宇宙世紀0079.12.??
ここは……どこだろう…
俺は……誰なんだろう…
問いかけてもその言葉だけが反響する…
帰ってくるのは自分の発した言葉だけ…
自分が今どこに居るのかすら分からない…
「……」
気がつくと、俺は見慣れた家の中に居た。
『よぉし!お前の名前は…ムゲンだ!』
目の前には懐かしい二人と、男性が抱える一人の赤ん坊。
『なんでムゲンって名前なの?もっといいのあると思うんだけど…』
『…こいつに【
突然風景が一変する。また同じような家に立っている。
『パパ…ママ…』
『おい!ムゲンが喋ったぞ!!』
『本当!?…いい子ね…ムゲン』
どうしてこんな風景が流れてくるのだろう。
『父さん!!』
『お前とは…もっと一緒に居たかった…』
『…!』
『お前がMSのデータを極秘で研究してるってやつだな?』
『そうだとしても、お前達にデータをくれてやるわけにはいかん!!』
『そうか…ならやむを得ないな…』
響き渡る銃声。弾丸は父の腹部を貫いた。
『ぐはっ…!!け、研究データは…わた…』
父は続けざまに弾丸を何発も撃たれる。
それをみて母は、ただ震えていた。
『この女、研究データ持ってるぞ!!そいつをよこせ!!!』
『だめ…!これは…私と…彼の…!!』
銃声が響き渡る。止めたくても止められない。
『…やめろ…!!やめてくれ!!!母さんを…母さんを放せ!!!』
心で叫んでも、その言葉は届かない。
『ぐっ…!……ムゲン…ごめん……』
言い切る前に…母さんは力尽きた。
「…うわああああああああああ!!!!」
「はぁ…!!ハァ…!!!」
目を覚ますと、いつもの見慣れた自分の部屋。もうあの場所に戻ることはできない。
俺は手から血が出るほど手を強く握った。
「くっ…うぁああ…!!!うああああ!!!!」
堪えきれず言葉が漏れてしまう。
そんな声に反応したのか、ノックもせずに扉が開く。
「…ムゲン…?」
前を見ると、いつもの彼女が居た。だが、今は涙で前を見ることができない…。
「どうしたの…?」
「…リ…ナ……。くっ…」
喋りたくてもまともに喋れない…悲しいからか、つらいからなのか…分からない…だが涙は自然と流れてくる。
「ムゲン…」
すると彼女は、俺の横に座り、優しく頭を撫でてくれた。
「…!」
彼女を見ると、とても優しく微笑みながら言う。
「辛いなら…泣いていいんだよ…?だって…ずっと頑張ってきたんだもん。…ムゲンは泣いてもいいんだよ…?」
「きっと辛かったんだよね…だって、顔ぐしゃぐしゃにしてるんだもん…。嫌でも分かるよ」
「…くっ…うぁ…あああ…ぐっ…えぐっ…」
そのときの涙は、決して悔しかったからじゃない。親を失ったその記憶が蘇った。だからだろうか…。
「リナぁ…リナぁ…うわあああ…!!!」
「そ、そんなに辛かったんだ。…よしよし…。もう辛くないよ。ムゲンは一人じゃないから…」
その日、俺は初めてリナの前で涙を流した。
いつもは逆の立場だった彼女が、今は俺を優しく撫でてくれる。
リナは天井を見上げながら呟く。
「…どうして…皆分かり合えないのかな…」
「こうやって、人は肌と肌で触れ合って、話し合って…。ちゃんと分かり合えるのに…」
「………」
俺はただ黙っていることしか出来なかった。彼女の瞳は、とても悲しそうで、そして、慈愛に満ちていた。
「…ムゲン…きっと…来るよね…あなたが記憶を取り戻すときも…。そして、皆が皆手を取り合う日が…来るよね…」
「……来るんじゃない…持って来るんだ…」
「え…?」
「今は霧が濃すぎて見えないけど…それでもその先に手が伸ばせたなら…きっと手に届く…。そう信じてる…」
「…グレイがな…ソロモン攻略戦で死んだ…。その時、言ったんだ」
俺は涙を堪えながら続ける。
「…夢を託したって…。奴の夢は…ジオンや連邦が分け隔てなく笑って過ごしている世界なんだ」
喋るたびに胸が苦しくなる。
「そこでは争いが無くて……幸せそうな家族が仲良く暮らしてるんだ…」
「そ、それでッ…それでさ…ッ…」
話そうと思うのに、言葉が詰まってしまう。
「父親がいて、母親がいて、子供は幸せそうに外で遊んでる。そんな…そんなありきたりだけど…そんな世界…なんだ…ッ」
「か、かれが…っ…求めたのはっ…そんな…優しい世界なんだ…っ…それを…造るためにも…」
「今ここに居る皆を守るためにも…!」
「俺は…戦うよ…リナ」
そう言って、俺は涙も拭かずに彼女に微笑んだ。みると、彼女も涙を流している。
「…な、泣くなよ。…可愛い顔が台無しだ…」
「…ムゲン…!私…」
「大丈夫。皆で行こう…。しっかり手をつないで、霧の中でも…暗い宇宙の中でも。とてつもなく冷たい海の中でも…俺たち全員で、平和…掴むんだ」
「……うん」
俺は、腕時計に目をやる。時間は丁度4:00だった。星一号作戦が強行されることになり、俺たちは司令室でファングさんの話を聞いていた。
「皆聞いてくれ。俺達はXフィールド攻略に参加することになった」
「…敵は今まで以上の大勢で来るだろう…。だが…!俺たちなら…。超えられる。俺達はどんなものより強い家族の絆がある!!!」
「…いいか…絶対に、全員で生きるんだ!もうそれ以外は何も望まない。ただ、生きて帰って来い!!」
ファングさんの強い想いを胸に秘め、俺は…いや、俺達家族は、最後の戦いへ赴く。
全てを終わらせるためじゃない…グレイや皆が願った世界を造るために、未来へ手を伸ばすんだ。
「…行こう…道夜!ユーリ!!!」
機体に乗り込み、ハッチがオープンされる。
[……生きるぞ…ムゲン]
[さーて、いきますかー]
そんな聞きなれた人たちの声が、何故か今だけは特別に感じた…。
ユーリ、道夜が出撃していく。俺も遅れないように…。
「ムゲン・クロスフォード…ピクシー・ミラージュ…行くぞ!!!!」
そう叫び、出撃した。
18 完