A.M.7:00
ピピピッピピピッピピ
「……ふぁ〜、よく寝た。さてと今日も一日平和に過ごせますように。キンジを起こして朝食を食べますか」
「おい、キンジ起きろ。……起きろ!」
「ん〜、あぁ、朝か。おはよう、シン」
「おはよう。朝食はできてるからそれ食ってさっさと登校するぞ」
「?朝食はお前が作ったのか?」
「そうだが。何かあったか?」
「いや、お前最近作ってなかったからどうかしたのかと」
「特に何かあったわけではない。ただ、今まで以上に忙しい日常になりそうだから、少しでも暇のある内に作っておこうと思ってな」
「なるほど」
「そんなことはどうだっていいだろ。ほら早く飯食って登校しないと昨日みたいになるかもしれないぞ。ま、俺は食い終わってるから先に登校させてもらうがね」
「あぁ!ずるいぞシン!」
「じゃあ、お先に〜」
「待て!」
さて、キンジは置いて行って、依頼者たちに昨日整備したものを朝のうちに返さなきゃな。
「はい、毎度あり。金額は…と、よし。問題なし、次回も是非ともご贔屓に〜」
よし、報酬も受け取ったし、教室に戻って帰る支度でもするかな。
「せ、先輩!」
さて、キンジはどうしてるかな?メールしておくか。
「すいません、佐藤先輩!」
「……何かな?俺に用件とは珍しいこともあるものだ。で、君は誰だい?俺を先輩と呼ぶところから1年生ではあると思うが」
「わ、私は1年A組の火野ライカっていいます!佐藤先輩のコトを聞いて、私をあなたの戦姉妹にして頂きたく来ました!」
(ふ〜ん、俺の戦妹になりたいか、物好きもいたものだな。見た感じ彼女は強襲科、装備科の俺を戦姉としたいとは、違和感が残るな)
「ふむ。別に君の戦姉になることには特に反対するつもりはないが、何故俺を選んだか聞かせてもらいたね」
「そ、それは。……笑わないでくれますか?」
「ん〜、確約は出来ないが、笑わないように努める」
「えっと、その……去年の入試のコトを聞いて、他の強襲科の先輩たちが『キンジと真剱は格が違う。振れ幅が大きいキンジに対して、どんな状況でも一定の力を出し続けられる真剱は蘭豹を止めれるかもしれない唯一の強襲科だ』っとおっしゃっていたので、その気になって過去の試合の動画も見させていただいて、それで強襲科しか出来ない私をもっと成長させてくれるような気がしたので、声を掛けさて貰いました」
(ふ〜ん。一応俺の過去の経歴を知った上で来たのか。まぁ、だとしてもやることには変わりないが)
「そうか、なら俺が君に対して何か試験を与えなければいけないことは知っているね?」
「え?う、受けてくださるんですか!?は、はい!どんな試験でも受かってみせます!」
「じゃあ、俺から君に課す試験は––––––––だ」
「え?そんなことでいいんですか?」
「ふっ、“そんなこと”、か。じゃ、実際に試験を開始しよう」
「試験はさっき達した通り。では只今から試験を開始する!よーい、スタート!」
ダッ!
–––そう、この子に課した試験とは–––
「!?は、速い!」
「ほら、捕まえれるなら捕まえてみな」
ニヤッ
「ッ、絶対に捕まえてみせます!」
「おっと、危ない」
ヨロッ
「!今だ!」
「はい、残念」ガッ
「!?わ、わざとよろけるフリをしたんですか!?」
「相手の一挙一動、そして心情をある程度読めなければ今見たいに簡単にいなされてしまうよ」
(だが、この子思ったより早いな。一度見せた技は次も通じるかが、分からないな。戦いの中で進化し続けているのか、恐ろしいな。しかし!先輩としてそう簡単に負けるのは周りの評価的によろしくないな。制限時間を決めていてよかった)
そう、この試験の内容とは、『5分以内に真剱の背中を地面につける、もしくは捕まえる。そして、真剱自身が負けを認めた場合にライカの勝利となる』ことである。実はこの試験、穴だらけで『銃、刃等の使用や他人からの手助け等を制限しておらず、フィールドの制限も設けていない』のだ。つまり、真剱が銃も刀も使わずに試験を行なっているためライカは無意識に彼に合わせてしまっているのだ。真剱はそういったところを含めて彼女を戦姉にするか判断する材料にするつもりなのだ。
(まぁ、結果はどうあれ––––戦妹にはしてあげるんだけどね––––)
そう、この男試験を課すと言っておきながら最初から戦姉妹になる気しかなかったのである。しかし、それにも理由があり、教務科が戦妹を取らないとうるさいのだ。そういったこともあり、真剱はこの子を戦妹にする気しかないのである。
「さて、2分経過。残り3分だ。どうする?お互いジリ貧だが、何か策はあるか、な!」
ブンッ!
「ッ!ありますよ!」
「へぇ、じゃあその策とやらを使って俺を捕まえてみせろ!」
「行きますよ!」シャッ、シャッ
「!?トンファー!?ここで武器を出すか」
「えぇ、先輩ルールに武器の使用禁止とかつけてなかったですよね!」
「そこにしっかり気付けるか、よろしい!ではこちらも少し武装を使わせて貰うとしよう!」シュリンッ
「志乃と同じく刀!ならっ!」
ダッ、ガッガガッ!–キンッ!
「やるね。でも、こっちが反撃しないと思ったら間違いだよ」
「え?」
刀を急に手放し彼女のがら空きの足を払いトンファーを蹴り飛ばす。そして手放した刀はしっかり地面に刺さっているのでそれを引き抜き肉迫する。しかし––––
カンッ!
「!?ナイフ!まだ持っていたか!」
「ここだー!」
(しまった!仕方ない–––––)
「–––––、––––––––」
「!?」
ギンッッ
「––––」
「う、嘘!?何もない左手から剣がいきなり!?」
「ここまで、だな」
「?」
「負けだ。この勝負君の勝ちだ」
「え?で、でもまだ捕まえられて–––、あっ、そうか負けを認めた場合も私の勝ちに–––」
「そう。俺は負けを認めた。よって君の勝ちだ、積もる話もあるだろうがもう始業のチャイムがなる頃だ。また放課後に会うとしよう」
「え?あ、待ってくださいよ先輩!」
(まさか俺の『幻想投影』を使わせてくるとは、不意打ちだったといえど、俺も腕が鈍ったか?後で強襲科に行って鍛え直すか)
「よっす、キンジ元気にしてるか〜?」
「シン、まぁ昨日に比べたら元気だが、この後のことを考えると憂鬱でしょうがないぜ」
「?なんかあったのか。アリア関係か?」
「そうだ。よく分かったな」
「いや、今のオマエで憂鬱になりそうなことといえばアリア関係か、星伽関係だろ。つまり女性関係だな」
「ち、ちがっ……、違うといえないのが悔しいな」
「まぁ、気を落とすなって。なんか奢るぜ、もうすぐ昼飯だしな」
「おっ、マジか!真剱太っ腹〜!」
「オマエには言ってねぇよ武藤」
「ちぇ〜、いいじゃねぇかよ同じ兵站課のよしみだろ〜」
「それとこれは別だろ。それにお前こないだ免許の方が危ないとか言ってたが、大丈夫なのか?」
「そうなんだよ〜!俺あと一回でも速度超過したら免停なんだよ!」
「よかったじゃねぇか、免取りにならないだけ。まぁ、わざわざ速度超過する様な事は滅多に起きないがな」
「そうだな。あ、あとキンジ!バイク整備しておいたから乗りたい時はいつでも乗れるぜ!」
「そうか、ありがとな武藤」
と、他愛のない話をしていたら食堂についていた。そこで–––
「やぁ、遠山くんに、武藤くんと佐藤くん。僕も一緒していいかな?」
「おぉ、不知火。別にいいだろ、今更断るような仲じゃねぇからな」
「そうだぜ、一年ん時は俺ら四人で色々やったよな〜」
「そうだな、強襲科Sランク、Aランク、Bランクに車輌科Aランクの超攻撃型のチームだったもんな」
「でも、去年の末から解散して遠山くんは探偵科に、佐藤くんは装備科にそれぞれ転科したもんね」
「………そうだな。あれからもう3カ月ぐらいになるのか、早いな」
「そうだな」
「……暗い雰囲気は無しにして、早く飯食おうぜ!俺腹減っちまったよ!」
「お前は割といつもそうだろうに武藤」
「何を!そんなこと言ったらキンジだっていつも金欠で腹減ってる方だろ!」
「お、俺も巻き込むな!それより、金欠は余計だ!」
「ふふっ。この騒がしさも懐かしいね」
「まぁ、でもそっちの方がいいだろ。変に暗いより、明るくしてた方がいいってモンよ」
並んでる順序的にキンジ、俺、武藤、不知火で注文を済ませ、席に着くと
ブーーーッ、ブーーーッ
「おっと、ちょっと失礼」
「電話なら気にしないで出ていいよ」
「いや、メールだから気にしなくていいぞ」
「そう?誰から?」
「峰からだ。ちょいと調査依頼を出しててな。それで資料が出来上がったからパソコンの方にPDFデータで送るってよ」
「そうなんだ。でも、何を調査してもらってたの?」
「あぁ、あの転校生、神崎さ。キンジが何かとつきまとわれてて、違和感がすごくてな。まぁ、ちょいと調査してもらったのさ。」
「なるほど」
「真剱、お前もあの子を狙ってるのか!?」
「武藤、お前が思ってるようなとこではないから、安心しろ。少なくとも色恋沙汰ではないさ」
「なぁんだ、つまんねー」
(にしても早いな。報酬の方は既に買っていてあっちの部屋に送ってるから問題は無いが、余りに早いな、まるであらかじめ用意していたみたいに––––いや、やめよう。友人を疑う真似はしたくはない)
「ご馳走さま。じゃあ、俺は先に屋上で休んでるわ」
「おう、午後は各科で会わないからまた明日だな!」
「また明日だね、佐藤くん」
「おう、またな、キンジも」
「俺はお前と同じ部屋だからまた今日の夜に会うだろうが」
「おっと、そうだったな。まぁ、また夜に」
「またな」
(さて、屋上には多分アイツがいるから、なんか買ってから行くか)
ガチャッ
「やっぱりここにいたのか、レキ」
「……真剱さんですか、私に何か用が?」
「いや、特別用があった訳じゃぁねぇよ。ただ、お前また昼カロリーメイトだけ食ってただろ。せめて水分くらいは取っておけ、ほらっ」ポイッ
「?これは?」
「見てわかるだろ。い○はすのブルーベリー風味だ」
「そうですか。ありがたくもらいます。」
「おう、そうしておけ。で、今日はどこの“風”を聴いてるんだ?」
「故郷のです」
「そうか、落ち着くのか?」
「はい」
この子との出会いは一年の頃に依頼で支援してもらって以来だ、あの時はあの超絶スナイピングに助けられたものだ。
「今更だけど、去年の依頼の時はありがとうな。助けられたよ」
「いえ、私もあなたに助けられました。ありがとうございます」
「そうだったな。何にせよありがとな」
ナデナデ
「んっ、何故撫でるのです?」
「あ、嫌だったか?それなら辞めるが……」
スッ
「あ……」
「……」
ナデナデ
「ん……何故でしょう、あなたに頭を撫でられると不思議な気持ちになります」
「そ、そうか」
(か、かわいいな。“ロボット・レキ”なんて呼ばれてるらしいけど、そんな事はない。この子は感情表現が分からなくて無表情に見えるだけなんだ、本当は何処にでもいる普通のかわいい女の子なんだ)
スッ
「あ……」
「そろそろ午後の授業が始まる頃だ。降りよう、レキ」
「…はい」