妖精の軌跡first【完結】   作:LINDBERG

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子猫はお姉さんに羨ましがられる

「ご報告します!」

 

憲兵隊の連絡員がクレアに近寄る。

「ヘイムダルからの応援は、約30分後に到着との事です!皇帝陛下が署名されたザクセン鉱山の調査許可書もその時一緒にとの事であります!」

「ご苦労様です、持ち場に戻り引き続き待機して下さい」

「は!失礼致します!」

連絡員が敬礼してから離れて行った。

 

「30分ですか……」

クレアが人知れず呟く。

 

遅すぎる……、既に鉱山内に侵入されてから1時間程が経過している。中で人質を盾に守りを堅められては、手出しが出来なくなる可能性もある。

……それだけじゃない、もしも鉱山自体をテロリスト達に爆破でもされたら、貴族派とテロリストが繋がっている証拠を掘り出すのに、どれだけの時間を要する事か……。

しかもザクセン鉄鋼山は正に帝国の屋台骨を支えている存在だ、経済的にも大打撃を被るのは間違いない。

 

その責任を誰が取る?憲兵隊か?領邦軍か?

イヤ、この機を四大名門の歴々が逃す筈が無い、必ず理屈を付けてオズボーン宰相の首を狙って来るに決まっている。

そんな事であの閣下が潰されるとも思えないが、国民からの支持は確実に低下するだろう。

それだけは避けなくてはならない。

 

そこ迄考えた所で、クレアは一つ苦笑いを見せる。

 

いつから自分は、このように政治家秘書みたいな考え方をするようになったのだろう……。大恩ある閣下の下で働きたいと思ったのは確かだ、しかし彼の強行なやり方に、心の何処かで疑問を持っている事も自覚している。

 

昨日交わしたフィーとの会話を思い出す。

何故か途中で寝てしまったらしく、最後の方はうろ覚えではあるが、あの時、頭をハンマーで殴られた様な気がした。

 

国の為に人の為にと建前を並べても、その過程でどれ程の人間を不幸にしているのか……。それに対して自分は本当に真摯に向き合えているのか?

勿論、今まで考えなかった訳ではない。しかし直視する事を躊躇っていたのも事実だ。

これが正しいのだから、これが最善なのだから、と自分に言い聞かせて目を背け続けていた。

 

……何と卑怯な行為だろう、自分で自分が嫌になる。

 

学生の頃の自分はこうでは無かった気がする、もっと相手の立場になって物事を考えていた筈だ。ほんの数年が経っただけで、もう思い出す事も出来なくなってしまったが……。

 

そういえば、あの子達は今どうしているだろう?

ルーレを出る時に少し釘を刺しておいたが、彼等が私の言う事に素直に従うとも思えない、きっとここに乗り込んで来る筈だ。恐らく頭の凝り固まった自分には考えも付かない様な手段で……。

 

もしも、自分が彼等と同じ世代に生まれていたら、もしも彼等と共に成長していたら、自分はどうなっていたのだろう?

今より少しは自分を好きになれたのだろうか?

 

そこで再び自嘲するように薄い笑いを浮かべた。こんな時に無意味な事を考える自分が、無性に滑稽に思えた。

 

ふふふ、嫌な大人になってしまいましたね……。

 

一時目を閉じて、心を落ち着かせる。

 

 

 

……ん?

 

山道の方から聞こえてくる轟音に思考を打ち切られる。

 

この音……、まさか!?

 

顔を向けると、1台の戦車が砂煙を巻き上げながらこちらに近付いてくるのが視界に入る。

 

き、昨日に引き続いてあんなモノを!?

 

クレアは鉱山入り口に陣取る領邦軍の隊長を鋭く睨んだ。

 

貴方は何を考えているのですか!?このままでは憲兵隊と領邦軍、本格的な武力衝突に発展しかねませんよ!!

 

怒りを含んだ視線を向ける。

 

だが、見つめた先の隊長の様子がおかしい。口をあんぐりと開け「あれはどういう事だ!」と近くに居る部下達に喚き散らしている。

 

???、……領邦軍が持ち出したモノでは無い??……じゃあ、一体誰が??

 

再び戦車に目をやると、砲台の横に誰かが立っているのが目に入った。黒いマントの様な衣装に濃い色のフルフェイスヘルメット。夏至祭の時ヘイムダルのカタコンペ(地下墓地)で一瞬見たモノに良く似ていた。

あ、あれは……、まさか。

 

て、帝国解放戦線!?しかもあの装いは、リーダーのC!?

 

ガレリア要塞の件は当然クレアの耳にも入っいる。その時は飛行艇を使って襲撃に及んだとか……。今度は戦車を持ち出したとしても何の不思議も無い。

Cはお供を二人従え、腕組をして戦車の上に堂々と立っていた。

 

「総員戦闘態勢!!あの戦車をこれ以上近づかせてはいけません!!」

クレアが憲兵隊員達に素早く指示を飛ばす。隊員達の統率の取れた動きを確認しながら、自分も愛用の導力銃をホルスターから抜き出し、スライドを引いて弾丸を装填する。

 

何故こんなタイミングで現れたのかは解りませんが、これはこちらにとっても好機です!必ず捕縛します!

憲兵隊の車輌を盾にして銃を構えた。

 

戦車は山道から鉱山に至る坂の途中で、その動きを止めた。

 

 

 

「あ、あー、領邦軍に憲兵隊の諸君、ワタシが帝国解放戦線のリーダー、Cである!」

Cが声高に宣言する。ヘルメットに変声器と拡声器が取り付けられているらしく、機械的な音声が周囲に響き渡った。

「ワタシが用があるのは、ザクセン鉄鋼山だけだ!無駄な荒事にはしたくない、道を開けるが良い!ワタシが帝国解放戦線のリーダー、Cである!」

 

戦車で乗り付けておいて荒事にはしたくないだと、私達を馬鹿にしているのか?……と言うか何故2度も自己紹介?

 

「テロリスト達に告げます!私は鉄道憲兵隊所属クレア・リーベルト大尉!今すぐに戦車の運用を止め、武装解除の後に投降しなさい!」

クレアが銃を構えたまま声を張り上げる。

 

「ふふふ、氷の乙女の名は聞き及んでいるよ、クレア大尉!」

機械的な笑い声を響かせながらCが続ける。

「こちらとしても、音に聞こえたアイスメイデン殿が、そう簡単に道を開けてくれるとは思っていない……、そこでだ!」

Cが後ろに控えるお供の二人に合図を出す、二人は戦車の裏側に回り込むと、なんと十字架に張り付けられた一人の少年を抱えて姿を見せた。

張り付けられた少年は力無く項垂れ、眼鏡が鼻先までズレ落ちていた。見覚えのある赤い制服を着ている。

 

あ、あれは!?まさか!?

 

「ヘイムダル帝都知事の御子息、マキアス・レーグニッツ君だ!彼の命を助けたければワタシの言う事に従って貰おうか!」

Cが勝ち誇るかの様に再度宣言する。

「ワタシが帝国解放戦線リーダー、Cである!!!」

 

くっ!ひ、卑怯な!!

 

クレアの顔に動揺が浮かぶ。

 

まさか学生を人質にするとは!恥知らずにも程がある!しかし、考えてみればレーグニッツ知事の子息であるマキアスさんは、人質として格好の的だ!警護に兵を何人か割いておくべきだった。

 

自分の迂闊さを悔いる。

 

他のⅦ組の生徒はどうしたのだろう?

……ま、まさか。

 

唇を強く噛み締める、頭の中では最悪のシナリオが展開されていた。

 

な、何という事だ、これは全て自分の甘い考えが招いた結果だ!情けない……、つくづく自分に嫌気が差す。

 

右手に持った導力銃を、力強く握りしめた。

 

C!貴方は絶対に許さない!必ずこの場で捕らえてやる!!

 

決意の炎を宿した強い視線でCを見つめるクレア。

……その時、ふと違和感を感じ目を細める。

 

……??

Cとはあんなに小柄な体格だっただろうか?以前一瞬見ただけなので明確に記憶している訳では無いが、隣に居るマキアスさんより遥かに小さく見える。下から見上げているからそう見えるだけか?

 

「さあ、道を開けるが良い!ワタシが帝国解放戦線リーダー、Cである!!」

Cが再び宣言する。

 

先程から思っていたが、何故自分の事を何度も声高に叫んでいる?威嚇のつもりか?それとも……?

 

「……あ!それと、1ヶ月前に帝都で起きた強盗事件と憲兵隊の車輌を爆破したのも我々帝国解放戦線だ!そして、ワタシが帝国解放戦線リーダー、Cである!!」

Cがクドイ程自分の名を連呼する。

 

な、何故聞いてもいない悪行をわざわざ自分からさらけ出す???……と言うか1ヶ月前の強盗事件って……。

 

「クレア!あ、違った……、クレア大尉!危ないから早く道を開けてって!」

Cがクレアに向かって声を掛けて来た、しかもこちらを案じてくれているらしい。

 

こ、今度は呼び捨て??しかも何故か私の身を案じてくれているらしい。

……

……

……ま、まさか。

イヤイヤイヤ……、幾らなんでもそれは無いだろう!

まさか、彼女、がこんな大それた事をしでかす訳が無い!

……

……

……イヤ。

彼女だからこそあり得るのか???

 

「オラ!さっさと道を開けろって言ってんだよ!」

Cのお供の一人が、マキアスの頭に銃を突き付ける。

 

導力銃??……いや、導力銃など何処にでもある。これだけでは何とも言えない。

 

「早くしろ!ただの脅しだとでも思っているのか!」

もう一人のお供が、マキアスの喉元に刀を近付ける。

 

た、太刀??……いや、帝国内でも刀を使う流派は幾つか存在する、珍しいが決定的では無い。

 

「ん、早く退いて。さもないと……」

Cが双銃剣を取り出し、マキアスの腹部を突っつく。

 

そ、双銃剣???

……

……

……あんなマニアックな武器を使うのは、私が知る限り帝国内に1人しか居ません……。

 

クレアは全てを理解し、誰にも気付かれない様に初秋の空を見上げた。

嬉しさとも悲しさとも違う何かが、目から溢れ落ちそうだった。

 

 

 

 

 

十字の木の板に括られたマキアスは混乱していた、何故こんな事に!?

 

「おら!さっさと道を開けろって言ってんだよ!」

Aが導力銃をマキアスのこめかみに押し付ける。

「せ、先輩、そんなに押し付けられると痛い!それに怖い!」

マキアスが小声で訴える。

「我慢しろ、セーフティは掛けてあるから大丈夫だ。あと俺は先輩じゃなくてAだ!」

Aが小声で応じる。

 

せ、セーフティが掛かっていても、怖いものは怖い!

 

 

「早くしろ!ただの脅しだとでも思っているのか!」

Bが喉元に太刀を押し付ける。

「り、リィン、そんなに近付けたら危ない!それに怖い!」

マキアスが再度小声で訴える。

「峰だから切れる事は無い、もう少し我慢してくれ。あと俺はリィンじゃなくてBだ!」

Bが小声で応じる。

 

や、刃じゃ無くても怖いものは怖い!それに戦車の振動で太刀の峰が首筋に当たって痛い!ミミズ腫れが出来そうだ!

 

 

「ん、早く退いて。さもないと……」

Cが脇腹を双銃剣で突っつく。

「ふぃ、フィー、刺さってる!先端がちょっと刺さってる!」

マキアスが三度小声で訴える。

「ん、大丈夫。もしグサッ!ってヤっちゃっても内臓は避けるから。あとワタシはリーダーのC」

Cがヘルメットの音声出力をoffにしてから小声で応じる。

 

そ、そうか、万が一の時でも内臓は外してくれるのか。さすがはリーダーだ、隊員の事をちゃんと考えてくれている……、って、なるか!!何一つとしてフォローになって無いぞ!!

 

「そ、そもそも何故僕が人質役なんだ!?この配役の根拠は何だ!?」

マキアスが出来る限り口を動かさずにCへ問う。

「え?、……何とな…、じゃなくて、……副委員長だから?」

「……」

 

今「何となく」と言おうとしただろう!!?しかも「副委員長だから?」って、何故疑問形で応える!!?と言うか根本的に、副委員長は人質にならなくてはならないのか!??

 

マキアスは再び力無く項垂れ、ただただ時間が早く過ぎる事だけを祈った。

確かにCの言うとおり芝居の必要は無かった、何の救いにもなってはいないが……。

 

「お?憲兵隊の連中が退いてくれたみてーだな」

Aが状況を報告して来る。

「領邦軍の方は……、おいおい、やる気みてーだぞ?」

 

Cが前方に視線を向けると、隊列を組んでライフルを構える領邦軍の一団が見えた。

 

 

 

 

 

「な、何をしているのですか!」

クレアが領邦軍の隊長に近寄り、喰って掛かる。隊長は露骨に鬱陶しそうな顔を向けて来る。

 

「人質が捕まっているのが見えないんですか!?」

「人質?ふん、本当に帝都知事の息子かどうか怪しいものだ、知った事か!」

「一人の少年が捕らえられているのは事実です!」

「奴らの芝居という可能性もある!武力制圧してから確かめれば良い!!」

「そ、そんな……」

「口出しをするな!!鉄血の雌戌が!!」

「!!!……」

 

無茶苦茶だ……、しかし、今の自分にはこの人達を止める術が無い。せめてヘイムダルからの応援と、皇帝陛下からの書状が届けば……。

 

「総員、構え!!」

隊長が指示を出し、領邦軍が一斉にライフルを構える。

「撃てぇ!!」

何の警告も無く、クレアの目の前で銃撃が開始された。

 

 

 

 

 

「ちぃ!撃って来やがったぜ!」

「C!どうする!?」

「まだライフルの射程距離じゃ無い、ただの威嚇射撃だからそんなに慌て無くて大丈夫。……でも、一応盾に隠れて」

「た、盾って何の事だ!?僕か!?僕が盾なのか!?」

マキアスが喚き散らすが、Cは気にも止めない。

余程運が悪く無い限り、この距離で被弾する事はまず無い。仮にそうなったとしても……、致し方無い、何しろ帝国男子は常在戦場である。

 

「にしても……、戦車に向かってライフルで応戦して来るかね普通、どういうつもりだ?」

「ああ、こちらからは砲撃して来ないと踏んでるっぽいな……」

「ん、嘗められてるね」

 

領邦軍とテロリストは繋がっている、ならば急に現れた自分達を不審には思っていても、まさか仕掛けては来ないだろうと踏んでいるのか?

 

……仕方ない、一発カマしてやるとするか。

 

CがARCUSを取り出し、アンゼリカに連絡を取る。

「こちらC、アレの準備は良い?」

「勿論だC!いつでもOKさ!」

威勢の良い返事が返って来た。

 

「オイオイ、ちょっと待てリーダー!!」

「じゅ、準備って何の準備だ!?」

AとBが慌ててCに詰め寄る。

「ん?砲撃だけど?」

ヘルメットの下で「何を当たり前の事を聞いているんだコイツらは?」と言わんばかりの目を向けるC。

「ま、マジか!?」

「C……、それはいけない、それは人としてやっちゃ駄目だ」

「大丈夫、さっき砲弾の信管は抜いといたから」

「い、いつの間に……」

「マジかよ……」

 

再びARCUSに向かって指示を出す。

「照準合わせて!目標は左前方、領邦軍武装車輌!」

「了解!アリサ君、照準を頼む!」

「了解!」

砲台が重々しい音を出しながら、目標に向かって動き出す。

 

「……照準OK!いつでもいけるわ!」

「了解!C、合図を頼む!」

「らじゃ!」

 

「領邦軍に勧告は?」

Bが聞く。

「模擬弾みたいなモンだし、別に良いんじゃない?」

「……だな、こいつで脅かせば大人しく退いてくれるだろ。C、ぶちかましてやれ!!」

「ん、いくよ!」

Cが力強くARCUSに向かって叫ぶ。

「fire!!」

 

轟音と共に砲弾が撃ち出され、緩い放物線を描きながら領邦軍がバリケード代わりに停めてある車輌の群れへと迫っていく。

砲弾は見事目標に突き刺さり……、爆発した。

周囲には凄まじい粉塵が立ち上ぼり、近くに居た領邦軍の隊長が衝撃で吹き飛ばされた。

 

 

「……あれ?」

「……信管抜いたって言わなかったか?」

「……言ってたな、確か」

 

おかしいな?確かに抜いたんだけど?

 

その時、ARCUSにアンゼリカからの通信が入る。

「スマナイC……、どうやら事前に装填してあった砲弾を間違って射出したらしい……」

 

ああ、そういう事か。元々入ってた弾を撃っちゃったんだ……。

……

……

……

それなら……、誰も悪く無いか?

 

Cはそう結論した。

 

ん、事故だね、事故。

 

 

幸い領邦軍の方も、吹き飛ばされた隊長以外に死傷者は出ていない様だ。

その飛ばされた隊長はというと、スクラップ置き場に頭から突っ込み、隊員に救助されている。

遠目で確実では無いが、生きてはいるようだ。

もっとも、既に事故だと割り切ったCには、一欠片の回顧も無いのだが……。

爆発跡には無惨に大破した車輌の残骸が残るだけだった。

 

今しか無い!

 

Cは再びヘルメットの音声装置を入れた。

「あー、こちらの力は十分に思い知った事と思う、大人しく道を開けるが良い!ワタシが帝国解放戦線リーダー、Cである!!」

宣言と同時に戦車が移動を始める。

憲兵隊は勿論の事、指揮官を失い戦意を無くした領邦軍も、大人しく道を譲ってくれた。

 

 

そのまま何事も無く進み、戦車はクレアのすぐ横を通り過ぎる、彼女は心配そうな瞳でこちらを見つめて居た。

その姿はまるで、やんちゃで悪戯好きな妹を心配する姉の様に見えた。

 

ま、さすがにバレるよね……。

 

誰にも気付かれない様に、Cは親指を立ててクレアに合図を送った。

 

大丈夫、ワタシに任せて、クレア。

 

ヘルメットの下で笑みを浮かべたCは、それきり後ろを振り返る事なかった。

 

轟音を上げながら戦車が鉱山内部に突入する。

 

さあ、ここからが本当の勝負だ。

 

子猫は不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

戦車が目の前を通り過ぎて行く、私は何も出来ずにそれを見送るしか出来ない。

去り際に彼女は親指を立てて見せた、まるで「私に任せろ!」と言わんばかりだ。

 

……まったく、人の気も知らないで。

 

クレアは苦笑いを浮かべながらも、その姿を見送った。

 

きっと自分の判断は間違っているのだろう。事もあろうか、学生がテロリストの待つ戦場に乗り込むのを黙認するなどあってはならない事だ。

だが自分に彼等を止める事は出来ない、そんな資格など自分には無い。

憲兵隊大尉としての立場、領邦軍との関係、ヘイムダルに居る宰相。それらのしがらみに縛られ、自分が積極的な行動を起こさずに手をこまねいていたのは事実だ。

自分がもっとしっかりしていれば、彼等もここまで大胆な行為には及ばなかっただろう。

 

ふぅ、私の責任ですね……。

 

 

事後処理は問題無い、いくらでも誤魔化す事は出来る。そういう事には慣れている、自分にはそんな事しか出来ない……。

 

……ホント、嫌な大人になってしまいましたね。

 

クレアは再び空を仰いだ。

ルーレの特有の濁った灰色の空が広がっていた。

 

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