の事で一杯だった。
『これでHR終わりだ。授業も無いから今日はすぐに帰るように。解散!』
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という事で勝手ながら先に生徒会室に入らせてもらった。
絢瀬が言った言葉は多分希も連れてくるという意味も含まれてるはずだ。すぐに来ると思うから今は出来る限り落ち着くことに専念しよう。
今から話される事を思うと……どんどん悪い方向に考えそうだ。
「はぁ……記憶喪失…か」
記憶喪失。意識障害によって、過去にある時の経験を思い出せないこと。主な原因は頭に強い外的衝撃が加えられた事によってなる外傷性の症状。記憶が失うといっても、別に言語が分からなくなったり日常生活を送れなくなったりはしない。
忘れるものとしたら、なにかしらな物体や『これがどういったモノなのか』を記憶する『意味記憶』。個人が体験した出来事に関する『エピソード記憶』を失うケースが多い。希が俺の事を忘れていた……となれば失ったのは俺との思い出を記憶する『エピソード記憶』が頭からなくなったと予想できる。
だが記憶喪失になった本人にしか分からないから、本当に記憶が失ったのかは判断できない。単なる一時的な物忘れなのかもしれない。
更に言うと記憶喪失で失った記憶を取り戻すには、【自分の記憶に関するキッカケ】を思い出す事である。希が一体どういった事で記憶を取り戻せるのか分からない。
何がキーワードになるか。そこを理解するのが先だろう。
とは言っても俺は中学2年生以降から今に至るまでの希を知らない。前と一緒で転校を続けて今まで過ごしてきたのか、それか絢瀬と出会い一緒に今までを過ごしてきたのか。
分からない事だらけだ。頭が完全に追いついていない…。
「これが全部夢だったら楽なんだがな」
「夢な訳ないでしょ。現実を見なさい」
扉が開いて絢瀬と希が入ってきた。うわ、嫌な時に入ってきたな…。
「どこから聞いてた?」
「はぁ…記憶喪失かってところから」
「最悪な時に聞いてたなお前!」
聞き耳立てるって趣味悪いな。
こんなくだらないこと喋っていると、絢瀬の後ろからひょっこりと顔を出して、ちょっと怯え気味に俺を見つめてきている希の姿があった。
「あ…希」
「えっと…やっぱりウチの事知ってる人やんね?」
「っ…あ、あぁ……」
「…ごめんなさい。ウチ君の事全然『知らない』んよ」
(知らない…か)
心がズキッと痛くなったのを感じた。
「知らない……んだな。俺の事…」
いや、仕方ないのかもしれない。そうだ記憶喪失だから仕方ない。そうだ…『仕方ないんだ』。
そう、自分に思い込ませた。
「えっと、柴垣大和君やんな?」
「…………あぁ、そうだ」
「ウチ、東條希って言うんよ。さっきは怖がってごめんな?…出来れば仲良くしてな!」
「………あぁ、東條…希…だな。分かった、よろしくな…希」
まるで初対面の女の人と自己紹介しているみたいだった。希が俺に対して喋る言葉が全部馴れ初めの男に対する言葉に聞こえた。神様は最低だ。なんでこんな辛い事を希に与えてしまったんだ…。
「希…かぁ。いきなりやけどなんか初めて聞く感じじゃないねんな」ボソッ
「え?」
「やっぱり……君の事なんかなぁ……」ボソッ
「希…?何か言った?」
「ん?なんでもないよ?」
「そう?」
俺も絢瀬も希の言葉を聞き逃してしまい、一瞬シンッとした空気になったが絢瀬がすぐに話を薦めてくれた。
「さてと…悪いけど大和。そこに座ってもらえるかしら…?」
「おう」
絢瀬の横に希が座り、その目の前にある椅子に俺が座り込んだ。
「……じゃ、話させてもらうわね。なんで希が記憶喪失になったか……」
「……おう」
「希もいいかしら…?」
「うんっ…。この人もウチの過去の事を知っている人だから大丈夫やで」
希が俺に対して言う他人行儀が凄く胸が痛くなるが今はそれを考える場合じゃないと判断し、胸の奥にそっとしまいこんだ。
「いくつか質問してもいいか?」
「うん…大丈夫やで」
「記憶喪失で記憶が消えているんだよな?」
「うん…」
「どの記憶がなくなったんだ?」
「そうやね……。色々な作法ややり方なんかの記憶はあるから、多分【エピソード記憶】かな?」
「……そうか」
「エリチや今までこの学校で出会った人達の事は覚えてるんやけど、高校に入るまでの記憶が全然思い出せなくて………」
まさかのビンゴかよ…。くそったれが…。
「じゃあ次の質問。その似非関西弁はなんだ?記憶がなくなったと同時にそうなったのか?」
「あ、これはちゃうんよ。中学生の頃転校が多くて一時期関西にも行ってたからこうなっただけなんよ」
「……建前わね」
「もうエリチ!それは言わんといてよ!」
「あはは。ごめんごめん」
という事は希が記憶喪失になったのはつい最近の話しになるのか。中学時代に別れてきりどうなったかは分からないが、一緒に過ごした時間の記憶を思い返していると、希が関西に行ったという話しは聞いた事が無い。
「単刀直入に聞くが、俺の事はおぼえてないんだな?」
「そう…やね。全然分から………うっ!」
希が頭を抑えて呻きだす。
「希!」
「大丈夫!?」
「だ…大丈夫……ちょっと頭が痛くなっただけやから・・・・・・」
「無理に思い出そうとすると痛くなるのか。無理はしなくていい」
「そうよ希。無理はしないで・・・」
「ありがと2人とも…」
少ししたら落ち着いたのか、希も椅子に座りリラックスする。
「大和。少し私からも質問いいかしら・・・?」
「あぁ」
「希とは本当はどれくらいの付き合いなの?」
「希は記憶にないと思うが俺と希は小学生から中学一年生の最後までの時間の仲だ」
「・・・じゃあ、希が言っていた男の人って大和のことなのね」
絢瀬が意味深な発言をした。
「・・・その言い方だと、まるで前から俺の事を知っているみたいな言い方だな」
「えぇ。希と出会って記憶を失う前から貴方の話は聞いていたわ。1番大切な人だったって」
「ウチ・・・そんな事言ってたんやね」
「初対面の時にすぐに分かったわ。体付きがよくて綺麗に整えられた短い髪。写真も見せてもらったわ」
「なるほどな。どうりで俺に対してフレンドリーなわけだ」
「希を良く知ってる貴方なら大丈夫かなって思ったのよ」
「・・・・・・買いかぶりすぎだ」
俺は別に
「じゃ、そろそろ聞かせてくれ。なんで希が記憶を失ったのか。・・・・・・なんでこうなってしまったのか」
「そうね。これは私より希自身から聞いたほうが良いわね。希」
「う、うん。ウチが話すよ」
「別に無理して全部を喋らなくて良い。そうしたらまた頭痛を起こすかもしれないからな」
「そうよ。覚えている事だけでいいから」
「分かった・・・・・・じゃあ話すで」
深く深呼吸した後、希がポツリと呟いた。
「ウチが記憶喪失になったんは・・・・・・高校に入って事故にあったからなんよ」
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ウチ・・・いや、私がこの音の木坂に入学して4ヶ月ほど経った頃に事故にあった。だがその事故と言うのは交通事故とかそういうものではない。故意に起こった事故だったと思う。
私は今、この学校から少し離れた場所にある神田明神という神社で巫女のバイトとして働いている。その時期は日差しが強い日だったのは覚えている。朝から夜までバイトをしていて、そろそろ帰る時間になったとき、何かが起こった。
エリチに聞いた話だと私は神田明神に入るまでにある階段で倒れていたのだ。幸いに怪我は無かったが、どうやら頭を強く打ったとの事らしい。
だが、気になるのはここじゃない。階段に落ちていた私の状態だ。普通自分の足を踏み外して階段から落ちる場合はうつ伏せで落ちるはずだ。なのに私はうつ伏せの状態ではなく仰向けの状態で階段から落ちたのだ。
【あの階段はいつも行き来している場所なのにも関わらずそのような形で落ちるものだろうか?】
そこから私の過去の記憶は消えてしまった。
エリチの事は覚えている。音ノ木坂で出会った人達と『繋がっていた』事は覚えていた。けど・・・なぜか分からないが高校に入るまでに覚えていた記憶がごっそり私の頭からなくなっていた。小学校、中学校・・・そこらで起こった出来事。今、私の目の前にいるこの男の人・・・柴垣大和という人の事も覚えていない。
思い出せない。
私の音ノ来坂に来るまでの記憶は、綺麗さっぱり消えてしまったのだ。
ワタシの記オクは一体・・・どこニいっテしまっタのだろウか・・・。
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「これが・・・全部や」
張り詰めていた空気から開放されたからか、体の緊張が一瞬で途切れ、椅子に深く座り込み・・・・・・脱力した。
俺は、自分が今一体何が起こったのか認識するのが凄く遅かったと感じた。まるで誰かが作った小説を読んだような気分だ。ライトノベルを読んでいても、想像するにつれてこんな事が起こるわけ無いと認識しているのにも関わらず、こんな事が起こるものなのかと考えている自分がいた。
こんな話は作り話だ!と言い飛ばす者もいるだろう。だが俺は作り話には聞こえなかった。
これが現実なのだ。現実逃避しているのではない。俺は今しっかりと現実を認識した。
今ここで起こっているのがすでに現実。希の言葉を信じずにはいられなかった。
今まで疑っていたが、今確信した。東條希は本当に記憶喪失なのだ。
「絢瀬。希は本当にその神田明神で倒れていたのか?」
「えぇ。LINEの返信が中々来なかったから神社に様子を見に行ったら、その神社の周りに住んでいる人達が群がっていたの。何事かって思って見て見たら・・・・・・ということよ」
「希。事故の直前も直後の記憶もやっぱりないのか?」
「そうやね・・・。自分でも思うくらい強く頭強く打ったと思うから・・・」
「重症だな。仕方ない事だが・・・」
「急いでも仕方ないからゆっくり記憶を戻すようにしているわ」
「この記憶喪失を知っているのは?」
「エリチと・・・同じ2年生の1人と後は1年生の仲良しな3人組み・・・かな」
「先生には・・・流石に言っても仕方ないか」
「私も先生に話したほうがいいとは考えたけど、多分現状は変わらないと思うわ」
まさに八方塞だ。けど今無理に記憶を戻そうとしたら希の頭になにかの異常が起こるからそれだけは避けたい。医者でも記憶を戻す事は出来ないだろうし。やっぱり今は様子みとしてゆっくり思い出すしかないか・・・。
「ねえ大和。貴方生徒会に入らない?」
突如、絢瀬が提案してきた。
「生徒会?」
「元は貴方は学校を存続させるための手段である共学化前の試験生として入ってきたでしょ?男子校生の意見として学校や生徒会に手を貸してほしいのよ」
「それと今の話に何か関係あるのか?」
「建前は生徒会に力を貸してほしいだけど他にもあるわ。希の過去を知っている唯一の人物として希の側に居て欲しいのよ。もしかしたら過去の希と面識のある大和がいれば記憶を取り戻すキッカケを得れるかもしれないわ」
「なるほど。一理あるな」
「でしょ?生徒会や希の為に力を貸してくれないかしら?」
「けど、いきなり俺なんかが入っていいのか?他の生徒や先生が黙っちゃいないと思うが・・・・・・」
「そこは理事長にお願いしてみるわ。かなりの確立・・・いや、絶対OKはもらえるわ」
「自信満々だな」
「これでも私は賢い可愛いエリーチカって言われてるぐらいよ!」
「うわ今の歳で痛い発言・・・・・・ドン引きだ」
「これがエリチの可愛いところなんよ。ちょっとポンコツだけど」
「間違いなくポンコツだ」
「大和も希も私の扱い悪くないかしら!?」
「「いや全然」」
「もー!!」
生徒会・・・な。確かにアリだな。別に記憶を戻すのを急いでるわけでもないが、あの時から好きだった女の子のためなら何か力になってあげたい。それに・・・俺に対して初対面みたいな希を見てると心が痛くなって仕方ない。ちょっと辛いしな・・・・・・。
「希はいいのか?」
「ウチは賛成かな。君が居てくれたらウチも楽しいし安心するんよ。多分・・・迷惑掛けると思んやけど・・・」
「迷惑だなんて思ってない。困っている奴を放っておけないんだ。力になるぞ」
「いいの?ウチは記憶が無いから君の事全然知らんよ?ウチからしたら他人みたいな存在やのにそこまでしなくていいんやで?」
「俺がしたいからするだけだ。それにさ・・・・・・」
「それに・・・・・?」
椅子から立ち上がり希の目を見つめる。
「希は小学校時代からの友達だ。友達として出来る事をさせてくれ」
そうだ。過去に起こった事はどうしようも出来ない。戻る事なんてできないんだ。なら今を進むしかないんだ。
「なら・・・・・・これを言うのもおかしいけど、またよろしゅうな!
(柴垣君・・・か)
「あぁ。
窓から強い風が吹き込んで髪が靡く。そう・・・これが新しいスタートなんだ。
ここで俺は・・・
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「柴垣大和君・・・かぁ」
その日の夜、家で紅茶を飲みながらポツリと呟く。今日だけで色々な事が起こった気がする。
学校に男子が入り、そしてそれは私を知っている男子。私の無くした過去を知っている男子。私を・・・知っている男子。
生徒会室で話しをしていて思った。私は記憶を失ってからある夢を見る。
そこは白い世界。なにもなくそこに私がポツンッといた。その白い世界を見渡していると目の前に人が立っている事に気がつく。男の人だ。
顔も分からない。声も聞こえない。けど、私に何かを言っていた。私に手を差し伸べてくれていた。
あの人は誰なんだろうか。ずっと私を呼んでいる気がした。
柴垣大和君に会ってもしかしたらと考えた。もしかしたら夢に出てくる男の人は彼なんじゃないのかって・・・・・・。
けどそれを証明する事は出来ない。今からもゆっくりと・・・・・・答えを見つけてこうと・・・私は思った。
「彼と出会って・・・なんか懐かしい気がするのは気のせいなんかなぁ・・・」
紅茶を飲み干し洗面台に置く。明日も朝から神田明神のバイトだから早めに寝ないといけないためベットに潜り込んだ。
「柴垣君に名前呼ばれると・・・心が凄く暖かいなぁ・・・」
そんな時、私の中で1つの疑問が浮んできた。
私は何か忘れてはいけない事を・・・忘れてはいけないヒトがいるのではないかと・・・。
答えが分かるのは・・・まだ先なのかもしれない・・・・・・。
はい。読んでいただきありがとうございます。という感じで2人は再会しました。ここから彼と彼女たちとの物語が始まります。これからもよろしくお願いします。
記憶喪失って体験した事ないからわからないのですが本当に記憶が消えるのでしょうか・・・よし!今すぐ家から飛び降りて見ましょう!(オイバカヤメロ)
後、疑問思うことがあると思いますのでここでその理由を書きたいと思います。
*なんで絵里や希たち2年生なの?
その方が書きやすいと思ったからです。
*穂乃果たちは出てくるのか!?
出てきます。
*なんで1年生組はいないんだコラァッ!
現在1年生組は有給を取ってお休み中です(?)
*イチャイチャあると信じても良いよな!?
信じるか信じないかは・・・貴方次第です(これがやりたかっただけ)
今回新しく評価してくださった!
賢い可愛いエリーチカさん!ピポサルさん!
ありがとうございます!
それでは今回はここまで!感想・評価お待ちしております!
では・・・・・・またな!(やっぱりこっちに戻します)