アニメで六導さんとジャックちゃんの待遇に不満のある方挙手!!
日本、冬木市。
その日は見事な青空で、鳥たちは囀り、風はゆらゆらと草木を揺れさせた。
この日、少し小さめの墓地にて、一人の青年が、ここに眠る父と母に手を合わせていた。
拝啓、数年前、魔術でおぎゃんしたお父様お母様。
貴方たちの息子、
最近になってようやく、一流の領域に片足を突っ込んだと自分で自負しだしたので、こうしてご報告に参りました。
最近、故郷ルーマニアでは、夜な夜な爆発音やら何やらが、聞こえるようになっているそうで、怖くなり知り合いの
しかも驚く事に、どうやら本来の聖杯戦争とは違い、本来ならば7体のサーヴァントで戦う戦いを、今回は黒と赤の陣営に分かれ、計14体、まさに大戦をしているそうです。ほんと、魔術師というものは人の迷惑を考えない人たちです。(ブーメラン)
話が逸れましたが、とにかく僕は元気にやっています。
だから、そちらでは安心して暮らしてください。
────あ、そうです。言うのを忘れていました。
「燐、そろそろ行かない?この子が駄々を捏ね始めたわ」
「───そうか。なら、そろそろ行こう、
「おかあさん、おかあさん!あの可愛い動物、解体していい?」
「だーめっ。それよりもご飯を食べに行きましょう。
「わーい!!」
結婚もしておらず、恋人も作っておらず、この十九年間童貞を今だに貫いていたのですが────
────何故か、おとおさんになりました。
これは、魔術師である俺が、魔術師でない女性と、自分をおとおさんと呼ぶ少女と共に、運命に抗う物語である。
それでは、よければ最後までお付き合い願いたい。
その日も、いつもと同じ1日だった。
「ん...ふ、ふぁ〜」
目が覚めたのは自分の工房だった。
昨日も遅くまで魔術の修行をしていたので、どうやら自室に戻る前に寝落ちしたらしい。危ない。腕のすぐ横には、昨日作った"魔術式リボルバー・マークII"の弾が転がっており、しないとは思うが暴発の可能性もあった。
これは、ある知り合いの死霊魔術師が使っていた平行二連ショットガンがカッコよかったので、自分なりに改造したものだ。
我ながら、いい出来になった。
「だが、問題は射撃か」
つくづく思う。武器の性能と、使う人間の性能は違うと。
俺は昔から、狙ったところに弾が飛んでいった試しがない。
祭りの射的でも、狙えば何故か土台のつなぎ目に当たり、土台が破壊され、のっていた景品全てを落とし、もはや人を殺せそうな目をした店主を見たのは、もう何度だろう。
まぁ、それは置いといて、とにかく俺には射撃の才はなかったのだ。
クッソ、あいつの指の銃弾とか、心臓向かっていくガンドだろ?セコイわー、死霊魔術師セコイわー。
「一応、火、水、地、風は弾丸に込めれたが、これ以上この武器を強化しても、俺の魔術とも合わないか」
本来俺は近接派の魔術師だし、これ以上銃を強化しても意味がないだろう。もともと、やっと溜まっていた仕事が終わって、暇で作ったものだ。また気分が乗れば作ればいい。
俺はそう考えると、机に並べていた弾丸をキチンと収納し、工房から出る。
突き刺さる太陽の眩しい光。
やめろ太陽、このルーマニアに語り継がれる英雄には効くかもしれないが、それは俺にも効く。
「相変わらず人相が悪りぃな、燐夜」
するとその時、背後から自分を呼ぶ声が聞こえた。
そこにいたのは、黒いサングラスに、黒いジャケット。中はV字のシャツを着た、ムキムキのおっさんだった。
まぁ、知り合いだが。
「...何故ここにいる」
そういって、閉まっているはずの家の門を見ると、外に車が一台無造作に駐車されていた。しかも門も空いており、普通に住居侵入だ。
相変わらず、図体がデカイわりに可愛らしい車乗りやがって。思わず"はぁ"と、ため息が出た。
「おぉっと、そんなに睨むなよ。ちょっと挨拶に来ただけじゃねか」
そう軽口を叩くこの男こそ、俺がカッコいいといったショットガンを使う死霊魔術師、
これでも超一流の死霊魔術を扱える、言わずとも知れた一流魔術師。
まぁ、普段は軽いおっさんだ。
「そんな非常識な挨拶は知らん。さっさとそのじゃじゃ馬連れて帰れ」
そのじゃじゃ馬とは、もちろん後ろの車の事。
俺は昔、こいつが酒を飲んであの車に乗せられてから、あの車、もとい暴れ馬が嫌いになった。警察から逃げきるとかホントやめてっていったのに。
すると、獅子劫が一瞬青い顔をしたような気がしたが、一度咳払いをすると、いつもと違う真剣な顔になった。
「今日来たのは挨拶もあるが、少し仕事を頼まれ────」
「断る」
「んな!?」
獅子劫は、大口を開けながら驚いた。
「なんのメリットでお前に恩をやらなきゃならん。どちらかというなら、俺がお前に恩を売っている方が多い」
とまぁ、こんなこと言ったが、事実働きたくないだけでござる。やっと依頼されてた仕事が全部終わったんだ。当分の間は働かんぞ、俺は。
「帰れ。俺には関係ない。俺を巻き込むな」
その時、ポケットから何故かリボルバーの銃弾が地面に落ちた。どうやら間違って一つポケットに入れていたようだ。
俺はそれをしゃがんで拾い、顔を上げると、獅子劫がまだ驚いた顔で固まっていた。
いや、いくらなんでも驚きすぎだろ。
「とにかく、今日は帰れ。仕事なら少なくともアポをとってから来い」
「あ、ああ。そうだな。悪かった、燐夜」
獅子劫はそう言うと、車に乗り去っていったのだった。
そういえば、さっきしゃがんだ時に頭上に結構すごい風を感じたな。今日冷えるんだったら、コタツでも出そうかな。
俺はそんなことを考えながら、自分の家の中に戻っていった。
あ、あと喋り方がキツイのはただのコミュ症だから。ちゅ、厨二病とかじゃないんだからね!
...キモイ。
これが、燐夜・ディルスフランという青年。
魔術道具を扱うディルスフラン家に養子としてとられ、魔術道具のありとあらゆる知識を叩き込まれた、正真正銘の
だが、彼は魔術師の間ではこう呼ばれていた。
【魔術兵器】と───
まぁ、本人は全く自覚していないが。
レンガの街を、ここらでは見慣れぬ車が走っていた。
窓から見えるのは助手席に一人の少女と、運転席に座る黒いサングラスの男。
名を、獅子劫界離。サーヴァントセイバー、真名モードレッド。
彼らは今回の聖杯大戦の赤陣営であり、モードレッドは、かの有名なカムランでの戦いにて、アーサー王を討取らんとした反逆の騎士であった。
そんなセイバーが、何故か現在、車の中で不機嫌マックスだった。
「あークソ!!なんだよアイツ!!せっかくこのオレ様自ら行ってやったにも関わらず!!」
「うるさいぞーセイバー」
「だってよぉマスター!!ッ!!あぁぁああああああああクソが!!」
どうやら本当にご立腹らしい。
それもそのはず。先ほど立ち寄った燐夜と言う青年に、いきなりじゃじゃ馬と言われ、我がマスターの言葉を無視され、そして────
────霊体化を一瞬だけ解き、思わず出してしまった拳を避けられてしまったのだ。
「────」
「急に静かになったな」
「なぁ、マスター。アイツ、気づいてたよな?」
気づいていた。それは言葉通り、霊体化していた自分に気づいていたか?という問いだった。
「ああ、おそらくな。ずっとお前の方見て、その後めんどくさそうにため息吐かれたしな」
ガハハハハッと笑う自分のマスターを殴るモードレッド。だが、すぐ顔はまた真剣に戻る。
「だよな。アイツ、相当強い...いや、強いか。そこらの魔術師よりは」
「そこらの魔術師にあったことねぇだろ」
「大体の直感だよ。アイツはヤバい。本当にヤバい。ランスロットの遊撃部隊くらいヤバい。俺の拳を避けた後、あいつが何を手に持ってたか見たか?」
「いいや。何を持ってたんだ?」
「銃弾だよ。しかも、おそらく魔術が込められた」
その言葉に、獅子劫は少し冷や汗を流した。
「おいおいマジかよ。言っておくが、あいつの射撃スキルはヤバイぞ?たとえ二、三キロ離れてようが当ててくるぞ、あいつは。昔仕事で見たが、四キロ離れた敵を、魔術で射程のみが強化された銃で、狙撃しやがった」
四キロ。アーチャーのサーヴァントならまだしも、それをただの魔術師が簡単に行えるとすると───。
「エグいな」
モードレッドの顔が思わず引き攣る。
もしもさっきのやつがマスターで、サーヴァントが単独行動でも持ってようならば、それほどまでに正確な援護を受けながら戦うことになる。それはかなり不味いだろう。
「ああ。けど、本人いわく近接の方が得意なんだと。俺が今回頼もうとした仕事ってのも、最悪の場合、俺が敵に近づかれた時に使う近接用の武器を作ってもらう気だったんだが...」
「そんだけ出来て近接得意だとか、もう人間やめてんだろそいつ」
獅子劫はそれについては否定しなかった。
事実獅子劫は数年前から彼のことを知っているが、その人外っぷりは嫌という程見せられた。
「あいつは元々孤児だ。あの家、ディルスフラン家は代々魔術道具を作るのに優れていてな。俺が使ういくつかも、あの家に頼んで作ったものがある。そして無論、作った奴が、使いこなせない道理はない」
「んじゃ、もしも敵にでもなってたら」
「ただの一般人でさえ魔術師を殺せる道具を生み出せる奴らだぞ?最悪の場合、そういう武器が全部あっちに流れてた」
モードレッドは、言わずとも知れた最優のクラス、セイバーだ。全ステイタスにおいて、平均を凌駕している。さらにその性格上、どんな敵でさえ、その豪剣で斬り伏せるだろう。
だが、それはマスターである獅子劫を抜きにした場合だ。
「はっきり言って、あいつが魔術師と戦った場合、絶対にあいつが負けることはねぇだろうな」
「...マスターもか?」
「────」
獅子劫は、無言を貫いた。
少しの静寂が車内で広がる。だが、すぐにモードレッドはニカッと笑い、自分のマスターの肩をぶっ叩いた。
「いってぇ!!?」
「バーカマスター。俺が認めたマスターだぞ?そいつが、そこいらの魔術師に負けるかよ!」
「っふ、そうだな。んじゃ、協会の挨拶も終わったことだし、さっさと拠点に行くか!」
「拠点!?マジかよ、そんなもんがあんのか!!?」
「おうよ、楽しみに待ってろよセイバー!」
そしてその数分後、拠点が墓地にある事がわかったモードレッドが、駄々をこねるのは、言わなくてもいいだろう。
ちなみにこの話のオチ。
狙撃したのは、追っていた魔術師を逃してしまい、イライラして飛んでいた鳥を撃とうとしたら、たまたまそれがその魔術師に当たり、数々の魔術師を破ってきたのも、奇跡に等しい出来事が起こるからである。
まぁ、あれだ。
とにかく悪運が強い系主人公という奴だった。
ここは日本。
暗黒街を照らす無数の光。その光に当たらぬ、薄暗い路地裏。
そこには、まさしく地獄があった。
人の形はすでになく、臓物は撒き散らされ、血液はザクロのように飛び散っていた。おおよそ、人がまともには見れない光景。
だが、そこにいたのは、場違いと言っても過言ではない、白髪の少女と、淡い緑色の髪の美女だった。
「おかあさん、そろそろ行こ?」
「そうね。そろそろ行かないと誰かがきちゃうかもね。行きましょう、ジャック」
「うん、おかあさん!いこぉいこぉ!」
この惨状を創り出した二人は、まるで親子のようにその場を去っていった。