妖精の軌跡first【完結】   作:LINDBERG

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子猫とテロリスト

「同士V、酷い有り様だな」

「Cか……、すまねぇな」

Vが血にまみれた身体を緩慢な動作で動かす。

「謝る必要は無い、彼等の力を見くびった私の責任だ……。ところで……」

Cがアンゼリカの方へと首を向ける。

「そちらに居るログナー家の令嬢は、一体何をしているのだ?」

全員の視線がアンゼリカへと集まる、彼女は未だに四つん這いでフィーに尻を向けていた。

 

まだやってたのか……。

 

「ふっ、これは私とフィー君との愛の儀式さ!部外者は口出しをしないで貰おうか!!」

アンゼリカが四つん這いのまま威勢良く言い放つ。

その表情は名門貴族の気品に満ち溢れ、時と場所さえ違えばうっとりと見とれてしまう程に凛々しいモノであった。

 

イヤイヤ、そんな事言ってないで早よ立て!!

っていうか愛の儀式って何だ??

 

「そ、そうか……、まあ、好きなようにやってくれ……」

Cの機械化した声が響き渡る、何故かそれは諦めを含んでいるようにも聞こえた。

 

「C、大人しく投降しろ!すぐに憲兵隊も到着する、もう逃げられないぞ!」

「そうよ、今すぐに人質を解放してお縄に付きなさい!」

 

「くくくっ、そんなに騒がずとも人質なら解放するとも。……さあ、受け取るが良い」

Cが懐から小さな金属片を取り出し、リィンに向かって投げて寄越した。

リィンは左手でそれをキャッチし、目の前にかざして見る。

 

「これは……、鍵?」

「もしかして、管理小屋の鍵か?」

「多分そうね、ラインフォルトの刻印がしてあるわ」

「えっ?これを僕達に渡したって事は……」

 

……投降の意思表示?……なんで?

 

全員の視線が鍵に集中する、その瞬間。

「それと……、これも一緒に渡しておこうか」

Cが手のひらサイズの黒い物体を投げて寄越す。

「!!、しまっ…」

周囲が一瞬にして眩い光に包まれる。

 

「な、何だ!?」

「ちょっ、何よこれ!?」

「皆落ち着け!陣形を崩すな!」

 

閃光手榴弾!?マズッた!鍵とケツに気を取られ過ぎた!!

 

咄嗟に目を閉じたが強烈な閃光は瞼を通して視力を奪う、回復するには数秒が必要だ。

 

クッソー!目潰しなんて卑怯な手を!正々堂々と戦え!!

 

自分の行いを省みる事は絶対にあり得無いフィー。

何とか気配だけで相手の動きを察しようと試みる。しかし、こちらに近付いて来る気配は何一つ感じられ無かった。

 

???、あれ、仕掛けて来ない?

 

その後も数秒の間身構え続けるが何も変化が無い、次第に視力が戻り、周囲の様子が見えてくる。

 

フィーが目を開くと、そこにCとVの姿は無かった。

 

……やられた。

 

「な、何が起こった?」

「あの人達は!?」

「ちょっと、何なのよ、もう!?」

「皆落ち着け、誰も何とも無いか!?」

「ん、大丈夫っぽい」

「私も問題無いよ、ふふ、てっきり視力が利かない間に、貞操を奪われてしまうのかと期待したんだが。どうやらCにそれほどの度胸は無かった様だね」

アンゼリカはまだ四つん這いのままだった。

 

……アホな事言ってないで、早よ立て。

 

心の中で毒づきながらフィーは辺りの気配を探る。

 

……駄目か。

 

時間にしたら数秒程度、しかしそれだけあればVを連れてこの場を離れる位は十分だ。

 

はぁ……、まんまとやられたか……。

 

フィーの顔に落胆が浮かぶ。

 

まさか、いきなり逃げるとは思って無かった。……でも、あの状況じゃベストの判断かな。

……なかなかやるね。

 

素直にCへ賛辞を贈る。

 

 

 

「クソ!逃げられたみたいだ、周囲に何の気配も感じない」

リィンが憤る。

「そうか……、イヤ、あの状況では仕方あるまい」

「うん、過ぎた事よりも今できる事を考えようよ」

「ええ、取り敢えず人質を解放しましょう」

「ん、だね」

「アリサ君、君の手で小屋の鍵を開けると良い、……おや?」

アンゼリカが何かに気付いた様に坑道の方へ視線を向ける、リィンとフィーも人の気配を感じ取り、顔を向けた。

 

見ると、領邦軍と憲兵隊の一団がこちらへ向かって来る。砲弾によって吹き飛ばされた隊長が先頭に立っていた、どうやら無事だったらしい。

 

……はぁ、面倒な事になんなきゃ良いけど。

 

誰にも気付かれない様に小さく溜め息をつくフィー。

 

 

 

「何だ貴様達は!?ここで何をしている!!」

領邦軍の隊長が開口一番リィンに向かって怒鳴り散らす。

 

ほら、案の定来たよ……、こうもワンパターンだと笑えてくるね。

 

「確か実習とやらで来ている士官学院の生徒だったか!?こんな時にこんな場所で何をしていると聞いているのだ!!」

「あの、俺達は……」

「いや、話さずとも良い!大方件のテロリストとやらの仲間に違いあるまい!!」

 

……何でそうなる。

 

「全員拘束!!詰所に連れ帰り、牢にブチ込め!!」

 

……この場でオメーのケツにブチ込んでやろうか?

 

物騒な事を考えるフィー。

 

「待って下さい、彼等は実習の過程で事件に巻き込まれただけの様に見えます、テロリスト達とは無関係です」

クレアがすかさず隊長とリィン達の間に入りフォローしてくれる。

 

「ふん、何処にそんな証拠がある?コイツらがテロリストと無関係だと何故言い切れるのだ!?」

「彼等はヘイムダルで起きたテロ事件の際に我々鉄道憲兵隊に協力してくれています、テロリスト達に加担しているなど考えられません!」

「ヘイムダルでは犯人共に逃げられたと言うでは無いか!コイツらが裏で繋がっていて、逃走に手を貸したという可能性もゼロではあるまい!!」

「それは……」

「我々のする事に口を挟むな!!何度言えば解る、この雌戌が!!」

「くっ!!!」

クレアの端整な顔が微かに曇る、奥歯を噛み締める音が聞こえて来そうだった。

 

「そこまでにしたまえ」

「!?」

不意に掛けられた声に、隊長が顔を向ける。

「女性に対してその様な物言いをするなど、貴族として許される事ではないな」

「何だ貴様は!誰に向かって言って……、え??」

隊長が地面に手足を付いて上目遣いに自分を見上げるライダースーツの女性を見つめる。

「……ひ、ひ、姫様!?!?」

「ふふ、久しぶりだね、隊長」

「な、何故こんな所に!?い、いや、それよりもその格好は一体?」

「ふっ、淑女があられもなく両手足を付いて、腰を浮かす理由など1つしかあるまい。余計な詮索は無用だ!」

「???……、は、はあ……」

 

どんな理由だよ、って言うか、いい加減に立て。

 

フィーの切な願いが通じたのか、ようやくアンゼリカが立ち上がって隊長と向き合う。

 

「彼等の無実は行動を共にしていた私が保証する、それではどうだい?」

「ひ、姫様がそう仰るなら……。い、いえ、如何に姫様のお言葉でも、こればかりは従う訳には参りません!」

「ほう、私の言に従えないと?……という事は親父殿の差し金、という事かな?」

「自分の口からは何も言えません」

 

いつも通り面倒な事になってきたな、と顔をしかめるフィー。

その時、背後から坑道全体が震える程にけたたましい導力音が鳴り響いた。

 

え、この音って……。

 

振り返って背後にある採掘用の縦穴を注視すると、見覚えのある黒い飛行艇が姿を現せた。

ガレリア要塞の一件で目にしたのと同型の機体だ。

 

 

 

「くくく、お取り込み中に済まないが、この辺りで失礼させて貰うとしよう」

Cの機械的な声が坑内に響き渡る。

 

成る程、どうやって鉱山に侵入したかが気になってたんだけど、あれで直接乗り付けたワケか……。

 

「では諸君、いずれまた会おう」

飛行艇はゆっくりと浮上を始める。

 

「逃がすな!撃て!」

隊長の命令を合図に領邦軍が一斉に射撃を始める、釣られて憲兵隊員達も銃を構えた。

 

イヤイヤ……、無理でしょ。そんなんじゃ威嚇にもならないよ。

 

完全に逃げられた。フィーがそう思った瞬間、唐突に飛行艇が爆発を起こす。

 

えっ……。

 

船体が炎上し、制御を失う飛行艇。

 

なんで??たまたま銃弾が導力エンジンに命中した?

……

……

……イヤ、違う。今確か……。

 

轟音を立てながら、テロリスト達と共に飛行艇は縦穴の底へと落下していった。

 

あっちだ。

 

その場に居る全員の視線が墜落していく飛行艇に集まる中、誰にも気付かれる事なくフィーは静かにその場を離れた。

 

 

 

 

 

「犯罪者相手とは言え何という非道な事を!どういうつもりだ貴様ら!!」

 

領邦軍の隊長とクレアが激しく言い争う。

リィン達はその様子を、離れた所からただ静観する事しか出来ずに居た。

 

「待って下さい、今のは我々の狙撃によるものではありません。恐らく、飛行艇の内部に爆発物が仕掛けられていたのだと推察します」

「貴様達が射撃を始めた途端に爆発したのだぞ!」

「それはただの偶然に過ぎません。そもそも、発砲を先に始めたのはそちらでは?」

「な!?、我々に責任を擦り付けるつもりか!!」

隊長のこめかみに青筋が立つ。

「雌戌ごときが、格式ある我が領邦軍を愚弄するつもりか!!」

クレアも負けずに鋭い視線で隊長を睨み付ける。

「事実を申した迄です」

「黙れ!我等の領地を荒らすだけに飽き足らずこのような狼藉、もう我慢がならん!!」

隊長が背後に控える部下達に告げる。

「総員!この場に居る者共を拘束……」

 

「いつからザクセン鉄鋼山は侯爵家の領地になったんだい?」

 

涼やかな声が隊長の命令を遮った。

その場に居る全員が声の方へと視線を向ける。

長く濃い金髪に紅いローブを纏った男が供を連れて立っている。

皇族、オリヴァルト・ライゼ・アルノール皇子その人であった。皇子の後ろにはミュラーとサラ、それにクロウの3人が付き従っている。

 

「ザクセン鉄鋼山の所有権はアルノール家にあり、ログナー家とラインフォルト社には管理と運用をお願いしているだけだと記憶していたが……、私の勘違いかな?」

「お、お、お、オリヴァルト皇子!?い、いえ、その……」

先程迄の威勢が嘘のように畏まる隊長。

「ふふ、ではアルノールの名において、この場は私に任せて貰いたいんだが、宜しいかな?」

「は……、は!異論ございません!」

隊長が敬礼しながら応じる。

「領邦軍の諸君はルーレに戻り、通常の業務に当たって貰いたい。ログナー卿への事態の報告を頼むよ」

「は、畏まりました!」

「それから士官学院の生徒達だが、彼等の身の保証は私がしよう、それでは如何かな?」

「……は、問題ございません」

「うん、じゃあルーレの街は宜しく頼むよ、諸君!」

「は!失礼致します、皇子殿下!」

領邦軍全員が皇子に敬礼し、足早にその場を去って行った。

 

 

 

「丁度良いタイミングだったようだね」

皇子が気さくな様子でリィン達に話し掛ける。

「オリヴァルト皇子、ありがとうございます助かりました」

「ふふ、何、この位どうという事もないさ。それよりも、到着が遅くなって済まなかったね」

 

「大変だったわね、アンタ達」

やや渋い顔でサラが言う。

「サラ教官……」

「っていうか、特別実習の度に行く先々でテロリストとケンカばっかして、全く……。少しは担任する方の身にもなって欲しいもんだわ」

「け、ケンカって……」

「教官、僕たちは別に望んで争いを起こしてる訳じゃ……」

「解ってるわよ、あんまり無茶ばっかしないでって事。とにかくお疲れだったわね、皆」

サラの顔に笑顔が浮かぶ。

 

「クロウも無事な様だな、安心したよ」

アンゼリカがクロウを労う。

「ん?ああ、少しヒヤヒヤしたがな」

バツが悪そうにクロウが応える。

 

「クレア大尉、墜落した飛行艇の調査と保全、それに鉱山内部の後始末を憲兵隊の諸君でお願い出来るかな?」

皇子がクレアに頼む。

「はっ!了解致しました皇子殿下。鉄道憲兵隊の総力を上げて臨ませて頂きます」

「宜しく頼むよ」

 

「そんじゃ、俺達は失礼させて貰うとしようぜ。学生の出る幕は無さそうだ」

クロウが誰にともなく提案する。

「え?でも、調書とかは?」

「いえ、それには及びません。貴方達がここに居た事は私の胸の内に留めておきます」

「い、良いんですかそれで?」

「ええ、その方がお互いにとって都合が良さそうです。……構いませんか、サラさん?」

「……ふん、アンタに任せるわ」

「ありがとうございます、では事後処理はお任せ下さい」

 

「ん、じゃ、帰ろっか」

フィーが誰にともなく言う。

「?、あれ、フィー、ずっと居たか?」

リィンが問いかける。

「ん、何が?」

「いや、……俺の気のせいかな?ついさっきまでフィーの気配が無かった様な気がしたから」

「……気のせいじゃない?ずっと居たよ」

「え?そ、そうか?」

「ん、何処にも行く訳無いじゃん。疲れてるんだよ、リィン」

「そ、そうかな……」

「昨日思いっきり鼻血出してたし、貧血気味なんじゃないの?」

「いや、そんな事はないと思うんだが……」

 

「……鼻血って何?」

アリサがリィンをジトリと睨む。

「え?あ、いや……」

突然リィンの口が重くなり、シドロモドロになる。

「リィン、貴方、また何かしたんでしょ!?」

「いや、その……、お、覚えて無いんだ」

「覚えて無ければ許されるとでも思ってるの!!?」

アリサがリィンに詰め寄って問い質す、その隙にフィーはそっとその場から距離を取った。

 

やれやれ、こういう時だけは勘の良い朴念仁だ……。

 

1人で苦笑いを浮かべながらリィンとアリサを見つめるフィー。

その襟首を誰かが掴まえた。

 

「フィーちゃん」

振り返ると、口元に笑みを浮かべたクレアが立っていた。笑っている筈なのに、その姿には妙な威圧的があった。

思わずフィーの背筋が伸びる。

「何か、言う事はありませんか?」

「ん、ゴメン」

「何がゴメン、何ですか?」

「えっと、その……、迷惑掛けて」

 

クレアが溜め息を付く。

「……別に迷惑だなんて思ってませんよ」

そしてフィーを真っ直ぐに見つめる。

「でも、心配しました」

 

「……ごめんなさい」

素直に謝罪するフィー。

「ふふふ、反省してるんなら良いです」

クレアがフィーの襟首から手を放し、優しく微笑み掛ける。

「無茶するな、と言っても貴女は聞かないでしょうけど、もう少し周りに居る人達を信頼しても良いと思いますよ?」

 

??……、信頼してるつもりだけど?

 

フィーが首を傾げる。

 

でも、確かにクレアには色々と面倒掛けた、後で何かお礼した方が良いかな?

……

……

……あ、そうだ。

 

「クレア、花好き?」

「?、ええ、好きですよ」

「園芸部でワタシが育てた花があるんだけど、良かったら今度持って行くよ」

「え?私にですか?」

「ん、モチロン」

「……はい、ふふ、楽しみにしています」

クレアの顔に笑顔が広がった。

 

その後、捕らえられて居た工員達も無事に解放される、今はクレアによって調書を取られていた。

 

 

 

「じゃあ、行きましょうか」

サラの言葉を合図に、鉱山の外へ移動を開始する。

皇子とミュラーを先頭にして、その後ろにトールズの一行が付き従った。

 

「あ、そだ、まだ人形兵器とかが残ってるかもしれないからワタシが後方警戒に付くよ」

フィーが立ち止まる。

「うん、そうだね。皇子殿下も居るし、念の為その方が良いかもしれない」

「なら、フィーと俺で殿を務めるよ」

「リィンはVと戦った時に怪我してるでしょ?」

「ふふ、では私とフィー君で事に当たるとしよう」

「いや、先輩もでしょうが!」

「はあ、大丈夫よ、アタシが後ろに付くわ」

サラがその様子を見ながら、やれやれと溜め息を吐く。

「ん、サラは皇子の近くに居た方が良いと思う。……クロウ、さっき戦闘に参加してないから余裕あるよね、頼んで良い?」

「……ちっ、まぁ、しゃーねぇか。良いぜ、任しとけ」

クロウは苦笑いを浮かべながらもフィーに従った。

 

 

 

フィーとクロウが最後尾に回り、少し距離を取った所から辺りを警戒する。二人は辺りの気配を窺いながら、横並びに位置を取る。

周囲に変わった様子は無く、薄暗い坑道が目の前に続いているだけだった。

 

「……にしても面倒な事になったな、まさか飛行艇が爆発して容疑者死亡とはな」

「クロウはそう思ってるの?」

フィーがクロウの横顔を見つめる。

「あ?まぁ、普通に考えたら、あれで生きてるってのはちょっと考えられねぇだろ?」

「ん……、ま、そだね」

フィーは表情を変えずにクロウから視線を外した。

 

「坑道が崩落したんだってね、大丈夫だったの?」

「ん?ああ、俺が居た場所からちょっと離れた所で崩れたからな、何ともねーよ」

「ふーん、爆薬が仕掛けてあったんだっけ?」

「ああ、迂闊にも見逃しちまった」

「でも、崩落が起きた場所って、ワタシ達が皆で通った所だよね?」

「……ああ」

「あれだけ居たのに誰も気付かなかったなんて、よっぽど上手くカモフラージュしてあったんだろうね?」

「……ああ、そうだな」

「その後はどうやってワタシ達の所に来たの?」

「別の連絡通路が在ってよ、そこを歩いてたら運良くサラ達と合流出来てな……」

「ふーん、んじゃクレア達もそっちから来たんだろうね」

「……ああ、多分な」

「良くそんなの見つけられたね、アリサ達も知らない通路なんだろうし」

「……」

「ツイてたね、クロウ」

「……なあ、さっきから何が言いてぇんだ?」

クロウの表情が若干曇る。

「ん、別に、ちょっとした確認だよ」

フィーの表情に一切の変化は無かった。

 

「あ、そだ、さっき落とし物拾ったんだけどさ」

フィーが背中に手を回す。

「落とし物?」

「ん、コレ、クロウのじゃない?」

 

フィーの手には、大型の導力ライフルが握られていた。

 

「……なんだ?そのライフル?」

「ん、さっき拾った。多分飛行艇を撃ち落としたのはコレ」

「何でそれが俺のなんだよ!つーか、そんなの拾って来るんじゃねーよ!重要証拠じゃねーか!」

「クロウのじゃないの?」

「知らねーよ」

「クレア達に渡したら、指紋とか出て来ちゃうかもしれないから、持って来たんだけど?」

「だから俺のじゃねーって!……そもそも、そのライフルから犯人の証拠が出て来るとも思えねーがな」

クロウが薄く嗤う。

「ん、そかもね、……でも」

フィーがクロウの目の前に白い髪の毛を一本取り出す。

「これ、くっついてたよ」

「!!!」

「薬莢の排出口に挟まってた、ライフルは注意しないと耳とか挟んじゃったりするんだよね」

「……」

「どう?」

「……な訳ねぇ」

「ん?」

「……そんな訳がねぇだろ!俺はあの時マスク被って撃ったんだ!そんなモンが……」

その瞬間クロウの顔が歪む。

 

「……あ、ゴメン、勘違いしてた、これワタシの髪の毛だ。クロウと色が同じだから間違っちゃった」

フィーが悪びれた様子も見せずに謝る。

「……」

「ゴメンね、クロウ」

「……」

「……」

「……くくく、敵わねぇな、ホントによ……」

クロウの顔に笑みが浮かぶ。それは、今までに一度も見た事が無い、感情の無い笑いだった。

乾いた紅い瞳がフィーを見つめている。

 

フィーの知らないクロウが、そこに居た。

 

子猫は静かにそれを見つめた。

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