妖精の軌跡first【完結】   作:LINDBERG

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なるべく抑え目にしてみました。
ところで15Rと18Rの境目って何処だろう?


子猫は犬と仲良くなりたいと思うがうまくいくには時間がかかる

「っていう事なんだけど、サラどうする?」

当日の昼休み、職員室でフィーはサラと話していた。

 

 

 

「歓迎会?やらなくていいわよ!あんな女の歓迎会なんて!」

シャロンの話になると、サラは何故か機嫌が悪くなる。

 

「だって、これから毎日お世話になるんだし……」

「いいの、いいの。どうせ短い付き合いなんだし」

「サラだって朝と夜、しっかりご飯作ってもらってるじゃん?」

「それが、管理人の仕事なんだから当然!」

他人には厳しいサラ。

「残すのが勿体ないから食べてるだけだし!」

確か昨日の夜、酒の肴にサモーナのルイベ頼んで無かったか?

「とにかく、そんなのやる必要無し!以上!」

話を打ち切られた。

 

「ん、わかった。じゃあサラ抜きでやるね」

「因みに誰が集まるのよ?」

「サラ以外の女子全員だよ」

「え?女子だけ?」

「うん、ジョシカイって言うんだって」

「女子会……」

 

そこで、サラの様子が変わる。

 

女子だけで集まる?

ということは、当然色恋の話しになるのは必然である。

誰々君がカッコいい!だの、誰々と誰々が付き合ってるみたいだよ、だの。

 

当然その話は、教官達の話にも発展する。

ナイトハルト教官って素敵!だの、学院長のお髭可愛い、だの。

 

そして、アタシの話にもなるだろう。

サラ教官って何で独身なんだろ?だの、性格に難があるからよ、だの、酒飲みの女欲しがる男なんていないわよ、だの、理想が高過ぎるのよ身の程知らずね、だの、どうせあんな女一生貰い手無いわよ、だの、サラ可哀想、だの、一人で寂しく死んでいくんだろうな、だの、死んでも誰にも気付かれなかったりして?だの。

……

……

……

幾らなんでも言い過ぎじゃない!?!?

 

妄想の中でサラはボコボコである。

 

イヤ、それだけならまだ良い。(全く良くはないが)

どいうわけか、今学院にはある噂が独り歩きしつつある。

アタシと教頭が出来ているという噂だ。

原因は言わずもがな、いつぞやの『みっしーパンツ事件』である。

 

学院内、しかも校舎の外でズボンを下ろした教頭と、それを見つめる可憐でミステリアスな女教官(サラの意見です)……そりゃ男子学生が喜んで飛び付きそうなネタだ。

 

サラ教官実技テストじゃあんな感じだけど、教頭の前じゃもっと凄いらしいぜ、だの、教頭のみっしぃが欲しくて毎晩おねだりしてるみたいだな、だの、最近は学生にまで手を出してるみたいだ、だの、「あら君、良いみっしぃ持ってるじゃない?」って言われたらもう最後、だの、サラ教官のみっしぃ好きにも困ったものだ、だの、ただのみっしぃ中毒のメス豚だな、だの、言われてるに違いない!(全部サラの妄想です)

 

それがまさか、この子達の耳に入っていたら?

……

……

……

終わりだ、マジで終わりだ。

 

いかん、少なくともアタシが居ない所で、噂が独り歩きするのだけは止めねば。

 

「あー、ごほん。そうね、そう言う事ならアタシも参加しても良いわよ?」

「えっ?いいよ、気乗りしないなら無理しなくても」

「あー、考えてみればアンタ達と腹を割って話す機会なんて、そうそうあるもんじゃないし。まぁ、ちょっと、顔を出す程度には付き合おうじゃない」

「んー、料理とか飲み物とかも用意しなくちゃいけないし。顔出す程度なら、初めから来ないでくれた方がありがたいんだけど?」

「何よ!アタシに来ないで欲しいって言ってんの!?」

「サラが来たくないって言ったんじゃん?」

「う、嘘よ嘘、あれは、その……、学生に混じって一緒にはしゃいじゃったりするのが恥ずかしいな、って思っただけよ…」

「ふーん、んじゃ来るのね?」

「も、勿論よ!最初から最後までずーっと居るわ!」

「ん、らじゃ」

 

サラが来ようが来まいが、自分の目的にはさほどの影響も無いのでどっちでもいいや。と思っているフィー。

 

「んじゃ、今日の19時ね」

「了解、アタシも何か用意した方が良いのかしら?」

「んー、料理はアリサとシャロンにお願いしたし、飲み物はワタシが後で買ってくるから、特に無いかな?」

「遠慮しなくて良いわよ?久しぶりにアタシの手料理を振るってもいいわ?」

「サラの手料理?」

「そうよ、アンタにはいつかのお礼もあるし」

「んー、それじゃあ、アリサとシャロンの手伝いしてくれるかな?」

「手伝い、ね……。まぁ、この際仕方ないか。了解よ、仕事が片付き次第行くって、アリサに伝えてくれる?」

「らじゃ」

 

フィーは職員室を後にして、教室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

放課後、フィーはブランドン商会に買い物に来ていた。

 

「いらっしゃい、フィーちゃん」

店主のブランドンが出迎えてくれる。

 

「ストレガーレディ入った?」

どうしても限定スニーカーが諦められないフィーは、ブランドンに再入荷をお願いしていた。

 

「うーん、本社の友人に問い合わせてるんだけど、ヤッパリもう在庫が無いみたいなんだ…。この前のアレが本当に最後の最後だったみたいだね」

「……やっぱそうなんだ……」

 

数分前、その最後の最後を手に入れたマルガリータを目撃していた。

サイズが合わないらしく、常に踵を潰して履いているらしい。本来のモンスタースペックを、発揮させようという素振りすらない。

 

というか、10,000セルジュ歩いても大丈夫と言われる超ハイテクスニーカーが、何でたかが1ヶ月であんなにボロボロなんだ?

 

恐らく、世界で1番不幸なスニーカーである。

 

空の女神様、あの神をも恐れぬ猪豚女に1番きつーい天罰をお与え下さい!

 

フィーは初めて心の底から祈った。

 

「まぁ、あんまり期待しないで気長に待ってよ。もしかしたら何処かから流れて来る可能性だってゼロじゃないし?」

「うん、解った……」

 

期待しないで待つ事には慣れている。

 

「それで?今日は何をお求めかな?」

「あっ、えっと、ジョシカイってのをやるから、飲み物が沢山欲しいんだけど?」

「女子会か、楽しそうだね?……そうだ!それならピッタリの飲み物があるよ」

 

ブランドンが一度店の奥に引っ込み、帝国ではあまり見慣れない瓶詰めの飲み物を持ってきた。

 

赤いラベルが印象的で、片手で持てるサイズだ。

 

「これね、バタービールっていう飲み物なんだけど……」

「ビール?……一応未成年だから、ジュースとかで良いんだけど?」

「大丈夫、大丈夫!これは、アルコール1%未満の飲み物だから」

「ふーん、美味しいの?」

「勿論!海の向こうからの輸入品なんだけどね。そこの国の学校じゃ、12~3歳位の子供達までこいつで乾杯してるらしいよ?」

「ふーん」

「特にこいつは最近出た新製品みたいでね、モノは試しと思って入荷してみたんだけど。どうかな?試供品みたいな物だからオマケするよ?」

「うーん?でも、あんまり見慣れない飲み物買っていって皆喜ぶかな?」

「そこが良いんじゃないか!今まで飲んだ事が無い飲み物なんて、それだけで話のネタになるだろ?」

「ん、成る程……」

一理ある。

「瓶で直接飲むのもいいけど、グラスに注いで飲むと泡が口の周りに張り付いて、お髭みたいになるみたいだよ?」

「ほうほう」

何か楽しそうだ。

「味も甘くて美味しいし、ビールなんて名前だけで苦味も全く無い!」

「うんうん」

苦くないならワタシでも飲めそうだ。

「どうする?輸入品だから在庫がある今しか買えないよ?」

「ん、解った、買う」

即決する。

 

「毎度ありがとう!何本必要だい?」

「んー?……それじゃあ、全部」

「えっ?全部?」

「うん、全部」

「……いつもの事だけど気持ち良い買いっぷりだね。惚れ惚れするよ」

「それほどでも」

「それじゃあ、16本入りが2ケースで32本。お会計がオマケして、2,400ミラでどうだい?」

「ん、大丈夫」

財布を出す。

先月たんまり稼いだから、この位の出費は痛くも何ともない。

昔、猟兵団で1番お金にうるさいサリーが言っていた。

金なんて物は有るところから有るところにしか流れないもんだ。沢山稼いだらジャンジャン使え!その方が世界は平和になる、と。

 

良く解らない話だったが、お金を溜め込むのはいけないという事らしい。

 

「はい、いつもありがとう。重いから台車使うかい?」

「んー、この位なら平気。よいしょっと…」

 

フィーが2ケースを軽々と持ち上げる。

 

「毎度ありがとう!女子会楽しんでね!」

「ん、さんくす」

 

フィーはブランドン商会を後にした。

 

 

新製品のバタービール。

その箱と赤いラベルには【ついに出た!アルコール分58%の大人のバタービール!味はそのままで二日酔いの心配も無し!記憶の保証も無し!】と書かれていた。

 

しかし、異国の言葉で書かれていた為、フィーにもブランドンにも読む事が出来なかった……。

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、第3学生寮へようこそ!シャロンさん!」

エマが乾杯の音頭をとり、それぞれがグラスに入ったバタービールを飲み干す。

「んー、甘くて美味しい!初めて飲んだわ、これ」

アリサが嬉しそうに声を上げる。

「うん、これは美味だな、少し口の周りの泡が気になるが」

「ラウラ、口の周り真っ白。おじいさんみたいになってるよ?」

「何?本当かフィー」

「拭いてあげる」

フィーがラウラの口元を拭う。

「む、スマンな。そう言うフィーも泡が残っているぞ?」

「え?」

「どれ、私が拭いてやろう」

ラウラがフィーの口元を拭う。

「ん、さんくす…」

フィーが少し照れながら礼を言う。

 

傍目にはしっかり者の姉と、手の掛かる妹といった様に見える。

 

エマとアリサの提案で、フィーとラウラは隣同士の席に座っていた。

何かあった時は二人のフォローが入る手筈だ。

 

席順は、サラ、フィー、ラウラ、向かい合わせにエマ、アリサ、シャロンという順である。

 

「バタービールなんて、良く見つけて来ましたね」

エマが美味しそうにグラスを飲み干す。

「委員長、コレ知ってるの?」

「ええ、親戚の叔父さんが、良くお土産に持ってきてくれました。……でも変ですね?私の記憶だとバタービールのラベルは青かったと思うんですけど?」

「ブランドンが……」

「ブランドンさん、ですよフィーちゃん?」

「ブランドンさんが、新商品だって言ってた」

「はいそうです。……そうですか、新商品ですか?」

エマは赤いラベルを見つめる。だが、いかに彼女の頭脳が優れていても、知らない言語の解読は一瞬では出来なかった。

 

未成年でも飲める青ラベル。記憶が消し飛ぶ赤ラベル、である

 

「ふふ、皆様、本日は私などの為にこのような催しを開いて頂きまして。このシャロン、感激に耐えませんわ」

「ふん、なーによ、白々しい」

サラがバタービールをぐいっとあける。

気に入ったのか、もう3本目だ。

「サラ、うるさい」

「何よ?アンタはアイツの味方するの!?」

「味方とかじゃ無いけど、っていうか何でサラはシャロンの事が嫌いなの?」

「えっ? ……とにかく気に入らないのよ!」

サラがグラスを飲み干し、次の瓶を開ける。

 

「さぁ皆様、本日はアリサお嬢様と私で、ささやかではございますがお料理をご用意させて頂きました。お口に合えばとても嬉しく思います。どうぞご賞味下さいませ」

 

全員が一斉に料理に手を伸ばす。

 

料理の殆どがオードブルの様な軽食料理だ。女子だけという事で、敢えてそうしてくれたのだろう。さすが万能メイド、そつがない。

テーブルの中央に場違いな感じで、角煮と煮玉子が置いてある。

恐らくサラだろう……。

 

「アリサはどれ作ったの?」

「私?私はお皿を並べたわ」

何の迷いもなく答えるお嬢様。

「……他には?」

「クラッカーを箱から出して盛り付けたわ」

見ると、キレイな円形にクラッカーが盛られていた。

「……じょ、上手な盛り付けだね」

「うふ、でしょ?今日のは自信あるのよね!」

どうやら触れてはいけない所らしい。気のせいかシャロンから無言の圧力を感じる。

 

「フィー、そなたサラダは食べるか?良ければ私が取るが?」

「あっ、ん、お願い」

「うん、任せるがいい」

ラウラが気を使ってくれる。

「さぁ、沢山食べるがいい」

皿に、コレでもか!という程山盛りの野菜が乗せられている。向かいに座るアリサが隠れて見えなくなった。

 

……ワタシは馬か?

 

「さ、さんくす……」

「お代わりが欲しければいつでも言うが良い」

 

イヤイヤ、お代わりもなにも、これだけで1週間分の野菜取れちゃうから。

 

だが折角ラウラがよそってくれたサラダだ、フィーは懸命に食べる。

 

「ちょっとアンタ達、角煮も食べなさいよ!作るの時間掛かったんだから!」

 

聞けば、教官会議を途中で抜け出して作ったらしい。

 

「ええ、サラ様の角煮、味は大変美味しゅうございますわ」

「そうね、味は美味しいわ」

シャロンとアリサが取り敢えず誉める。

 

「味はって何よ?味はって!」

「美味しいって言ってくれてんだからいいじゃん?」

野菜を掻き込みながらフィーが言う。まだ10分の1位しか減っていなかった。

 

「もう!失礼しちゃうわ」

 

サラが普通のビールを飲みながら愚痴る。

甘いバタービールに飽きてきたらしい。

 

 

 

「それでは皆様。そろそろ皆様の学院での生活などを、シャロンに教えて頂きたく存じます」

 

シャロンが場の空気を変えるように提案する。

 

「では、委員長のエマ様に質問です?」

「はい、何でも聞いて下さい」

「では遠慮なく。お気に召される殿方などはいらっしゃいますか?」

「えっ?……ええ?!?!」

「女子会とはこのような事を包み隠さずに話す場所でございます。さぁ?」

「さぁ?と言われましても?そうですね……、今の所はそういった人は居ませんね」

「私が見たところ、エリオット様などお似合いの様に思えるのですが?」

「え、エリオットさんですか?」

意外な名前が出てきた。

「はい、以前エリオット様が自室でバイオリンの練習をされてる様子を、うっとりとした様子で聞かれていたのを見かけたもので?」

「イヤ、あれは、その、……やっぱり、楽器が引ける男子は格好いいなと思っただけというか……」

エマの顔がみるみる赤く染まっていく。

 

ほうほう、コレはもしや?

 

「うふ、ありがとうございます。ラウラ様はいかがでございますか?」

「ふむ、私か?修行中の身ゆえ、色恋にうつつをぬかしている時間は無いのだが……。強いて上げれば、リィンかガイウスだな」

 

一瞬アリサの眉間に皺が寄った。

 

「まぁ、お二人もでごさいますか?」

「うむ、私も将来はアルゼイドを継ぐ身。彼らとなら強い子種を授かれそうだ!」

アリサがバタービールを吹き出す。

「こここ、子種って!?ラウラ、意味解っていってるのよね!?」

「無論だ。強き子を望むなら、早いうちに作るに限る。自然の摂理であろう?」

 

成る程、そういう考え方もありか?

 

「イヤそうじゃなくて!その、どうしたら…、子供が……、出来るか……、って、話なんだけど?」

「ふむ?そう言えば詳しくは知らぬな?昔、父上に聞いた話では、ごく自然な流れで出来ると言われたのだが?」

「あー、そう。……うん、ラウラ、後で私の部屋に来て。……話しておきたい事があるから?」

「ふむ?承知した」

 

「子供の作り方位、ここで教えちゃいなさいよ。実技込みで」

サラが絡む。もうただのめんどくさい酔っぱらいだ。

と言うか、いつの間にそんなに飲んだんだ?

 

サラの足元にはバタービールの瓶7本、普通のビール瓶2本が転がっている。

 

「そう言うサラ様は如何なのですか?」

「アタシ?ふふ、アタシだって男性経験の10や20はあるわよ。ま、殆どが一夜の恋だったけどね」

サラが、昔を懐かしむように遠くの方を見つめる。

 

「サラ様、それは単にヤリ逃げされただけでは?」

「その単語を使うんじゃ無い!!!!」

サラから紫のオーラが立ち上る。

 

「ふむ、サラ教官?ヤリ逃とは一体何をして逃げるもの……」

「あー、ラウラ!その話しも後で私の部屋で!ねっ?」

「ふむ、そうか……」

ラウラが残念そうにバタービールを飲む。

エマもアリサもそれぞれ2本目に突入している。

 

「アリサお嬢様は、リィン様の事がお気になるのでしたわね?」

アリサが再び吹き出す。

 

「な、な、な!?!?」

「あら、以前のお手紙に、入学式が終わって早々、胸で顔をお挟みになったと記されておりました。あれから3ヶ月、顔以外もイロイロお挟みになられている頃合いかと?」

「な、な、何言ってんのよ!!顔以外って何を挟むっていうのよ!?イヤ、そもそも顔もどうかと思うけど……。って言うかお挟みになるって表現やめてよ!?!?」

 

「ふむ、アリサ、一体何を挟むのだ?」

「それも後で私の部屋で、……ってそんなの説明させないでよ!!!」

 

「むぅ?フィー、そなたは解るのか?」

「うーん、男のロマンだろうね」

「何だ?それは?」

「さぁ?ワタシは挟むものが無いからねー」

少し、いじけた口調にしてみる。

「そ、そうか。出来るなら、私の胸をそなたに分けてやりたいところだが……」

「……気持ちだけで、十分」

「そ、そうか……」

 

フィーはサラダをバタービールで流し込みながら思う。

 

ヤッパリ、ラウラは良くも悪くも真っ直ぐだ。

思った事は全部言葉にするし、解らない事は素直に人に聞く(質問内容は置いといて)

きっと彼女は、今まで日の当たる道だけを進んで来たのだろう。

 

ワタシはどうだ?

 

現に今も相手の心情を推測し、何とか入り込む隙間は無いものかと様子を伺っている。

それが悪い事だとも思わないが、果たして仲良くしたいと思う相手に対する行為として良いのだろうか?

……良く解らない。

面倒だ、直球をぶつけてみるか?

 

「ねぇ、ラウラ?」

「む?どうした?」

「ラウラは、ワタシの事をどう思ってる?」

ラウラの表情がやや曇った。

「どう、とは?」

「んー、単純に好きか嫌いかとか?」

「ふむ?」

ラウラは少し考える素振りをする。

「良く解らない、と言うのが正直な所だ」

「それは……、ワタシの事が解らないって事?」

「ああ……、イヤ、まぁ、それもあるのだが。一番解らないのは私自身の気持ちだ」

「どういう事?」

 

「私はそなたと仲良くしたいと思っている。クラスメイトと言うより仲間としてな。だが、私の中の何かがそれに待ったをかけている。恐らくそなたの過去の一端を知ってしまったからだ。」

ラウラはそこで一拍置き、バタービールで喉を潤す。

もう、3本目だ。

「そなたは恐らく、私には想像も付かない様な過去を経験しているのだろう?だが、それに対して私は同情に近い感覚を持ってしまっている。それは、そなたの今までの経験を軽んずる行為であり、その原因は恐らく私自身の傲慢と無知によるものだ」

もう一度喉を潤す。

「この関係を払拭するには、お互いを高め合い、認め合うしかない。だがそうするには、もっと互いを深く知る必要がある。スマンな、これ以上は上手く言えそうに無い」

「ううん、何となくだけどわかったよ」

 

要するに、お互いもっと強くなりましょう、って事かな?

 

ラウラらしいと思った。

 

……うん?そう考えると決闘もありか?

 

少しだけ、ラウラとの距離が縮まった気がした。

 

ジョシカイか……。悪くないかも……。

 

 

 

 

 

「あー、なんか暑くなって来た」

サラがいきなり脱ぎ始めた。

レースが付いた黒いブラとパンツだけになると、大股を広げてドカッと座り、果実酒をボトルのまま飲み出した。

 

「サラ、はしたないよ?」

「女同士で何言ってんの?ほら、アンタも脱ぎなさいよ」

 

サラがフィーの上着を剥ぎ取る。

 

「ん、まぁ、楽は楽かな?」

シャツとスカートだけになるフィー。

 

「ふむ……。しかし、サラ教官、見事な身体ですね?」

ラウラがサラの身体を、つぶさに観察する。

「そう?まぁコレでも、一応鍛練は欠かして無いからね」

サラが腕を曲げて、軽くポーズをとって見せる。

 

背中から肩にかけての筋肉が凄まじく、上腕筋のバランスも良い。絶え間無く剣を振り続けている証だろう。

腹筋もバキバキで無駄な部分が無い身体だ。

 

あの食生活で何故この身体になる?

 

その引き締まった肉体に、不釣り合いなバスト。

女性が羨ましくなる身体だろう。

 

でも男には、引かれそうだ……。

 

「では……、私の身体もご覧頂こう!」

今度はラウラが脱ぎ出した。

白いスポーツタイプのブラとパンツだけになる。

 

こちらもサラに負けず劣らず引き締まった身体だ。

違うのは、その身体が今だに成長途中という所だろう。腰の辺りなどは今だに未発達だ。

白く陶器のような肌に、所々擦り傷が出来ている。

この格好でも、何故かいやらしさを感じさせないのは、貴族ならではの気品故か?

 

「あら、ラウラも中々やるじゃない。どう?一勝負してみる?」

サラがテーブルに肘をつけ構える。

「ふふ、では、胸を貸して頂こう!」

ラウラが向かい合わせに立ち、サラと手を繋ぐ。

 

「フィー!掛け声宜しく!」

「ん、レディー……、ご!」

 

下着姿でアームレスリングを始める二人。

サラは片手に果実酒のボトルを握り、ラウラはバタービールの瓶を持ったままだ……。

 

……野盗か海賊か、お前ら……。

 

 

 

「お嬢様。順調に成長されている様でシャロンは嬉しく存じます」

「ちょ、ちょっと!何処触ってんのよ!」

シャロンがアリサの胸を後ろから揉み出した。

 

「うふふ、お嬢様は昔からここを摘ままれるのがお好きでしたわね?」

「あっ、ダメ、先っちょ摘まんじゃダメー!」

 

こっちはこっちで何やってんだ?

メイドというのは、お嬢様にそこまで教える仕事なのか???

 

「うふふ、シャロンがしっかりとお身体に教えて差し上げますわ。リィン様の為にも」

「何でそこでリィンが出てくるのよ!?って、そっちは絶対ダメー!」

 

マジかこいつら?

 

 

 

どいつもこいつも何やってんだ?

委員長を見習え、さっきから一人で静かに……。ん?何か様子が変だ?

 

「……セリーヌ。どうしてあなたはいつも小言ばかり……。聞いていますか?返事をしなさい……」

見るとエマは、テーブルに飾られた濃い紫の花に話し掛けていた。

 

委員長、色は似てるけどそれはセリーヌじゃ……。っていうか委員長もセリーヌと話せたんだ?

 

動物と会話出来る人は、私以外にも居るらしい。

 

 

担当教官と教え子が下着姿でアームレスリングし、クラス委員長が植物に語りかけ、メイドがお嬢様に女の悦びを教えている。

 

こ、これが女死会?恐ろしい……。

……?でもなんでみんな急に?。

 

そう思いながらフィーはようやくサラダを完食し、バタービールを飲む。これで、6本目だ。

 

フィー・クラウゼル。

彼女はアルコールに対して特別な体質だった。

 

 

 

コンコン。

 

ふいに、食堂の扉がノックされる。

「アリサ、居るか?頼まれてた髪留め見つけて来たんだが?」

お約束通り朴念仁がやって来た。

 

と言うかこんな時間まで、学院で探し物してたのか?

 

感心を通り越して、恐怖すら覚えるお人好しだ。

 

「ちょっと入るぞ……」

リィンが扉を開けて……、そのままフリーズする。

 

花に話しかける委員長。

下着姿で腕を組み合う教官とラウラ。

あられもない格好でシャロンに教育されるアリサ。

 

「なっ、なっ、なっ!?!?!?」

 

そして、パニクる朴念仁。

 

「あら、リィン良い所に来たじゃない?」

「うむ、リィン、そなたもこちらに来るが良い」

サラとラウラが嬉しそうに下着姿でリィンに近寄る。

 

「サ、サラ教官!?……ラウラも!?何でそんな格好で!?!?」

「丁度男が欲しいと思ってたのよ。さぁ、こないだのお詫びに色々してあげるからいらっしゃい!」

「リィン、私と一勝負いこうではないか!」

 

サラとラウラに両脇抱えられ、連行されるリィン。

 

サラの言うお詫びとは、先月のフィーとの事だろう。

あの日の翌朝、フィーがしっかり誤解を解いていたので、リィンの尊厳はかろうじて守られていた。

 

因みにミヒュトから請け負った仕事の事は内緒である。

 

 

「さぁ、リィン。ここに座って力を抜きなさい。大丈夫よ、私に任せなさい!」

サラがリィンを椅子に座らせ上着を剥ぎ取る。

「リィン、こんな時間まで大変であったな。喉が乾いただろう?これでも飲むが良い」

ラウラがリィンの口に、バタービールを2本まとめて突っ込む。

「んー!?、んー!?!?」

声になら無い叫びを上げながらそれを飲み干すリィン。

 

「お嬢様、リィン様がいらっしゃいましたわ。さぁ、この機会にたっぷりとご覧になって頂きましょう?」

シャロンがアリサのあられもない格好をリィンに見せつける。

「ヤダー!……ダメよリィン!見ないで……」

涙目で懇願するアリサ。

 

だが嫌がっている割には、その顔は何処か嬉しそうにも見えるのは気のせいか?

 

「うう、ねぇさん……、何処に居ってしまったの……」

エマは何故か一人で泣いている。

 

 

「あら?リィンあなた中々良い身体してるじゃない!年上にしか興味無かったけど……、コレはこれでアリね!」

サラがリィンの身体を好きなように弄ぶ。

「む?リィンそなた中々に力強いな!ピクリとも動かんぞ!」

ラウラがリィン相手にアームレスリングを始める。

握っているのは腕ではないが……。

 

ラウラ……、そんなにしたらもげちゃうよ……?

 

当のリィンは白目を向き、天を仰いでピクリともしない。イヤ、厳密には一部ピクピクとしてはいるのだが……。

 

どいつもこいつも、やりたい事やってるな。

 

 

 

 

「ん?あれ?」

急に眠気が襲って来た。

 

皆楽しそうにやってるし……、先に休ませてもらおう。

 

取り敢えず、自分が食べた皿だけシンクに持って行こうとするフィー。

 

「あら?フィー様、片付けは後で私が致しますからそのままで」

シャロンが、アリサの服の中に手を入れながら声を掛ける。

アリサは、全身を細かく痙攣させながら涙を流している。

 

「ん、さんくす。じゃあ、お先するね」

「はい。お休みなさいませ、フィー様」

 

シャロンが笑顔で挨拶してくれる。

 

 

 

取り敢えず、ラウラとは少し打ち解けた気がする。

コレなら週末の特別実習も何とかなるかな?

 

階段を上り自室へ向かう。

フィーはそのまま、ベッドへ倒れ込んだ。

 

子猫は満足そうな顔で眠りに付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝

 

いつもより早い時間にフィーは目を覚ました。

 

んー?何かぐっすり寝れた気がする。

 

着替えを済ませ食堂へ向かう。

 

「あら、フィー様、おはようございます」

「あっ、シャロン。おはよう」

 

そこにラウラもやって来た。

「む、おはよう、フィー、シャロン殿」

「おはよう」

「おはようございます、ラウラ様」

 

「昨日の事を良く覚えてないのだが?何か知らぬか、フィー?」

「えっ?覚えて無いって、どの辺から?」

「むう、……。全てだ……」

「全て?」

「シャロン殿の歓迎会をしたというのは解るのだか、内容は何も覚えていない……。そなた、何か知らぬか?」

「えーっと?」

 

まさかサラと二人でリィンに色々してたとは言えない。

 

「んー、特に何も無かったと思うよ?」

「む、本当か?」

「ん、うん……」

「……」

「……」

「そなた……、嘘を付いているな。気配で解るぞ」

「えっ?そんな事……」

「やはり……、そなたとは相容れぬらしいな……」

そう言い残し、ラウラは食堂から出ていってしまった。

 

 

 

「なっ!?」

何でこうなったー!?!?!?

 

昨日いっぱい話し合ったじゃん!?

山盛りサラダも残さず食べたじゃん!?

あれ全部無駄だったのかー!?!?

 

 

ガックリと膝を付くフィー。

 

「あらあら、大丈夫でごさいますか?フィー様?」

シャロンが気遣わしげに声を掛けてくれる。

「シャ、シャローン……」

「昨夜、お二人で話されていたこと。失礼とは思いましたが私にも聞こえておりました。きっと大丈夫ですわ、一度は解り合いかけたんですもの。だから、元気をお出しになって下さい」

「……う、うん、さんくす、シャロン」

 

その時フィーはふと思う。

シャロンは昨日の事覚えてるんだ?

 

 

昨夜、食堂でリィンを含む全員が酔い潰れた後、スーパーメイドは全員を自室に送り届けた後、食堂の片付けを済ませていた。

ちなみにシャロンはバタービールに口をつけず、一人だけ紅茶を飲んでいた。

 

シャロン・クルーガー。

彼女が異国の言葉で書かれた、赤いラベルを読めたかどうかは誰にも解らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「って訳で上手くいかなかったよ」

 

その日の放課後、フィーは再び寮の屋上でセリーヌと話していた。

 

「残念だったわね?まぁ、時間さえかければ仲良くなれるんでしょ?」

「……そうだと良いけど。セリーヌは何でそう思うの?」

セリーヌは不思議そうな顔でこちらを見つめる。

 

「だって同じ人間同士じゃない?」

セリーヌは当然の様に言う。

 

成る程、同じ人間同士か……。

 

フィーは思った。

 

にゃんこ先生が一番頼りになるな。

 

 

 

子猫と猫は、その後ものんびりと話し合った。

 




最後までお読み頂き、ありがとうございます。

年末という事もあり、更新ペースが落ちると思いますが、長い目でお付き合い頂ければ嬉しく思います。

次回は、バイクでかっ飛ばす話を予定しています。
お楽しみに。
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