妖精の軌跡first【完結】   作:LINDBERG

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かなりマニアックな話ですが、楽しんで頂ければ幸いです。


子猫は狙った獲物を逃がさない

授業終わりの午後、園芸部の花壇に水撒きをやり終えたフィーは、学生寮までの家路を歩いていた。

 

帰ったら帝国史のレポートやらなきゃ。面倒クサイな……、適当に終わらせたら、明日の朝マキアスのレポートと交換して、名前だけ書き換えれば良いかな?

 

ただ単に盗むのでは無く、一応なりとも課題に取り組んでからトレードするのがフィーなりのルールだった。

 

あー……、何か眠くなってきた。……何もやらないで、白紙の紙と交換しちゃおうかな。もしかしたら間違えて消えるインク使っちゃったって、勘違いしてくれるかもしれないし?

 

……ルールは破る為にある、というのもフィーのルールだ。

 

 

 

ん?

 

キルシェの前に差し掛かった時、見慣れた後ろ姿が駅に入って行くのが見えた。

緋色の髪をアップに纏め、ベルトが2本付いた紺色のコートを颯爽と翻し、無駄に美人なその女は駅舎の中に姿を消した。

 

サラ?

 

フィーは小首を傾げながらその様子を見つめる。

 

こんな時間に何処行くんだろ?

サラ・バレスタインのアフターファイブといったら、寮のロビーでシャロンが作った肴を摘まみながらビールを飲む、以外は有り得ないのに……。

 

本来なら敬愛すべき自身の担任教官を、メタメタに扱き下ろすフィー。

 

気のせいかな、いつもより気合いが入ってる様な感じだったな……。

……

……

……!!

男か!??

 

フィーはスッと気配を消すと、追跡を開始した。

 

 

 

駅に入ると物陰に隠れながら、サラの様子を確認する。やはり、いつもと雰囲気が違う気がした。

どうやら男に間違い無さそうだ、とフィーは結論付ける。

 

サラがデート……、これは生徒としてほっとけ無いね。

 

フィーはニヤニヤしながらもしっかりと気配を消し去り、サラの一挙一動に目を光らせる。

 

丁度ヘイムダル行きの列車が駅に入って来た。この時間帯に上り列車を利用する人は余りいないのだろう、乗客は殆ど乗っていなかった。

 

ヤバいな、これじゃいくら気配消しても、すぐにバレちゃうよ……。

 

思案するフィーを他所に、サラは列車へと乗り込んで行く。

 

はぁ……、緊急事態だし、しょうがないか。

 

フィーはワイヤーフックを取り出すと、素早く列車の屋根に引っ掛け、そのまま音も無く屋根によじ登った。

発車のベルがホームに鳴り響き、列車がゆっくりと動き出す。ものの数秒でスピードに乗った列車は、一路緋の帝都を目指した。

フィーは列車の屋根にしがみつき、高速走行の風圧に晒され続ける。

 

ふふふ……、絶対に逃がさないよ、サラ。

 

スパイ小説さながらのスタントを実行しながら、フィーは口元に笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

列車がヘイムダルに到着し、サラが下車するのを確認してから、フィーは屋根から飛び降りて追跡を再開する。時刻は既に夕方、帝都の駅は混雑していて、帰宅する利用客でごった返していた。

 

うわ、混み過ぎだろ!見失わない様にしないと。

 

隠形を駆使しての尾行はフィーにとっての得意分野だが、人混みに紛れて目標を追跡するのは苦手な部類だった。理由は簡単、背が低いからすぐに対象を見失ってしまうのだ。

同じ街中での追跡行為であっても、人が疎らな場所であれば、ある程度は相手の気配を察する事も出来るが、これ程混雑していてはそれも難しい。

 

スリーマンセルが尾行の基本だからな……、クロウとアンゼリカ辺りに連絡して、手伝って貰えば良かったかな?

 

列車の屋根にしがみついてる間にARCUSで呼び出しを掛け、導力バイクで先回りして貰えば良かった、と悔いるフィー。

そんな事を考えている間にサラの姿は人波に紛れ、完全にフィーの視界から消えていた。

 

ヤバッ!ヤっちゃったか!?

 

人垣を押し退けながら、慌てて周囲を見回すフィー。

 

ちぃ、絶対に見つけ出す!!

 

翡翠色の瞳に決意の炎を宿し、サラの行方を懸命に捜索する。だが、いくら探してもその姿は見当たらなかった。

 

くっそー……多分もう駅舎の中には居ないだろうな。ヴァンクール大通りに出たか、トラム乗り場に行ったか……。

!!

まさか空港に向かって飛行艇に乗ったか!?……そうなると、これ以上の追跡は無理かな?いっその事クレアと皇子に連絡して、全国に緊急指名手配掛けて貰うか?それならいくらサラでも逃げ切れないだろ?

 

頼れそうな人脈は、全部使ってやろうと考える。

 

取り敢えずトラム乗り場に行ってみようかな。それで見つからなかったら、また考えればいいや。

意地でも逃がさないよ、サラ!

 

己に気合いを入れ直し、フィーは移動を開始した。

 

 

 

目的地へ辿り着くと、見慣れた後ろ姿が停車しているトラムへと乗り込んでいくのを目撃する。

 

居た!!

 

気配を断ったまま素早く接近し、列車の時と同じ様に屋根によじ登ろうと考えるフィー。しかしタッチの差で導力トラムは発車してしまう。ワイヤーを投げようかとも思ったが、周りの人の目が気になり、それは自粛した。

仕方無くフィーは、トラムの後を追いかけて走り出す。が、駅中と同様に帰宅する人波に遮られ、上手く進む事が出来ない。

 

ん、この位じゃ諦めないよ!

 

一度通りを外れて建物の隙間に入り込むと、雨樋を伝ってビルの屋上へとよじ登り、上からサラが乗ったトラムを探す。

 

……あれだね。

 

目標のトラムは、既に数百アージュ離れた所を走っていた。

 

行くよ!

 

フィーは助走を付けると、ビルからビルへと飛び移りながら追跡を再開する。自身の身体能力を最大限に発揮し、絶対に逃さないという強い意思を瞳に宿し、夕闇に暮れていく帝都の空を、小さな銀髪の影が軽やかに跳躍した。

 

ふふふっ、ワタシから逃げられると思ったら大間違いだよ、サラ!!

 

建物間の距離がある所はワイヤーを巧みに使い、大通りを走るトラムを視界の端に捉え続け、フィーは追跡を続行した。

 

 

 

 

 

サラが乗り込んだトラムは、アルト通りを経由してガルニエ地区へと到着した。

数名の降車客と一緒にトラムを下車するサラ、そのままホテル脇の路地を通り抜け、裏通りの方へと足を進めている。

フィーは宝飾店サン・コリーズの屋根の上からその様子を確認していた。

 

確かガルニエ地区は、一本路地を入ると歓楽街になってた筈だな……。一杯引っ掛けてからホテルにでも行くつもりか?

 

屋根から飛び降りると、十分な距離を置いてから追跡を再開する。

既に日は落ちて、辺りには夕闇が色濃く漂っていた。ある程度の人出はあるが、見失う程では無い。

尾行するには絶好の環境だ、余程警戒されない限り気付かれる事は無いだろう。あまり土地勘の無い区画ではあるが、これなら何とかなりそうだ。

フィーは慎重に間合いを計りながら、サラの後ろ姿を追い続けた。

 

 

 

尾行を続ける事数分、フィーは少し違和感を感じていた。

 

あれ?この場所って、一つ前の十字路を曲がった方が近かったような……。

 

目的地が何処かは解らないが、何となくサラが遠回りをしている様な気がした。

そんな事を考えていると、ビルに挟まれた一際細い路地へとサラが入って行く。

 

おっと、見失っちゃマズイね。

 

すかさず後を追いかけ、路地へと突入する。

 

……えっ?

 

地元の人間しか使わない様な、細い一本道の路地。フィーが覗きこむと、そこには誰も居なかった。

 

何で???

 

両側は全部壁で、隠れる様な場所も無い。

 

走って一気に駆け抜けた?……いや、そんな気配は感じなかった。急にこの場所で気配を断った様な感じだ。……何の為に?

 

首を捻るフィー、その時不意に襟首を捕まれた。

「……アンタ、何してんのよ」

聞き慣れた、良く通る声が耳元で囁かれる。振り向くと、予想通りの人物がジトりとした目を向けていた。

「あ、サラ。……偶然だね、こんな所で」

取り敢えずポーカーフェイスを崩さずにトボけてみせるフィー。その様子を見たサラは、やれやれといった様子で溜め息を吐いた。

「はぁ……、まさか尾行〈つけ〉られてるとは思って無かったわ」

溜め息を吐きながらフィーを解放して腕を組むサラ。

「まったくアンタは……。それにしても良くここまで追って来たわね、警戒してなかったら気付かなかったわ」

「ん、まぁね……」

大陸鉄道の屋根によじ登り、帝都のビル街をピョンピョン飛び移ってここまで追って来た事は勿論秘密だ。

 

ふと見ると、横の壁に靴跡らしき汚れが点々と付着していた。

 

……成る程ね、一旦路地に姿を隠してから上に飛んで背後に回った訳か。……やるね、サラ。

 

少しだけサラを見直すフィー。

 

「それで、何でくっついて来たのよ?」

「ん、……いや、ちょっとね」

「はぁ……。何考えてるのか知らないけど、アンタの想像とは多分違うわよ」

やれやれといった様子を見せるサラ。

「想像って?」

「どうせアタシが渋いオジ様と一緒に居る所でも見られると思って付いて来たんでしょ?」

「ん、始めはそう思ってたんだけど……、サラに限ってそれは無いな、と思って考え直した」

「何でアタシに限って無いのよ!!?……それじゃ、何でわざわざ、後を尾行て来たわけ?」

「サラ、借金あるとか言ってたじゃん? だから万が一『熟女売春』にでも手を出してたら、止めなきゃなと思って」

「そんな訳無いでしょうが!!!っていうか誰が熟女だ!!誰が!!?そもそも!誰のお陰で借金まみれになったと思ってんのよ!!?」

「? ……ダレ?」

「アンタとリィンよ!!!」

「そだっけ?」

自分に都合の悪い事はすぐに忘れるフィー。

「はぁ……、もうこの話はいいわ。教え子にお金の話なんかしたくもないし……」

「ん、さんくす」

「……少し位は反省しなさいよ」

「ん、らじゃ」

「……まったく」

諦めた様に肩を落とすサラ。

「あれ?それじゃこんな所で何してるの?」

「……、……はぁ」

再び溜め息を吐くサラ。

「ここまで来て帰りなさいって言っても、アンタは訊かないわよね」

「ん、……多分ね」

「絶対でしょ!……もう、しょうがないわね。いいわ、付いてらっしゃい」

路地の先に向かって足を進めるサラ、その後をフィーがおとなしく付いて行った。

 

 

 

そのまましばらく路地道をクネクネと進み、2人はとある雑居ビルへと入って行った。5階建てで、それぞれのフロアに飲食店などが入っている。

サラは無言のままエレベーターに乗り込み、フィーもそれに従った。

「何階?」

操作パネルを指差しながらフィーが訊ねる。

「ふふふ、ちょっと退いてなさい」

サラは口元に笑みを見せるとフィーを下がらせて、自分でパネルを何ヵ所かタッチする。

導力モーターの駆動音を響き渡ると、エレベーターは下へと向かって動き出した。

 

え?地下?

 

思わず操作パネルを見る、B1の表示は何処にもない。

「暗証ナンバーシステムよ、ちょっと訳ありの場所だからね」

サラは思わせ振りにウインクして見せた。

 

 

 

エレベーターを降りると、そこにはきらびやかながらも、喧騒に包まれた空間が広がっていた。25アージュ四方の広い部屋のあちらこちらで、熱気に溢れた客達が思い思いのゲームに興じている。

カード、ルーレット、スロット、バックギャモン……、定番のゲームに加え、東方で行われる花札や丁半といった、帝国では余り馴染みの無いコーナーまである。

 

カジノ?

 

フィーは目を細めて、非日常の光景を見つめた。

 

「アタシの行きつけの店よ、……まぁ、非合法の店なんだけどね」

サラが肩を竦めながらも悪びれずに説明する。

「チップのレートは1枚1,000ミラ、ゲームベットは客次第の青天井、オーナーは共和国のマフィア。ふふふ、どう?」

「……」

 

……いやいや、どう?って言われても、コメントに困る。

 

「いらっしゃいませ、サラ・バレスタイン様……」

燕尾服を着た男が近付いて来た。

「どうも~、店長。遊びに来たわよ」

「いつもご贔屓にして頂き、ありがとうございます」

店長と呼ばれた男はうやうやしく一礼して見せた。

「前に預けてたチップを出してくれる?」

「畏まりました、ではそちらのカウンターで暫くお待ち下さい」

入り口脇に設えたバーカウンターへ促す。

「……ところで」

チラリとフィーの方へ視線を向ける。

「そちらはお連れ様でいらっしゃいますかな?」

「ええ、アタシの紹介って事にしてくれる」

「畏まりました、では暫くの間おくつろぎ下さい」

男は丁寧に挨拶を済ますと、店の奥へと去っていく。

 

 

 

「行きつけって言ってたけど、良く来るの?」

カウンターに腰掛けた2人は、バーテンが作ってくれたビールとジュースをそれぞれ飲んでいた。

「ん?年に数回よ。気分転換にちょっと遊んで、後は情報収集が殆どかしら、こういう場所でしか聞けない話もあったりするからね」

 

成る程ね。帝都の裏カジノ……、そりゃ色々と話が聞けそうだ。

 

「それにこの店、嬉しい事に飲み放題なのよね~♪」

はじける様な笑顔でサラは手にしたグラスを飲み干し、お代わりを頼む。

……非合法店を居酒屋代わりにしているらしい。

「で、今回は単純にギャンブルしに来たワケ?」

「まぁ今回はね。今月中には病院に支払いしなきゃなんないし。そのお陰で『北』に送ろうと思ってたお金も、パーになっちゃったからね」

「あっ……」

思わず俯き、視線を反らす。

「……ゴメン」

「だから気にしなくて良いってば、……流石に5,000,000ミラには、たまげたけどね」

おどけた様に肩を竦めて見せるサラ。

「あれ?っていうかワタシが一緒に居ても良いの?未成年だし学生だよ?」

「ああ、それなら平気よ、元々非合法なんだから。学生でも犯罪者でも貴族でも平民でも、ミラさえ持ってれば問題ないわ」

 

ミラさえあれば、か……。

 

ふと自分の懐事情を思い出す。

 

5,000ミラ位あったかな?

 

「オーナーはカルバードのマフィアって言ってたっけ?それって……」

「黒月の傘下じゃないわ、もうちょい小さい組織よ」

「ふーん……」

 

 

 

「お待たせ致しました」

先程の店長が戻って来た。

「こちらがお預かりしておりました、サラ様のコインでございます」

箱一杯のメダルを手渡す、500枚位はありそうだ。

 

意外と持ってるね、サラ。

 

心底サラを見直すフィー。

 

「そちらのお嬢様は如何なさいますか?」

「ん……」

財布からなけなしの5,000ミラを引っ張り出す。

「そんじゃ、これで5枚だけ」

「……、お嬢様、当店では最低貸し出しが10,000ミラで10枚からとなっているのですが……」

店長が苦い顔を見せる。

「まぁ、今回は初回という事で特別に……」

店長は5,000ミラを受け取ると、ポケットからコインを5枚出してフィーに手渡す。

「さんくす」

「では、ごゆっくりとお楽しみ下さい」

店長は再びうやうやしく一礼し、店の奥へと去って行った。

 

「アンタ、ゲームのルールとか解るの?」

「ん、団に居た頃は身内で良くやってたから」

「そう、それなら大丈夫そうね。手持ちのコインが無くなったらアタシに言いなさい、回して上げるから」

「らじゃ。目標は?」

「思いきって10,000枚」

 

デカく出たね、10,000,000ミラかよ。

 

「それじゃあね」

サラはフィーを1人残すとスロットコーナーの方へ歩いて行き、角の台に腰を下ろした。

「紫電のバレスタイン、参る!!」

スロット台相手に名乗りを上げて威嚇し、慣れた手つきでコインを投入する。

リベール王国の港町にある小さなカジノのスロット台は、目押しさえ出来ればアホみたいにメダルが出て来る、とか聞いた事があるけど、この位の店になると流石にそうはいかないだろう……。

大丈夫かな?

 

さてと、ワタシはどうしようかな?

 

片手に持ったコインを見つめる。

 

チップ5枚じゃ一発勝負で終わりだからな……。ま、何とかなるか?

 

取り敢えずカジノホールを彷徨いてみる事にした。

 

 

 

ポーカーとブラックジャックのテーブルをスルーし、フィーはとあるテーブルで足を止めた。

 

バカラか……。

 

トランプゲームの一種で、バンカーとプレイヤーのどちらが勝つかを予想するゲームだ。

賭けた方が勝てば等倍(1倍)、タイ(引き分け)に賭けて当たれば8倍、コミッション料(店に払うゲーム代)はゲーム終了時。

 

ん、これなら5枚でも参加出来るね。

 

フィーは席には座らず、後ろから少し観戦する事にした。

 

「ネクストゲームに移ります」

ディーラーが鮮やかにカードをシャッフルする間に、客がそれぞれベットしていく。カードが配られゲームが始まる。

テーブルには6人の客が付いているが、見たところ貴族風のデップりとしたオヤジが1人勝ちしているらしい。

ニヤニヤと笑いながらスクィーズ(バカラでは1番多くプレイヤー側にベットした人が、カードを捲る権利が発生する)していく。

……

……

……

オヤジが「ガハハッ!」と豪快に笑った。

「……おめでとうございます」

ディーラーがベットされたチップを回収し、配当を支払う。

 

その後もオヤジのツキは続き、コインの山が出来上がっていった。

 

なかなかヤるね。

 

フィーは後ろから、じっとその様子を見つめていた。

 

気を良くしたオヤジが大勝負に出た。手持ちのコインの半分近くをベットする、400枚近くは有りそうだ。

オヤジは意気揚々と配られたカードをスクィーズする。

……

……

……

「……タイ、……残念ですね」

ディーラーが低い声で告げた。

オヤジはガックリと肩を落として、悔しげにカードを放り投げた。

 

……潮が変わったかな?

 

「ネクストゲームに移ります」

ディーラーがカードをシャッフルする。

フィーは満を持して空いた席に座ると、オヤジがプレイヤーにベットするのを確認してから、バンカーに5枚のコイン全てをベットした。

……

……

……

「ナチュラル(カードが配られた時点で勝負が決する事)、バンカーの勝ちです」

フィーの元に10枚のコインが返って来た。

「ん」

表情を変えずにそれを受け取り、次のゲーム。再びオヤジがプレイヤーに賭けるのを見てから、バンカーに10枚のコインを張る。

……

……

……

「……バンカーの勝利です」

20枚のコインが返って来る。

「ん」

次のゲームも同じ様にオールインする。

……

……

……

「……バンカーの勝ちです」

40枚のコインが返って来る。

……

ざわ

……

「……バンカーの勝ちです」

80枚のコインが返って来る。

……

ざわ、ざわ

……

「バンカーの勝ちです」

160枚のコインが返って来る。

今度は100枚だけベットする。

……

ざわ、ざわ、ざわ

……

「バンカーの勝ちです」

200枚のコインが返って来る。

 

ふぅ……、イイ感じかな。

 

フィーは一つ小さく息を吐き出すと、通り掛かった店員さんにオレンジジュースを注文した。

 

さあ、ここからだ!

 

大きく見開いた瞳がギラリと光った。

 

 

 

後に伝説となる(かもしれない)一夜が幕を開けた。

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