妖精の軌跡first【完結】   作:LINDBERG

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子猫と神速は互いに影響される事はあっても仲良くなる事は無い

……小娘にはああ言いましたが、コレはかなりヤバい状況ですわ。

 

血染めのシャーリィと相対するデュバリィは、少しだけ悔やんでいた。

 

考えてみれば相手の得物がアサルトライフルである以上、間合いの不利はわたくしの剣でも変わりありませんわ。……いえ、寧ろ小回りの利く小娘の方が、良かったやも知れませんわ?

 

今更ながらに、自分のうかつさを嘆く。

 

それにしても何故わたくしは、自分からわざわざ貧乏クジを引いたんですわ?こんな戦闘狂の娘の相手など、あの小娘に任せてしまえば良かったですわ?

……いえ、それ以前に、何故わたくしは小娘に付き合って、こんな所で剣を振っているのですわ??マスターの言い付けがあるとはいえ、レストランでの取り引きがブラフだった時点で、わたくしの役目は終わりの筈ですわ???

 

思わず首を捻る。だが納得のいく答えは、得られそうになかった。

 

「へぇ~、アタシと向き合ってる最中に、考え事なんて余裕じゃん?お姉さん♪」

血染めの娘が語りかけて来る、ニヤニヤとした薄ら笑いを隠そうともしない。

 

ふん、イチイチ癪に触る娘ですわね。小娘が言っていた通りに、この娘達が結社と関わっているのだとしたら、少し考えた方が良いやも知れませんわ……。

 

そこまで考えて、苦笑いを浮かべる。

 

結社が何をしようと、わたくしがマスターの為に剣を振るうのに、何ら変わりはありませんわ!騎士は1度決めた主に、絶対の忠義を尽くすのが務めですわ。

 

……ん、それじゃあ、もしもマスターが間違った道に進んじゃったら、どうするの?

 

へっ?

 

不意に何処からか、妙な幻聴が聞こえた。

 

忠誠を尽くしてる主が、自分の思ってた人とは違ってても、アンタはそれに従うの?

 

そ、そんな事は有り得ませんわ!?我がマスターに限って、そんな……。

 

言い切れるの?アンタはマスターの事を、全部解ってて従ってるの?

 

そ、それは……。

 

あり得ないなんて事は、あり得ないよ。

 

「やかましいですわ!小娘ぇ!!!」

思わず口に出してしまった。

「っ?……何が?」

突然の事に向かい合うシャーリィが、不思議そうにこっちを見つめている。

「あっ。……ふ、ふん!コチラの事ですわ!気になさらないで下さいまし!!」

少しだけバツが悪そうに、デュバリィは口元を歪めた。

 

「……ふ~ん」

やや含みを持った様に、シャーリィが鼻を鳴らす。

「な、何ですの??」

「イヤ、何だか知らないけど、随分と苦労してそうだな~って♪」

「なっ!?貴方に何が解ります!!」

「ん~、そりゃ知らないけどさぁ?何となくネ♪」

「初対面の貴方に、そんな事言われたくありませんわ!?」

「まぁまぁ、そう怒りなさんなって♪あっ、そうだ!お詫びに良い事してあげよっか?」

「?、良い事?なんですの?」

今度はデュバリィが、不思議そうにシャーリィを見つめた。

「うん♪オッパイ揉んであげるよ♪」

……

……

……

「……、は、はぁぁ!????」

「むふふふっ♪思い悩んだ時は、マッサージが1番!てネ♪持論だけどさ」

シャーリィの左手が妖しげに蠢く。

「な……、な……、なあぁぁぁ!?????」

思わず服の上から、胸を隠すデュバリィ。

「大丈夫だよ、チョットだけだからサ♪女同士もたまには良いモンだよ♪」

「お、お、お、女同士!??????」

肌が粟立ち、背筋が凍り付く。

「あはははっ、可愛いね、お姉さん♪あ!ひょっとして女とは初めて?あはっ♪もしかして、男とも経験無かったりして?」

ニヤニヤと猥雑な笑みを浮かべる。

 

……くっ!!

 

「……ば、バカにするんじゃねぇですわ!?め、メチャクチャ、ヤりまくってますわ!!」

「……、えっ?」

「わ、わたたくしと出会った男は、全員わたくしの上で果てましたわ!!」

「え、えっ?……い、いや……あ~、その~、お姉さん?」

「わたくしに掛かれば!!どんな男でも腹上死ですわ!!!」

早口で捲し立て、力強く言い切った。

 

「……あー、そうなんだ、……ふーん」

思わず、気の毒な視線を向けるシャーリィ。

「んー……なんか、その……。ゴメンね、お姉さん」

シャーリィは生まれて初めて、戦闘中にもかかわらず相手から視線を逸らした。

「あ、あ、謝るんじゃねぇですわ!?まるでわたくしが、嘘を付いているみたいじゃないですの!!!」

「あ……、そっか。……うん、ゴメン」

「だからっ!!謝るんじゃねぇと言っていますわ!!!」

デュバリィの全身から、哀しみと羞恥が入り交じった、負のオーラが立ち上った。

 

ぜっ、絶対にぶった切ってやります!!

 

負のオーラが大剣に集中し、目の前の敵を消滅させんと、莫大なエネルギーを放つ。

気のせいか右手に持った大剣から「デュバリィさん、そんなすぐにバレる嘘は、付いちゃ駄目だよ……」という声が聞こえた気がしたが、耳を塞いで無視した。

「行きます!!覚悟しやがれですわ!!」

大上段から怒りの一撃を振り下ろす。

「あー……、参ったネ……こりゃ……」

シャーリィは気の毒な視線を送ったまま、身体を捻ってそれを避ける。

その瞳はまるで『こんな残念な女……、生まれて初めて見た』と言っている様だった(あくまでデュバリィの私見です)

 

きぃー!!何故わたくしがこんな目に!?それもこれも全てはあの疫病神(フィー)のせいですわ!!人の頭の中にまで、ズケズケと入って来るんじゃねぇですわ!!

 

剣を正眼に構え直し、シャーリィに相対する。

 

マスターが間違った道を進んだら?そんな事は有り得ませんわ!!

 

力強く、剣を握り直す。

 

マスターが正しい道を進むのではありません!マスターが進む道こそが正しいのです!!ならば、わたくしはその露払いをするだけですわ!!!

 

……そんな事言っちゃって良いの?後戻り出来なくなるかもよ?

 

もう黙りやがれですわ!!貴女なんかの知った事じゃ、ありませんわ!!

 

頭に入り込んだ、妙な幻を無理矢理追い払った。

 

わたくしの騎士道精神は、偉大なるマスターから授かったものです!!ならば!わたくしを形作る全てを、あの御方に捧げるのは当然の事ですわ!!

 

……

……

……それと!

 

鬼神の如き形相で、シャーリィを睨み付ける。

 

カレシ居ない歴=実年齢で!!何か文句がありやがるのかですわ!!!!

 

全てを灰塵に帰さんとする、怒りの業火を剣に纏わせ。

「でやあぁぁぁぁ!!!」

全身全霊を込めて斬りかかった。

 

「……あははっ。まぁ、コレはこれで、良っかな♪」

シャーリィは再び楽しげな笑みを浮かべると、テスタロッサを横に構えて、デュバリィの一撃を受け止める。

大剣とチェーンソーが鍔迫り合い、真っ赤な火花が立ち上った。

「オッパイはお姉さんを倒してから、イッパイ味わって上げるよ♪」

「オッパイ、オッパイうるさいですわ!!少しは自重なさい!!」

「まぁ、そう言わずに一度試してみなって♪病み付きになるかもよ?」

「があーっ!?もう、お黙りなさい!!」

剣を払って一度距離を取る。

「貴女の様な危険人物、わたくしがこの場で成敗してくれますわ!!」

「あははは!ヤれるモンなら、ヤってみな!!」

笑顔のままテスタロッサを腰高に構える。銃口がデュバリィへと向けられた。

 

ふん、至近距離からの銃撃ですか。2度も同じ手を……。そんなものが、この神速のデュバリィに……。

……へ???

 

「焼き付くしてあげるよ♪」

テスタロッサが文字通りに火を吹き、広範囲に灼熱の炎がバラ撒かれた。

 

か、火炎放射!?……そんなの聞いてませんわよ!!

 

スカートの裾を焦がしながらも、何とか横っ飛びに避ける。

 

あ、熱っーー!!?ど、どうなってやがりますの、あのチェーンソーは!?制作した人間の人格を疑いますわ!!

 

「ヒュー♪良く今のを避けられたネ、ヤるじゃん♪」

間髪入れずに、今度は銃撃をブチ込まれる。

 

ちぃ!?

 

大剣を盾に使い、サイドステップを駆使して、何とか凌ぎ切る。

 

っ!!、くっ!

 

左足に鈍い痛みが走る、さっきの炎で火傷になったらしい。行動にはさほど支障はなさそうだが、痛い事に変わりは無い。

 

「もっともっと愉しませてよ♪あははは!!!」

獰猛な笑みを浮かべ、シャーリィがチェーンソーを振り回しながら突進して来る。

「ちぃ!調子に乗るんじゃ無ぇですわ!!」

左足の痛みを堪え、デュバリィは真正面からそれを受け止め、力任せに押し返した。

「でやぁーっ!!」

スピードを全開にしてシャーリィに肉薄し、一心不乱に攻める。ズキリと左足が痛むが、下唇を噛んで堪える。

 

こんな変態娘にヤられてなるものですか!!この神速のデュバリィを、甘く見るんじゃねぇですわ!!!

 

デュバリィの剣先がシャーリィの肩を掠め、生温かい鮮血が流れ出る。

「あははははっ!最高だよ♪お姉さん!!!」

自らの血を浴びながら至福の表情を浮かべ、歓喜の笑い声を上げるシャーリィ。

……何やら変なスイッチが入ってしまったらしい。

 

なっ!?何なんですの、この娘は!??ヤバ過ぎですわ!!!

 

「もっともっと愉しもうよ♪一緒にイこう!!煉獄なんかよりも、ずっと楽しい所にさぁ!!」

寒気がする程に、おぞましい笑顔が浮かび上がっている。

「ぎ、ぎぃやぁー!??1人で勝手に行きやがれですわ!!!」

休む事無く剣を振り続ける。

 

ぜ、ぜ、絶対に敗けられませんわ!!もし敗けて下手に生き残りでもしたら、何をされるか解ったモンじゃありませんわ!!!

 

強迫観念にも似た恐怖に駈られながらも、デュバリィは間断無く大剣を繰り出し続けた。

 

 

 

 

銀行入口付近

 

「ちぃ!」

フィーは正面から断続的に襲って来るライフルの銃撃を、予測と勘だけで転がる様に避け続け、手近な樹木の陰に身を隠した。

 

ふぅ……、思った以上に厄介だね。

 

両手に持った双銃剣を構え、一つ大きく息を吐いた。

射撃の正確性、タイミング、間合い……、流石は赤い星座が誇る一流スナイパーだ。ちょっとでも隙を見せたら、1発であの世逝きだろう。

苦笑いを浮かべながら、木の陰から銀行の入口付近を見つめる。相手が銀行のドア影に隠れているため、姿は視認出来ないが、濃密な殺気が漂い続けていた。

 

さて……、どうしよっか……。

 

周囲を見回しながら策を練る。

遮蔽物が無い広い空間、真っ昼間の青空の下、相手は百戦錬磨のスナイパーで、姿が見えないから正確な位置が掴めない……。

……悪条件しか揃って無い。自分1人ならもう諦めて、逃げる算段に移っているところだ。

チラリと視線を背後に飛ばすと、デュバリィとシャーリィが、剣とチェーンソーをバチバチにぶつけ合っているのが見えた。

流石にここで自分だけがエスケープするのは、人として……イヤ、主人公として許される事では無いだろう。

 

はぁ、面倒くさいな……。

 

ヤレヤレと肩を掠める。

 

マジでどうしよ?覚悟を決めて飛び出すか?2~3発の被弾なら、急所さえ避ければ何とか我慢できるかな?

……却下だな、どう考えても嫁入り前の娘が、する様な事じゃねぇ……(今更だけど……)

とは言っても、あんまり時間も掛けられないしなぁ。何とか隙を作るなりして、早めにケリを付けて向こうに手を貸さなきゃ……。

 

ふぅー、と、また一つ息を吐き出す。

 

ふん!小娘がわたくしの心配をするなど、1億年早いですわ!!

 

えっ?

 

微かに聞き慣れた声が聴こえた、……今日1日散々聞かされた声だ。

 

何を生意気に他人の心配をしていやがります!?身の程を知りやがれですわ!!

 

ん、でも、そっちもヤバいかな?って。

 

舐めるんじゃねーですわ!小娘!!貴女如きに心配される、わたくしではありませんわ!!

 

あ、そう?……んじゃ、ワタシは逃げちゃっても良い?

 

!?、何を抜かしてやがります小娘ぇぇ!!何処の世界に、条件が悪くなったら全部人任せにして、逃走する主人公が居やがります!!

 

いや、心配いらないって言うから……。

 

こっちの心配は、要らないと言っているだけですわ!!気合いを入れ直して、自分がヤるべき事を、しっかりヤりやがれですわ!!

 

ん、らじゃ……あ、うるさいから、もういいや。

んじゃ。

 

ちょ!?うるさいとは何事です!!ふざけんじゃ……お待ちなさい!!まだ話は……。

 

……それっきり、妙な声は聴こえなくなった。

 

やれやれ……、ホント、口喧しい相棒だ。

 

口元に薄い笑みを浮かべる。

 

そんじゃ……、リクエストに応えて、気合い入れてヤってやるとするかな。

 

真昼の太陽に照らされた翡翠色の瞳が、楽しそうに輝いていた。

 

 

 

 

「むう……」

ガレスは唸る様に一つ息を漏らし、ライフルスコープで木の陰に隠れる標的を捉え続ける。

 

予想以上に手強い……。経験則なのか、ただの勘なのかは解らないが、紙一重で見事にこちらの銃弾を躱し続けている。顔を隠しているので何者かは解らないが、かなりの手練れ。それに……、自分と同じ匂いを発している。閃撃と血煙が舞い飛び、生と死が交差する場所の匂い。嗅ぎ馴れた、自分の身体に染み付いた匂い。

 

猟兵……。

 

恐らく間違い無いだろう、それもかなりの高ランクと見た……。

ふっ、お嬢ではないが……、確かに血が騒ぐ。

 

意図せずにだが、微かに口元が弛んだ。

 

さあ、姿を晒すが良い。一発で決めてやる!

 

集中力を更に高め、スコープを覗き込む。

 

……!?

 

紅い制服に身を包み、顔を半分隠した娘が、無造作に木から姿を現した。

 

何だ?何を考えてる?……どう見ても隙だらけだぞ?

 

トリガーに掛けた指に力が入るが、何とか思い止まる。相手の思惑が解らないウチに仕掛けるのは、危険だと判断した。

 

何だ?何が狙いだ?……諦めた?イヤ、そんな気配は全く無い。闘気は目に見える程に充実し、口元にはふてぶてしい笑みさえ浮かんでいる。

 

!!?、なっ!!

 

娘が撃って来いとばかりに、片手で手招きしながら、ゆっくりとこちらに向かって歩き出した。

 

……イカれてる。

 

娘の狙いが解った。こちらに先に撃たせて正確な位置を特定し、特攻に近いカウンターを仕掛けて来るつもりだ。

死を恐れぬ者だけが打てる、命懸けの大博打。

しかし、娘の目に死の覚悟は全く感じられない。必ず成功させて生きて帰ってやる、という意志だけが伝わって来た。

 

……、くっくっくっ……、やってくれる。

 

思わず笑みが溢れる。

主導権はこちらにある、一撃で仕留められればこちらの勝ち。だが、外せば向こうの勝ち。

極めてシンプルかつ、この上無くスリリングな勝負。

 

……外す?自分が?…………ふっ……、あり得ない。命を張った勝負など、自分にとっては日常に過ぎない。プレッシャーや気負いを感じる事も無い。

 

……赤い星座を嘗めるなよ。

 

ガレスのライフルは、しっかりと標的の眉間を捉えていた。スコープの中では、翡翠色の双眸が、ジッとこちらを見つめていた。

 

 

 

 

さてと……、乗って来るかな?

 

自然体のまま、相手の一撃を待ち構えるフィー。

ゆっくりとした足取りで距離を詰めながらも、その実は、身体の各所を最大限に警戒させ、如何なる攻撃にも瞬時に対応出来る様に備えていた。

……一部分だけを除いて。

 

……ん、絶対に来る。

 

フィーには確信に近いものがあった。

これだけ挑発されて、アクションを起こさない猟兵は居ない。低ランクの者なら薄っぺらな自尊心を守るため、名のある者なら所属する団の名誉を護るため、必ず誘いに乗って来る。

そして何処を狙って来るかも……。

 

自然体を装いながら、ちょっとだけ猫背になって歩を進める。集中力を極限まで高め続ける。口元から溢れ出た唾液がツゥーっと一筋垂れ落ちるが、それにすら気付きもしない。

究極の精神統一……、武の世界で言う【理】の一端……。

この瞬間だけだが、フィーは頂の世界を垣間見ていた。

本人は全く気付いていないが……。

 

……

……

……

 

……来る。

 

ゆらりとした動作で、双銃剣を目線の高さに構えた。

 

 

 

 

ライフルのトリガーを引く瞬間、ガレスは違和感を感じていた。目の前に佇む娘に対してではない、自分に対してだ。

 

?、何故自分は、相手の眉間を狙っている?外せない一撃だが、一発で仕留める必要は無い。この場合、第1射で身体の中心を狙い、何処かにヒットさせて動きを止め、第2射で確実に仕留めるのがセオリーだ。

それが何故、確率の悪いヘッドショットを狙っている?

 

己の疑問とは裏腹に、人差し指は躊躇う事無く、トリガーを引き絞る。

それと同時にある事に気付いた。

 

!?、動いて無い!?この娘は頭部だけを全く動かしていない!?

!!、敢えてそこにだけ隙を作り、狙いを眉間へと誘導させられた!!?

 

銃口から弾丸が射出される。

マズルフラッシュを飛び散らし、螺旋を巻いて目の前の空間を切り裂き、相手の眉間目掛けて一直線に飛び掛かって行く。

 

「……んっ」

娘は両手に構えた双銃剣を真横に一閃すると、音速を軽く越えるライフルの銃弾を、真っ二つに切り裂いた!

 

「……見事」

ガレスは心底呆れた様に一言だけ呟き、少しだけ嬉しそうに口元を歪めた。

一瞬だけ第2射を装填しようかと思ったが、スコープに映る娘を見て、そんな時間は何処にも存在しないと、本能的に理解した。

 

 

 

 

叩き切った弾丸は眼前で2つに分かれ、流れる様に後方へと消えた。

「……ん」

腰を低く落として前傾姿勢になり、とんでもないスピードで動き回る。

「これで決める!アクセル!!」

不意にフィーの姿が希薄になり、数人に分裂したかの様な錯覚を覚える。

「行くよ!とっておき!!」

無数の残像を残し、ライフルを構えたままのガレスへ向かって飛び掛かる。

「シャドウ・プリゲイド!!!」

目に見えない程高速の斬撃、数え切れない程数多の銃撃、時折日の光に照らされて垣間見える紅い制服。

……そして、とどめに。

「ん、イグニッション!!」

ありったけの火薬を使用した爆発。フィーの得意技フルコースだ。

「!!!」

声を上げる暇も無く、ガレスは銀行内まで吹き飛ばされ、そのまま意識を失う。

爆発で建物の一部が破壊され、崩れ落ちた瓦礫で正面口が塞がれた。

 

「ふぅー……」

一つ大きく息を吐き出し、クルクルと両手に持った双銃剣を回してから、ホルスターに収めた。

 

……さてと、あっちを手伝ってやんないとな。

 

デュバリィに加勢しようと足を踏み出した所で、フィーはピタリと動きを止めた。

 

あっ……、人質になってる行員さん達の事、忘れてた……。

 

思わず背後を振り返る、が、銀行の出入口は完全に塞がれていた。

 

……あっちゃー、ヤっちゃったかな?

 

ジッと正面口を塞いだ、大きな瓦礫を見つめる。

 

……

……

……

……ワタシ1人じゃ、どうにもなんないし……。星座の連中も、むやみに人質を傷付ける事は無いだろうし……。

ま、いっかな?……銀行の人達、ゴメンね。

 

心の中で謝罪し。

 

でも……、まぁ、……事故だよね?

 

取り敢えず、自分に都合良く考える事にした。

 

ん、行こ。

 

それきり子猫は振り返る事無く、相棒の元に向かって足を速めた。

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