Doctor-X 目の腐った外科医   作:tray

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魔王

現在俺と大門先生は、城之内先生の手術をする為に東帝大学病院に来ている。

 

「.....は?」

 

そして俺はこの場で知ることとなった。実は前回の城之内先生の手術は、大門先生が本当に独断で行い、尚且つIREナイフを盗んで(本人は少し借りただけと言っているが完全に盗んでいる)いるので蛭間委員長から東帝大に暫く出入り禁止と無料で10人手術をするという契約をしたらしい。

 

流石にそんな状況で、また無理矢理IREナイフを盗み勝手に手術した日には、確実に犯罪になって捕まるだろう。捕まらないためには蛭間委員長の許可をもらう他ない。

 

「私が言ってくるから、八幡は準備してて」

 

準備しててと言われても何時までかかるか分からない交渉に麻酔をかけて患者に負担をかけられる筈がない。俺は大きく溜め息を吐いて、携帯を取りだし電話をかける。

 

Prr、「君からかけてくれるなんて珍しいね?何かあったのかな?」

 

コール一回で出る辺り流石だと思うがこの人に関しては、何があっても今更驚きはしない。

 

「実は雪ノ下さんにお願いがあって電話しました」

 

そう俺が電話をかけた相手は、雪ノ下陽乃。雪ノ下雪乃の姉であり現在の雪ノ下財閥の事実上のトップである。事実上というのは、一応雪ノ下さんの親父さんが社長の座についてはいるがそれは、表立ってのみ。現在会社を動かしているのは、雪ノ下さんで次期社長が決まっている。

 

肩書きだけ見れば社長令嬢になる。

 

そしてここからが一番大切な所だ。東帝大学病院は、雪ノ下財閥の後押しがあったお陰でここまで大きくなることが出来たのだ。分かりやすく言うとこの病院の一番偉い人は蛭間委員長の上の会長らしいが、その会長よりも偉いのが雪ノ下さんである。雪ノ下さんの一言で蛭間委員長を辞めさせることだって出来るのだ。

 

まさに暴君。魔王の名に相応しい相手だ。

 

「お願い、ね~。うん、ま聞いてあげない事もないけど内容次第かな?」

 

「大門先生の処罰の件を揉み消して貰いたいのと、IREナイフを使えるように取り計らって欲しいんです」

 

雪ノ下さんにとってこのお願いは、朝のコーヒーブレイクよりも簡単な事だ。なにせ電話一本入れてもらえば良いのだから。だがそれは、そんなに簡単な話ではない。

 

「ふーん。IREナイフを使いたいのは分かったよ。でも大門先生?を助ける義理は私には無いかな~」

 

そう。この人にとって大門先生は赤の他人。俺は、他人だが知り合いではある。その差は文字で表すよりも大きい。

 

だが少し含みのある声なので、恐らく俺の言葉次第で大門先生も助けてはくれると思う。この人は、俺を試してるのだ、自分を納得させることが出来るのかどうかを。

 

利益を求めている蛭間委員長と違って雪ノ下さんみたいなタイプは、本当に動かす事は難しい。なんせ私利私欲で動かない分感情で動くのだ。

 

考えて見ても欲しい。政治家が皆、感情で動くようになったら。恐らく法律が無くなるだろう。

 

そんな感情で動く雪ノ下さんを動かすにはどうすればいいか。

 

それは雪ノ下さんを納得させるしかない。俺の嫌いな偽善や欺瞞で。それを知っていながらさも楽しそうにしているであろうあの人は魔王だと心の底から思う。

 

「大門先生を助ける義理ならありますよ」

 

「どうしてかな?」

 

「大門先生は、世界一の外科医です。俺が保証します。ですから雪ノ下さん或いは雪ノ下が何か病気になったときは、大門先生がオペをします」

 

これは嘘ではないが約束は出来ない。実際大門先生は、患者全員にオペをやると言っているわけではない。その時は二沢なのだ。

 

[私に切らせて]か[致しません]

 

実にシンプルで実に大門先生らしいが医者としては、どうなのかとも思う。

 

「ふーん。そこで雪乃ちゃんの名前を言ったのは何故かな?」

 

それは勿論雪ノ下さんがシスコンだからです。とは言えない。

 

「別に良いでしょう。それで返事はどうなんですか?」

 

「んー。それじゃ二つとも良いよ」

 

俺は心の底からホッと胸を撫で下ろした。大門先生の事は5割りほど無理だと思っていたからだ。

 

「あり「ただ」...」

 

どうやら魔王の裁判はこれから始まるようだ。

 

「今回の執刀医は比企谷君ね?」

 

「え....」

 

それは心の底から出た無意識の言葉だった。城之内先生を治したいと本気で思った。だから色々考えたし悩んだしようやく可能性が見えてきたのだ。でも自分で執刀すると分かると急に怖くなってしまう俺がいることに気付いた。

 

また俺は大門先生に任せようとしていたんだな、と思い返し少し間が空いてしまったが「分かりました」と返事を返した。

 

「あーあとはね」

 

「一つじゃないんですか?....」

 

「誰もそんなこと言ってないでしょ?」

 

「それであと一つは何なんですか?」

 

「私に君から借り一つ」

 

うわー...一番嫌なの来たと正直思った。声に出さなかった俺を誉めてほしいほど現在の俺の顔は、ひきつっていることだろう。

 

「....分かりました」

 

「この借りは大きいからね~期待しててね♪比企谷ごほごほ...」

 

ん?雪ノ下さんが電話中に咳?

 

「風邪ですか?」

 

「え、う、うん。ちょっと体が冷えちゃったみたいでね」

 

「は?冷えたって」

 

「私、お風呂入った後って何も着ないんだよね。見てみたい?」

 

ドクンッと心臓が跳び跳ねて一瞬想像してしまうが極力声に出ないように平静を装って返す。

 

「ひょひょんなの見たいわけ無いじゃないでひゅか....」

 

しまったぁあああ!分かりやすく噛んでしまったぁああ!

 

「ははは、やっぱり比企谷君は面白いね。お風呂の後裸なのは本当だけど今は私服で椅子に座ってるよ。一応会社にいるからね。それじゃまたね、比企谷君」

 

あ、そう言えば雪ノ下財閥の仕事は、雪ノ下さんが殆どしてるんですもんね...。

 

「...はい」

 

俺はHP全損した体に鞭を打って委員長室に向かう。今はただ城之内先生の手術の事だけを考えながら。

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