機動戦士ガンダム虹の軌跡   作:シルヴァ・バレト

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13:幸せ

 宇宙世紀0079.12.03 前の戦闘で俺はレイスの囮となり、彼らと別れた。情報によると、レイスは宇宙に上がった後、また地上に降りたらしい。また…隊長と会えるだろうか。

 

「と、言うわけで…現状はあまりよろしくない状況だ。なにより物資が少ない。そこで、連邦部隊の基地を強襲し、物資を奪う」

 

 俺たちパイロットは、司令室に集められ、クロノードの話を聞いていた。

 

「さて、奪うに最適な基地はどこだ?…おい、おい!!!カカサ!!!」

 

「んー?何かねクロノード君よ」

 

 と、クロノードを挑発するように言う。

 

「…物資を奪うのに最適な…」

 

「ここから4km先にある、ソノラ砂漠が、今のところ手薄だ」

 

 と、突然真面目になるカカサ。まったく彼の心情を読むことができない。

 

「…分かった。よし、これから少数の部隊に分ける。まず、リックお前が第1小隊のリーダーだ。んで、グレイ…」

 

 次々に名前が呼ばれていく。

 

「第3小隊のメンバーは、俺とカカサとムゲン、お前だ」

 

「…あ、はい」

 

「よし、以上だ。全員出撃準備だ!!」

 

「了解!!!」

 

 全員が立ち上がり、司令室を後にする。

 

 

 

 俺はクロノードと共に格納庫へ向かった。

 

「へっへっへ!今日こそお前よりスコアとってやるぜカカサァ!!」

 

「俺に勝とうなんて10年早いぜ!あ…いや、12年位か?いやいや、19年くらい…」

 

「お喋りはそこまでだ二人とも。早く準備をしろ」

 

 そう言いながら手際よく機体に乗り込む3人。

 

「…」

 

 俺もピクシーに乗り込み、システムを起動させる。すると、クロノードから無線が入った。

 

[ムゲン、いつでもいけるな?]

 

「はい、いつでも大丈夫です」

 

[よし…第30特別遊撃部隊、行くぞ!!!]

 

 そう叫び、白いザクを筆頭に出撃していく。

 

 俺もピクシーを動かし、クロノードに続いた。

 

 

 

 しばらく歩いていると、突然うるさい声が機体内に響き渡る。

 

[おい、ムゲン!!]

 

「…なんですか」

 

[お前、あの蒼いジムに乗ってたやつだろう?]

 

「え…一応…そう聞きましたけど…」

 

[なら、俺に修理代を払ってもらおうか!]

 

「えっ…?」

 

 唐突な発言である。まったく、彼の言動は読むことができない。

 

「あの…」

 

[ふっふっふ…いつもは30倍にして返してもらうところだが、今回は許してやろう。…お前金もってなさそうだしな]

 

 とか、小さくつぶやいたつもりなのだろうが、彼の言葉はこっちに丸聞こえだった。俺が困っているのに気づいたクロノードが彼に言う。

 

[おい、カカサ。ムゲンをあまり困らせるな。まったくお前はいつも…]

 

[はいはい、隊長さんはお偉いですからねえ、まったく頭が上がりませんよぉ、はい]

 

 と、挑発した口調で言った。

 

「…まあ、こんな奴だが根はいい奴なんだ。悪く思わないでくれ」

 

「あ…はい」

 

[なあムゲン。お前本当に記憶がないのか?]

 

 と、突然真面目な口調で聞いてくるカカサ。俺は困惑しながらも頷いた。

 

[うーむ…じゃあ、俺の機体を傷つけたのも覚えてないのかよ…。まったくおめでたい奴だぜ…]

 

 彼は、俺と一度戦ったことがあるらしい。過去を知らない俺にとっては、彼は渡りに船のような存在だった。俺は、彼に意を決して聞いてみた。

 

「あの…カカサ。君は俺と戦ったことがあるんだよね?そのことを教えてくれないかな」

 

 どうせ変な回答しかこないと思っていたが、以外にも彼は真面目に答えてくれた。

 

[あれは確か、連邦とジオンの裏取引に確証をつけるために奴らを追っていたときだった]

 

[その日はそれはもう綺麗な月が出ててだな、その月は本当に綺麗な満月でだな…いや、すこし削れていた気もする…]

 

[いいから続けろカカサ…]

 

 たまらず言葉をさえぎるクロノード。

 

[ああ。それで俺が裏取引の証拠写真を撮ろうとしたとき、蒼いあのジムがやってきて連邦とジオンの機体をバッタバッタと薙ぎ倒したんだ]

 

[それで、その蒼い奴は俺のほうにも向かってきたんだ]

 

[奴と俺は一進一退の攻防をした挙句、俺は武器を吹き飛ばされて負けかけた]

 

[けど、奴はなんかよく分からないけどそのまま動かなくなったんだ。だから、一目散に逃げたわけなんだ]

 

「…そうだったんですか…」

 

 また一つ、俺は自分を責める過去を知った。どうして俺は出会う人達を傷つけてしまうのだろう。

 

「申し訳ない…カカサ…」

 

[本当だよ!まったくよぉ…修理がどれだけかかったと思ってるんだよ!!おまけに破損した武器代も…!!!]

 

[お、おいカカサ…]

 

[だが…それでもあれほど燃える戦いができたのには感謝してるよ…ムゲン]

 

「え…?」

 

[戦争は一人でするもんじゃないから、一対一の戦闘なんてできない。だから、それができただけでもうれしいのさ]

 

 その言葉は、少しだけだが彼の優しさを垣間見ることができた。

 

[さて、おしゃべりは終わりみたいだ、行こうぜムゲン!]

 

 モニターを見ると、大きな基地が目に入る。

 

「…分かった、カカサ!」

 

 

 

 先に隠れるのに適した場所に身を潜めたクロノードさんは誰かと連絡を取り合っていた。

 

[さて…。おい、第一小隊…!どうした!!反応しろ!!]

 

「どうしたんです…?」

 

[くっ…やられたのか!?]

 

[おい、落ち着けよクロノード君。この俺みたいに…さ!!!]

 

 気がつくとカカサは俺達に近づいていたジムを背後からヒートサーベルで静かに貫いていた。

 

「これは…!」

 

[…おいおい…罠かよ…]

 

 周りを見渡すと、10機ほどの機体に囲まれている。

 

「どうします…?クロノードさん」

 

[おいおい…『さん』付けはやめてくれ。…どうするかってのは…こうするんだ!!]

 

 クロノードが1機のジムを対艦ライフルで撃ち抜くと、その音に呼応して基地のほうから爆音が響き渡った。

 

[第1小隊の生き残りは、第2小隊と合流。陣形を立て直して物資を回収し、帰還しろ!]

 

[やれやれ…。まーたお決まりの囮かよ…。俺の職業は暗殺だって言うのにさぁ…クロノード君、俺を使いすぎなんじゃないの?高くつくよー?]

 

[まったく…。焼き鳥おごるから我慢してくれ]

 

[よっしゃ!乗ったぜ!……んじゃ…殺るか]

 

 そう言って2機まとめてジムを切り裂くカカサ。

 

[どうよ!これが俺の力だぜ!!]

 

 油断しているカカサの背後に忍び寄るジムを彼はまったく気づいていない。

 

「カカサ!後ろ!!!」

 

[何…!?うわあああ!!]

 

 カカサはジムの振り上げたビームサーベルを避しきるほどの余裕がない。俺はいてもたってもいられなくなり、持っていたダガーをジムに投げつけた。

 

「頼む…届いてくれぇえ!!!!」

 

 俺の投げたダガーはジムの振り上げた腕に直撃し、ジムは持っていたビームサーベルを地面に落とした。

 

「今だ!カカサ!!!」

 

[任せとけって!!そらよぉおお!!!]

 

 そう言いながらヒートサーベルをジムのコックピットに突き刺す。

 

[残り5機…か]

 

「…クロノード、カカサ…先に戻っててくれ」

 

[どうした?ムゲン]

 

 俺はゆっくりとピクシーを動かし、5機のジムの前に立ちふさがった。

 

「こいつらは、俺だけで仕留める」

 

[なんだと!?流石に無理があるぞ!]

 

「…今ならいけます…。俺でも役に立てるって所を見せましょう…!!」

 

 俺はジムの腕に刺さったダガーを引き抜き、構える。

 

[ムゲン…]

 

[俺ぁ信じるぜ!ムゲンをよ!!ただーし!負けたら修理代は自腹だ!!]

 

「…任せてくれ、カカサ」

 

[おう…!]

 

「さて…始めようか…狩りを…!」

 

 するとその言葉に反応した連邦兵が言った。

 

[何が狩りだよ!俺達をなめると痛い目見るぜ!!かかれ!!!]

 

 俺は目を瞑った。右から2機、左に2機そして…

 

「上に…1!!!!」

 

 そう言いながら、今にも振り下ろされようとしていたビームサーベルを受け止め、空中に居たジムのコックピットをもう一方のダガーで貫く。

 

 続けざまに右左にいる1機を、腕をクロスするように切り裂いた。

 

「さあ…まだまだ!!!」

 

[ひ、ひぃ…!なんなんだよこいつ!!!]

 

[くっ…撤退だ!!退け!退け!!!]

 

 2機のジムは踵を返し、逃げるように撤退していったのを確認すると、俺はダガーをしまった。

 

「…帰りましょう。任務終了です」

 

 俺は二人に微笑んで、輸送機へ向かって歩き出す。

 

 

 

 輸送機に向かう間、俺達は他愛もない話で盛り上がった。今日の夕ご飯の話や、さっきの戦闘の話…。そんな他愛もない話をしながら輸送機へ向かう。

 

 何故だか知らないが、俺はこの時間が長く続いて欲しいと願った。理由は分からない。だが、とても懐かしい気持ちになれたから。

 

 そんな話をしていると、気がつけば輸送機は目と鼻の先だった。

 

[よし、無事に帰ってこれたな。第1、第2小隊、損害報告を]

 

[こちら第一小隊のグレイ…。僕以外は…第一小隊…全滅です]

 

[……そうか…墓は作っておいてやれ…]

 

[…了解っ…!]

 

 その声はとても震えていて、こちらまで悲しみが伝わってくる。

 

 声をかけようと思った。だが、それはクロノードによってとめられた。

 

[やめておけ。余計悲しくなるだけだ…]

 

「…でも…これじゃあ報われませんよ…」

 

[皆、地球に残された時点で覚悟はできていたはずだ。その死を無駄にしないためにも、俺達が【意志を引き継いで】戦うんだ]

 

「…」

 

[まあそんなに湿っぽくさせるなよ、クロノード君。湿ったら機械が壊れちまうぞ?]

 

[…そうだな…。よし、俺達も機体から降りるぞ!]

 

[そうこなくっちゃな!さーて、おごりの焼き鳥だなぁ!!!]

 

[そんなこと言ったっけか?]

 

[んな!?そんなのないぜー!!]

 

 オーバーなリアクションを見た俺とクロノードは思わず笑みがこぼれて笑った。

 

「ははは!!」

 

[ぷっ…はははは!!!]

 

[んな!?んだよ!お前らああ!!!]

 

「そうか…これが幸せなんだ…」

 

[…あぁ…。だからこそ、その幸せを壊すわけには行かないんだ]

 

「そうですね…!」

 

 俺達は機体から降り、輸送機へ歩き出す。

 

 そんな背中を夕日が照らしていた。

 

 

13 完

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